05
2012

[No.92] ザ・ビースト/巨大イカの逆襲(The Beast) <64点>

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※予告編を探しても出てこないので、今回は、日曜洋画劇場における淀川長治氏の紹介動画を貼っておく。やっぱり最高だな、淀川長治。もう本当にお腹が痛いwww


キャッチコピー:『暗黒の深海で…人類は野獣の餌食になる!!』

 ダイバー閲覧注意!巨大イカ、遂に銀幕デビュー!!

三文あらすじ:ニューイングランド、漁業の盛んな小さな島”グレイブス・ポイント”。クルーザーで沖に出た夫婦の失踪を皮切りに、後を絶たない犠牲者たち。島の漁師ウィップ・ダルトン(ウィリアム・ピーターセン)が発見した巨大な”爪”から、島を襲う野獣(The Beast)の正体が、伝説の巨大イカ”アーキトゥシス・ダクス”であることが判明する・・・


~*~*~*~

 
 モンスターパニックムービー永遠のマスターピース『ジョーズ』。その『ジョーズ』と原作者が同じというのがウリの作品が本作『ザ・ビースト/巨大イカの逆襲(The Beast)』だ。

 もうタイトルが何ともB級テイストで、個人的にはかなりツボ。とはいえ、実は、筆者は今回、本作を他の作品と間違えて借りて来てしまった。何と間違ったかと言うと、これもB級モンスターパニックであり、本作同様同ジャンルの隠れた良作『ザ・グリード』である。タイトルが若干似ているし、両作ともウネウネした触手を持つモンスターが登場するものの、映画を間違ってレンタルしてしまうとは、筆者も五月病のせいでいささか”骨抜き”になっていたようだ。イカだけに。

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 さて、そんな経緯で期せずして我がレンタル映画ライブラリーの仲間入りを果たした本作であるが、前述のように、実はモンスターパニック好きなら知らぬ者のない、知る人ぞ知る良作だったりする。

 また、モンスターパニックをそこまで好きでない人の中にも”そういえば、なんか聞いたことあるかも…”という人がいるはずだ。それもそのはず、何年か前まで本作は、金曜ロードショーやら木曜洋画劇場やらで実に頻繁に放送されていた。そんな中でも、筆者にとって特に印象的だったのは、日曜洋画劇場における淀川長治氏の紹介である。映画本編放送開始前、パーソナリティーである淀川長治が本作の”あらすじ”を語る。しかし、彼の語る前ふりが既に”あらすじ”の粋を超えている、ということは有名な話。冒頭から事細かに説明し、酷いときはオチまでがっつり喋ってしまうのである。そして、それが彼の魅力に他ならない。筆者ももちろん彼のそんな”あらすじ”を楽しみに視聴に臨んだのであった。ところが、あらすじを語り出して早々、”イカが襲ってくる話とか、タコと被ってるやん…”などと無粋な考えを抱いていた筆者に対して、彼は、衝撃的な言葉を発する。

 「タコ(が襲ってくる映画)はあったんですねぇ、でもイカは初めてなんですね。」

 え…!いや、そうかもしれないが…。何が違うんだ?!

 そして、本編鑑賞後、筆者は知ることになる。やっぱり、タコと何も違わない。淀川長治とは、そんな”イカした”おじいさんであった。イカだけに。

 (※追記:以前貼り付けた本作の予告編がリンク切れを起こしていたので、代わりに淀川長治氏の紹介動画を貼り付けておいた。筆者自身、約20年ぶりに彼の紹介を視聴し、なんとも言い得ぬノスタルジーと胸の奥底から沸き上がる改めての羨望を噛み締めたのである。本当に、腹がよじれるとはまさにこのこと。おもしろすぎる。やっぱり氏は最高に偉大な永遠の映画人に違いない。)

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 このように、タコとの差別化を何ら図れていない本作ではあるが、モンスターパニックとしては、実にしっかり作られた作品である。まず、オープニング。モンスターパニックものでは、オープニングが最大の見所の1つだ。未だその姿も明らかでない”何か”に襲われる最初の犠牲者。最高にワクワクし、一気に映画に引き込まれる。

 本作における”最初の犠牲者”は、クルーザーで航海中のラブラブ夫婦。”海に浮かぶベッドルーム”と化したクルーザー内で、イチャコライチャコラ、年甲斐もなくラブラブである。これは中々いい設定。この手の映画において、ちょっとでも”エロ”に走った者の末路は”死”と相場が決まっている。モンスターパニックにおいて”イカがわしい”考えは、禁物なのである。イカだけに。

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 しかし、彼らがクルーザーごと海の藻屑と化すのを今か今かと待ち受ける筆者の期待とは裏腹に、突如発生するエンジントラブル。そして、機関部からの浸水を発見した夫=船長は、尋常成らざる早さでクルーザーの破棄を決断、夫婦は、ゴムボートで大洋へと乗り出す。後はお決まり。何だかよく分からないワチャワチャの中、2人とも海に引きずり込まれて暗転、である。

 まぁ、決して悪くはないし、むしろB級感があって良かったすら言えるのだが、筆者としては、やはり派手にクルーザーを沈めて欲しかったところ。まぁ、”イカんせん”低予算であるから致し方ないと諦めるべきであろう。イカだけに。

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 この冒頭以降、ラストまでの流れは、ほぼ『ジョーズ』と同じ。1人また1人と深海へ引きずり込まれる島民たち、巨大イカへの警戒を喚起する主人公、彼の言うことを聞かず利益を優先しようとする悪い市長、退治したイカが実は一回り小さなものでより巨大な”ボス”が新たな犠牲者を出す展開、最後の戦いにおいて船の後方に乗り上げたイカが滑ってきた乗組員を食べてしまう演出、爆発によって退治される巨大イカ…。というように、大まかなプロットから細かな演出まで、どれをとっても完全に『ジョーズ』である。

 とはいえ、裏を返せば、ある程度のワクワクやハラハラが約束されているということで、実際、中盤~終盤までは、非常にまとまりが良くおもしろい。もちろん、希代の大傑作『ジョーズ』には遠く及ばないものの、B級モンスターパニックとして鑑賞するのなら、決して”及第点以下(イカ)”に甘んじる作品ではないと言える。イカだけに。

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 本作が『ジョーズ』と決定的に違う点は、やはり”巨大イカを自然の一部として捉えている”というところではないだろうか。

 グレイブス市長(チャールズ・マーティン・スミス)の差し金で巨大イカ退治に乗り出した漁師ルーカス(ラリー・ドレイク)が大きなイカを仕留めるも、それが実は赤ちゃんイカだったという展開。そして、ウィップが調査依頼を出した”爪”から、モンスターの正体が伝説の巨大イカ”アーキトゥシス・ダクス”であると突き止め、自らグレイブス・ポイントに赴いた海洋生物研究家Dr.タリー(ロナルド・ガットマン)とその助手の青年。チャラチャラと男のことばかり考える友人に対し批判的な態度をとっていたにもかかわらず、助手の青年と一目で恋に落ちてしまうウィップの娘ダナ(Melissa Lahlitah Crider)。愛を確かめ合うも束の間、潜水艇もろとも親イカの餌食になる助手の青年。

 この一連の流れの後、本当は自分が潜水艇に乗るはずだったため責任を感じる本作のヒロイン、キャスリン・マーカス(カレン・シラス)をウィップが慰める。「あの光景(船内モニターに映った乗組員たちの最期)が頭から離れなくて…」とうなだれるキャスリンに、「忘れるんだ。」と言うウィップ。「私が…」と自責の念を露わにするキャスリン。これに対して、ウィップは「今更悔やんでも仕方ない。」と言い、続けて、

 「あれが海なんだ。」

との答えを提示する。そして、自分の妻が海難事故で死亡した過去を語り始めるのである。

 このシークエンスで、彼がなぜ巨大イカを”放っておく”というモンスターパニックの主人公らしからぬ提案をしていたのか、その謎が解ける。彼にとって”海”とは人間による抗いなど到底許さぬ”自然”であり、そこで人が死ぬことも”自然の一部”として受け入れていくべきことに他ならない。そして、グレイブス・ポイントを襲う巨大お母さんイカは、紛れもなく”海”そのもの。彼女は、人間の乱獲による魚の減少から、子育てのため仕方なく人間を襲っているだけだ。しかも、人間は、そんなお母さんイカからあろうことか我が子を奪っている。彼女が人間を襲うのは、生存のための必然、そして、我が子を殺されたことに対する”怒(イカ)りの逆襲”なのであって、人間は、それを甘んじて受け入れるべきだろう。イカだけに。

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 この視点は、モンスターパニックムービーにしてはやや斬新。実際、『ジョーズ』における巨大ザメは、一も二もなく人類の敵であり、排除すべき対象として描かれていた。

 とはいえ、そんな辛気くさいことばかり言っていたのでは、映画にはならない。ラストはやはり、人類 vs 巨大イカの生存を賭けた死闘で締めるのが筋というものだ。しかし、終盤以前で上質なドラマを入れ込んでしまった本作は、ラストへの繋ぎ方が上手くない。

 ウィップにとって巨大イカは、島民を殺し、愛すべき島をパニックに陥れ、娘の恋人の命を奪い、相棒のマイク(スターリング・マーサー・Jr)に瀕死の重傷を負わせた憎むべき相手。その反面、彼には、”海を受け入れる”という自然派ガンジー風の非暴力・不服従の精神が宿っている。さぁ、我らが主人公ウィップは、如何にして巨大イカとの死闘に臨むことになるのか?!

 結論から言うと、ウィップに決意させるのは、娘であるダナ。最愛の恋人が死に、父親には”絶対にあの場所には行かない”との約束をさせた彼女は、巷で我が父が”臆病者”と揶揄されていることを知り立腹、ウィップに対し「イカ退治に行ってもいいのよ、私との約束は忘れて。」と言い放つ。これは、”イカがなものか”。イカだけに。

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 せっかくドラマ部分が中々良く出来ていておもしろかったのに、”親がバカにされた”というだけで最愛の父親を死地に送り出してしまうダナには、なんだか失望である。しかも、ウィップもウィップで、娘にゴーサインを出されたからといって、自らの掟を易々と破ってしまうのはいただけない。最後の死闘に赴く動機に説得力を欠くせいで、ラストがいまいち盛り上がれないという残念な結果になってしまった。っていうか、そもそもマイクを助けに行くくだりで既に1回約束破ってるし…。
 
 まぁ、そういう非合理的な展開は、B級映画の”味”でもあるのだが、最後に無理矢理もう1コ入れ込んでおこう。まったく、この島の人間は、どいつもこいつも”イカれて”やがるぜ!イカだけにな!!

点数:64/100点
 B級モンスターパニック好きは是非観るべきであるが、そうでない人にとっては暇つぶしにも最適とは言えない、そんな作品。本当はもう少し、2人のダイバーが襲われるシーンのダイバーにとっての恐ろしさなどについても言及したかったのだが、もう”イカ”の付くフレーズが思い浮かばないので、今回はこの辺にしておいたほうがいイカな。

(鑑賞日:2012.6.4)








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Tag:海洋冒険ロマン クソ女 ダメ男

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