[No.96] 死霊のはらわたⅢ / キャプテン・スーパーマーケット (Army of Darkness) <64点>

Army of Darkness



キャッチコピー:『こんなヒーロー見たことない!空飛べない。変身しない。でも、イザとなったら卑怯者!ハッタリかまして泣く子も笑う、ニューヒーローの誕生だ!!』

 クラトゥ・ベラタ……ネフン!ネフン!!

三文あらすじ:恋人リンダ(ブリジット・フォンダ)と共に森の中にある小屋を訪れたアッシュ(ブルース・キャンベル)は、死者の書ネクロノミコンを発見、呪文を唱えてしまったことで死霊が蘇る。封印の呪文により何とか死霊のボスを倒したアッシュだったが、その際発生したワームホールに吸い込まれ西暦1300年の中世へ。アーサー王(マーカス・ギルバート)に奴隷として囚われたアッシュは、元の時代に帰るため、”闇の軍勢(Army of Darkness)”との死者の書を巡る戦いに身を投じることになる・・・


~*~*~*~

 
 ホラー映画界きっての”やりすぎヒーロー”アッシュと死霊の戦い第3弾。

 まず、予告編が非常に格好いい。前作で導入された”粋”で”ロック”なノリ、言うなれば”グルーヴィーなノリ”は、本作でも一応健在で、予告編はその辺りを良く表せている。キャッチコピーは、何でも中島らも氏が考案したものらしいが、まぁ、特に良いとは思わない。

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 そして、本編である。率直に、かつ端的に極めて個人的な感想を述べるなら、あんまりおもしろくなかった、ということになる。その理由は、やはりコメディに偏りすぎという点に尽きるだろう。

 もちろん、本作はそういう作品だ、ということは分かっている。しかし、そうは言っても、本作はあくまで『死霊のはらわた』シリーズの第3作目。ゾクゾクするホラー世界の中でアッシュのシビれる活躍が見たい!あるいは「言ってくれ!格好良く“グルーヴィー!”って言ってくれ!」というファンの願望は、誰も否定できないはずだ。

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 その点、前作は、ホラーな雰囲気と少しコメディ寄りとも思えるヒロイックな描写のバランスがこれ以上ないほど絶妙だった。アッシュが自身の右手と格闘する、というあの有名なシークエンスにしたって、どこかドタバタコメディの雰囲気を醸しつつも、やはり相当に恐かった。自身の右腕が死霊に乗っ取られるという設定も秀逸なら、そもそも1作目及び前作の死霊は、この手のシリーズには本来欠かせないはずの”行動範囲の制限”というものが無かった。彼らは、小屋の内外を問わずどこにだって現れる。これは非常に恐い。また、前作では、少しやりすぎなドタバタシークエンスがあっても、結局アッシュが自分の右腕をチェーンソーで切り落としてしまう、というような、観客を再び恐怖世界に叩き込むクールな”締め”が用意されていた。

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 ところが、本作では、以上のような前作までの良さがことごとく無くなってしまっている。
 
 もちろん、決め台詞”グルーヴィー!”は登場するし、前2作同様”高速でアッシュを追うカメラワーク”や”小屋という密室での戦い”も描かれる。しかし、それらは全て中途半端で、どこか”ファンへのリップサービス”の粋を出ていないように思う。

 最大の敵である”闇の軍勢”との合戦は、確かに大スペクタクルシーンと呼べなくはないにしても、単純な”物理的戦闘”に終始。つまり、本作の死霊には、基本的に”行動範囲の制限”があるということだ。これでは、ただのゾンビではないか。

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 唯一前作を彷彿とさせる風車内のシークエンスにしても、登場する死霊が”複数の小さなアッシュ”と”分身したもう1人のアッシュ”というのでは締まらない。アッシュの肩に目が生え、それが徐々に等身大のもう1人の自分になっていく、という展開は少しゾクッするものがあったが、小さなアッシュとの戦いは、もはやトムとジェリーにしか思えない。姿は自分自身であるものの、小さなアッシュを殺したところで元のアッシュには何のダメージも無いから、前作での右腕切断シークエンスのような恐怖感を得ることもできない。

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 このような全く恐くない状況下であの決め台詞”グルーヴィー!”を言われても、何ら格好いいとは思えないのである。本作のアッシュは、前2作の経験もあるし、何より現代に比べ文明として劣っている中世にいるため、終始自信満々。確かに、それはそれで格好いいアクションや決めポーズが増えてはいるのだが、やはり追い詰められて追い詰められてボロボロになったアッシュが、心機一転反旗を翻し放つ”グルーヴィー!”だからこそ、我々はあそこまで鼓動の高鳴りを感じたのではなかったか。コメディに特化するあまり、大して恐ろしくもない敵に対して、アッシュ自身のミスからピンチに陥るというのでは、ホラー映画界トップ・ヒーローの名折れである。

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 もう1点、客観的な説得力はないものの、筆者にとっては本作の評価を下げる大きなポイントなのが”舞台が中世ヨーロッパ”というところ。SF、しかも宇宙系で無機質系なビジュアルイメージの作品を好む筆者としては、中世の甲冑や合戦など何の興味もない。まぁ、中世の合戦こそ、サム・ライミが本作でやりたかったことなのかもしれないが、どうせ前作の設定などおかまいなしなのが本シリーズなのであるから、舞台もまた違う時代にしてくれれば良かったのにとワガママな感想を持ってしまった。

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 ちなみに、前作の設定おかまいなしということで言えば、冒頭で描かれる前作までのおさらい的シークエンスにおいて、アッシュの恋人リンダが格段に可愛くなっている。筆者のストライクゾーンど真ん中に剛速球を投げ込むこのブロンドショートカット美女は誰だ?!と思って調べてみると、何とブリジット・フォンダであった。彼女の魅力を堪能したい人は、是非『ジャッキー・ブラウン』をご覧になってもらいたい。

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 まぁ、とにかく、以上で述べたような理由から、個人的に本作は、前2作に比べ”つまらない”と評価せざるを得ない。

 とはいえ、本作のオチについては、いささか見るべきところがある。まぁ、予想通りの”時そば”であったとはいえ、アッシュを安易なハッピーエンドに安住させない中々ステキな締め方であったと思う。もっとも、筆者が言っているのは、ディレクターズカット版の話。劇場版本来のオチは、服用数を間違えずに”数世紀眠る薬”を飲んだアッシュがちゃんと現代にバック・トゥ・ザ・フューチャーし、自身が勤めていたスーパーマーケット内でまたしても死霊と戦闘を繰り広げる、というものだったらしい。ディレクターズカットもそれはそれで良かったが、アッシュが真の“キャプテン・スーパーマーケット”になる劇場版の方がより良かったのではないだろうか。

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点数:64/100点
 前回は非常に気が滅入る作品『ミスト』を紹介したので、今回は非常に脳天気なホラーを紹介してみた。次回は、大手レンタルショップTSUTAYAに対して筆者が有する、今まで積もりに積もった積年の怒りが大爆発する。

(鑑賞日[初]:2012.6.12)

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