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2012

[No.97] ドラゴン怒りの鉄拳(精武門) <68点>

CATEGORYカンフー
Fist Of Fury



キャッチコピー:『ブルース・リー、死を賭けた復讐の誓い。』

 明日に向かって蹴れ!
 アチョォォァァァ~~~~イイイイイィィィ!!

三文あらすじ:日清・日露戦争終結後の1909年、大日本帝国制圧下の上海で、中国武術道場”精武館”の師父ホー・ユンカップ(霍元甲)が謎の死を遂げる。彼の愛弟子であるチェン・ジェン(陳真)(ブルース・リー)は、悲しみに暮れながらもその死に疑問を抱く。そんな折、師父の死が、精武館に執拗な嫌がらせをする日本人柔道場の主、鈴木寛(橋本力)の陰謀だったと知ったチェンは、たった1人、復讐の戦いへと身を投じていく・・・


~*~*~*~

 
 最近、筆者は、名作B級モンスターパニックムービー『ザ・グリード』を借りようと思ったにも関わらず、何を思ったか間違えて巨大イカ襲来映画『ザ・ビースト/巨大イカの逆襲』を借りてしまった。そこで、リベンジよろしく今日再び最寄りのTSUTAYAに赴いたのだが、まず向かったホラーコーナーのサ行の欄には、同作の姿がない。おや?と思いSFコーナーを見るも、やはりサ行にその姿なし。これはまさか…と思いアクションコーナーを見てみたところで、結果は同じであった。そこで筆者は考えを改め、先に見たそれぞれのコーナーについて今度はカ行を見ていったのだが、何と『ザ・グリード』が見あたらないのである。

 さすがにイライラし始めた筆者は、DVDの陳列先を立ち所に検索してくれるあの機械の下へと向かい殊勝にも”ざ(スペース)ぐりーど”と打ち込んだのだが、返ってきた答えは”該当する商品はありません”。そんな馬鹿な!

 気を取り直し、これならどうだと今度は”ぐりーど”と打ち込んでみたところ、ようやくお目当ての作品がヒットした。が、しかし!商品情報欄の最右部には、何と驚愕の”取り扱いなし”の文字が!

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アチョォォァァァァ!!


 筆者が今回のような怒りを覚えたのは、何もこれが最初ではない。かつて筆者の期待に反して陳列されていなかった作品は『悪魔のいけにえ』。タイトルだけ聞くとどこぞのしょーもないB級ホラーのように思うが、本作は、映画史に残るあの名キャラクター”レザーフェイス”を生み出し、その芸術性の高さ故、マスターフィルムがニューヨーク近代美術館に永久保存されているという程の希代の傑作ホラーなのである。そんな作品たちを置かずして、やれアメリカのドラマシリーズだの、やれ韓流だのといった作品ばかりにスペースを割くそこのTSUTAYA!ちょっといい加減にしろ!!

 という訳で、筆者のように怒れる一人の男の物語、『ドラゴン怒りの鉄拳』である。

 1972年公開、『ドラゴン危機一発』に続くブルース・リー主演第2弾作品。彼のトレードマークでもあるヌンチャクとあの独特の雄叫び、いわゆる”怪鳥音”が初めて登場したのが本作である。つまり、本作は、007で言うところの『ゴールドフィンガー』同様、一連のシリーズの方向性を決定したブルース・リーの代表作と言って差し支えなかろう。そんな本作は、公開されるや否や大ヒット。リー演じる主人公のチェンは、未だに中華圏で熱狂的な人気を誇る定番キャラクターであるらしい。

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 確かに、中国が、いや、この地球が誇る大アクションスター、ブルース・リーの格好良さは、今更述べるまでもない。研ぎ澄まされた”細マッチョ”なボディ、凛々しさの中に可愛らしさも漂う顔の造形、そして何よりキレのあるカンフー!

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 筆者はそれほどカンフー映画好きという訳ではないし、今まで観たカンフー作品の数もたかが知れているが、それでも彼の体術には惚れ惚れさせられる。なんせブルース・リーは、もともとが武道家で、カンフー好きでなくとも1度は耳にしたことがあるであろう截拳道(ジークンドー)の創始者であるというからスゴイ。

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 また、本作で言うなら、やはり初登場のヌンチャクアクション。本当に格好いい。また、渾身の一撃を繰り出した後に見せるあの表情。こちらに”おいおい、泣いちゃうんじゃないの?”と思わせる程のあの感情溢れる決め顔が、最高に格好いい。

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 ブルース・リー作品公開時には、劇場を出た観客が皆彼の真似をしていた、という逸話はあまりにも有名だが、それこそがやはり彼のスターの証明であり、本作を含めた彼の主演作が紛れもなく映画史に残る傑作であることを物語っている。観客の心を捉える真の傑作とは、そういう作品のことを言うのだと思う。

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 以上のように、ブルース・リーの格好良さについては、もはや1点の突っ込み所すら無い程、完璧に格好いい。しかし、その一方で本作のストーリーはと言うと、これはもう突っ込み所満載である。始めに断っておくが、筆者は決して本作を馬鹿にはしていない。むしろ、そのストーリーや設定も含めて本作を真心から傑作と確信している。

 本作の大まかな流れは、以下の通り。

 まず、師父の死に悲しむ精武館に日本人道場の門弟2名と通訳を務める中国人ウー(ウェイ・ピンアオ)が、師父を馬鹿にした”東亜病夫(東洋の病人)”との書き初めをもって乗り込んでくる。精武館の門弟たちを挑発し、勝負しろと言うウーさん。このウーというキャラは相当むかつく。”映画史に残るムカツク悪役”というランキングを探せば、かならず上位にランクインしているはずだ。しかし、精武館の面々は手を出さない。師父ホー・ユンカップの教えは”武道とは己の心身を鍛えるために極めるもの”であって、戦いに用いることは厳禁であるからだ。怒りに打ち震えながら手の出せない精武館の面々を尻目に去っていくウーら。

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 カンフー映画の導入として、これは非常に良い。そもそもカンフー映画はカンフーの格好良さのみを心ゆくまで楽しむためのものであり、主人公が戦う動機は二の次である。あるときはペットの象を取り返すため、またあるときは、親の債権を取り立てるため。激しいアクションと対比して俯瞰で見ると少し笑ってしまうような動機というものが、カンフー映画ではよく用いられ、またそれが同ジャンルのある種醍醐味であったりもする。

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 ウーが去った後、戦ってはならん!と言う師範(ティエン・フォン)と悔しくもそれに従う精武館の門弟たち。しかし、チェンは単身日本人道場に殴り込みをかけ、そこの門弟たちをボコボコに。挙げ句の果てには、ウーと共に精武館に来ていた門弟2人に”東亜病夫”の書き初めを食べさせる

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 しばし待たれよ!師父の教えはどうした?!ウー挑発からチェン殴りこみまでの間、チェンが復讐と教えの間で思い悩む描写は皆無。なんとも力業の脚本である。

 しかも、この殴り込みから精武館への帰宅途中、”犬と中国人は立ち入り禁止”という何とも差別的な看板のある庭園に差し掛かり、門番と入れろダメだの押し問答。たまたま通りかかった日本人から「犬の真似をすれば日本人の犬として入れてやってもいいぞ。」とからかわれ、何とその日本人をシバき倒してしまう

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 さすがにそれはアカンやろ!もはや大義名分すらない純粋な暴力。何故素直に直帰しないのか…。完膚無きまでにやられた日本人道場は、復讐のため今度は総出で精武館を訪れる。寄り道して通りすがりの日本人をシバいているチェンは当然不在。精武館の面々は、ボコボコにやられてしまう。

 もうここからは血みどろの抗争。やったらやり返す、あっちが先に手を出した、いやそっちだ、という風に、これではまるでマフィアである。あげく、実は師父が精武館に潜入していた日本人道場のスパイに毒殺されたことを知ったチェンは、そのスパイ2人を普通に殺害、何故か町の電柱に吊り下げてしまう。これは恐い…。

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 この後は、いよいよ本格的にチェンへ捜査の手が伸び、彼は殺人犯として指名手配。一応チェンらの住む町は日本人が支配する”租界”であり、中国人は、日本人から日々差別と迫害を受けているという描写が随所にある。でもカモメはカモメ、殺人は殺人。今は捕まることが出来ないと逃げるチェンやそれを逃がそうとする精武館の仲間たち、そしてそれを比較的肯定的に描く本作の姿勢には、若干の疑問を感じずにはいられない。

 後半は、逃亡生活を送りながらも日本人道場への潜入を試みるチェンの七変化が楽しい。あるときは人力車の引き手、またあるときは電話の修理工というように、ブルース・リーの多彩なコスプレを堪能することが出来る。

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 しかして、その実態は、やはり殺人犯である。人力車の引き手に変装したチェンは、泥酔状態で日本人道場から出てきたウーを乗せ、人気のない路地裏へ。正体を現し、師父の死の真相を問いただすチェン。醜く命乞いをするウー。ここの展開は、まさに対フリーザ戦。これまでの自身の短気を悔いているチェンは、ウーを残しきびすを返す。と、そこをウーが落ちていた石を拾い急襲。「ばかやろーーー!!!」とばかりに強烈な一撃をお見舞いし、チェンは、ウーを絶命させる。

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 まぁ、ウーに関しては、映画的に殺しても問題なかろう。あれだけムカツク振る舞いをしていたのだから、観客のカタルシスのためにももっと悲惨な最期を遂げてしかるべき野郎だ。さらに、今回ばかりはチェンもちゃんと「なぜ手を出した…!」と自責の念を露わにしている。全く問題ない。ところが、翌朝発見されたウーは、何と電柱に吊されているのである!チェンよ、あの反省は一体何だったんだ…。これでは完全にシリアル・キラーではないか。

 復讐を終え、精武館にこっそり帰ったチェンが見たものは、彼と入れ違いに精武館へと向かった日本人道場の刺客たちにその大半を殺された精武館の面々。生き残りの主要メンバーと地元警察、そして日本人外交官が、チェンを引き渡せ、いや居場所が分からないの押し問答をしている。チェンを引き渡さなければ生き残りを全員逮捕し、精武館も閉鎖だと詰め寄る日本人外交官。

 と、そこへチェンが登場する。「チェンはここにいるぞ!」いや、これもちょっと待て!今そのタイミングで2階から出て行ったら、精武館がやっぱり匿ってたってことにならへんか?!チェンという男は、何とも短気な男である。

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 自首することを決意したチェン。中国人の警部に自首する代わりに精武館を守ってくれと頼む。ゆっくりと精武館から出るチェンの前には、銃を構えた部隊の姿が。「自らの罪は自ら償う」と言ったチェンは、助走を付けて部隊に突撃、必殺の跳び蹴りのアップの静止画に銃声が響き渡り、終幕。

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 この”『明日に向かって撃て!』式エンディング”だけは、本作で唯一”まとも”なポイントだったかもしれない。

 とまぁ、筆者が感じた大まかな突っ込み所はこの辺りであるが、演出などの細かな点も含めればもっと沢山の疑問点が生じてくる。本作は、そんな大変愉快で楽しい一流のB級カンフー映画である。

点数:68/100点
 カンフーに関してはもはや賞賛の言葉が見つからない程に格好いいが、ストーリーに釈然としない部分が多く、まぁそれが魅力とは言え、中々”すっきり爽快”という読後感にならない本作。特に、日本人が徹底して悪役に描かれているので、我々からすれば余計に釈然としない気持ちを抱いてしまうかもしれない。そのような”逆差別”も、当時の時代性だと信じたいものだ。

<おまけ>

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 本作のヒロイン、ユアン(霍麗児)を演じるノラ・ミャオ。どこかしら前田敦子に似ており非常に可愛い。名前も何だか可愛い。おまけに彼女が本作で演じるユアンは、大変殊勝で良い彼女である。筆者もこんな人とお付き合いしてみたいものだ。ちなみに、本作でブルース・リーとノラ・ミャオがキス・シーンを演じているが、これは、リーが生涯で演じた唯一のキス・シーンである。

(鑑賞日:2012.6.12)










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Tag:バカ映画

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