[No.98] ハート・ロッカー(The Hurt Locker) <75点>

Hurt Locker



キャッチコピー:『永遠を思わせる戦場。刹那を生きる男たち ― 。』

 自分が選んだ一つのことが、お前の宇宙の真実だ。

三文あらすじ:2004年、イラク、バグダッド郊外。ある日、アメリカ駐留軍ブラボー中隊の爆弾処理班リーダーが命を落とす。J・T・サンボーン軍曹(アンソニー・マッキー)、オーウェン・エルドリッジ特技兵(ブライアン・ジェラティ)の両名のみとなった同班に新リーダーとして配属されたのは、無謀で命知らずだがすさまじい爆弾処理の腕を持った兵士ウィリアム・ジェームズ二等軍曹(ジェレミー・レナー)だった・・・


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 第82回アカデミー賞において、作品賞を含む6冠を達成した本作『ハート・ロッカー』。タイトルの意味は、「苦痛の極限地帯」、または、「棺桶」を意味するアメリカ軍の隠語。その指し示すところは、戦火のイラクか爆弾処理員が着込む防爆スーツか、はたまた、もはや戦場でしか生きられない男ジェームズ二等軍曹にとっての平穏すぎる本国での日常か。作品賞を受賞しただけあって、中々味わい深い名作であった。

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 まぁ、本作がアカデミー賞に値する程の作品であったかというと、いささか疑問の余地もあると思う。確かに、極めて良く出来た映画ではあるものの、とびきり素晴らしい傑作という訳でもない。もっとも、アカデミー賞とは、あくまでもその年に公開された映画内での相対的なアワード。第82回アカデミー作品賞のノミネート作品の中で筆者がすでに鑑賞済みなのは『アバター』、『第9地区』、『イングロリアス・バスターズ』だけ。あまりにもエンターテイメントに寄りすぎたこの3作が同賞を取ることはまずないだろうから、実際のところ、筆者には、本作の受賞が妥当だったかは分からない。とはいえ、近年若干エンターテイメント指向になってきたアカデミー賞において、シリアスなドラマ性、戦地の現状を克明に描写するというメッセージ性、そして手に汗握る爆弾処理というエンターテイメント性のバランスが絶妙であった本作は、やはりオスカー像を持ち帰るに相応しい作品であったとも言えそうだ。

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 主人公ジェームズ二等軍曹を演じるのは、最近では『ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル』で秘密あるキャラクター、ウィリアム・ブラントを演じ、近々ボーンシリーズ新章『ボーン・レガシー』において新たなるジェイソン・ボーンを演じるジェレミー・レナー。どことなく野暮ったい顔つきでありながら中々セクシーなアクションを展開する彼は、今最も注目のアクション俳優の1人である。

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 そして、このジェームズ二等軍曹のキャラクター。これは素晴らしい。赴任早々、自分の部屋の窓に取り付けられている砲弾避けの雨戸を「屋根に落ちたらどうせ終わりだ。それに、俺は日差しが好きだ。」といって取り外してしまう大胆不敵さ。爆弾処理の現場においても、常にクールかつロックンロールな雰囲気を醸し出しており、スリルを楽しむタイプのプロの爆弾処理屋といった趣がある。

 特に、国連付近にうち捨てられた車に設置された爆弾を解除するシークエンスは必見。トランク一杯に積まれた爆弾を前にしたジェームズは、あろうことか防爆スーツを脱ぎ捨てる。「どうせ死ぬなら気持ちよく死にたい。」との台詞がいぶし銀。中々見つからない起爆装置に苦戦しながらも時間ギリギリまで粘り、最終的にはサンボーン軍曹からの撤退の指示を告げる無線機を捨て、単身爆弾と向き合う。こんな爆弾処理屋の話を、俺たちは観たかったんだ!

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 その一方で、意外と子供好きなジェームズ二等軍曹。ベッカムと名乗る現地のDVD売りの少年から質の悪い海賊版を買ってやったり、一緒にサッカーボールで遊んでやったりする。

 物語中盤までは、このような無茶で無謀なジェームズ二等軍曹の活躍とサンボーン、エルドリッジ両班員との確執と和解が描かれる。ここまでは完璧!反目し合っていた隊員達が徐々に絆を深め、クライマックスに挑んでいく、というまるで『バック・ドラフト』『トップ・ガン』のような漢の魂完全燃焼な展開が予想される。

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 ところがどっこい。本作の舞台は、世界中でもっともデリケートな場所イラク。おまけに”戦地の現状を克明に描写している”という点が評価されアカデミー作品賞受賞に至った作品なのだから、そんな単純かつ男気溢れる展開になろうはずもない。案の定、物語後半は、ベッカムが人間爆弾にされ命を落としたことを皮切りに、現地で日々死と隣り合わせの生活を送る兵士たちの苦悩にスポットが当てられていく。

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 兵士たちの悩みの大半は”国に帰りたい”だとか”家族に会いたい”といったもので、その本質は、戦地イラクに対する嫌悪感である。彼らにとっては、戦場こそが”ハート・ロッカー”だ。しかし、ジェームズ二等軍曹の悩みは少し違う。物語終盤、解体に失敗し、人間爆弾にされた一般人が目の前ではじけ飛ぶのを見ると共に自身もすんでの所で死を免れたサンボーン軍曹は、ジェームズに問う。「お前はよくこんなこと(爆弾解体)が出来るな。」

 ジェームズの答えはこうだ。

 「分からない。俺は何も考えていない。」

 すなわち、彼にとっては戦場こそが日常であり、本国での家庭生活は異常な非日常に他ならない。駐屯帰還を終え内縁の妻と幼い息子の待つ我が家に帰るジェームズ。しかし、彼は落ち着かない。広いショッピングセンターでは何を買えばいいか分からないし、コードの赤青は迷い無く選べてもシリアルの膨大な種類に戸惑う。家にいても話すことは爆弾のことばかり。

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 ラスト近く、彼はまだ口もきけぬ幼き息子に語りかける。

 「大人になると大好きだと思っていたものがどんどん減っていく。残っても1つか2つだけだ。」

 彼の目線の先に息子や家庭は無い。

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「パパには、1つだけだ。」


 爆弾処理屋は、再び狂気に満ちた戦場へと帰って行く。輸送機を降り、歩いて行くジェームズ。頑強かつ大層なヘルメットの向こうに見える彼の顔は、どこか高揚感に満ちている。

 冒頭で引用された、

 “戦闘での高揚感は、ときに激しい中毒となる。戦争は、麻薬である。”

というクリス・ヘッジスの言葉は、まさに爆弾処理のスリルに囚われたジェームズそのもの。彼にとっての”ハート・ロッカー”は、戦場でも防爆スーツでもない。スリルの無い平穏な日常こそが、彼にとっての”ハート・ロッカー”なのである。

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数:75/100点
 かつてベトナム戦争の悲惨さと戦地に赴いた兵士の苦悩を描いた『ディア・ハンター』、『プラトーン』、『フルメタル・ジャケット』、そして、『地獄の黙示録』などの戦争映画。戦場がある限り、同じ悲惨と苦悩は、時代を超えて映画のテーマになる。本作は、アメリカにとってのかつてのベトナムが現在ではイラクに置き換わったに過ぎないという悲しい現実を教えてくれる。

<おまけ>
 ジェームズ赴任当日の任務において、突っ込んできた車を停める際に彼が抜く拳銃。これは明らかにアメリカ軍の正式採用銃ベレッタM92であろう。機能性や価格の面で非常に優れた銃であり、『ザ・ロック』のスタンリー・グッドスピード、3までにおける『ダイ・ハード』のジョン・マクレーン、『リーサル・ウェポン』のマーティン・リッグスなど、筆者が愛して止まないアクションヒーローたちがこぞって使用する名器である。

 そしてコレが、筆者が最近手に入れたベレッタM92FSのモデルガン。



 開くとこんな感じ。



 モデルガンと侮る無かれ。細部に至るまで極めて精密に作られており、大変素晴らしい。これを機に銃器に詳しくなれば、アクション映画鑑賞がよりいっそう楽しくなるのでは、と今からワクワクである。

(鑑賞日[初]:2012.6.13)

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