[No.100] 2012(2012) <85点>





キャッチコピー:『2012年12月21日マヤの予言通り、世界は終わる ─ 。』

 津波が地表を覆うとき、地球は”愛”で包まれる。

三文あらすじ:2009年、地核の溶解を発見したインドの科学者は、地殻変動の結果、数年後に世界が滅びることを知る。この事態にトーマス・ウィルソン米大統領(ダニー・グローヴァー)は、対応策を指揮、科学顧問エイドリアン・ヘルムズリー(キウェテル・イジョフォー)に地殻変動の時期を調査させるとともに、首席補佐官カール・アンハイザー(オリヴァー・プラット)主導による史上最大のプロジェクト”チョーミン計画”を推し進める。これら政府関係者を始め、妻と離婚し長男ともそりが合わない売れない小説家ジャクソン・カーティス(ジョン・キューザック)を含めた全人類は、古代マヤ人が予言した来るべき2012年、世界の終末に立ち向かっていく・・・


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 監督は、今やディザスタームービーと言えばこの人、ローランド・エメリッヒ。『ユニバーサル・ソルジャー』も中々おもしろい映画だったが、やはり彼を一躍ビッグネームに押し上げた代表作といえば、漢の魂完全燃焼系侵略SF映画『インデペンデンス・デイ』である。

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 しかし、ノリに乗った彼の評価を今度は突如地の底にまで叩き落としたのが、巨大イグアナ摩天楼闊歩系映画『GODZILLA』。本来の雄々しき姿などその片鱗も見あたらないハリウッド版ゴジラのちょこざいな活躍に、多くのゴジラファン、とりわけ日本のゴジラフリークたちが失望した。もっとも、筆者としては、以前にも書いたようにこのハリウッド版『GODZILLA』を相当高く評価している。まぁ、筆者が元来ゴジラよりはガメラ派である、ということもあろうが、「あの“イグアナ”がゴジラには見えない」、ということと、「あの“クソ女”の傍らに人無きが如き振る舞い」を大目にみれば、同作はほぼモンスターパニック超大作の完成形と言うに差し支えない出来映えだったはずだ。

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 そんな華々しい成功と没落を経験した彼は、その後制作に携わった『パトリオット』、『スパイダー・パニック!』という何とも支離滅裂な両者を経てある種吹っ切れたのか、それとも人類の敵を“特定の生物”に設定することに懲りたのか、敵を大自然とする方向に華麗なるシフトチェンジ。『デイ・アフター・トゥモロー』が中々のヒットと高評価を得、『紀元前1万年』、そして、本作『2012』と大自然の驚異に人類が立ち向かっていく系映画、いわゆるディザスター・ムービーの監督・脚本・制作を立て続けに担当している。

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 そんな紆余曲折を経て彼が辿り着いたディザスタームービーの極地こそが、本作『2012』なんだと思う。

 本作の素晴らしいところは、まず何と言っても息つく暇もないアクションシーンのつるべ打ち。これは、マジでスゴイ。往々にして本作のように”CGの派手さで観客を呼び込むスタイル”の映画は、最も力を入れたアクションシーンが既に予告編で出尽くしてしまっている、という残念な結果に陥りがちだ。しかし、本作においては、そのような心配は皆無。予告編に表出している大スペクタクルシーンなどはほんの序の口で、ノートパソコンの小さな画面で鑑賞していても開いた口がふさがらない程。久々に映画館で鑑賞しなかったことが悔やまれる作品であり、かつ3D創生期の現代に相応しい作品であるとも言える。

2012⑨


 本作が名作たる2点目。それは、脚本の作り込み。もちろん、1点の隙もないような緻密な脚本を想像してはいけない。そんな窮屈な代物は、本作のようなSFアクション超大作には必ずしも求められてはいない。あくまでも”この手の映画にしては”きちんと出来ているという話だ。

 まず、多くの登場人物たちの様々な人生とドラマが、脅威に立ち向かう内に交錯し結束しながら大団円を迎えていく、という『インデペンデンス・デイ』的趣向。そして、脅威の前兆をしっかり描き、少しの顔見せ後怒濤のクライマックスが続く、という『GODZILLA』的構成。同作で非常に秀逸だったカーチェイスも遙かにスケールアップして組み込まれている。さらには、世界の終末という荒唐無稽な事象でありながら、SF作品としての説得力は欠かない程度の綿密なリサーチ&ライティング。これは、紛れもなく前2作のディザスタームービーで培われたものだろう。

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 これらにプラスして筆者が感銘を受けたのは、釈然としない展開へのフォローである。例えば、終盤、ジャクソンらの不法侵入過程で駆動系に異物が詰まってしまい、アークの扉が閉まらなくなるという展開。津波がアークを襲い、隔壁に閉じ込められるジャクソン一行。アーク自身もこのままでは沈没の危機。そこでエイドリアンの指示により、ジャクソンが既に水中に没した駆動系の修復に向かうことになる。これは本来ジャクソンたちが引き起こした事態であるのだから、彼が命を賭けて修復に向かうことも俯瞰で見ればもっともと言わざるを得ないだろう。とはいえ、本作はディザスタームービーであり彼はその主人公であるから、このシークエンスは中々ヒロイズムに満ちた描き方がされている。自分のせいで発生した問題なのに、まるで“自らを犠牲にして皆を救うヒーロー”のような雰囲気。なんだかマッチポンプな気がして釈然としないが、まぁ、この手の映画ではよくある話だ。

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 しかし、この点本作は若干きめ細やか。ジャクソンにすがる元妻ケイト(アマンダ・ピート)に対し、彼はちゃんと「これは、僕らが起こしたことだ。」と言ってのけるのである。こんな当たり前のことを自覚できる主人公というのも、この手の映画ではちょっとめずらしいし、この手の映画においては、これくらいのフォローで充分。ワンフレーズのフォローを入れるだけで観客の釈然としない気持ちがかなり大幅に軽減されるのに、それが出来ないハリウッド大作の何と多いことか。

2012⑫


 そんなしっかりしたストーリーの中で、筆者が最も感銘を受けたのは、何と言ってもジャズピアニスト、ハリー・ヘルムズリー(ブル・マンクマ)のドラマである。

 豪華客船のジャズ演奏者であるハリーは、世界終末の日も日本へ向かって航行中の豪華客船に乗り洋上に。相棒は、ウッドベース担当のトニー・デルガット(ジョージ・シーガル)。ハリーと息子エイドリアンは、めったに会えないものの、まめに電話する仲良し親子。一方のトニーは、息子が日本人女性と結婚したことが納得出来ず、彼と疎遠になっている。

 そんな2人がその日も演奏を終え裏で休憩していると、エイドリアンからハリーに電話が入る。エイドリアンは、本来極秘であるはずの”チョーミン計画”、すなわち、何十万もの人々を秘密裏に建造された”方舟”に乗せるという有史以来最大規模での人類救済作戦を父にだけこっそり伝えるのだ。しかし、ハリーは動じない。息子との今生の別れに涙は見せるが、「俺が乗るジェネシス号は頑丈な船だからちょっとやそっとでは沈まないぞ」と軽口を叩き、豪華客船への残留を表明。さらに、彼は次のような相棒を気遣った”漢の台詞”を付け加える。

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「それに、あのバカは1人じゃ演奏できないからな。」


 渋い!唸らせてくれるね!”熱い会話”や”男気溢れる展開”というのは、エメリッヒ作品に昔から見られた魅力ではあったが、こういう”粋な会話”というのは、『ID4』の頃にはあまり見られなかった彼の新境地なのかもしれない。

 また、個人的にうれしかったのは、本作のキャスティング。まず、これほどまでのブロックバスターで、主演ジョン・キューザックというのが、ちょっとめずらしい。

2012①


 まぁ、基本的に好き嫌いしない俳優なので、かつては『スタンド・バイ・ミー』という名作から、『コン・エアー』、『シンレッド・ライン』といったアクション大作、または、『マルコヴィッチの穴』や『アイデンティティー』、『ニューオーリンズ・トライアル』といった幅広い種類のサスペンス作品、果ては、『セレンディピティー』、『アメリカン・スウィートハート』のようなラブコメまで、その出演作は本当に多岐に渡る。しかも、その一見情けない顔つきと特徴有る声が何故かどの役柄にもそれなりにバシッとはまっているという、何とも才能と魅力に溢れた俳優で、筆者は彼が結構好きだ。

 そして、世界の終末となれば当然アメリカ大統領の出番。本作で大統領を演じるのは、何とあのダニー・グローヴァーだ。いや、むしろロジャー・マータフと言った方がいいだろうか。

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 そう、筆者が愛して止まない名作刑事アクションシリーズ『リーサル・ウェポン』でメル・ギブソン演じるマーティン・リッグスと4作に渡り名コンビぶりを披露してくれた彼である。同作では途中から参加したレオ・ゲッツに次ぐコメディ・リリーフであった彼だが、本作の大統領役がこれはこれでまたはまり役。寄る年波をも味方に付けて、かなり味のある大統領を演じきっている。

 その他、筆者の知る顔ぶれとしては、大統領の娘役で出演するタンディ・ニュートン

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 イーサン・ハント2度目の活躍『M:i-Ⅱ』において、”スパイの痴話喧嘩映画”という意味でストーリーの中心にいたあの女怪盗ナイア・ホールを演じていた彼女だ。この女優は、一見”進化したてか?!”と突っ込みたくなる程のサル顔ながら、やはりすさまじい美人である。

 最後に少し不満点を。

 まず、とにかく長い。上映時間、実に158分『ダークナイト』でも152分だったのだから、これはちょっと長すぎる。もっとも、だからといって途中があまりにも退屈だとか、ストーリーのテンポがあまりにもダレてしまっている、といったことはないのだが、まぁ、やはりエンターテイメントとしては失格の部類に入る長さではあろう。

2012⑭


 次に、ゴードン・シルバーマン(トーマス・マッカーシー)の死。これはあまりにも安易で大味だ。まるで、ヒーローとヒロインを手っ取り早くくっつけるため、その障害を適当に排除したかのような印象。彼を殺すなら、せめてケイト、ノア(リアム・ジェームズ)、リリー(モーガン・リリー)をジャクソンに託し、ヒーローさながらの自己犠牲の精神で死んでいって欲しかった。

点数:85/100点
 ありがちな”終末パニック系”映画だと侮る事なかれ。次作ではディザスターの枠組みを捨て去り、その名も『作者不詳』という歴史サスペンスを監督したローランド・エメリッヒ。そんな彼が、(もしかしたら)これが最後と魂と心血を注ぎ込んだ本作は、ディザスタームービーというジャンルにおいてトップレベルに楽しめる、彼の集大成である。

(鑑賞日[初]:2012.6.15)

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