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2012

[No.10] モンスターズ/地球外生命体(Monsters) <74点>





キャッチコピー:『It's Our Turn To Adapt.』

 それでも、地球は回っている。

三文あらすじ:2009年、NASAは太陽系内に”地球外生命体”の存在を確認、探査機がサンプルを回収するが、帰還途中メキシコ上空で大破する。直後から出現した地球外生命体の繁殖によって、その半分が”感染地域”として隔離されてしまうメキシコ。6年後、依然として軍によるモンスター(Monsters)の封じ込めが試みられているメキシコで、スクープを狙う新聞社のカメラマン、アンドリュー・コールダー(スクート・マクネイリー)は、上司から、腕に怪我を負った社長令嬢サマンサ・ワインデン(ホイットニー・エイブル)をアメリカ国境まで無事送り届けろ、との命令を受ける・・・

 
~*~*~*~

  
 イギリス発、低予算が売りのエイリアンパニック映画。2010~2011年は本当にエイリアンものが多かった。同時期に公開されたものの中では、状況設定の面で『第9地区』に最も近いといえる本作。どちらも、貧困国がエイリアンともども隔離され、エイリアン被害を押しつけられる、という状況を描いている点で共通している。

 ところで、低予算を売りにする風潮に筆者は前々から疑問を感じている。
 低予算ながら頑張って工夫して作りましたよ、なんていうのは本来客に自慢することじゃない。何億ドルつぎ込もうがつまらなければ駄作だし、本作のように1万5千ドル(監督自身が後に20万ドルはかかったとバラしたらしいが、それでもこのジャンルの映画にしては低予算だ。)しか投じなくてもおもしろければ傑作である。要は、結果こそが全て、ということだ。まぁこれも、家電や車の”エコ”と同様、製作者側が作り出したムーヴメントに受けて側が乗せられて、それが新たな宣伝材料になるというパターンの一つなんだろう。兎にも角にも、おもしろければいいのである。映画はすべからくエンターテイメントだ。

 しかし、低予算を考慮せず観たとしても、本作は良質の佳作と評すに十分な出来映えである。

 まず、メキシコに地球外生命体が繁殖する隔離地域があり、それが既に日常になっているという設定にワクワクする。そして、隔離地域を通過せざるを得ない2人の旅路をドキュメンタリータッチで追いながら、アメリカにモンスターを押しつけられ危険と隣合わせの生活を強いられながら、それでもそこで暮らしていくしかないメキシコ貧困層を描写する。アメリカ側は巨費を投じ建造した巨大な壁でモンスターの自国への進入を防ぎつつ、モンスターに対する空爆を定期的に行う。メキシコでは、空爆自体による被害者が出るとともに刺激されたモンスターによる被害も発生している。なにやら政治的なメッセージ性のようなものも読み取れそうで、低予算SFの割にはしっかりしたドラマを予感できる作りだ。

 しかし、本作は、政治的メッセージを押しつげがましく主張したりはしない。主軸はあくまでも、2人がモンスターの脅威に怯えながらも125km先のアメリカ国境を目指し、その過程で互いに引かれ合っていく、という点にあるので、政治的テーマは2次的なものに留まっている。つまり、ぼーっと観るならお洒落なSF映画でしかないが、あーやこーやと考えながら観るなら、色々と評論のしがいがある、ということだ。
 いいぞいいぞ。筆者の信条には反するが、とかく映画評論家というものは、隠れた政治的テーマを探すのが大好きだ。貧困層をないがしろにする大国アメリカ、という問題提起をこっそり行う趣向は、彼らの大好物。さらに、最後にはそのアメリカがしっぺ返しをくらう、という展開が用意されていればなおいいが、そういう点でも本作は抜かりない。ラスト、国境越えに成功した2人が見たものは、鉄壁を破られ結局モンスターの進入を許す強国アメリカの姿だ。
 某批評家は自身のホームページで、こういった本作の政治的メッセージ性を賞賛していたが、なんぼのもんじゃい。アメリカ批判だろうが、アメリカ万歳だろうが、魂を打ち震わせる映像と脚本があればいいじゃないか。『ID4』はおもしろかっただろうが。映画はすべからくエンターテイメントだ。

 なんだか“「映画評論」評論”になってしまったので、話を本作へ戻すことにする。

 さきほどもちらっと言及したが、本作の主軸は、一介のカメラマンであるコールダーと社長令嬢サマンサの恋物語である。この点は、『第9地区』のようなエイリアンものを期待して観るとびっくりしてしまうところだろう。

 コールダーは、最初は長年追っているスクープを犠牲にしてサマンサを送り届けなければならないことに不満げだが、道中を共にすることで徐々に彼女に惹かれていく。一方のサマンサも、アメリカで待つ意に沿わない婚約者よりもコールダーに惹かれていく。そして、ラスト、アメリカに侵入したモンスターの交尾(といっても卑猥なものではない。雌雄が互いの触手をソフトに絡ませる程度。)を目の当たりにした2人は、生命の神秘に魅せられ、気持ちのままに熱いキスを交わす。しかし、救出に来たアメリカ軍に無情にも引き離され保護されるのだった。

 筆者は、本作に『第9地区』のような斬新なエイリアンものを期待して観た一人だったので、この2人の恋物語には面食らったのだが、2人の恋路は実はしっかりとしたテーマを含んでいる。すなわち、一介のカメラマンと社長令嬢という身分も立場も違う2人が、反発し合いながらも互いを理解する姿は、そのままモンスターと人類(特にアメリカ)との関係にも当てはまると思われるのだ。モンスターの交尾シーンを見る2人には、今までのような彼らに対する恐怖は感じられない。モンスターたちは、突如NASAに捉えられ地球に連れてこられた“被害者”なのであってで、我々のように恋をし、子を産み、生きているだけだ。彼らと人類の間にまず必要なのは爆撃ではなくて、対話と理解であろう。そして、この関係は、今なお戦争を続ける人類同士にもいえることだ。キャッチコピーもこの点を表しているのかもしれない。

 本作は、エイリアンものという体裁をとりながら、このような普遍のテーマを描いており興味深い。互いに理解し合い恋に落ちた2人をアメリカ軍が対話無く引き裂くというラストも、上記観点から考えると随分意味深だ。真の意味での“モンスターズ”とは果たして誰なのか。現在の世界情勢を鑑みるなら、それはもちろん・・・

 おっと。政治的テーマ探しに熱中する評論家を批判しながら、筆者もついついアメリカ批判を展開しそうになってしまった。これだから理屈っぽい連中は嫌われるのである。映画はすべからくエンターテイメント?もちろんだ。

点数:74/100点
 確かに、上質のロードムービーであり、魅力的な恋愛ものであり、なおかつ、極めてお洒落なモンスターパニックものではあるが、やはり規模の小ささはいなめず、SFものとして観るなら素点はせいぜい60点がいいところ。残りの点は、全てサマンサを演じるホイットニー・エイブル嬢にバラの花束を添えて献上する。

Whitney Able


 彼女はすごくいい!筆者が愛して止まないキャメロン・ディアスの若い頃の面影がある。まだTVドラマでの出番が多く、映画におけるメジャーな出演はほぼないが、しわが目立ち始めて久しいキャメロンに変わって今後は是非ラブコメ界を席巻してもらいたいものである。『メリーに首ったけ』のリメイクは、ぜひ彼女で!

(鑑賞日[初]:2012.1.18)










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Tag:エイリアン侵略系SF バディ・ムービー ロードムービー

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