[No.128] 踊る大捜査線 THE MOVIE <100点>

踊る大捜査線



キャッチコピー:『湾岸署ラストダンス!史上最悪の3日間』

 青島刑事よ、安らかに眠れ…。

三文あらすじ:湾岸署、勝どき署両管轄の中心に位置する河川で水死体が発見され、司法解剖の結果胃から熊のぬいぐるみが検出されたため、殺人事件に発展する。一方、警視庁副総監が何者かに拉致されるという身代金目的誘拐事件が発生、時を同じくして、あろうことか湾岸署刑事課内で窃盗事件が発生する。多数の事件に翻弄されながら、サラリーマン刑事・青島俊作(織田裕二)は、湾岸署史上最悪の3日間に不眠不休で立ち向かう・・・


~*~*~*~

 
<踊る大総集編>
 本作は、大ヒットテレビシリーズ『踊る大捜査線』の劇場版第1作であるが、結局は、テレビシリーズのスケールアップした“総集編”であると思う。

 張り込みかと思いきや上司への接待であったというオープニング、湾岸署と勝どき署の縄張り争い、事件に対してやる気のない刑事達、上層部と所轄との確執、そして、青島くんが刺されるというオチ。これらは全てテレビシリーズ内で既に描かれたことであり、本作においては、それぞれがスケールアップした“映画サイズ”でお送りされているに過ぎない。

 このことは、やはり『踊る大捜査線』というコンテンツが“閉じた物語”であるからだろう。

 『踊る大捜査線』は、新しかった。悪を憎む刑事が知恵と勇気と派手なアクションで犯人を追い詰め、ヒロイックに逮捕する。そんなステレオタイプな刑事ドラマのイメージを払拭し、刑事といえども一公務員に過ぎないという新たなビジョンを提示したのが本ドラマシリーズである。しかし、ここに限界がある。次々と新たな犯人を登場させ、刑事との戦いを描けばいい従来の刑事ドラマとは違い、青島くんは、常に警察上層部と戦っていなければならない。その一方で、室井さん(柳葉敏郎)との友情と理想の共鳴というテーマも消化していかなければならず、いつまでも傲慢でエリート意識の強い上層部ばかり描いている訳にもいかない。室井さんがトップにまで上り詰め、警察の機構を一新してしまう、というところまで描くと、それはもうファンタジーであって、いくら何でも説得力を欠く。

 そんな訳で、本シリーズは、いつまで経っても(少なくとも劇場版第2作までは)同じような展開が繰り返される、ということになる。テレビシリーズの言葉を借りるなら「なんか・・・話が堂々巡りしてるような・・・」である。

 とはいえ、本作は、劇場版第1作であるから、大枠が総集編の形をとっていても何ら問題はない。いつも通りバカバカしくも愛すべき湾岸署の面々といつも通り頭の固いキャリア達、そして、いつも通りの青島くんの信念を、観客は期待しているのだから。

<踊るMY英雄伝>
 誰しもが、自分の信じる“ヒーロー”を持っていると思う。マライア・キャリーは「ヒーローはあなたの心の中にいる」と歌い、バットマンは「皆がヒーローになれる」と語った。

 筆者にとっての“ヒーロー”は、やはり青島俊作巡査部長なのである。

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 筆者が本シリーズを始めて観たのは、小学生のとき。初見にして心を奪われた筆者は、カーキ色のジャンパーに身を包み、頭の中で「Rhythm & Police」を流しながら、毎休憩時間、鬼ごっこに興じていたものである。

 “ヒーロー”の定義は様々で、筆者自身も以前、当ブログ内で少し言及した。しかし、今一度その定義付けを試みるなら、“ヒーロー”とは、“自分がやりたくても出来ないことを実現する力を持った者”と言えるのではないだろうか。心の法律にのみ従い、常に自分の信念を貫く青島くん。彼のように生きたいと願ったこともあった。しかし、彼は、ドラマの中の人間であり、実社会で信念を過剰に貫く者がどれだけ“イタイ”人間かということまでは教えてくれない。しかし、だからこそ、青島俊作巡査部長は、いつまでも筆者の“ヒーロー”なのである。青島刑事よ、永遠に。

<踊る雑感想群>
 では、ここからは、本作について筆者が感じた細かなことを熟々と書き綴っていく。

 まずは、オープニング。

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 真面目な張り込みシーンかと思いきやただの接待だったという、これぞ“ザ・踊る大捜査線”とでも言うべき秀逸なシークエンスだ。しかも、朝から眠そうな青島くん、吉田副総監の登場、ブービー賞のスモークボールなど、後の展開への伏線も多い。さらに、普段は接待になど何の興味も示さないはずの青島くんが、今回は非常に真剣に臨んでいる、その理由も秀逸。『秋の交通安全スペシャル』において査問委員会にかけられ減俸処分となった青島くんだが、文句を言わず働けば減俸期間を減らして貰える、というのがそれ。ただのギャグシーンであっても、しっかりキャラクターの本質と矛盾しないよう配慮するという、このきめ細やかさが、踊るシリーズの完成度の高さに繋がっているのだろう。

 次に、タイトルバック。

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 名曲「Rhythm & Police」に乗せ、キャラクターの“目”に焦点を当てた非常にクールな映像が展開される。もっとも、今回はいつものテーマ曲にアレンジが加えられており、それぞれのキャラクター登場に合わせて曲が切り替わる仕様。ここで、室井さんとすみれさん(深津絵里)が同じテーマ曲でひとくくりにされている、ということも、『The Last TV サラリーマン刑事と最後の難事件』が放送された今となっては少し興味深い。まぁ、本作当時に制作陣がそこまで考えていたのかはいささか疑問ではあるが(ちなみに、テレビドラマの序盤放映時には、“踊るラブコメ構想”が存在した、という事実は有名である。)。

 ちなみに、このタイトルバックでのキャラクター紹介映像は、みな時系列的に本作開始時点の直前となっている。青島くんは、接待ゴルフの準備のため車のトランクに署長らのゴルフバッグを積んでいるところ、すみれさんは、本作登場時に連行してきた犯人と格闘しているところ、そして、和久さん(いかりや長介)は、水死体現場に臨場するところ、である。

 ストーリー全体の構成に目を向けてみると、その完成度の高さに圧倒される(もちろん、シリーズファンとしての贔屓目をゴリゴリ全開に入れれば、であるが。)。3日間で起こる3つ(正確には4つ)の事件が相互に絡み合い、偶然と必然の絶妙なバランスの中、誰もが知るあの、

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「事件は会議室で起きてるんじゃない!」

「現場で起きてるんだ!!」


のクライマックスへと収束していく。絶命したと思われた青島くんが実は寝ていただけだった、というオチも決して唐突なものではなく、彼が3日間寝ずに捜査していたというフリに裏打ちされた、良い意味でベタなものに仕上がっており、大変素晴らしい。

 本作で発生する3つの事件について、その犯人のキャラクターに一言ずつ言及していくなら、まず、最も“大きな”事件である副総監誘拐事件の犯人、坂下始

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彼が“ただの子供”だった、というのが、実に『踊る』っぽくて良い。ちなみに、彼は本作開始実に2分強の時点で既に登場しており、作り込みの細かさに驚かされる。

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 さらにちなみに、彼は56分30秒付近でももう一度登場している。

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 次に、日向真奈美(小泉今日子)。劇場版3作目では、影の黒幕として登場する彼女であるが、本作におけるサイコパスぶりはかなり強烈。柳葉敏郎に室井さんのような寡黙なキャラクターを演じさせたように、この日向真奈美についても、イメージとはかけ離れた小泉今日子の起用が功を奏している。

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 ちなみに、青島くんが拘留中の彼女に犯人像の分析を依頼するシークエンスのラスト、彼女の不気味な笑い声の中で画面が団地の空撮へとディゾルブする、というシーンがある。本作単体で見るなら、逮捕されてなおその異常さに歯止めがきかない日向真奈美の不気味さを表現するに留まっているように思えるが、劇場版3作目と併せて考えるならまた違った見方も出来るだろう。彼女はこの時点において、まだ本当の意味で“逮捕されてはいなかった”のである。

 最後に、河原崎宗太(正名撲蔵)。

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 湾岸署刑事課内で起きた窃盗事件の犯人である。実は、テレビドラマシリーズ第3話「消された調書と彼女の事件」で既に登場していて、その後も『秋の交通安全スペシャル』において、制服支給の列に並ぶ青島くんの前に並んでいた。ちなみに、本作で日向真奈美逮捕に大きく貢献した彼は、彼女から拳銃を奪う際に「返せ!」と叫んでいる。彼が実はただのコスプレマニアだったということと考え併せると、なぜ日向真奈美の持つ拳銃が不発だったのか分かる、という仕掛けになっている。

 このように、極めて細やかな作り込みの中で非常に上質なコメディとアクションを展開する極上のエンターテンメントこそが本作であるが、筆者が1点気にくわないのは、和久さんと副総監の関係である。

 青島&室井さんと同様、現場と上層部で理想を共有しながら頑張る、という約束を果たした和久平八郎と吉田副総監。しかし、この設定は必要だろうか。彼らの存在によって、室井さんがたとえ副総監になっても結局青島たちの理想は実現しない、という絶望感にも似た軽い落胆の空気が漂いはしなかっただろうか。しかも、『秋の交通安全スペシャル』において、青島、室井両人から彼らの約束を聞いた和久さんは、それが自身と副総監との約束と酷似しているにも関わらず、ほとんどリアクションをとっていない。本作と直結している同テレビスペシャル内でのこの和久さんの反応は、ちょっと整合性に欠けると言わざるを得ないだろう。

 もともとエンターテイメント性重視で、時折細かな整合性は無視されがちな本シリーズとはいえ、この部分は作品全体のテーマにダイレクトに関わってくるだけに、少し気になった次第である。

点数:100/100点
 映画ブログにおいて、100点とは、そのブログの看板である。閲覧者は、書き手が満点を付けた映画次第で書き手の趣味指向から映画ファンとしての“質”までを判断する。筆者が当ブログ内でこれまでに100点を付けた映画は、『紅の豚』『パルプ・フィクション』、そして本作『踊る大捜査線 THE MOVIE』の3つ。ミーハーだと罵られるかもしれない。映画の本質を何も分かっていないと罵倒されるかもしれない。しかし、看板なんてものは、掲げたいから掲げるのだし、見せたいから見せる、そういうもんである。

(鑑賞日:2012.8.27)

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