26
2012

[No.133] デスティニー(Destiny) <70点>



キャッチコピー:unknown

 やがて全てが散りゆく”運命(さだめ)”であっても。

三文あらすじ:ある几帳面な男は、いつものように家を出るが、直後疾走してきた路線バスに轢かれてしまう。その瞬間、目覚める男。夢かと胸をなで下ろすも束の間、彼の目の前には、何と出かける準備をする先程の自分の姿があった・・・

<本編(5分26秒)>

Destiny from Bellecour 3D on Vimeo.




~*~*~*~

 
 ”運命”とは、ある結果を前提として、そこに至るまでの過程に付ける名称に過ぎない。したがって、結果が生じる前には”運命”など、どこにも存在しないのである。これまで一体何組のカップルが、その出会いにおいて”運命”を口にしたことか。そして、そのうちのほぼ全てが、別れに際して「出会わなければよかったわ!」と叫ぶのである。このことは、みなさんの経験則に照らしても明らかであろう。

 そんな”運命”をテーマにしたショーフィルムが本作。タイトルはそのまま”Destiny”である。台詞の無いアニメ作品であるが、筆者の理解は、概ね次の通りだ。

 まず、本作の主人公は、相当に几帳面。自宅にいくつもの時計を配置し、そのズレにとても敏感だ。目覚めてから家を出るまでに彼が行う一挙手一投足から、それが毎朝飽きることなく繰り返されてきた極めて正確精密なルーティンであることが覗える。

 そんな彼に、いつもとは違うアクシデントが降りかかる。懐中時計の不調である。正確に時を刻むはずの時計が止まってしまうということは、彼の日常、すなわち”運命”に何らかの歪みが生じたことを暗示する。案の定、彼は毎朝のように無事出勤することなく、バスに轢かれてその人生を終えることになる。

 この主人公像と彼が至る結末は、良質のヒューマンドラマ『主人公は僕だった』を彷彿とさせるが、本作においては、趣向が少し違い、主人公は事故直前に繰り返し目覚め、しかもオリジナルの死亡を食い止めようと奔走するそれぞれの主人公たちがそのまま蓄積されていく。このような一種の多重構造を捉え、本作を『インセプション』的と表す向きもあるようだが、それは何だか少し違うような気もする。

 さて、本作において、オリジナルの死を食い止める方法は、彼が気にしていた懐中時計の蓋を閉じてしまうことだった。懐中時計を始めとする時計は”時間”の象徴であり、決められた分量を決められた早さで時に残酷、時にドラマチックに刻んでいく”時間”は、”運命”を象徴している。つまり、毎日決まったルーティンや”時間”に対する過剰な意識を変えることで”運命”にも干渉出来る、という理屈だ。何事も正確すぎるのは良くない。

 もっとも、本作の大オチは、少しシニカル。無事に命を取り留めたと思われた主人公は、突如降り出した雨に傘を差し、そのあげく落雷を受けてしまう。やはり”運命”は変えられない。というか、より正確には、彼が死んだ以上、結果から翻って、彼は死ぬ”運命”にあったのであろう。

点数:70/100点
 5分強という短い尺ながら、内容のしっかり詰まった上質のショートフィルム。とはいえ、上で述べたことは、あくまでも筆者の独断的な解釈に過ぎない。自分の”結論”ありきで帰納的に作品を意味づけしていく。そんな”評論”もまた少し”運命”に似ている。

(鑑賞日[初]:2012.9.26)

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Tag:衝撃のラスト!

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