[No.158] ディープ・ブルー(Deep Blue Sea) <75点>

Deep Blue Sea



キャッチコピー:『BIGGER. SMARTER. FASTER. MEANER.』

 偉大なる“二番煎じ”に敬意を表して。

三文あらすじ:太平洋に浮かぶ医学研究施設“アクアティカ”。アオザメを用いてアルツハイマー病の特効薬を研究していたスーザン・マカリスター(サフロン・バロウズ)は、遂に実験を成功させる。しかし、研究のため脳を肥大化させたサメは、明確な意思を持って人間を襲い始める・・・


~*~*~*~

 
 海洋モンスターパニックの頂点に君臨し“サメ映画”を1つのジャンルにまで高めた傑作『ジョーズ』。以降、今日に至るまで星の数ほどの”二番煎じ”が制作されてきたが、そのほとんどは、半ば「『ジョーズ』には勝てないよ。」と諦めた上でのB級C級映画であった。そんな中、本作『ディープ・ブルー』は、『ジョーズ』以降”サメ映画”と真剣に向き合ったほとんど唯一の作品ではないかと思う。

 とはいえ、“サメ映画”を撮る以上、その始祖であり金字塔を無視することは出来ない。本作にも『ジョーズ』との類似点、いわば“オマージュ”がいくつか見受けられる。まず、冒頭、ヨットでいちゃいちゃする2組のカップルを襲うサメ。すんでの所でアクアティカの“サメの番人”カーター・ブレイク(トーマス・ジェーン)に捕獲されるこのサメは、イタチザメである。『ジョーズ』で中盤に捕獲されたのと同様に、イタチザメは噛ませ犬になるという伝統だ。

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 そして、このイタチザメが口に挟んでいる車のナンバープレート。何を隠そうこのプレートは、『ジョーズ』でイタチザメの胃袋の中から出てきたものと同じプレートである。

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 また、本作で使用される楽曲。これが中々に『ジョーズ』のものと似ている。本作の楽曲を手がけるトレヴァー・ラビンは、おそらく“ジョーズのテーマ”を意識して作曲したのであろう。ちなみに、本作で使用される他のヒロイックなテーマは、今でもたまにテレビで使われているので、聞き覚えのある人も多いと思う。

 他にも、サメの殺し方に『ジョーズ』へのオマージュを見いだすことが出来る。まず、1匹目のサメは、ガスに引火させての爆殺『ジョーズ』において、ブロディ署長がサメの口にタンクを噛ませ、銃で撃って爆発させた方法と似ている。そして、2匹目は、電線を口に突っ込んでの感電。これは、『ジョーズ2』において、同じくブロディ署長が船の吊り上げ機械を用いて海底の高圧電線を引き上げ、サメに噛ませて感電死させたことへのオマージュであろう。では、3匹目は?ここで“新ジョーズ”のオリジナリティを垣間見ることが出来るのか、と思いきや、これまた爆殺である。むしろ、1匹目のときより3匹目の方が、より『ジョーズ』のクライマックスに近いと言える。

 そして、最後に、生き残るのが男性2人という点。これも一応『ジョーズ』において、ブロディとフーパーの男性2名が生き残ったことと類似していると言えなくもない。

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 さて、以上のように、サメ映画の始祖『ジョーズ』にしっかりと敬意を表しつつも、本作は、それ自体でちゃんとしっかりしたモンスター・パニック作品に仕上がっている。

 まず、設定が良い。舞台を洋上のアクアティカに限定し、嵐と事故で孤立させる。週末ということでスタッフのほとんどが帰宅しているため、登場するのは必要最低限のメンバーのみ。ダンジョン的なアクアティカでの水とサメ両方の恐怖。遺伝子操作によって、あり得ないほどに巨大化し、ただの“殺人マシーン”ではなく“考える殺人マシーン”と化したアオザメの脅威。今となってはややチープに感じられるところがないではないが、それでも『ジョーズ』との真っ向勝負を避け、サメの巨大さよりも賢さに焦点を当てたのは正解だろうし、何より極めてワクワクする設定だ。

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 また、アニマトロニクスとCGによるサメ描写も成功の部類に含んでよい出来。もちろん、時代が時代(1999年)なので、今観るとCGにややお粗末な部分が見受けられるのだが、CGならではのサメのスピード感は相当なもの。それに、アニマトロニクスは、宇宙航空技術を用いているというだけあって、大変素晴らしい。

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 さらに、当ブログ的に大注目なのは、アクアティカに出資するキマイラ社の社長ラッセル・フランクリンを演じるサミュエル・L・ジャクソンである。今回は社長役ということで、彼の持ち味であるマシンガントークは少し影を潜めているものの、やはりその存在感は抜群。そして、その存在感とネームバリューが、彼が早々に食べられてしまうことへの衝撃をより深くすることに成功している。上手い起用である。

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 しかしながら、本作は、中盤の展開が退屈な作品でもある。

 オープニングから研究チームのメンバー、ジム・ウィットロック(ステラン・スカルスガルド)が腕を食い千切られるシーン、さらに救出ヘリの事故によってアクアティカのシステムがダウンしてしまうまでの展開は、テンポもよく素晴らしい。ウィンチが壊れているのは、お約束であるから、あまり目くじらを立ててはいけない。

 問題は、それ以降である。どこに行っても大量の水が押し寄せ、圧迫感と閉塞感がハンパではない。しかも、狭い通路を横に行ったり縦に行ったり、扉を開ける度に水、水、水の繰り返しでだんだん飽きてくる。まるで潜水艦映画や『タイタニック』のような沈没船映画を観ている感じだ。余談であるが、本作の撮影は『タイタニック』でも用いられた世界一広いプールで行われたらしい。

 そして、決定的なのは、テンポの悪さ。画面にマンネリ感を抱く最大の原因はここにあり、その責任は、おそらく監督であるレニー・ハーリンにあるはずだ。彼の出世作である『ダイ・ハード2』は、筆者にとってラストで必ず泣いてしまうアクション映画の傑作であるし、代表作の『クリフハンガー』もまさに手に汗握るおもしろさがあった。しかし、本作以降、特に『ドリブン』が滅多打ちの酷評を受け、その後もあんまり鳴かず飛ばずで今日に至る監督。最新作『5デイズ』は、筆者もまだ観ていないのだが、ほとんど評判を聞かないところをみると名作ではないようだ。ちなみに、同氏いわく、縦に長いシャフト内でカーターがハシゴに脚を掛け宙づりでジャニス・ビギンズ(ジャン)(ジャクリーン・マッケンジー)を助けようとするシーンは、『クリフハンガー』へのオマージュらしい。彼はこの助け方について「70%助からない」と述べているらしいが、何を以て70%なのか、ちんぷんかんぷんである。

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 それから、もう1点気になるのは、なぜか省略された邦題。本作の原題は“ディープ・ブルー・シー(Deep Blue Sea)”という別に難解でもなく、長くもなく、イメージし辛くもないタイトルなのだから、そのままでいけばよかったのに。誰にとっての国が無いのかが分からなくなってしまった『ノーカントリー』ほどではないにしろ、これもまた日本側の謎戦略の1つである。

 さらにもう1点。果たしてスーザンを殺す必要はあったのか、という問題がある。

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 本作も以前紹介した『ミミック』同様、主人公がモンスターを創造したパターンの作品。もちろん、条約を破ってまで遺伝子操作を行ったスーザンは、『ミミック』のスーザン(奇しくも同名!)よりも“悪い”と言えるだろう。とはいえ、本作には、密輸の前科を持つカーターというキャラクターもおり、こちらの“悪さ”もことごとく強調されている。果たして、カーターが助かりスーザンが死亡したその決定的な違いはどこにあったのか。

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 皆を救うための自己犠牲の精神という点では、スーザンだって最後に見せている訳だし、あくまでも実験データにこだわっていたことにしても、彼女の言うとおり、データが無ければ皆は犬死にである。本作は、愛嬌と勇気あるコック、シャーマン・ダドリー(プリーチャー)(LL・クール・J)の存在に象徴されるように、“神”にも焦点を当てた作品。その対比として、サメを“悪魔”と例え、“罪人”を登場人物の中に配置していると思われる。そうであれば、やはりきちんと贖罪した者には救済を与えるべきだった。筆者は、正直、最後の最後で主人公を殺し、単に観客の度肝を抜きたかっただけではないかと睨んでいる。ただ、もしかしたら、聖書について筆者が無知なだけかもしれない。

 最後に、個人的な罪の告白を少し。筆者は本作をその公開時、友人2人と映画館に観に行った口である。その頃から映画好きであった訳だが、しかし、中学生の若さ未熟さから、鑑賞時もことあるごとに友人とペチャクチャ喋る始末。あのとき同じ空間で鑑賞していた他のお客さんには、今更ながら本当に申し訳なかったと思っている。ごめんなさい。

点数:75/100点
 正直、大味なところも多い作品ではあるが、洋上の文字通り“孤島”となった研究所内で繰り広げられる“かしこザメ”と“人間”の戦いは、中々のスリルと見応え。モンスター・パニックの中ではまずまずの佳作であり、サメ映画に限って言うなら相当上位の良作と言っていい作品である。

(鑑賞日:2012.10.11)

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