24
2012

[No.16] ミッション: 8ミニッツ(Source Code) <78点>

CATEGORYサスペンス
Source Code



キャッチコピー: 『[警告] このラスト、映画通ほどダマされる』

 不可能ではないが、限りなく残酷なミッション。

三文あらすじ:アフガンで戦闘ヘリのパイロットをしていたはずのコルター・スティーヴンス陸軍大尉(ジェイク・ギレンホール)は、シカゴ行きの列車内で目覚める。突然の事態に戸惑うコルターだが、死者の死ぬ直前8分間の意識に入り込むことができる“ソースコード(Source Code)”というプログラムを利用し列車爆破テロの犯人を暴く任務として、ショーンという別人に成り代わっていたことを徐々に思い出す。犯人を特定するため、そしてショーンの知人女性クリスティーナ・ウォーレン(ミシェル・モナハン)を救うため、コルターは8分間の潜入を繰り返すが、その中で”ソースコード”の謎が明らかになっていく・・・

※本作もあまり詳細を知らずに鑑賞した方がいい映画だ。そこで、以下、ネタバレあり。
 
~*~*~*~

  
 始めに言っておくが、本作は大変素晴らしいSFアクションスリラーだ。

 突然列車内で目覚める主人公。鏡を見ると別人になっている。なにがなんだか分からない。そうこうしているうちに列車が爆発し現実世界に引き戻される。ぶしつけに爆破犯を捜すのがお前の任務だと言われ、ソースコードの世界へ潜入させられるうちに、主人公が何をさせられているのかは観客にも次第に明らかになってくる。しかし、それでも現実世界の主人公はドコに閉じ込められているのか、そしてモニターの向こうのオペレーターたちの態度がどこか不自然なのはなぜか等の疑問は解消されず、物語にぐいぐい引き込まれる。

 なにより上手いのは、犯人が判明した後の展開だろう。ストーリーの6~7割ぐらいで既に犯人が判明し、現実世界で拘束される。本来それを目的にしてきた訳だからそこでこの話も終わりかと思うのだが、むしろここからがクライマックスで、サスペンス映画にしては感動的な展開が用意されている。音楽もいい。脚本も非常に良くできているし、演出のテンポもスピーディだ。

 しかし、一点苦言を呈したいのは、話の落としどころはアレでよかったのか、という点だ。

 本作でポイントとなる設定の一つは、主人公コルターが既に死んでいるということ。正確には脳の一部が生きていて、その部分を使ってソースコードにリンクさせられている。
 そして、もう一つは、ソースコードというシステムの特性だ。ソースコードとは、死者の死ぬ直前の8分間その者の中に入って自由に行動できるものだ、という説明がなされる。こう聞くと一見タイムスリップ装置のようだが、実はこのシステムは異なる時間軸に潜入するものなので、そこで誰かを救おうが現実世界では死んだまま。コルターはクリスティーナを爆発から救ったと主張するが、現実世界の彼女はやはり今朝の爆発で死んでいると告げられる。つまり、コルターがソースコードを使った瞬間から世界が分岐し、8分間のパラレルワールドが発生するという訳だ。

 しかし、コルターと観客は途中でおかしいと気付く。犯人を追い詰めるもコルターがクリスティーナとともに撃ち殺される回の潜入時には、8分を越えても現実世界に戻らなかった。その前までは、潜入から8分で爆発に巻き込まれたり、列車に轢かれたりすることで、コルター(体はショーン)が死亡し、現実世界に戻っていたから、てっきりパラレルワールドは8分間しかないと思っていたが、実はソースコードとは使用の度にパラレルワールドを丸々一個発生させる、という性質を持っていたのだ。
 このような仮説の下、コルターは現実世界での犯人逮捕後、再度の潜入を進言する。オペレーターのグッドウィン(ヴェラ・ファーミガ)は、そんなことをしても無駄だと忠告する。パラレルワールド内の出来事は現実世界に干渉しない。クリスティーナは助からない、と。しかしコルターは、グッドウィンは間違っていると言い、クリスティーナを救うため最後の潜入を試みる。この8分が終わったら自分の生命維持装置を切ってくれ、とグッドウィンに言い残して。一人の女性を救うため身体に負担をかけながら何度も潜入を繰り返す。まるで『バタフライ・エフェクト』のような健気な話だ。あの映画も素晴らしかった。グッドウィンも、コルターが半死半生のまま永遠にソースコードの一部としてこき使われていくのは忍びないと考え、彼の提案を了承し8分間の世界へ転送する。

 たとえパラレルワールドであってもクリスティーナが幸せに暮らす世界を作りたい。感動的だ。起爆解除のため列車の座席を立つ際、クリスティーナに「世界を救おう。」と言い残すのもカッコイイ。
 そして、コルターの仮説通り、現実世界の生命維持装置を切ったことで、コルターの意識はパラレルワールドに定着し、彼はそこでクリスティーナとともに生き続けることができることになった。めでたしめでたし。

 いや、ちょっと待て。これは、悪魔の行いではないのか。

 爆破犯特定のため、列車が爆発するまでの8分間のみ既に死んだ者に乗り移って捜査するのであればいいだろう。どうせ乗っ取られるその人にとっては8分間だけの世界だ。しかし、爆破が起こらないのなら話は違う。ソースコードによって発生したパラレルワールド内の人々は、パラレルワールドだとしてもその中でちゃんと生きている。むしろ、向こうからみればこちらの“現実世界”こそが“パラレルワールド”なのであって、それぞれの世界に優劣はないはずだ。だったら、ショーンがかわいそうではないか。
 彼は、歴史の教師をしている。黒髪短髪、清潔な服装。おそらく真面目にやってきたいい先生なのだろう。しかもクリスティーナのような美人に好意を持たれている。いい人生だなぁ。それをコルターに乗っ取られるのである。コルターからしたら、自分が救わなければ彼の世界は無かったのだから的な感覚があるのも分かるが、”列車テロが起こらなかった世界”を結果から見れば、ショーンに対する人格の乗っ取りが秘密裏に行われただけだ。そりゃコルターはいいだろう。現実世界での自分は死を待つ植物人間だが、パラレルワールドではショーンがコツコツ築きあげた地位も女性関係も一挙に手に入るのだから。皮肉にもソースコードを非人道的なシステムだと感じていたコルターやグッドウィンがソースコードを使用して列車爆破を止めたせいで、このシステムは極めて非人道的な役割を果たしたと言わざるを得ない。
 要するにこの話は、『バタフライ・エフェクト』のふりをした『マルコヴィッチの穴』なのである。クリスティーナと一緒にミレニアム・パークを歩きクラウド・ゲートを見たコルターは彼女に問う。「運命を信じるかい?」やかましい!お前は善良なショーンの運命をもてあそんだくせに!

 ショーンがか可哀想というだけでなく、コルターの今後もすごく不安だ。
 彼はショーンとして生きていかなければならないのだが、果たしてついこの間までアフガンで戦闘ヘリのパイロットをしていた軍人が普通の教師をこの先一生演じ続けることなどできるのだろうか。歴史を教えられるのか、両親などの親族にバレはしないか、クリスティーナと結ばれたとして一生ウソをつき通せるのか、彼女が愛しているのは実質的にはお前と言えても形式的にはショーンなんだぞ、その齟齬に耐えていけるのか。などなど気がかりは尽きることがない。

 とにかく、コルターの健闘と、他のパラレルワールドにも存在するであろう別のショーンの幸せをせめて祈るばかりである。

点数78/100点
 本作は、サスペンス映画として申し分なく楽しめる佳作だ。SF映画としてもソースコードのアイデアは斬新で、非常におもしろいものである。しかし、これで本作に高得点をつけ過ぎてしまうと、筆者の住む平行世界のショーンに顔向けができない。素晴らしい脚本だっただけに、この点のフォローもできたのではないかと悔やまれる。

(鑑賞日[初]:2012.1.23)










ミッション:8ミニッツ [DVD]

新品価格
¥1,000から
(2013/3/23 23:59時点)


ミッション:8ミニッツ [Blu-ray]

新品価格
¥1,487から
(2013/3/24 00:00時点)


光食品 職人の夢 こんなソースが造りたかった 有機中濃ソース 200ml

新品価格
¥500から
(2013/3/24 00:01時点)


乗っ取り

新品価格
¥1,050から
(2013/6/24 04:10時点)



関連記事
スポンサーサイト

Tag:衝撃のラスト! ヘンテコ邦題

5 Comments

-  

4デイズ(UNTHINKABLE)もこれもみたい。

2012/01/24 (Tue) 23:27 | EDIT | REPLY |   

やっと見たよ  

世界の分岐点という意味でのパラレルワールドじゃなくて、少佐的な、現実世界でのネットの海に作られたパラレルワールド的なものなのかなと思ったよ。
量子力学の、複雑な計算があれば、、人の意識(認識しうるすべての世界)と同レベルの、世界が作れる。
このことは、人の意識と、人の作ったプログラム=ソースコードの境界があいまいになることを示唆しているのかなーと。
もしかしたらこの世界は、コブラの冒頭やマトリックスの世界のような、ソースコードなのかもね、みたいな。
そしたら、ショーンに顔向けできるね、死んじゃったけど。

2012/02/25 (Sat) 21:02 | EDIT | REPLY |   

Mr.Alan Smithee  

Re:

 そうかぁ、コルターが情報生命体としてプログラムの中で生きていくっていうサイバーな話かぁv-21ネットは広大やな・・・

 でも、ショーンとクリスティーナの”未完成ラブロマンスの真相”も観たかったなぁ。

2012/02/26 (Sun) 04:11 | EDIT | REPLY |   

かずみ  

納得

映画を見てもよく分からなかったのですが、記事を見てようやくストーリーを理解しました。ありがとうございました。
マトリックスもそうですが、最近の映画は難しいですね。

2012/05/22 (Tue) 22:47 | EDIT | REPLY |   

Mr.Alan Smithee  

Re: 納得

確かに、ネットでの検証を見越した上で”難解”をウリにする映画が近年増えている気がします。
まぁ、あらゆるジャンルは”オタク”に支えられるものであり、かく言う筆者も映画に関してはいささかオタクなので、この傾向はキライではないです。
マルホランド・ドライブほどになると少し行き過ぎな気もしますが。

2012/05/24 (Thu) 21:19 | EDIT | REPLY |   

Leave a comment