5 Comments
Source Code



キャッチコピー
・英語版:Make every second count
・日本語版:[警告] このラスト、映画通ほどダマされる

 不可能ではないが、限りなく残酷なミッション。

三文あらすじ:アフガンで戦闘ヘリのパイロットをしていたはずのコルター・スティーヴンス陸軍大尉(ジェイク・ギレンホール)は、シカゴ行きの列車内で目覚める。突然の事態に戸惑うコルターだったが、死者の死ぬ直前8分間の意識に入り込むことができる“ソースコード(Source Code)”というプログラムを利用し列車爆破テロの犯人を暴く任務として、ショーンという別人に成り代わっていたことを徐々に思い出す。犯人を特定するため、そしてショーンの知人女性クリスティーナ・ウォーレン(ミシェル・モナハン)を救うため、8分間の潜入を繰り返すコルターは、やがて”ソースコード”の驚くべき真実に直面することに・・・

※以下、ネタバレあり。

 
~*~*~*~

  
 始めに断っておくが、本作は大変素晴らしいSFアクションスリラーである。突然列車内で目覚める主人公。鏡を見ると別人になっている。なにがなんだか分からない。そうこうしているうちに列車が爆発し、"現実世界"に引き戻される。ぶしつけに爆破犯を捜すのがお前の任務だと告げられ、"ソースコード"の世界へ潜入を繰り返す主人公。おぼろ気な事態の概要は次第に観客にも明らかになってはいくものの、それでも現実世界の主人公はドコに閉じ込められているのか、モニターの向こうのオペレーターたちの態度がどこか不自然なのはなぜか等の疑問は解消されず、物語にぐいぐい引き込まれる。

sourcecode1.jpg


 なにより上手いのは、犯人が判明した後の展開だろう。本作では、ストーリーの6~7割ぐらいで既に犯人が判明し、現実世界で身柄を拘束される。本来それを目的にしてきた訳だからそこでこの話も終わりかと思うのだが、むしろここからが本作のクライマックス。サスペンス映画にしては珍しく、感動的な展開が用意されている。音楽もいい。脚本も非常に良くできているし、演出のテンポもスピーディだ。

sourcecode2.jpg


 しかし、一点苦言を呈したいのは、話の落としどころはアレでよかったのか、という点である。本作でポイントとなる設定の一つは、主人公コルターが既に死んでいるということ。正確には脳の一部だけが生きていて、その部分を使ってソースコードにリンクさせられている。そして、もう一つは、ソースコードというシステムの特性だ。ソースコードとは、死者の死ぬ直前の8分間、その者の中に入って自由に行動できる、というシステム。こう聞くと一見タイムスリップ装置のようだが、実はこのシステムは、潜入者が元いたのとは異なる時間軸に潜入するものなので、そこで誰かを救おうが現実世界では死んだまま。コルターはクリスティーナを爆発から救ったと主張するが、現実世界の彼女はやはり今朝の爆発で死んでいると告げられる。つまり、コルターがソースコードを使った瞬間から世界が分岐し、8分間のパラレルワールドが発生するという訳だ。

sourcecode3.jpg


 しかし、コルターと観客は途中でおかしいと気付く。犯人を追い詰めるもコルターがクリスティーナ諸とも撃ち殺された回の潜入時には、8分を越えても現実世界に戻らなかった。その前までの潜入ではちょうど8分で爆発に巻き込まれたり、列車に轢かれたりすることで、コルター(体はショーン)が死亡し現実世界に戻っていたから、てっきりパラレルワールドは8分間しかないと思っていたが、それはたまたまだったのである。実は、ソースコードとは、使用の度にパラレルワールドを丸々一個発生させる、という性質を持ったシステムだったというわけだ。

sourcecode4.jpg


 このような仮説の下、コルターは現実世界での犯人逮捕後、再度の潜入を進言する。オペレーターのグッドウィン(ヴェラ・ファーミガ)は、そんなことをしても無駄だとコルターに忠告する。パラレルワールド内の出来事は現実世界に干渉しない。クリスティーナは助からない、と。しかしコルターは、「君は間違っている。そうじゃないんだ。」と何やら思惑ありげな顔で、最後の潜入を試みる。この8分が終わったら自分の生命維持装置を切ってくれ、とグッドウィンに言い残して。一人の女性を救うため身体に負担をかけながら何度も潜入を繰り返すなんて、まるで『バタフライ・エフェクト』のような健気な話だ。グッドウィンも、コルターが半死半生のまま永遠にソースコードの一部としてこき使われていくのは忍びないと考え、彼の提案を了承し、8分間の世界へ転送する。

sourcecode5.jpg


 例え、パラレルワールドであったとしても、クリスティーナが幸せに暮らす世界を作りたい。なんという"男気"だろう。起爆解除のため列車の座席を立つ際、クリスティーナに「世界を救おう。」と言い残すのもカッコイイ。そして、コルターの仮説通り、現実世界の生命維持装置を切ったことで、コルターの意識はパラレルワールドに定着し、彼はそこでクリスティーナとともに生き続けることができることになった。めでたしめでたし。

sourcecode6.jpg


 いや…いやいや、ちょっと待て。よくよく考えれば、これは、悪魔の行いではないのか。爆破犯特定のため、列車が爆発するまでの8分間のみ既に死んだ者に乗り移って捜査するのであればいいだろう。どうせ乗っ取られるその人にとっては、8分間だけの世界だ。しかし、爆破が起こらないのなら話は違う。ソースコードによって発生したパラレルワールド内の人々は、パラレルワールドだとしてもその中でちゃんと生きている。むしろ、向こうからみればこちらの“現実世界”こそが“パラレルワールド”なのであって、それぞれの世界に優劣はないはずだ。だったら、ショーンがかわいそうじゃないか

sourcecode7.jpg


 彼は、歴史の教師をしている。黒髪短髪、清潔な服装。おそらく真面目にやってきた良い先生なのだろう。しかも、クリスティーナのような美人に好意を持たれている。いい人生だなぁ。それをコルターに奪われるのである。コルターからしたら、自分が救わなければ彼の世界は無かったのだから的な感覚があるのかもしれないが、”列車テロが失敗した世界”を結果から見れば、ショーンに対する人格の乗っ取りが秘密裏に行われただけだ。

sourcecode8.jpg


 そりゃコルターはいいだろう。現実世界での自分は死を待つ植物人間だが、パラレルワールドではショーンがコツコツ築きあげた地位も女性関係も一挙に手に入るのだから。皮肉にも、ソースコードを"非人道的なシステムだ"と感じていたコルターやグッドウィン自身の手によって、その非人道性はより高みのレベルに達したと言わざるを得ない。要するにこの話は、『バタフライ・エフェクト』のふりをした『マルコヴィッチの穴』なのである。クリスティーナと一緒にミレニアム・パークを歩き、クラウド・ゲートを見たコルターは「運命を信じるかい?」なんていけしゃあしゃあと彼女に問いかける。やかましい!お前は善良なショーンの運命をもてあそんだくせに!

sourcecode9.jpg


 また、ショーンが可哀想というだけでなく、コルターの今後もすごく不安だ。彼はショーンとして生きていかなければならないのだが、果たしてついこの間までアフガンで戦闘ヘリのパイロットをしていた軍人が普通の教師を演じ続けられるものなのか、歴史を教えられるのか、両親などの親族にバレはしないか、クリスティーナと結ばれたとして一生ウソをつき通せるのか、彼女が愛しているのは実質的にはお前と言えても形式的にはショーンなんだぞ、その齟齬に耐えていけるのか。などなど気がかりは尽きることがない。

sourcecode10.jpg


 とにかく、コルターの健闘と、他のパラレルワールドにも存在するであろう別のショーンの幸せをせめて祈るばかりである。

点数78/100点
 本作は、サスペンス映画として申し分なく楽しめる佳作だ。SF映画としてもソースコードのアイデアは斬新で、非常におもしろいものである。しかし、これで本作に高得点をつけ過ぎてしまうと、筆者の住む平行世界のショーンに顔向けができない。素晴らしい脚本だっただけに、この点のフォローもできたのではないかと悔やまれる。

(鑑賞日[初]:2012.1.23)

ミッション:8ミニッツ [DVD]

新品価格
¥1,000から
(2013/3/23 23:59時点)


ミッション:8ミニッツ [Blu-ray]

新品価格
¥1,487から
(2013/3/24 00:00時点)


光食品 職人の夢 こんなソースが造りたかった 有機中濃ソース 200ml

新品価格
¥500から
(2013/3/24 00:01時点)


乗っ取り

新品価格
¥1,050から
(2013/6/24 04:10時点)


関連記事
スポンサーサイト
Mr.Alan Smithee
Posted byMr.Alan Smithee

Comments 5

There are no comments yet.
-  

4デイズ(UNTHINKABLE)もこれもみたい。

2012/01/24 (Tue) 23:27 | EDIT | REPLY |   
やっと見たよ  

世界の分岐点という意味でのパラレルワールドじゃなくて、少佐的な、現実世界でのネットの海に作られたパラレルワールド的なものなのかなと思ったよ。
量子力学の、複雑な計算があれば、、人の意識(認識しうるすべての世界)と同レベルの、世界が作れる。
このことは、人の意識と、人の作ったプログラム=ソースコードの境界があいまいになることを示唆しているのかなーと。
もしかしたらこの世界は、コブラの冒頭やマトリックスの世界のような、ソースコードなのかもね、みたいな。
そしたら、ショーンに顔向けできるね、死んじゃったけど。

2012/02/25 (Sat) 21:02 | EDIT | REPLY |   
Mr.Alan Smithee  
Re:

 そうかぁ、コルターが情報生命体としてプログラムの中で生きていくっていうサイバーな話かぁv-21ネットは広大やな・・・

 でも、ショーンとクリスティーナの”未完成ラブロマンスの真相”も観たかったなぁ。

2012/02/26 (Sun) 04:11 | EDIT | REPLY |   
かずみ  
納得

映画を見てもよく分からなかったのですが、記事を見てようやくストーリーを理解しました。ありがとうございました。
マトリックスもそうですが、最近の映画は難しいですね。

2012/05/22 (Tue) 22:47 | EDIT | REPLY |   
Mr.Alan Smithee  
Re: 納得

確かに、ネットでの検証を見越した上で”難解”をウリにする映画が近年増えている気がします。
まぁ、あらゆるジャンルは”オタク”に支えられるものであり、かく言う筆者も映画に関してはいささかオタクなので、この傾向はキライではないです。
マルホランド・ドライブほどになると少し行き過ぎな気もしますが。

2012/05/24 (Thu) 21:19 | EDIT | REPLY |   

Leave a reply