[No.163] モンスター・イン・ザ・クローゼット/暗闇の悪魔(Monster In The Closet) <85点>

Monster In The Clozet



キャッチコピー:『It's Out! It's Out! It's Out!』

 クローゼットの中にB級映画の真髄を見た!

三文あらすじ:ドジな新聞記者リチャード・クラーク(ドナルド・グラント)は、念願叶って謎の連続殺人事件を追うことになる。次々と被害者が出る中、クローゼットに潜む怪物(Monster In The Closet)が犯人と判明。クラークは、大学教授ダイアン(デニス・デュバリー)の助けを借り、モンスターを倒すべく奔走するのだが・・・


~*~*~*~

 
 まず、ポスターと予告編について。ポスターでは、クローゼットから伸びるモンスターの手がブラジャーを引っかけているが、本作にお色気シーンは皆無と言って良い。愛すべき馬鹿デザインである。また、予告編に関しても全編を通して馬鹿丸出し。特に、“核花瓶”も効かない、というくだりは素晴らしく馬鹿。馬鹿で素晴らしいとも言える。

 さて、本作を制作したのは、かの有名なトロマ社。“悪魔の毒々”シリーズでおなじみ、グロくて悪趣味な映画ばかり作っている会社である。しかし、だからといって、本作を安易に切り捨ててしまうのは早急に過ぎる。筆者はここに本作が、真に素晴らしい傑作B級モンスター・パニック作品であると断言する。

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 本作は、冒頭から魅せてくれる。詳細不明のままクローゼットに引き込まれ何やら惨殺されているらしき被害者の描写が3回繰り返される。しかも、そのどれもが全く同じアングル。そして、タイトル登場。完全に1回目で出していいタイミング。これは逆に斬新と言わざるを得ない。

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 3回繰り返すという趣向は、この後も登場する。ある夫婦の妻がシャワーを浴びているとき、緊迫したBGMの高まりと共にシャワーカーテンへと何者かの影が近づき、シャッと勢いよく開け放たれる。と、そこには「ただいま、ハニー。」と言う旦那の姿が。これ自体はよくある演出。旦那が去り、再びシャワーを浴びる妻、再び高鳴るBGMと近づく影。シャッとカーテンが開いて…「ハニー、買い物に行くけどいる物はあるかい?」 いわゆる“天丼”である。再び去る旦那。三度シャワーを浴び始める妻。三度目の正直とばかりに高鳴るBGM。今度こそはと近づく影、そして・・・

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「ハニー、車のキーはどこかな?」


 やられた!!まともな映画製作者なら普通しないであろう3回目の“天丼”。この斬新な演出に、筆者は痛く面くらい、そして大爆笑した。ちなみに、その後、クローゼットに車のキーを取りに行った旦那が、モンスターの餌食となったことは言うまでもない。

 また、このシャワーシーン、おそらくは『サイコ』へのオマージュと思われる。その他にも、本作には映画愛に満ちたオマージュが何カ所か見受けられ、映画ファンをニヤッとさせる。真のB級映画とは、そういうものである。

 例えば、主人公リチャード・クラークは、冴えない7:3分けの新聞記者で普段は黒縁メガネを着用。この外見とキャラ、そう、クラーク・ケントである。

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 似ているのは冴えないキャラと外見だけではない。彼がメガネを取るとそれまで凜とした態度だったダイアンがうっとりと彼を凝視する。ちなみに、このネタも作中2回3回と繰り返される至高のギャグ。また、彼が意地悪な敏腕記者“スクープ”を殴ったときも、勢いでメガネが外れた状態に。さらには、あろうことか、モンスターに追い詰められて絶体絶命!というシーンで彼のメガネが外れ、モンスターがダイアン同様、うっとりと恋に落ちてしまうという展開まであるのだ。これは“メガネ=変装を解いてスーパーマンに変身する”というクラーク・ケントをモチーフにした、中々に素晴らしい『スーパーマン』のオマージュと言えよう。

 また、ペニーワース(ヘンリー・ギブソン)という風変わりな老博士がモンスターと交信を試みるのだが、このときの方法が鉄筋で音階を刻むというもの。これなんかは、あからさまに『未知との遭遇』である。しかも、モンスターと心通わすために鉄筋を叩きながら一行は町を練り歩き、ついに姿を現したモンスターに対して、軍を制止してまで近づいた博士が、一同の“わかり合えたんだねムード”の中瞬殺される、という展開は、ベタだがまさかやるとは思わなかったバカバカしく愛おしい趣向である。

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 さらに、先程少し述べた、モンスターがクラークに恋するという展開。モンスターは気絶したクラークを連れ去り、終始お姫様だっこしたまま町を徘徊する。なぜなら、その間にダイアンが、“世界中のクローゼットを破壊してモンスターの回復法を断つ”という最高に摩訶不思議で抱きしめたくなるほどバカバカしい解決法を施行したからだ。

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 徐々に弱り行くモンスター。彼は、サンフランシスコのとあるビルを目指す。このビル、超高層で先がとんがったタワーのような作り。おそらくサンフランシスコのランドマーク的有名タワーなのだろう。まるでニューヨークのエンパイア・ステート・ビルディングのように・・・。そう、本稿で特筆しておきたい3つ目のオマージュは、最近筆者もリメイク版を鑑賞した『キング・コング』である。世界最後のクローゼットが残るそのビルに辿り着いたモンスター。だが、クローゼットは狭く、クラークを抱えたままでは入ることが出来ない。しばしの逡巡の後、モンスターは、命続く限り愛する彼と過ごすことを選ぶのである・・・。

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 この悲恋、まさにキング・コング!モンスターが絶命し、駆け寄る報道陣。事の成り行きを聞き「クローゼットがモンスターを倒したのですね?」と言う記者に対して、メインキャラの神父がこう呟く。「いや、美男が野獣を殺したのだ。」これはまんま『キング・コング』。オリジナルでは野次馬が発言し、ピーター・ジャクソン版ではデナムが呟いた映画史に残る名言を、日本語版字幕では本作の内容に即して“美男”ともじっているのだ。ちなみに、本作でも原語では「It was beauty that killed the beast.」と言っており、『キング・コング』のセリフと全く同じ。思わず手を叩いて絶賛したくなる最高にバカバカしい大団円である。

 その他にも、大きく開いた口の中から第2の口が飛び出すというモンスター造形。これなんかは、おそらく最凶のモンスター・パニック作品『エイリアン』へのオマージュだろう。このモンスター造形が、チープこの上ない。しかも“クローゼットの中のモンスター”と銘打っておきながら、結構序盤で屋外へ出てくる

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 なんて愛くるしいんだ!着ぐるみ丸出しの動き、意外とつぶらな瞳。先程述べた純情な部分も含めて、出来れば我が家のクローゼットで飼いたいくらいだ。しかしそれでいて、重火器の類が一切無効、挙げ句の果てには、核兵器すら効かないというエイリアン以上の完全生物。そして、この核攻撃に関しては、将軍の口から「核も試したがダメだった」と発言されるだけで、一体どこで試したのか全く分からない(閉鎖された町はそのまま残っている)というところがまたバカバカしい。

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 しかしながら、本作は、ただバカバカしいだけの作品ではない。多彩なカメラワーク、ステキな音楽、きちんと回収される伏線、飽きさせない演出の数々と、決して素人監督の作ではない、れっきとした“映画”であることが覗える。真のB級映画とは、お金はなくとも映画への愛と才能に溢れた監督が撮った、そう、ちょうど本作のような作品のことを言うのである。

点数:85/100点
 おもしろかった!この一言に尽きる。でもバカバカしかった!これは、本作に対するおそらく最大の賛辞である。とはいえ、大手を振って知人に勧められる作品では決してないから、あなたが仮に筆者と同じく本作を傑作だと確信したとしても、その気持ちはこっそりとクローゼットなどに隠しておくのがいいだろう。

(鑑賞日[初]:2012.10.19)

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