30
2012

[No.164] ザ・グリード(Deep Rising) <90点>

Deep Rising



キャッチコピー:『90分で3000人!喰って喰って喰いまくる!』

 海よ、巨大な怪物よ。

三文あらすじ:乗客3000人を乗せた豪華客船アルゴノーティカ号は、南シナ海を航海中、システム制御室に侵入した何者かの手によって航行不能となる。その直後、船体直下から巨大な“何か”が激突、続いて乗客たちが次々に姿を消していく。同じ頃、密輸船の船長ジョン・フィネガン(トリート・ウィリアムズ)は、怪しげな積み荷の依頼主らと共に船の故障を直すためアルゴノーティカに乗船、生き残りのスタッフ及び監禁されていた女泥棒トリリアン・セント・ジェームズ(ファムケ・ヤンセン)と共に巨大な“何か”に立ち向かうことになる・・・


~*~*~*~

 
 念願叶ってやっと再見することが出来た、筆者悲願の一本。こんな名作を置かずして韓流で安易な金儲けに走るなんて、うちの近所のTSUTAYAの方がよっぽど“強欲”である。

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 さて、今回の鑑賞にあたり筆者が最も強く感動したのは、本作のプロット、より詳しく言えば、登場人物のキャラクター設定についてである。

 本作の人物関係は、この手の作品にしてはひと手間加えられている。まず、モンスターの襲撃を直接受けるのは、豪華客船アルゴノーティカ号。3000人の乗客は即座に食べられ、船長と船主が生き残ってサバイバルに参加する。そして、もう1人の生き残りが、女泥棒トリリアン・セント・ジェームズ嬢。美貌の中に愛嬌と強さをたたえた表情を覗かせ、抜群のプロポーションを際立たせる深紅のドレスからは目映い美脚を覗かせる、“戦うヒロイン”にうってつけのキャラクター。

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 コレ。笑顔がまた超可愛い。演じるのは、ファムケ・ヤンセン。かつては『007 ゴールデンアイ』でゼニア・オナトップを鮮烈に演じ切り、近年では『Xメン』のジーン・グレイ役が印象的。しかし、やはり本作のトリリアンが彼女のハマリ役であると個人的には思う。

 このような客船の生き残りメンバーに少し肉付けすれば、それだけで充分一本のモンスター・パニックとして成り立つ設定だ。しかし、実際に一行の中心となるのは、襲撃後アルゴノーティカに乗船する密輸船チーム及びシージャック・チームのメンバーである。つまり、本作の主人公たちは、ほぼ全員スネに傷のある人物であり、『アウトレイジ』風に言うなら“全員悪人”ということになる。

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 それでいて、特に主人公を始めとする密輸船チームの面々は、形式的には“悪人”でも実質的には“善人”という極めて“気持ちの良い連中”。空の騎士の言葉を借りるなら、ただ“青海における規定外”なだけであり、アウトローだが愛すべきキャラクターという点において『カウボーイ・ビバップ』のビバップ号のクルー、『BLACK LAGOON』のラグーン商会のメンバー、あるいは、『紅の豚』アドリア海の飛行艇乗りたちに類似していると言っていい。つまり、結局は、筆者の個人的な趣味にことごとく合致するキャラクター造形である。筆者と同じ感性を持っている人は、きっと本作の主人公たちも気に入るはずだ。

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 彼が本作の主人公である密輸船チームの船長ジョン・フィネガンを演じるトリート・ウィリアムズ。ちょっとコミカルに過ぎる面立ちではあるが、その所作、台詞回しは、極めていぶし銀。

 本作の見所として、他にもこの“台詞回し”に注目である。危機的状況にあっても揺るがない、酸いも甘いも噛み分けた大人たちによる、余裕とウィットに満ちた会話の数々。例えば、フィネガンのボートを脱出の当てにして、彼に取引を持ちかけるトリリアン。「乗せてくれたら…」と言いかけた彼女の後をフィネガンが続ける。「俺に望みの物を?」フィネガンの破廉恥な真意を察したトリリアンは、やや諦め気味に「そう、何でもあげるわ。」と答えるが、フィネガンはすかさず

 「冷たいビールでも?」
 (Can you get me a cold beer?)

と問いかけるのである。トリリアン、にっこり笑って「もちろん。」

 これはほんの1例であり、本作にはこのような粋でいなせな台詞回しが数多く詰まっている。そして、その中でも最も印象的で最もステキな台詞が「お次は何だ?!」であろう。作中、トラブルが畳みかける度にフィネガンが口にするこの台詞は、モンスター・パニック史上1・2を争う至高のエンディングを彩る名台詞。本作も昔はよく洋画劇場で放送されていて(筆者は特に木曜洋画劇場の印象が強い。)、『ザ・グリード』というタイトルにピンと来なくてもそのエンディングを覚えている人は多いのではないだろうか。

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 終盤、アルゴノーティカをモンスター諸共爆破し、近くの無人島に泳ぎ着くフィネガンとトリリアン。生き残ったヒーローとヒロインのキスは、名作の証。死んだと思われていた名脇役ジョエイ・パントゥーチ(ケヴィン・J・オコナー)の生還にほのぼのムードの大団円。と、突如背後の密林から身の毛もよだつ雄叫びが響き渡り、巨大な“何か”が木々を倒しながら移動してくる。明らかになる島の全景は、南国の楽園とはほど遠く、活火山までそびえ立つ南海の秘境。ほのぼのムードは一気に消え去り、張り詰める緊張感、畳みかける困難の予感。再び訪れる危機的状況にフィネガンが一言。

 「お次は何だ?!」
 (NOW WHAT?!)

 そして、終幕。それが、完璧。あくまでも筆者の個人的な見解であるが、これは、モンスター・パニック史上最高のエンディングである。

点数:90/100点
 敢えて苦言を呈するなら、密室劇故の中だるみが後半少し垣間見えるということ、さらに、救いようのない悪役であるアルゴノーティカの船主サイモン・キャントン(アンソニー・ヒールド)の死に様があっさりし過ぎているということくらい。『ジョーズ』を殿堂入りの傑作とした上で、陸の『トレマーズ』、海の『ザ・グリード』という風に双璧を謳っても何ら遜色ない、素晴らしい名作である。

(鑑賞日:2012.10.18)






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