[No.17] ゾンビランド(Zombieland) <84点>





キャッチコピー:『目指せ、奴らのいない夢の遊園地へ 32のルールを駆使して生き残れ!!』

 血しぶきと共に熱い男の魂が溢れ出す!
 ルール無用の痛快青春ゾンビ・コメディ!

三文あらすじ:ウィルスの蔓延により人類のほとんどがゾンビ化し”ゾンビランド(Zombieland)”となったアメリカ合衆国で、大学生のコロンバス(ジェシー・アイゼンバーグ)は自ら定めた「生き残るための32のルール」を実践しながらなんとか生き延びていた。両親に会うためオハイオ州コロンバスを目指す彼は、道すがらワイルドだがトゥインキーに目がない男タラハシー(ウディ・ハレルソン)に出会い道中を共にすることに。さらに美人姉妹ウィチタ(エマ・ストーン)とリトルロック(アビゲイル・ブレスリン)に出会った彼らは、一路ゾンビのいない夢の遊園地パシフィック・プレイランドを目指すことになる・・・

 
~*~*~*~

  
 一般にゾンビ映画には、スリル、アクション、サスペンス、ドラマ、お色気、といった映画が持ちうる全てのエンターテイメント要素が詰まっている。しかも、このようなデフォルトに様々なオプションを付けることで無限のバリエーションが生まれる。ゾンビとエイリアンのコラボ、ゾンビとカンフーのコラボなど今やもう何でもありで、年間何本ものゾンビ映画が世に出ては消えていく。
 巨匠ジョージ・A・ロメロが生み出した“ゾンビ”という”キャラクター“は、れっきとした映画の“ジャンル”に昇華されたといっていいだろう。

 そんな数多あるゾンビ映画史上最大のヒットを飛ばしたのが本作『ゾンビランド』。本作が激戦を勝ち抜きヒットした主な要因は、おそらく以下の2つである。

 まず、“ゾンビ”が前面に出ていないということ。
 本作は、ゾンビ映画でありつつもあくまで4人の人間の成長物語であり青春物語である。
 ゾンビ映画が一ジャンルとして確立されているとはいえ、まだまだマニア向けな感は否めない。というか、本来ゾンビ映画とは、大量の血しぶきと肉体損壊を描きながら人間の愚かさと終末への恐怖を浮き彫りにするもので、本質的に一般受けとは無縁、という部分がある。
 どの家庭もクリスマスに家族で『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』は観ないだろうし、どのカップルも初デートに『サンゲリア』をチョイスはしない(もっとも当時はそういう”アベック”が結構いたらしい。その中の何組が上手くいったかは知らないが。)。また、女の子が集まって『死霊のはらわた』三部作を鑑賞し、ブルース・キャンベルの怪演や『キャプテン・スーパーマーケット』は無かったことにすべきではないかということについて朝まで談義する、といった女子会の話もいっこうに耳にしない。
 要するに、“ゾンビ映画”というものは、グチョグチョドロドロとした化け物にただただ人々が食い殺され、しかもそこには何の希望も無い、という極めて悪趣味なジャンルなのである。
 しかし、本作はあくまでも4人の人間を主役に置き、ゾンビは彼らの敵として、すなわちハッピーエンドを迎えるための障害としての役割を与えられるに過ぎない。確かに血は飛び散るしゾンビはやっぱりそこそこ気持ち悪いのだが、それでもタールマンのようにおどろおどろしくはない。ストーリーにしても4人の凸凹チームが織りなすコメディタッチの軽快なロームービーに仕上がっており、同じコメディタッチでも、軍の核攻撃によってさらにゾンビの雨が降る、といったシニカルな展開は見せないのである。

 本作が一般大衆にも受け入れられた2点目として筆者が考えるのは、いい意味で“ベタ”という部分である。
 コロンバスは、ただのオタク。タラハシーは、変なオヤジ。ウィチタとリトルロック姉妹は、男2人を(ゾンビがするのとは違う意味で)食い物にする嫌な詐欺師として登場する。このように、始めは印象の良くない登場人物たちがともに旅するうちに友情や愛情を育み、最後にはゾンビに勝利するという、まさに少年漫画的ベタな展開が心地良いし胸を熱くする。そして、キャラクター描写が秀逸、かつ、彼らの行動原理に説得力があるため、ベタな展開にチープさを感じない。説得力の無いベタはパクリで駄作、説得力のあるベタはロングセラーの傑作とするのなら、本作は確実に後者に属している。

 4人は、旅を通して人間的に何らかの変化と成長を遂げるのだが、筆者が一番好きなのはウディ・ハレルソン演じるタラハシーである。
 見た目はワイルドでコワモテ。登場したときは、独りぼっちのコロンバスに強力なパートナーができたとこちらも心強くなる。ところが、彼はトウィンキーというアメリカ人なら食べたことのない者はいない甘ったるいお菓子に目がない。しかも、ゾンビを異常に憎んでるのはいいにしても、その理由が犬殺されたからって・・・。どーやらコイツ、ダサい奴やな。まぁでもたくましさは頼りになるし、そのギャップが逆に可愛いじゃない、と若いツバメを見つけた四十路OLの気分になるのもつかの間、死んだのは実は犬ではなく彼の息子だったことが明らかになる。ごめんな、タラハシー。ここからはウィチタに惚れたコロンバスが彼女を助けるというのがメインの流れになるのだが、彼は、ここでゾンビ映画史上類を見ない名脇役ぶりを発揮する。

 ウィチタを助けるため、そして想いを打ち明けるため、コロンバスは、実はゾンビだらけの遊園地“パシフィック・プレイランド”に行くと言い出す。

 「あんな裏切り者は放っとけ。俺は行かねぇぞ。」

とコロンバスを見送る冷たいタラハシー。
 ウソつけ!行くんだろ!?助けに行ってくれるんだろ!?

 しばらくして・・・

 「ちっ、しょうがねぇな。」

 やっぱりーーー!
 今まで幾人の名脇役達がこのくだりをやってきただろう。
 さらに、遊園地に着いたタラハシーは、群がるゾンビの大群を前にしてコロンバスに言い放つ。

 「行け!ここは俺が引き受ける!!」

 やっぱりーーー!
 有史以来、何人の名脇役達が主人公のために窮地を引き受けてきたことだろう。
 ハン・ソロもそう、ベジータもそう、東十条さんだってそうだ。広辞苑に「名脇役」の欄があるなら、「主人公に花を持たせるため格好良く窮地を引き受ける者。または、その様。」と記したい。つまり、この展開も極めてベタなのだ。しかし、それまでのキャラ描写がしっかりしているので、我々は既にタラハシーの虜。テンションマックスで彼を応援することができる。
 ゾンビに追い詰められたタラハシーは、小さな売店のブースに立てこもることになるのだが、ここがまたカッコイイ。カウンターにマガジンを何本も立て、二丁拳銃で応戦し、弾がきれると拳銃をカウンターに叩き付けて再装填する。ブースがゾンビの波にのまれ、死んだかと思われた彼が実は生きている、というのもベタだがいい。逆説的だが、本作真の主役は、タラハシーと言ってもいいくらいだ。

点数:84/100点
 まぁ、正直、敵がゾンビである必然性はない。4人を襲うのが、酸性のよだれを垂らす宇宙人でも、チェーンソーを振り回す殺人鬼でも、あるいは、巨大鮫であったとしても本作は一級のホラー・コメディになっていただろう。よって、あくまで“ゾンビ映画”として評価するならば、あまり高得点は与えられない。しかし、よくできた脚本とタラハシーのヒロイズムは十分に一級品であって、やはり本作が一般大衆の心を掴み“ゾンビ映画”史上最高収入を叩きだしたことにも納得である。なお、うれしいサプライズが用意されているので『ゴーストバスターズ』を未鑑賞の方は、本作鑑賞前に予習しておくことをオススメする。

(鑑賞日[初]:2011.12.15)

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