[No.181] ルパン三世 くたばれ!ノストラダムス <83点>

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キャッチコピー:『今世紀最大の犯行予告』

 愛のつづき、ルパンのその先へ。

三文あらすじ:1999年、第1の月、ブラジルのリオデジャネイロで150万ドルのダイヤを盗み出したルパン三世(声:栗田貫一)と次元大介(声:小林清志)は、銭形警部(声:納谷悟朗)の追跡を逃れ帰国の途に就くが、旅客機はハイジャックされ、偶然乗り合わせたダグラス財団の一人娘ジュリア(声:安達祐実)が何者かに拉致される。ジュリアの教育係として同伴していた峰不二子(声:増山江威子)から、ダグラス財団が所有する地上1000mの超高層ビル最上階に、失われた“ノストラダムスの預言書”が保管されており、ジュリアがその鍵であることを聞かされるルパン。同じく預言書を訪ね歩いていた石川五エ門(声:井上真樹夫)、預言書によって富と権力を手にしようとするノストラダムス教団を巻き込んで、ルパン三世は、20世紀最後の獲物に狙いを定める・・・


~*~*~*~

 
 予告編は、本作制作途中に急逝した山田康雄によるもの。そればかりを微妙に異なるバージョンも含めてまとめてくれている方がおり、非常にいぶし銀なルパン魂を感じる。山田康雄の素晴らしいルパンボイスは言うに及ばず、2つ目の英語によるナレーションが“He's back to steel your hearts.”と言っているのが地味に渋い。

 さて、本作は、以前紹介した劇場版第3作『バビロンの黄金伝説』から実に10年ぶりの劇場版である。一応、その間に『風間一族の陰謀』という作品があるが、これは当初OVAとして制作されていたものをごくごく小規模に上映した作品であるし、声のキャストが大幅に変更されていたりするので、劇場版としてカウントされたりされなかったりする。当ブログでもそのうち感想を書こうとは思っているが、まぁ本作が“10年ぶり”と言われるのには、そのような事情がある。

 内容に入る前にもう1つ言っておきたいのは、冒頭でも述べた通り、本作の完成を待たずして山田康雄氏が急逝してしまった、ということである。

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 彼は、その生き様からして“ルパン三世”そのものであったらしい。そもそも、彼がルパンを演じることになったのは、テレビアニメ化が決まった1971年、ルパンの声優選びに頭を悩ませていた演出の大隅正秋氏が、劇団テアトル・エコーの芝居を見て山田康雄の演技に惚れ込んだから。大隅氏は、当時をふり返り「僕の思い描いていたルパンがそこにいました。」と語っている。また、大隅氏は「1回目からセリフ回しの打ち合わせも必要ないほど、ルパンは山田さんによって完成されていました。」と回想している。確かに、原作コミックのルパン像とアニメのルパン像は、似ているようでどこか違っており、それはすなわち、ルパン三世とは、山田康雄の多大なる功績によって構築されたキャラクターであるということに他ならない。山田氏自身も、ルパンの好きなところは?と聞かれ「生きる姿勢がどことなく似ているんです。」と語る。

 そんな“Mr.ルパン三世”は、本作の予告編第1弾収録後、脳出血で意識不明に。そのまま帰らぬ人となってしまった。そして、急遽彼の代役として本作のルパンを演じたのが、ものまね四天王栗田貫一氏である。さすが“四天王”というだけあって、確かに似ている。しかし、やはりどこか違う。声が高すぎる。言葉の端々に堅さがある。にじみ出る渋さがない。でも、それは仕方のないこと。彼は彼なりに、山田康雄氏への惜しみない敬意と愛を込めて、この重責を乗り切ったのだと思う。

 本作では、そんなスタッフたちの“愛”を示したものとして、

 「永遠のルパン三世 山田康雄さん ありがとう」

との追悼テロップが表示される。ルパンが活躍する限り、山田康雄氏は、スクリーンに、テレビ画面に、我々の胸に生き続けるのだ。また、近年も声優陣の高齢化に伴い、ヴォイスキャストがほぼ一新された。永遠のスーパーヒーロー“ルパン三世”は、今なお、その先へと走り続けている。

 さて、随分と前置きが長くなってしまったが、本作の内容についてである。

 正直筆者は、初鑑賞時、本作を全くおもしろいとはおもわなかった。しかし、それはおそらく、筆者が自身の凝り固まった勝手な“ルパン像”に固執していたからだと思われる。広い度量と“男の美学”を以て観る限り、本作は、実に見るべき所の多い劇場版だ。

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 まず、改めて観ると作画が素晴らしい。ルパン一味は、限りなくテレビシリーズ1stあるいは2ndに近い造形だし、何より動きが『カリオストロの城』並にスムーズ。そもそも本作は、アースビルでのアスレチック・アクションなど、おそらく『カリ城』を意識した趣向が随所に施されている。

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 そして、本作で最も素晴らしいのは、何と言っても“男の美学”、すなわちクールでアダルトな展開と名言の数々である。

 まず、ルパンの相棒、次元大介。ルパンを殺された次元は、敵であるノストラダムス教団の武闘派構成員クリス(大塚明夫)に詰め寄る。その殺気に怯え、マシンガンを乱射するクリス。微塵も臆することなくどんどんとにじり寄る次元は、いぶし銀なバリトンボイスでこう言い放つ。

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「サブマシンガンの命中精度は低い。神に祈るんだな。もっとも、神を信じていればの話だが!」


 これが渋い。とはいえ、その後結局逃げられてしまうのであるが。

 そして、我らがルパン三世。金庫室の謎を聞くため、過去にただ1人だけ侵入を成功させたフィリップじいさん(声:八奈見乗児)の元を訪れるルパン。しかし、彼がいるのは、脱獄不可能の監獄島。わざと捕まり潜入に成功したルパンは、フィリップに会うため独房を後にする。そのとき、目を覚ました同室の囚人がルパンに忠告。「馬鹿なことを考えるな。」しかし、ルパンはこう言い放つのであった。

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「人生を楽しむコツは、どれだけ馬鹿なことを考えられるかなんだ。」


 これはまぁまぁ渋い。でもちょっとルパンっぽさが無い名言ではある。

 ルパンの名言はもう1つあり、むしろこちらの方が本命。ノストラダムス教団に捕まってしまうルパン。すると、ルパンの独房になんと峰不二子が食事を持ってくる。彼女は、ノストラダムス教団のマインドコントロール下に置かれ、自身の過去を全て忘れてしまったのである。「どうして私のことを“不二子”ってお呼びになるの…?」と問う彼女に、ルパンは話して聞かせる。金と光り物が大好きで気が強く、いつも自分のことを裏切る、愛しいひとのことを…。そして、ルパンはこう締めくくる。

 「また騙されてみようって気になっちゃう、女さ。」

 いぶし銀!ルパンと不二子、男と女。「裏切りは、女のアクセサリーのようなものさ。いちいち気にしてちゃ、女を愛せるわけがない。そうだろ?」と語っていたルパンの一貫した哲学が、本作でも垣間見える。

 さらに、その後も渋さ爆発。「分からないわ。そういう男性の気持ちって…。」と困惑しながら食事を差し出す不二子。ルパンは、その手を強引に引き寄せ、彼女に口付ける。

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「思い出させてやるのさ。昔のことを…。」


 渋い!未だ不慣れなクリカンもここは頑張った!素晴らしい!そして、このシーンは、エロい!薄暗い独房、囚人と奉仕する女、そのようなシチュエーションに加え、シチューらしき料理が不二子の手にべっとり掛かっている感じがたまらなくエロい!大人の男と女の、ダーティでエロティックな名シーンである。

点数:83/100点
 確かに、ダグラス一家の家族愛を前面に押し出したエンディングは、従来の渋いルパン三世とは言い難い面もある。しかし、10年ぶりの映画化である本作は、スタッフ一同のルパン三世に対する“愛”、そして天国の“やすべぇさん”に対する“愛”がふんだんに盛り込まれた、中々の傑作である。

(鑑賞日:2012.11.13)

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