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カリオストロの城



キャッチコピー
・英語版:unknown
・日本語版:生きては還れぬ謎の古城でついにめぐり逢った最強の敵!

 成熟したルパン一味の生き様が、“あなたの心”を盗み出す。

三文あらすじ:ルパン三世(声:山田康雄)と次元大介(声:小林清志)は、モナコの国営カジノから売上金を盗み出すが、それが幻の偽札と謳われた“ゴート札”であったことから、全てを捨てっちまい、次の獲物をカリオストロ公国に決める。公国に潜入したルパンらは、グラフ・ラザール・ド・カリオストロ伯爵(声:石田太郎)の部下に追われる皇女クラリス・ド・カリオストロ(声:島本須美)をいったんは助けるが、指輪を残し彼女は再び囚われの身に。銭形警部(声:納谷悟朗)、峰不二子(声:増山江威子)、石川五右ェ門(声:井上真樹夫)ら一癖も二癖もある連中を巻き込みながら、クラリスを救うため、そして、自身の過去にケリをつけるため、ルパンは伯爵との対決に挑む・・・

 
~*~*~*~

  
 いわずと知れた国民的傑作アニメ映画。“ルパン三世”といえば、本作を想像する人も多いのではないだろうか。本作の功績は、緑ルパンのイメージを世間に定着させた点を始め数え切れないが、本作以降、”おじさま”としてのルパンが美少女を救う、という展開(いわば”子守り”的展開)ばかりになってしまって、原作及び第一期をこよなく愛する筆者としては悲しいかぎりである。

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 そもそも、原作コミックにおけるルパン三世は、隙あらば美女を抱き、自分を狙う敵(警察と女は除く。)は容赦なく殺す、という極めてハードボイルドな泥棒である。ジタン・カポラルを好んで吸い、ワルサーP38を愛用するクールタッチのゲバルド。哀愁漂う男の雰囲気を漂わせつつ、そのパワースケールが世のゴキブリ野郎どもをダメージする。宿敵ラスプーチンと対決した際などは、彼に勝つ手段として、ルパンだけでなく次元や五右エ門まで彼の妻をレイプしようとしたぐらいである。原作ほどぶっ飛んではいないものの、TVアニメ第一期はこのようなルパンのハードボイルドな部分がよく出ていて非常に良かった。「裏切りは女のアクセサリーみたいなもんさ。いちいち気にしてちゃ、女を愛せるわけがないぜ。そうだろ?」は、”大人のためのルパン”を象徴するハードボイルドな名セリフである。

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 宮崎駿はアニメ第一期からルパン三世に携わっているので、もちろん本来のルパン像を把握している。よってルパンの劇場版第2作、すなわち、本作の話を持ちかけられたとき、ルパンはもう古くさい、として難色を示した。しかし、彼は、ルパンの年齢を高く設定することで新たなルパン像を提示出来ると考え、映画化の話を引き受けたのである。確かに、中年になってもはや盗めないものは無いルパンが、一人で売り出そうと躍起になっていた青二才時代の失敗にリベンジするため可憐な美少女を盗む、というプロットは、はちゃめちゃなハードボイルド怪盗としてのルパンの原典を知っている者こそ、感慨深く楽しめるものになっている。しかし、いや、だからこそ、女の子に“おじさま”などと呼ばれるルパンは、本作で打ち止めるべきだったのだ。

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 まぁ、いいや。本作がおもしろいということには変わりないのだから、素直に本作の話をしよう。まず、冒頭は、ルパンと次元がモナコの国営カジノから大量の札束を盗むシーンからスタート。車をパンパンにして颯爽と飛ばす2人。…ん…?……2人?五右エ門はまた一人で修行の旅に出たのかな。いやいや、後部座席に注目していただきたい。札束に埋め尽くされた窓に黒い塊が。そう、五右エ門の後頭部である。なるほど、だから、カジノ前に停車していた追っ手の車の内、いくつかが真っ二つになっていたというわけだ。それにしても、これって窓にめちゃくちゃ押しつけられた体勢で乗車しているのではないだろうか。ちょっとぐらい顔映してあげてもいいのに…。

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 宮崎駿は昔から五右エ門に対するアタリが強くて、彼が"照樹務"名義で脚本・演出を担当したTV第2シリーズ145話『死の翼アルバトロス』でも、五右エ門はほとんど登場しない。本作でも、先述の逃走シーンを始めとして、五右エ門は基本的に蚊帳の外。終盤、逃げるルパンとクラリスが次元、五右エ門と出会うシーンでも、クラリスは2人に対して「みなさんもどうかお気を付けて。」と気遣いを見せた後、特に次元にだけ「次元様も…。」と付け加える。まぁ、次元はルパンと共に序盤から出ずっぱりで頑張っていたとはいえ、五右エ門だって頑張ってるよ? 筆者は決して五右エ門贔屓ではないのだが、それでもここまで蔑ろにされると少し可哀想になる。ただ、ルパンとクラリスが去った後、やる気100%の五右エ門が言った

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「今宵の斬鉄剣はひと味違うぞ!!」


は、五右エ門史上に残る名セリフである。

 場面変わって、ルパンは盗んだ金がゴート札だと気付くや否や「捨てっちまおう。」と一言。「パァーッ!!」と豪快に車の窓からばらまいてしまう。このシーン、全部手書きだった制作当時は、ものすごくものすごく大変だったらしい。それでも駿がこのシーンにこだわったのは、呪縛からの解放という本作のテーマを象徴する重要な描写だったからだそうだ。ついでに五右エ門も札束の山から解放されて良かったね。

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 オープニングがあけて、カリオストロ公国をのんびり行く2人。ここは2人だけだ。五右エ門さよなら。このシークエンスの2人は本当に渋い「恐いから俺、寝る。」もいいし、パンクだと分かると何も言わずどちらが修理するかのジャンケンを始めるのもカッコイイ。ピーチクパーチク、鳥のさえずり。「平和だねぇ…。」とルパンのつぶやき。ここで突然クラリスの車が走り去り、怒濤のカーチェイスが開始される。このギャップがいい。

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「どっちにつく?」

「女ぁ!」

「だろうな。」


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 このやり取り!2人の年季が伺える。敵の手榴弾を食らい、フロントガラスをバリバリする2人。

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「さて、おもしろくなってきやがった!」

「まくるぞぉ!」


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 カッコイイ!!ちなみに、この”まくる”という台詞は、後にジブリ社長となる鈴木敏夫が助言したものらしい。ここから本格的にカーチェイスが展開され、フィアット500は壁を上り、藪をかき分け大活躍。あのスピルバーグをして映画史上最高のカーチェイスのひとつと言わしめたのだからスゴイ。

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 この後のシーンで特筆すべきは、まぁ、歩きながら伯爵の服を着替えさせるというジョドーの離れ業と、2人が宿を襲われ逃げるときに次元が発した「ああ、おもしろくなってきやがった!!」の格好良さぐらいか。まぁ、その辺りは良いのである。問題のシーンは、その先にある。問題だと思っているのは筆者だけかもしれないが、ここのルパンはすごく寒い。ノリが”おじさま”ではなく”オヤジ”みたいになってしまっている。もちろん、すごく良い台詞も言うのだが。神業ジャンプを繰り返し、クラリス隔離棟へ侵入するルパン。怯えたクラリスが尋ねる。「どなた?」

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「ドロボーです。」


 ん~……この時点で既にちょっと寒い。
 そして…

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「私の獲物は、悪い魔法使いが高い塔のてっぺんにしまいこんだ宝物。どうかこのドロボーめに、盗まれてやって下さい。」



 「わたくしを?」 戸惑うクラリスに追い打ちが続く。

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「金庫に閉じ込められた宝石たちを救い出し、むりやり花嫁にされようとしている女の子は、緑の野に放してあげる。これみんな、ドロボーの仕事なんです。うーん。」



 ……。どうやら、ヤバイのは雨の午後だけではなかったようだ。

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「あーあ、何ということだ。その女の子は、悪い魔法使いの力を信じるのに、ドロボーの力を信じようとはしなかった。その子が信じてくれたなら、ドロボーは空を飛ぶことだって、湖の水を飲み干すことだって出来るのに…。」



 …ちょっと泣きそうなくらい寒い。

 とはいえ、上記セリフの中でも最後のものに関しては、映画的に意味のあるセリフである。言い換えると、先々の展開の示唆。ルパンは実際に空を飛ぶし(この直後落とし穴に落とされて、「ハーイ、元気ですよー!女の子が信じてくれたから、空だって飛べるさ。」)、クライマックスでは本当に湖の水を飲み干すことになる(時計塔の仕掛けで湖が干上がりローマの町並みが露わになる。)のである。ちなみに、このような先々の展開を象徴する伏線は、他の宮崎作品でも見ることができる。例えば、『紅の豚』において、ポルコとフェラーリンが映画館で話すシーンがそれだ。

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 あぁ、それから、

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「なぁに、狙い狙われるのがドロボーの本性です。」


は、ルパンの生き様を表したこのシークエンスで唯一真っ当な名セリフである。駿やっぱ分かってるやん。寒いセリフを削ってくれるわけにはいかなかったのだろうか…。まぁ、いいや。その後が良いのである。地下に叩き落されたルパンは、同じく地下に落とされた銭形と邂逅する。本作ではこの2人がまるで友人のようにセリフをやり取りするシーンが多く、その粋な会話がたまらない。

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「その様子じゃ、だいぶ歩き回ったようだな。」

「うるせーっ!盗人の情けは受けねえ!」

「まあ ゆっくりしようぜ。どうせ出口はねんだから。
 ハイ、ちょっくらご免よ。とっつあん、火ぃ貸してくんない?」



というやり取りも良いし、偽札造幣器を発見したときの

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「とっつあん、どうする?見ちまった以上、後戻りは出来ねえぜ。」

「わかっておる。警察官の血がうずくわ。」

「ムフフ…。ここから逃げ出すまで、一時休戦にすっか?」

「よかろう。だが、盗人の手助けはせんぞ。
 脱出した後には、必ずお前を逮捕するからな。」

「上出来だ。ほんじゃま、握手と。」

「フン!馴れ合いはせん!」

「あれま。」



という掛け合いは、2人の今までの関係を象徴するようなとてもいい会話だと思う。ルパンと銭形の2人は、原作も合わせるなら大学時代から少なくとも20年以上の付き合いだと推測される。まさに腐れ縁だ。ちなみに、大学時代、ルパンは東西京北大学の電子医学部に所属、銭形はルパン入学時、同大学法学部の4回生であった。銭形は学長にも贔屓にされるほどの模範的な生徒であったのに対して、ルパンはそもそも脅迫を用いて入学し、教室をディスコ代わりにしたり、処女と非処女を見分ける薬を開発して女子大生全員を敵に回したりしていた。先の会話は、このような堅い銭形とお気楽なルパンという2人の本質が端的に表れている点でも素晴らしい。

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 "ルパンファミリー"の年季を感じさせるシーンは他にもある。それは、不二子があの迷彩の衣装にお色直ししてクラリスに"お別れ"を言いに来るシーン。

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「あの方をご存じなの?」

「うんざりするほどね。
 時には味方、時には敵。恋人だったこともあったかな。
 彼、生まれつきの女タラしよ。気を付けてね。」

「捨てられたの?」

「まさか…捨てたの。」



 イエーイ、カッコイイ!最近の”子守り系プロット”ではゲスト・ヒロインとして若い女の子が登場するので、不二子はなんだかお局のおばさんみたいな立ち位置になってしまっているのだが、本作は人生の酸いも甘いも噛み分けた”アネゴ”として彼女を描くことに成功している。さらに、この後、クラリスの部屋を訪れたルパンがクラリスに対するのとは明らかに異なる声色で「不二子、ロープだ!」と要求し、不二子が「偉そうに言わないで!」と言いながらこれに応える、というやり取りも渋い。“ルパン三世は、基本的に男と女の物語である”というのはカルトブックからの引用であるが、本作は時が経ち中年になった大人の男と女の姿を描いているのである。

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 長々と書きすぎたので、一気にラストシーン。もう説明はいらないだろう。誰だって知っている。むしろここしか知らないという人も結構いるんじゃないか。そう、我らが”とっつぁん”こと銭形警部屈指の見せ場である。

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「くそっ、一足遅かったか!ルパンめ、まんまと盗みおって。」

「いいえ。あの方は、何も盗らなかったわ。
 私のために闘って下さったんです。」

「いや、奴ぁはとんでもないものを盗んでいきました。」

 あなたの心です。

…ハイッ!

「では、失礼します!(ウィンク)」

「ルパンを追えー!地の果てまで追うんだー!」



 やっぱり何回観てもいい。これはもう事実上、全国民の一般教養だな。有名な決め台詞はもちろんのこと、「ハイッ!」と力強く頷くクラリスが良いし、「失礼します!」のときにウィンクするロマンティックな銭形が最高だ。筆者は、彼もまたクラリスに恋した者の一人だと思う。このシーンで銭形の頬に貼られた×印の絆創膏は、銭形もまた姫のために戦ったナイトであることの象徴だ。ルパンと銭形との違いは、“クラリスの心を盗むことができたか否か”という点にある。つまり、ルパンは助けた姫に惚れられるホワイト・ナイト、銭形は人知れず姫の救出に貢献した縁の下のダーク・ナイトなのであろう。銭形はこの点を悔しがり、しかし、ジェントルマンらしくウィンクをプレゼントしてその場を後にする。

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 なんともはや、彼らの成熟しきったいぶし銀な生き様には、やはり何度観ても完膚なきまでに心を奪われてしまう。

点数:94/100点
 先ほども少し言及したが、初期、あるいは、全盛期のルパン三世を期待して観ると少し物足りないところがあるかもしれない。しかし、歳を経たルパンファミリーの描写は極めて秀逸で、ルパンが歳を取るとこうなるんだよ、というシミュレーション作品としては、文句なしに素晴らしい。本当に、なんと気持ちのいい連中だろう。

(鑑賞日:A long time ago...)

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Mr.Alan Smithee
Posted byMr.Alan Smithee

Comments 2

There are no comments yet.
-  

熱気がもうすごいw
見たくなった。

2012/01/26 (Thu) 16:17 | EDIT | REPLY |   
Mr.Alan Smithee  
Re:

そうでしょ♪

2012/11/10 (Sat) 23:05 | EDIT | REPLY |   

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