[No.183] 2時間(2 HOURS) <74点>



キャッチコピー:unknown

 君のいないこの世界、僕は静かに朽ちていく。

三文あらすじ:ゾンビが蔓延する世界、男は右腕をゾンビに噛まれてしまう。体内に侵襲したウイルスが男をゾンビに変えてしまうまで、残された時間は2時間(2 hours)。襲いかかるゾンビや失った妻の亡霊と戦いながら、男は唯一の希望である生存者を探し、森の奥へと歩みを進める・・・

<本編(26分24秒)>
※ちょっとグロいです・オブ・ザ・デッド。



~*~*~*~

 
 美しくも切ないゾンビ・ショートフィルム。26分24秒という尺は、ショートフィルムにしてはやや長めではあるものの、それだけに本作は本格的。特にゾンビメイクは、大作さながらだ。ゾンビ映画好きも充分楽しめる良作ショートフィルムである。

 ビジュアル面以外、すなわちプロット的な部分で素晴らしいのは、やはり“男が噛まれてからゾンビになるまでの2時間を描く”というアイデアだろう。

 毎年星の数ほど制作されるゾンビ映画。そのプロットは、だいたいどれも似通っていて、もちろん本ジャンルはその完成された一連のプロット自体を楽しむ物ではあるのだが、それでも製作者は、新しいアイデアに頭を悩ませる。近年では“ゾンビ化しても自我を保っている”というアイデアが流行で、『コリン LOVE OF THE DEAD』『ゾンビ処刑人』はその成功例。来年2月全米公開のゾンビ・ラブ・ストーリー『WARM BODIES』などもおそらくこの系譜であろう。

 しかしまぁ、そんなのは、ロメロ・ルールを外れたいわば“裏ワザ”。本作は、ちゃんと既存のルールに則った上で、物語の切り口、切り取る時間軸に趣向を凝らしたと言う点で評価に値する。2時間という尺をそのまま実時間で描き長編化したなら、中々おもしろいことになりそうだ。

 さて、本作が2時間を通して描くのは、ゾンビものの醍醐味である主人公のサバイバル、そして人体損壊グロ描写、さらには、主人公の過去の“罪”である。すなわち、襲い来るゾンビの大群だけでなく、救えなかった自分の妻に対する自責の念と戦う男の姿が描かれる。

 では、本作ラストで用意される結末は、是か否か。個人的には、否であると思う。男は、遂に生きることを諦め“ゾンビ化することで妻とずっと一緒にいられる”的なことを独白、欲望と倦怠の海に沈んでいく。まぁ、これを否定してしまうのはいささか主観的であるとしても、少なくとも、このようなテーマを描いた作品における“王道”でないことは確か。定番の結末を迎えるのであれば、男は自らの罪と深く真摯に向き合い、いつ見つかるとも分からない贖罪の道を模索しながら、辛くとも生き続けることになるはずだ。人が生きたいと思う気持ち、すなわち“リビドー”を肯定し、人間讃歌を歌い上げるのが“常識”ならば、本作ではその逆、極めて“デストルドー”に満ちた終幕となっている。これはいわば、シンジくんが補完を受け入れてしまったようなもので、それは“生きる”ということや、それに必然として伴う“辛さ”、“痛み”からの逃避に他ならない。極めて荒廃し、腐敗したオチであり、ストーリーテリングの“正統”から見るならば、決して誉められたものではないだろう。

 しかし、そもそもを考えれば、“ゾンビ映画”とは、荒廃した終末世界の中で、主人公のサバイバルやグロい人体損壊描写を通し、静かで圧倒的な“絶望”を描くというジャンル。『ゾンビ』を始めとする本ジャンルの名作たちは、ことごとく人類滅亡の未来を示唆して終劇する。とするならば、主観視点を多用し、極限まで主人公の“一人称”で描かれる本作は、ラストで主人公が“絶望”に飲まれる姿を描写し、個人単位での“世界の終末”を描いたと言ってもよさそうだ。そう考えると、本作の“逃げ”のラストも中々素晴らしく思える。

点数:74/100点
 苦痛から逃れる術は、より深くその苦痛に身を委ねることである。と、誰が言ったかは知らないが、本作の主人公はどこか筆者に重なるところもあり、やや嫌悪感を抱く。そして、それだけに擁護してやりたくもなるのである。

(鑑賞日[初]:2012.11.13)

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