[No.185] ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q(EVANGELION:3.0 YOU CAN (NOT) REDO.) <45点>

Q



キャッチコピー:unknown

 裏切ったな…! 僕の気持ちを…裏切ったな!

三文あらすじ:擬似シン化第二形態へと覚醒したエヴァンゲリオン初号機によってニア・サードインパクトが引き起こされた後の世界。初号機パイロットである“第3の少年”碇シンジ(声:緒方恵美)は目覚める。“ゼーレの少年”渚カヲル(声:石田彰)との触れあいの中、彼は、全ての罪を償うため、あらゆる過ちをやり直すため、もがき、苦しむ・・・


~*~*~*~

 
<序曲~オーヴァーチュア~ “目覚めよと、われらに呼ばわる物見らの声”>
 この時を実に3年も待った。西暦2012年11月17日、リビルド・オブ・エヴァンゲリオン・プロジェクトの第3弾作品『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q(EVANGELION:3.0 YOU CAN (NOT) REDO.)』、遂に公開!

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 前作『新劇場版:破』は、本当に素晴らしかった。めくるめくアクションのつるべ打ち、謎が謎呼ぶミステリアスなギミック、そして“ヒーロー”の熱き咆吼。個人的にはロボットアニメの史上最高峰に位置づけたい傑作である。

 そんな前作に対する熱い想いは、本作の公開に際してお祭り騒ぎへと昇華された。11月17日深夜0時の新宿バルト9は、最速上映に集ったエヴァファンたちで阿鼻叫喚、興奮のるつぼと化していたらしいし、ユナイテッド系列では日本で唯一『Q』の上映を許可されたという噂のユナイテッドシネマ岸和田では、翌日18日でも式波・アスカ・ラングレー(声:宮村優子)や真希波・マリ・イラストリアス(声:坂本真綾)に扮した劇場係員が右往左往していた。

 かつてこれほどまでに世間を巻き込んだお祭り騒ぎが展開されたアニメ映画は無かったのではないかと思われ、そういった意味で本シリーズは、日本版『スターウォーズ』と言っても良さそうである。

<前奏曲~プレリュード~ “星は光りぬ”>
 さて、本編である。まず、大注目だったのが、公開日前日の金曜ロードショーで放送された冒頭6分38秒の映像。筆者は筆者で友人の結婚前夜祭を催しており、リアルタイムでの鑑賞は叶わなかったのだが、そしてまた、どうせなら鑑賞せずに公開日を迎えようと思っていたのだが、帰宅直後、我が弟のあまりの熱気に押され、youtubeで観てしまった。

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 正直、この冒頭6分38秒に及ぶ初号機強奪シークエンスは、完璧である。静かな宇宙空間で始まるエヴァシリーズお馴染みの“軍隊感”溢れる作戦。隔離凍結されていたはずのアスカの復帰、そして、圧倒的ビジュアルによるエヴァ史上初の大気圏外戦闘。前作まででは面識すらなかったアスカとマリの共闘も燃える展開だし、絶体絶命の危機に叫ぶアスカに応え、覚醒初号機がレーザーで敵を蹴散らすのも最高に“漢の魂完全燃焼”である。

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 完璧。これ以上はない。観客は前作同様、いやそれ以上の圧倒的アクションシーンでの掴みを期待している。しかし、シンジくんはいない、新パイロットもいない。その上でのこのアヴァン・タイトル。鑑賞前夜の、あるいは鑑賞開始直後の観客は、庵野監督とがっちり握手を交わす。これは“今回もエンターテイメント全開で行くぜ!”というメッセージに違いない。やっぱり今回の新劇では、俺が信じる、お前を信じていいんだな!!

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 このTV版6分38秒と本編6分38秒では1点変更点があり、これもまた劇場鑑賞時の思いがけなくもうれしいサプライズである。すなわち、劇場版では改2号機βが大気圏付近に降下する辺りから(あるいはそれ以前からだったかもしれないが)、マリの口ずさむ歌が聞こえ始める。この歌は天知真理の『ひとりじゃないの』。意味深である(ちなみに、マリがドグマ内のクライマックス・バトルで口ずさむのは『グランプリの鷹』のオープニング曲冒頭)。そして、TV版では「援護射撃!2秒遅い!!」と言っていたアスカの台詞が「コネメガネ!いつまで歌ってんのよ!!」に変更されていたはずだ。

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 前作アヴァンで、マリは『365歩のマーチ』を歌っていた。そして今回も昭和の歌を口ずさむ。その他にも本作アヴァンには、前作アヴァンとの共通点が多い。例えば、暗闇の中オペレーション音から入るという始まり方であったり、アスカの説明口調、片腕を落とされる2号機、そして「逃げんな!コラァ!!」という台詞。これらはおそらく意図されたものであろうが、対比してみると、やはり本作のアヴァンがどれほど完璧であるかが分かる。前作を踏襲しつつも新たな角度で切り込み前作を超えた、という意味において、本作アヴァンはあたかも『エイリアン2』のような素晴らしい仕上がりになっているのである。

<狂想曲~カプリッチオ~ “もはや私の心には感じない”>
 しかしながら、本作のアヴァンはまだ終わっていない。確かに、金曜ロードショー放送分は“冒頭6分38秒”というだけであり、その後タイトル・バックとは一言も言っていなかった。

 そして、この後が大問題である。シンジくんは目覚める。公開前大方が予想していたようなサルベージシーンは無し。ミサトさん(声:三石琴乃)、リツコさん(声:山口由里子)、マヤちゃん(声:長沢美樹)、日向くん(声:優希比呂)、青葉さん(声:子安武人)などのオリジナルメンバーに加え、本作で初お目見えの新キャラ、高雄コウジ(声:大塚明夫)、長良スミレ(声:大原さやか)、多摩ヒデキ(声:勝杏里)、北上ミドリ(声:伊瀬茉莉也)、そして、衝撃の鈴原サクラ(声:沢城みゆき)らが登場。サクラ以外の新キャラの名字は山と川の名前だろうか。

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 彼らの所属組織はNERVではない。彼らは“ヴィレ(Wille)”。英語で言うところの“Will”、つまり“意志”という名を冠した反ネルフ組織である。彼らが駆る最新鋭戦艦は“AAAヴンダー(Wunder)”。英語なら“Wander”、すなわち“奇跡”を乗せた翼。庵野監督は、かねてから懸案であった“エヴァンゲリオン「ガンダム化」計画”をいよいよ実行するつもりのようだ。

 もうここからは終始混乱の嵐。ミサトさんがグラサン艦長に就任してるわ、リツコさんが“ありえない”ほどベリーショートになってるわ、青葉さんにあごひげ生えてるわ、マヤちゃんは若い男への嫌悪を露わにするのに嘔吐せぇへんわ、日向さんはなんかワイルドになってるわで意味不明。

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 それもそのはず、本作は、前作終了時から実に14年もの歳月が流れていたことが明かされる。でも、明かされるのはそれだけ。14年間にいったい何があったのか、カシウスの槍で止められたはずのサード・インパクトが何故起こったのか、ミサトさんたちは何故明確な意志を持ってネルフと対立するようになったのか、などなど、全ては謎のまま。アスカにかけられた“エヴァの呪縛”とは何なのか、綾波レイ(声:林原めぐみ)はいったいどこへ行ったのか、とかも全く不明。

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 庵野さん、これはやりすぎだわ。今までも“エヴァ”という作品は、謎を謎のまま残す傾向はあったし、それがまた醍醐味でもあったのだが、『序』『破』で山積みになった謎を一切回収せず(実際本作で明かされたのは“カシウスの槍”という名称だけではないだろうか?)、いきなり14年後に飛んで、しかもその間の話も一切しないなんて、完全に狂っている。

 しかし、筆者が今回最も憤ったのは、サード・インパクトの原因たるシンジくんを皆が責めているということである。この点については、章を改める。

<受難曲~パッション~ “The Wrath of God, in All it's Fury(激烈なる神の怒り)”>
 本作では、前作ラストでMark.6のカシウスの槍によって止められたはずのサード・インパクトが何故か発生し、人類のほとんどが阿鼻叫喚の地獄絵図の中死滅してしまった、ということになっている。まぁ、続き物ではあるものの一応1コの独立した映画作品でその詳細を省いたことは許されるべきではないが、その点の怒りは後に回す。筆者がどうしても、どうしても許せないのは、シンジくんの覚醒を彼の“罪”として描いていることである。

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 かつて“エヴァ”は、決して“ヒーローの物語”ではなかった。ナヨナヨしたもやしっ子のパイロットが主人公。たまに調子づいてもすぐ出鼻をくじかれる展開。紆余曲折を経て心を打ち砕かれたシンジくんは、旧劇場版『Air/まごころを、君に』では、作中何もしないというロボットパイロットにあるまじき怠惰っぷりを見せつける。個人的に“エヴァンゲリオン”のビジュアルや設定は数あるロボットものの中でもトップクラスだと思うだけに、そんな“漢の魂不完全燃焼”なパイロットしか描かない本シリーズが筆者は本当に本当に大嫌いだったし、残念に思っていた。

 しかし、リビルドされた新劇場版、特に『破』は違っていた。絶望の淵にあってなお心を折らぬシンジくんは、マリの導きにより再び立ち上がる。その理由は「綾波を救いたい」というシンプルで熱い想い。惚れた女、そのたった1人を救うために、彼は大地を蹴り、荒野を駆け、そして咆吼する。

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「綾波を…返せ!!!!!」


 確かに、エモーショナルな部分では、シンジくんに変化は無いのかもしれない。綾波1人のためだけに世界の終焉を呼び起こしてしまうというところでは、依然として頑固でワガママなシンジくんのままだ。でも、それでいいじゃないか。決して譲れない、自分のたった1つの信念を通すために、失った愛を取り戻すためだけに、この世の全てに牙をむく。それはあらゆる少年漫画の原則的大団円であるはずだし、少年の熱い想いと果てしない夢を体現するロボットアニメにおいても変わるものではない。シンジくんは何も間違っていないし、ロボット・パイロットとしての、紛う事なき“ヒーロー”としての彼にとって、前作ラストの選択は、たった1つの真実であったと筆者は思う。

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 もちろん、それは頑固でワガママな選択である。向こう見ずで破天荒な行いである。でも、子供の真実を守ってやるのは、大人の役目ではないのか。たとえ、一部の観客から「シンジくんのせいで人類全滅w」と揶揄されても、結果的に世界は救われました、と続編で締めくくってやるのが、総監督庵野秀明の責務ではないのか。

 筆者は、それをご都合主義とは思わない。映画の“説得力”には2つの種類がある。1つは、現実世界と同じ意味での“論理”を用いた冷静な説得力。そして、もう1つは、圧倒的な“エンターテイメント性”で以て論理をねじ伏せる熱い説得力である。例え冷静な説得力を欠いたとしても、前作ラストで見せたあの壮絶な大団円は、我々を納得させひれ伏させるだけのパワーを持っていたはずだ。ってゆーか、そもそも“カシウスの槍”というちゃんとした理屈もあったのだから、それでサード・インパクトはとりあえず止まりました、で良かったではないか。

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 しかも、前作ラストでシンジくんを後押ししたはずのミサトさんがあり得ないほど冷たくなっているのも首肯しがたい。あんなに“漢の魂”むき出しで「行きなさい!シンジくん!」って言ってたのに…。訳が分からん。

 やっぱりどう考えても、最高の熱血展開を変に“リアル”に捉え、わざわざ重箱の底を引っぺがしてまで隅の隅をつつき、人類滅亡をシンジくんのせいにすることはなかった。そんなおかしな“リアルさ”なんて思いついた瞬間にジェットソンすべきだったのだ。

 しかも、シンジくんを非難する展開が生む最大の問題点は、遡って『破』の品位まで貶めるというところである。

 筆者は、本作が4部作の内の3作目であることをもちろん知っているし、起承転結の“転”にあたることも当然考慮している。だから、本作が主人公を落とすだけ落として尻切れトンボで終わるという、1本の独立した映画作品としてクソ以下の構成に終始したことも、百歩、千歩、万歩譲って許しうるのかもしれないとは思う。もちろん、前作から3年も待たせた上でそんな観客を舐め腐った作品を作る制作陣にはクリエーターの資格すらないと思うが、それでも次作で壮大なる大団円を用意してくれているのであろうという可能性、希望、願い、祈りはまだ捨てていない。

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 しかし、次作でどれだけハッピーエンドを用意しようが、もはやシンジくんの覚醒は“罪”であるという前提は覆らない。シンジくんは、惚れた女を命がけで救ったあの熱い熱い“漢”丸出しの行いを恥じ、深く深く悔やみ、そして“やり直すべく”1歩を踏み出すことにならざるを得ないだろう。ふざけるな!

 『Q』がどうなったっていい。『シン』がどうなったっていい。でも、せめて『破』だけは、シンジくんの熱い咆吼だけは、ヒーローの圧倒的な熱血だけは、劇場に4回足を運びその全ての回で涙した筆者の熱い想いだけは、汚してくれるな!

 何かはき違えてるんじゃないだろうか?“映画”は確かに監督たるアーティストの作品だが、劇場公開する以上、それは“商品”である。“お客様”=“神様”を相手にしたサービスである。底抜けのエンターテイメントだと思わせておいて全てを前提から覆すなんてのは、これはれっきとした詐欺だ。ATフィールドを取り払った我々に対する重大な裏切りだ。

<舞曲~ボレロ~ “錨を上げて”>
 さて、筆者にエヴァの考察は手に負えないので、引き続き本作の構成、主にアクション面での感想を述べる。

 アヴァン・タイトル後、本作前半での見せ場は、レジスタンス(あるいはパルチザン)組織“ヴィレ”が誇る奇跡の翼“ヴンダー”の雄姿であろう。

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 強奪した初号機を主機(メインエンジン)としたヴンダーは、洋上を向かってくる敵(おそらくは人工使徒か。)を回避すべく、エンジンに火を入れる。このシークエンスは、正直悪くない。エヴァの醍醐味たる“作戦感”、“軍隊感”が遺憾なく発揮され、我々は、訳も分からぬ矢継ぎ早のオペレーションに翻弄される。艦橋を“戦闘形態に移行”するなんてのは、たまらなくシビれるギミックだ。

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 しかし、如何せんヴンダーが世界観にマッチしていない。あわ~くてじみ~なカラーリングもそう、骸骨鳥みたいな繊細で近未来的なデザインもそう。そもそも、エヴァンゲリオンの“作戦感”、“軍隊感”が素晴らしかったのは、その描写が極めてリアルだったからである。もちろん、元来本シリーズで用いられるフレーズが、正式な軍事用語としはことごとく意味をなさない張りぼてばかりであることは分かっている。実際、庵野監督は“格好良さそう”という男気に充ち満ちた理由のみで、ある程度適当な専門用語を引用していただけ、ということは有名だ。でも、SF作品のリアルさなんてものは、リアルに見えればいいのである。だから、庵野監督の考え方には痛いほど賛同できるし、事実本シリーズは成功を収めている。

 ところが、ヴンダーは、あまりにもSF的過ぎた。本シリーズにおいて、エヴァンゲリオン以外で登場する兵器(戦車や戦闘ヘリ、プログ・ナイフや劣化ウラン弾)は、皆ことごとく実在するもの、あるいは限りなくそれに近いものであったはずだ。だからリアルだったのだし、少なくとも充分リアルに見ることが出来た。また、明らかに空想上の兵器であるエヴァにしたって、そのデザインは既存のロボットとかけ離れたもので、“実践兵器”と言われればそうなのかなと納得出来るだけのパワーを持っていたのである。

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 ヴンダーはどうだ。これでは月光号ではないか。ミサトさんは完全にタルホ。我々が期待するのは、これではない。日本中を巻き込んだ最大のクライマックスにおいて作戦中陽電子砲を発射するために終始寝そべっているようなロボット、落下する使徒を受け止めるためにクラウチングスタートからただただ町中を全力疾走するロボット。そんなリアルなロボットであり兵器を我々は、少なくとも筆者は見たい。エウレカもどきの月並みでSFじみた戦艦などでは、決してないのである。

<五重奏~クインテット~ “月に憑かれたピエロ”>
 このように、アヴァン・タイトル、ヴンダー発進シークエンスと、アクション面だけで言うなら本作は中々素晴らしい。しかし、それにも関わらず、本作は非常に尻すぼみで1本の映画としての“てい”を為していないように感じられる。筆者は、その最大の原因が、セントラル・ドグマ内でのクライマックス・バトルにあるように思う。

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 これがとてもショボい。もちろん、映像的にはかなりスゴイのだが、展開に熱さがなく、流れに魂の震えがない。中でも一番冷めるのが、シンジくんのバカな行い。すなわち、カヲルくんやアスカの制止に耳を貸さず2本のロンギヌスの槍を抜いてしまうという行為である。

 今まで散々追い込まれて精神的に参ってしまったのは分かるのだが、それでもそもそも槍を抜いたら世界をやり直せるというのがカヲルくんの発言にのみ根拠のある憶測だったのだから、そのカヲルくんが止めろと言ったら止めるのが普通ではないのか。こういうのが一番ダメ。主人公の非合理的な行動は、どのジャンルにおいても観客を冷めさせる一番の要因である。

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 それに、カヲルくんもなんだかバカっぽい。『序』『破』で大物風を吹かせ、何やら意味深な発言ばかりしておいて、いざ月から地球に来たら結果何も出来ない。彼はただシンジくんにさらなる絶望を与えただけ。完全にピエロである。「今度こそ、君だけは幸せにしてみせるよ。」じゃなかったのか。彼は、13使徒に格下げぐらいがちょうど良い。

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 さらに、本シリーズ初、シンジ・カヲル両名同時搭乗の複座式エヴァンゲリオン“第13号機”があんまり格好良くない。見た目はほとんど初号機だから“変な初号機”としか映らない。槍1本に対して1つの魂が必要だから複座式とか、2本同時に抜くために腕2対とかはある程度合理的な設定ではあるが、覚醒後のビジュアルも格好良くないし、なんだかかなり微妙。まぁ、ファンネルを展開したのは少しだけ格好良かったけど、それもガンダムのパクリでしかない。いや、あんなもんはファンネルと呼ぶのもおこがましい。ビットで充分だ。それにどうせ複座式やるなら、シンジくんとレイの2人でやろうよ。ニルヴァーシュっぽくて絶対盛り上がったのに…。

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 そんな中途半端な第13号機が敵なもんだから、クライマックスは盛り上がらない。今回大活躍の改2号機も切り札がビースト・モードとほぼ一緒の“コード777(トリプル・セブン)”だけじゃあ締まらない。

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 Mark.9はほとんど0号機だし、8号機は大して戦闘しないし、とにかく本作の締めであり最大の見せ場であるはずのクライマックス・バトルには、総じて華がないのである。

<最終楽章~フィナーレ~ “進むべき道はない、だが進まなければならない”>
 さて、本作は、極めて尻すぼみなクライマックス・バトルを終え、考えられないほど尻切れトンボな終わり方をする。無気力の権化と化したシンジくん、ラミエル戦後シンジがレイを助けたときのようにシンジを助け手を引いて歩き出す眼帯アスカ、自我の芽生えを予感させつつSDATを拾ったのかが気になる新生綾波。オリジナルファンにはどこかしらぐっとくるものがあるこの3名が真っ赤な大地を歩き出し、終幕。

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 エンドロール後のCパートは今回無し。即予告である。予告では、半身が2号機、半身が8号機と思われるエヴァ、おそらく“8プラス2号機”が雑魚っぽい巨大ロボット相手に七転八倒の大活躍を繰り広げている。でも、もう信じない。予告編は意味を成さない。なぜなら、『Q』の予告編映像は、本編で一切使われなかったから。なんなんだ、まったく。あれが空白の14年の出来事とか、それをテレビかOVAでやるのでは、とか憶測が飛び交っているが、何にせよ、客を舐めきっている。

 と言うわけで、待望の本作鑑賞後、第1報としての感想を一言で言うなら、本当にがっかり、である。

<点数~Mark Out Of 100~ “しりぞけ、もの悲しき影(結婚カンタータ)”>
 こんなに客を舐めた作品は45点でももったいない。が、まぁまだ個人的には『EOE』よりちょっとだけマシだったかなと思い、この点数。本当に次回作は、このもの悲しさを退けてくれる圧倒的“ヒーロー譚”を期待する。何はともあれ、11月に結婚した“サード・チルドレン”のみなさん、おめでとう!

<おまけ~An Aditional Part~ “男たちはいつもつまみ食いしたがる”>
 とりあえず、本作で登場した“謎”を列挙していきたいと思う。全部はとても無理なので、あくまでも思いつくまま、つまみ食い感覚で。新たに発見したり思いついたりしたらその都度加筆訂正していく。

●サード・インパクトは何故、どのようにして起こったか。
 ・ドグマ内で形状変化したリリス。
 ・ドグマ内に放置されていたMark.6。
 ・EOEを彷彿とさせる巨大綾波の頭部。
 ・外界にある月のような巨大天体。
 ・廃墟と化した街に横たわるおびただしい数の“エヴァ”の残骸。
  →“インフィニティのなり損ない”すなわちサード・インパクトによって誕生した新たなる生命の可能性あり。しかし、何故拘束具が取り付けられているのかは説明困難。
 ・異常なまでにシンジに冷たいミサトらの態度。

●“エヴァの呪縛”とは何か。
 →現状では“体年齢が14歳から成長しない”という結果(効果)のみ確定。プラグ深度を規定域よりオーバーした者(新劇中ではシンジ、アスカ、マリ)に発症するとの意見あり。

●“アダムスの器”とは何か。
 →魂を抜かれたアダムスの体、あるいはカヲルくんが“アダムスの生き残り”であることからアダムスのコピーのことを指すとの意見あり。

●“ユイの写真にマリが写っていた”という見解の真偽。
 →マリがユイ・ゲンドウと同級生説あり。根拠は、この写真の他に、ゲンドウを“ゲンドウくん”と呼ぶこと、昭和の歌ばかり口ずさむこと等。子供の容姿を保っている理由は“エヴァの呪縛”か。

●トウジらの消息。また、トウジのシャツをシンジに与えたことの意味。
 →“トウジはジャージしか着ない”という意見もあったが、ちゃんと学生服着用シーンも存在(TV版シャムシエル戦時の初号機コクピットに表示された証明写真等。)。

●倒壊したネルフ本部での文字化けしたネルフマークの意味。

●アスカの「リリンが近づけるところまで~」発言の意味。
 →アスカに関しては、第9使徒に浸食され“半使徒化”しているという意見が有力。通常時の眼帯下には、レイ・カヲル同様の赤い瞳がある可能性あり。

●カシウスの槍の行方。
 →ヴンダー発進時、改2号機γがエンジン点火に用いた槍では?との意見あり。筆者は、カシウスではなくより人工物っぽいものと見受けた。なお、槍の名称については“ロンギヌス”“カシウス”の他に“ガイウス”が存在するとの意見あり。根拠はカエサル暗殺の首謀者たる裏切り者ガイウス・カッシウス・ロンギヌスという人名。また、彼は暗殺の後『神曲』に言う嘆きの川“コキュートス”で氷付けにされたことから、4本目は“コキュートスの槍”との意見もあり。

●ロンギヌスの槍が2本あった理由。

●“インフィニティ”とは如何なる存在か。
 →カヲルの説明では、ドグマ降下途中で大量に放置されていたエヴァらしき巨人が“インフィニティのなり損ない”とのこと。

●初号機が封印の上宇宙空間に放置された理由・経緯。

●初号機強奪時、及びヴンダー起動時に出現した“敵”の正体。
 →ネルフあるいはゼーレが人工的に創り出した使徒の可能性あり。根拠は、パターン青にも関わらず作中一度も“使徒”と呼称されないこと、コアではなく“コアブロック”と呼称されること、コアブロックの意匠が初号機の肩部分に似ていること、初号機封印棺から出現した際蓋部分にネルフマークが確認されること、アンチATフィールドを発生させていること、仮に正規の使徒であった場合、宇宙戦時が第11使徒、ヴンダー発進時が第12使徒となり、Mark.6が第12使徒という事実と矛盾すること等。さらに、宇宙戦時の敵のパターンが“≒BLUE”であるということが確認されている(正確には“≒”ではなく、海外で同じ意味として使われる“~”を縦に2つ並べたような記号が用いられている。)。反対意見の根拠として、宇宙戦時、撃破後使徒特有の“契約の虹”が発生していたことが挙げられる。

●綾波レイの行方。
 →現状では、未だ初号機と融合したままという意見が有力か。シンジと初号機とのシンクロ率が0%なのは、綾波レイが「碇くんがもうエヴァに乗らなくて良いようにする…!」という『破』での決意を実践しているからとの意見あり。

●ヴンダー内でシンジに語りかけたのはアヤナミレイ(仮称)か綾波レイか。

●LCL水槽に浸かる全裸レイとそれを見る制服レイはそれぞれ一体どの“レイ”なのか。
 →水槽内レイが『破』までのレイで制服レイがアヤナミレイ(仮称)との意見もあるが、アヤナミレイ(仮称)は本作中黒色スーツしか着用していないため不自然。逆に水槽内レイがアヤナミレイ(仮称)とすると制服レイの正体が一切分からないが、旧劇新劇を通して制服姿で“幻”として登場する綾波レイが確認されている。

●イメージカラーが青である反面、全編赤色が強調されていた意味。(エンドロールにおける文字発光まで赤色。)

●ゲンドウがキール風のバイザーを装着している理由。

●SDATが28曲目、29曲目と進む意味。
 →一義的には『破』で27曲目まで進んだ(TVシリーズ及び旧劇場版の26話より先に進んだ)物語の更なる前進の比喩か。

●冬月の将棋シーンについて。
 →シンジと将棋を指す際、冬月の“あと31手で君の詰みだ”との発言があり、先述のSDATの曲が31曲目まで進むことを示唆しているとの意見あり。
  また、この“31手で詰み”発言の約31分20秒後にカヲルが死亡するという情報あり。本当だとすると、冬月の発言は1分を1手とした上で後の展開(カヲルの死亡によりシンジが“詰む”という展開)を示唆していたことになる。
  さらに、冬月はシンジへのハンデとして“飛車角金落ち”を提案しているが、そのようなやり方は通常存在しない。存在するのは“飛車角香落ち”である。そして、香車が“やり(槍)”と呼ばれるコマであることから、ネルフサイドがロンギヌスの槍を2本仕込んでいた=カシウスの槍を保有していることの示唆であるとの意見あり。


●カヲルは何故第13の使徒になったのか。
 →そもそもカヲルは、Mark.6の素体=月の巨人=アダムスの生き残りの抜き取られた魂を人型の肉体に入れた存在であると仮定。その上でドグマ内に封印されたMark.6を発見、ゲンドウは自身を(または第13号機も含めて)アダムではなく本来予定されていない“第13の使徒”として処理するつもりだと悟った、という意見あり。あるいは、第13の使徒すなわち“ヒト”に堕とされた、という意見もあり。いずれにせよ、カヲル死亡時に契約の虹が出現しなかったのは、彼が契約外の第13使徒になったからであろう。

●第13号機は何故“エヴァ13号機”ではないのか、また何故ATフィールド非展開なのか。
 →まず、頭に“Mark.”を冠する機体はアダムスに拘束具を取り付けたものである可能性(“建造方法が違う”と言及されたMark.6は月の巨人をそのまま用いていたように見えたし、Mark.9は“アダムスの器”と呼ばれていた。)。その上で“第”というのは“Mark.”に相当する接頭語であると考える意見(“第”はネルフ建造、“Mark.”はゼーレ建造、あるいは前者は日本建造、後者はユーロ建造か。)。さらに、第13号機は結果(カヲルを含めて)“第13使徒”になったことから使徒の呼称である“第○○(使徒)”とエヴァの呼称である“(エヴァ)○○号機”を合わせた呼称になっているとの意見あり。

●ゼーレの正体、また何故満足気に消滅したのか。

●フォース・インパクト時地下から出現した巨大オブジェは旧劇同様“黒き月”なのか。

●エヴァ7、10、11、12号機の消息。

●新劇場版は虹の七色に掛けたテーマカラーが設定されており『破』と『Q』の間には2話分の抜けがある、すなわち、赤橙黄緑青藍紫の黄と緑が抜けている(+次作は藍と紫の2部作になる)という説の真偽。
 →筆者も4作分のテーマカラー公表時、1作目2作目と連続して暖色を用いたことに違和感を感じたため、この説に若干の信憑性を感じる。

●新劇場版は英副題の(not)が付くストーリーと付かないストーリーを交互に作劇している、すなわち、『序』ではシンジは1人ではなかった(You are not alone.)、『破』ではシンジは性格的にも行動的にも1歩前進した(You can advance.)、『Q』ではシンジは結局サード・インパクトの過ちをやり直すことは出来なかった(You can not redo.)という説の真偽。
 →上記虹に関する説と比べてみても順番的に青が(not)ありになることは説明できる。両説に整合性あり。異なる意見として、全作それぞれアイキャッチ以前と以後で(not)のある展開とない展開が描かれているだけである、との主張あり。

●本作の英題“EVANGELION 3.0”の“0”が空集合を表す“φ(ファイ)”ではないかとの意見あり。前2作と見比べると、確かに斜線が突き抜けている。これが本当なら、本作は“元を持たない集合”すなわち前作までと関係の無い作品、あるいは予告とは関係の無い作品ということになり、パラレルワールド説、ループ説、マルチエンディング説の根拠となり得る。さらに、パンフレットが『序』『破』は左開きなのに対して『Q』だけ右開きとの情報あり。やはり何らかの理由で本作だけ差別化する意図があるように思われる。

1・0

2・0

3・0


 これは鎌倉ぼんぼり祭りのために庵野監督自身が書き下ろしたエヴァ8号機。これを見ても、やはり“0”と“φ”を書き分けているように思える。

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●次作タイトル『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』に込められた意味。
 ・“シン”の意味。
  →現状では“新”“真”“神”などが有力。
 ・“ヱヴァンゲリヲン”ではなく“エヴァンゲリオン”に戻した理由。
 ・“:||”は反復記号なのか、あるいは『序』『破』『Q』にも付いていた“:(コロン)”を除いた終止線なのか。
  →下の画像(公式ホームページより。)から“:(コロン)”では“||”との間隔が狭すぎるとの意見あり。やはり反復記号か。

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(劇場鑑賞日[初]:2012.11.18)
(劇場:ユナイテッドシネマ岸和田)

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