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2012

[No.190] 007 慰めの報酬(Quantum of Solace) <72点>

CATEGORYアクション
Quantum Of Solace



キャッチコピー:『傷ついた心が、共鳴する。』

 復讐の銃弾を胸に込め、二人のスパイは荒野を行く。

三文あらすじ:最愛の女性ヴェスパー・リンドを失ったジェームズ・ボンド(ダニエル・クレイグ)は、彼女を利用した組織の人間“ミスター・ホワイト”(イェスパー・クリステンセン)を捕らえ尋問するが、MI6に潜入していた敵の手引きにより取り逃がしてしまう。僅かな手がかりから巨大犯罪組織“Quantum”の中心人物ドミニク・グリーン(マチュー・アマルリック)に辿り着いたボンドは、元MI6エージェント、レネ・マティス(ジャンカルロ・ジャンニーニ)やCIAエージェント、フェリックス・ライター(ジェフリー・ライト)の助けを借り、ドミニクが天然資源採掘利権を得る代わりに、ボリビア政府へのクーデターを企むメドラーノ将軍(ホアキン・コシオ)を支援しようとしていることを特定。そんな中、ボンドは、メドラーノに家族を殺され復讐を誓う女性カミーユ(オルガ・キュリレンコ)と出会い、共に戦うことになる・・・

<本作の主題歌“Another Way To Die”>


~*~*~*~

 
 007シリーズ第21弾作品『慰めの報酬』。本作は、本シリーズの他の作品たちと比べていささか“異例”なことが多い。

 まず、本作は、007シリーズで唯一前作からの直接の続編として語られる。確かに、『女王陛下の007』ラストで最愛の妻トレーシーを殺されたボンドが、その敵討ちとしてアヴァンであっさりブロフェルドを殺してしまった『ダイヤモンドは永遠に』も、いわば“続編”と言えなくはない。しかし、同作がオープニング以後、前作をほとんど無視して展開されたのとは異なり、本作は、よりはっきりきっちりとした“続編”だ。ヴェスパーを利用した組織に所属する人物ミスター・ホワイトにボンドが銃弾を叩き込んだ前作『カジノロワイヤル』のラストから引き続き、本作アヴァンは、ホワイトを護送中のボンドとそれを追う敵との壮絶なカーチェイスからスタート。取り立てて新しい試みは見られないものの、往年のボンドでは考えられないくらい激しくスピーディなアクションに目を奪われる。

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 そして、主題歌。アリシア・キーズザ・ホワイト・ストライプスが歌う『Another Way To Die』は、シリーズ唯一の男女ボーカルによるデュエット曲である。これはおそらく本作が、ボンドとカミーユ、2人の“復讐のための共闘”というテーマを描いた作品だからであろう。

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 このテーマによって、シリーズ中最も異例と言っても過言ではないキャラクターになっているのが、本作のメイン・ボンドガールであるカミーユだ。彼女は、最後までボンドとセックスしない。したがって、以前述べた筆者の感性によれば、彼女は“ボンドガール”ではない、ということになる。彼女は、ボンドと同じように“傷”を負い、ボンドに共鳴し、共に“復讐”という目的に向かって進む。

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 それは、ボンドの魅力の虜になって一夜限りの“大人の恋”を楽しむボンドガールではもちろんなく、おそらくヒーローを支えるヒロインでさえなく、彼と立場を同じくして戦う“同志”であろう。ラストでそれぞれの復讐を終えた2人が車中で接吻を交わすが、これもいわゆる“キス”のようなロマンティックなものではなく、可及的に近似した概念を探すなら“握手”とでも言うべきものに違いない。

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 では、ここで改めて、カミーユを演じるオルガ・キュリレンコについて。ウクライナ人の父とロシア人の母の間に生まれたサラブレッド・ビューティー。心の“影”が印象的だったヴェスパーとは違い、彼女が体現するのは“強さ”。復讐の銃弾を撃ち込む意志の“強さ”、そして、ボリビアのシークレット・エージェントとして敵を圧倒するスパイとしての“強さ”。これまた鑑賞後の結果論でしかないが、両者を端的に象徴する彼女の健康的な美貌は、まさにカミーユにうってつけであったと思える。

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 ボンドガールだけでなく、主人公ジェームズ・ボンドに関しても本作は異例。彼は、作中一度も「Bond. James Bond.」という恒例の名乗りを行わない。これはやはり、前作と本作が直接の続編であり、厳密には両作合わせて1つのストーリーであることの象徴であろう。

 また、本作はシリーズで初めて“ガン・バレル・シークエンス”がラストで登場する。これも2本合わせて1つのストーリーだからこその趣向だと、筆者は本作公開時独り悦に入っていたのだが、最新作『スカイフォール』においても同シークエンスがラストで登場したので、今後はそのように変更するのかもしれない。

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 そんな異例づくしの作品を撮った監督は、というと、『チョコレート』、『ネバーランド』、『君のためなら千回でも』など、良質のドラマを数多く綴ってきたマーク・フォスター。彼がアクション大作を撮るというのもまた異例だが、それ故の斬新な手法なども用いられており、個人的には中々好ましいと思った。例えば、『トスカ』をバックにボンドがアクションを繰り広げるというシークエンスは、シリーズ屈指のエレガントなアクションに仕上がっていたのではなかろうか。

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 とはいえ、制作陣は何も“異例”ばかりにこだわっている訳ではない。筆者が発見できたのはほんの若干ではあるものの、ファンにはうれしい往年の007シリーズへのオマージュが垣間見える。

 例えば、本作におけるサブ・ボンドガール、ストロベリー・フィールズ嬢(ジェマ・アータートン)。領事館でデスクワークをしていたはずの彼女は、ボンドと寝たがために石油の中で溺死するという無残な最期を辿る。全身石油まみれのままホテルのベッドにうつぶせで放置された彼女の姿。これはシリーズ第3作にして、未だシリーズ最高傑作と語るファンも多い名作『ゴールドフィンガー』へのオマージュだ。

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 上が『ゴールドフィンガー』において金粉まみれで殺されたジル・マスターソン(シャーリー・イートン)。下が本作のフィールズ嬢。

 その他にもシリーズではお馴染みのユニバーサル・エクスポート社。MI6が隠れ蓑とする幽霊会社であり、ボンドは過去にも何度かその社員として身分を隠してきた。そして、本作でもドミニクの元を訪れたボンドが、ユニバーサル・エクスポートの名刺を部下に渡すシーンが登場する。

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 まぁ、これに関してはオマージュというよりも、ボンドというキャラクターの設定をただ踏襲しただけと考えるべきかもしれないが、割とあからさまな描き方がされていたので、製作者がファンサービスとして盛り込んだ可能性は十分にあるだろうと思う。

 とにもかくにも、以上のようなオマージュというのは、長年愛されてきたシリーズものの醍醐味であり、製作者のファンサービスには感謝しきりである。とはいえ、やはり秘密兵器もボンドカーも名乗りも一夜の情事も不十分な本作には、若干の物足りなさを禁じ得ないのも事実。そういった意味において、本作が“シリーズ最低の作品”と揶揄されることにも、一方では納得である。

点数:72/100点
 孤高のスパイ、ジェームズ・ボンドの“復讐”を極めてストイックに描ききった硬派な作品。異例づくしの本作は、確かに“007らしさ”という点で往年のシリーズ作品に劣るかもしれない。まぁ、往年の頑固なファンにとって、さしずめ本作は、“Damage Goods”といったところなのだろう。とはいえ、やはりスタイリッシュでリアリティ溢れるクレイグ・ボンドの格好良さは健在。『スカイフォール』で世間の評価も取り戻した新生ボンドの次なる活躍が待ちきれない。

(鑑賞日:2012.12.14)










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