--
--

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
28
2012

[No.20] ヒルズ・ハブ・アイズ(The Hills Have Eyes) <72点>

CATEGORYホラー
Hills Have Eyes



キャッチコピー:『The Lucky Ones Die First.』

 壁に耳ありヒルズに目あり。

三文あらすじ:ニューメキシコ州の砂漠をキャンピングカーで横断中のカーター一家。ガソリンスタンドの主人に近道を教えてもらい、のんびりドライブする彼らだったが、突然車がパンク、砂漠の真ん中で立ち往生してしまう。男達は徒歩で助けを呼びに行き、女達はトレーラーで各々の時間を過ごすが、その様子を丘の上から、核実験の影響で突然変異した食人鬼たちが監視していた・・・

 
~*~*~*~


 70年代に制作された『サランドラ』のリメイク。監督は『ハイテンション』でオチの賛否両論を含めホラーファンから絶賛の嵐を受けたフランスのスプラッターマニア、アレキサンドル・アジャである。彼は、コブラのハリウッド実写版『Cobra: The Space Pirate』の監督も任されたそうで、今後が楽しみな新人だ。

hhe10.jpg


 オリジナルの『サランドラ』は単調な見せ場とコスプレみたいなクリーチャーが特徴の退屈ホラーだったらしいが(まぁ、そこが魅力だと言う人も多いのだが)、これを忠実にリメイクしたという本作は、なかなかどうして素晴らしいスラッシャームービーに仕上がっている。

 まず、オープニングは50~60年代っぽいのん気な音楽に乗せて、核実験の映像が次々と映し出される。『博士の異常な愛情』のラストを彷彿とさせるような演出だが、ときどき挿入される奇形児の画像がとてもショッキング。これは枯れ葉剤の影響を受けた赤ちゃんの実際の写真を使用しているそうで、本当に不謹慎だとは思うがとても気持ち悪い。しかし、この冒頭のシーンが強烈な核への悪印象を観客に与え、核実験の影響で生まれた食人鬼たちのキャラクター造形に貢献しているとも言える。

hhe5.jpg


 そう、本作はへんぴな田舎を訪れた旅行者が現地の殺人鬼に次々惨殺されていくという『悪魔のいけにえ』系のプロットであるが、本作で主人公一家を襲う食人鬼たちはレザーマンのように趣味で人殺しをしている訳ではない。彼らは、核による遺伝的影響を否定する政府から歴史上抹殺され人前にも出ることができないがために、人を食べてなんとか命を繋いでいるというある意味で被害者的な殺人鬼なのである。

hhe8.jpg


 一般的なホラー映画のプロットとしては、主人公サイドが結局全員殺されてしまうか、主人公サイドが後半反撃に転じるか、とまぁだいたいこの2通りが考えられる。そして、本作はそのうちの後者に属するプロットが採用されている。ということは、ストーリーテリングの常識として、可愛そうな食人鬼が逆襲を受ける後半の展開を物語上正当化するための要素が必要になってくるだろう。いわば食人鬼のバックボーンに見合うだけの重りを逆の天秤皿に乗せる必要があるわけだが、本作の食人鬼たちの悲しい生い立ちを考えると、「主人公達がただ殺される」という通常のホラー映画のような展開だけでは足りないのではないか。主人公サイドの“正当防衛”を正当たらしめるためのもっと強烈な行いを食人鬼サイドが行うのではないか。という具合に一応予想はしながら観ていたのだが、それにしても食人鬼たちの残虐の限りには目を回しそうになった。

hhe12.jpg


 前提として、主人公たちの家族構成は以下の通りである。25年警察官を勤め上げ退職したボブ(テッド・レヴィン)、その妻エセル(キャスリーン・クインラン)、長女リン(ヴィネッサ・ショウ)、その娘婿ダグ(アーロン・スタンフォード)、リンとダグの赤ちゃんキャサリン、次女ブレンダ(エミリー・デ・レイヴィン)、長男ボビー(ダン・バート)、そして飼い犬のビューティーとビースト。分かりやすく言うと、ボブが波平、エセルがフネ、リンがサザエさん、ダグがマスオさん、キャサリンがタラちゃん、ブレンダがワカメ、ボビーがカツオ、ビューティー&ビーストがタマである。

hhe11.jpg


 この家族がまた極めて普通の幸せなアメリカ家庭として描かれる。ボブは適度に頑固ジジイだし、エセルは適度に明るいおばあちゃんだし、リンはしっかり者の長女、ダグは義父とあまり上手くいかない娘婿、ブレンダは少し反抗期のティーンエージャー、ボビーは思春期に片足を突っ込んだぐらいでまだ無邪気さの残る少年である。で、この家族に食人鬼がむちゃくちゃするのである。

 まず、助けを求めに一人ガソリンスタンドへ戻ったボブ(波平)は彼らに捕らえられ、生きたまま焼き殺される。しかも、食人鬼たちは、いわゆるミュータントにもかかわらず知能は普通の人間並にあるので、ボブの焼死を陽動作戦に利用するという卑劣な一面も見せる。

 ボビー(カツオ)の警告を聞かず、トレーラーとそれを牽引する乗用車に別れて就寝する家族たち。ボビーが外の気配を察知しトレーラーから出た隙に、食人鬼2人がトレーラーに侵入、ブレンダ(ワカメ)を羽交い締めにする。しかし、ボビーはこれに気付かず、乗用車で眠るダグ(マスオさん)、リン(サザエさん)夫妻の元へ「外に何かがいる!」と伝えに行く。いや早よトレーラーに戻らんかい!ここはすごくもどかしい。上手い演出だ。

hhe1.jpg


 今にもブレンダが襲われそうなトレーラーに彼らが戻ろうとしたとき、その気配を察知した食人鬼がトランシーバーで他の仲間にボブを燃やすよう指示する。殺人鬼側が密に連絡を取り連携プレーを演じるというのが斬新。突如砂漠のただ中で燃えだしたボブに驚き、そちらに向かって消火に努めるダグら。早く戻ってと願う観客の祈りも虚しく、ブレンダはグロテスクな食人鬼に…レイプされてしまう! 確かに、明確かつ直接的な描写こそ無いものの、ブレンダがレイプされたという事実は、DVD特典のインタビューで監督自身が認めているらしい。なんと悪趣味な!

hhe6.jpg


 その後、やっとリンがトレーラーに戻るが、赤ちゃんを人質にされ抵抗できない。そして、グロテスクな食人鬼に…おっぱいを舐められる! もう最悪だ。悪趣味すぎる。しかも、食人鬼は、次に入ってきた放心状態のエセル(フネ)をいきなりショットガンで撃ち殺し、小さな抵抗を見せたリンも撃ち殺し、赤ちゃんを誘拐して逃走。遅ればせながらトレーラーに戻ったダグとボビーは絶望し、ブレンダは泣き叫ぶ。

  きっつい展開…。極めてショッキングだ。特にリンは、ホラー映画のノリ的に最後まで生き残りそうなキャラにもかかわらず、あまりにもあっさり殺されるので愕然とする。

hhe9.jpg


 まぁ、これが先ほど述べた天秤のもう一方の皿に乗る重りになって、後半生き残りの家族が反撃する際には抜群のカタルシスを生む起爆剤となるのだが、果たしてここまでする必然性があったのだろうか。せめてブレンダのレイプは止めて欲しかった。『ザ・フライ』みたいにならないことを切に願うばかりである。

 とにかく、そんなこんなで家族の大半が犠牲になり、後半は、赤ちゃんを取り戻すため敵の本拠地に単身乗り込むダグとトレーラーに残りなんとか身を守るボビー・ブレンダ兄弟の様子が2本軸で展開する。

hhe3.jpg


 しかし、後半のメインは、なんと言ってもダグの逆襲だろう。前半のダグは、携帯会社に勤め、砂漠でも仕事の電話を気にするあまり携帯を手放せない”やわなサラリーマン”として描かれる。さらに、民主党支持者で銃や暴力には反対という優男で、警察一筋25年でマッチョなノリのボブとは対照的に描写されているのも印象的だ。後半の展開では、そんなダグが、赤ちゃんを取り戻すため敵の本拠地に乗り込み、殴られたり閉じ込められたりしながら満身創痍で大活躍。ボロボロで血まみれのその姿は、まるでブルース・キャンベルである。

hhe7.jpg


 ダグが覚醒して食人鬼たちをためらいなく殺し始めるきっかけが、斧で小指と薬指を切り落とされるシーンなのだが、ここも左手を切り落としたアッシュになぞらえているのではないだろうか。指切断後のダグは、もはやどっちが殺人鬼か分からないというぐらいすごい勢いで食人鬼たちを血祭りにあげていく。斧で脳天をかち割り、斧の刃と反対側に付いたトゲを目玉に叩き込む。そして、あれほど嫌っていた銃を手にし容赦なくぶっ放すのである。

hhe4.jpg


 この惨殺劇は、確かに前半で積もり積もったストレスを一気に発散するカタルシスとなるのだが、食人鬼たちのバックボーンに思いを致すとなかなか複雑だ。核実験による”アメリカの被害者”としての食人鬼たちを、テロに対する報復とばかりに虐殺していく”典型的なアメリカ家庭”のダグ。覚醒したダグが、食人鬼の一人にとどめを刺すため星条旗を突き立てるのも意味深だ。その他にも、食人鬼一家の一員でありながらボビーや赤ちゃんを助け、最後はダグを救うためその身を犠牲にするルビーという女の子が出てきたり、犬のビューティーとビーストのうち”ビューティー”が食人鬼に殺され、”ビースト”がその敵(かたき)とばかりに彼らをかみ殺していくという展開も何かしら考えさせられるものがある。

hhe2.jpg


 このように、スラッシャームービーでありながら一筋縄ではいかない深いテーマを内包している本作であるが、これ以上の詮索は筆者の信条に反するのでやめておく。

点数:72/100点
 筆者はこういうリアルなスプラッターは割と苦手だし、作品上如何に効果的であってもやはりレイプは胸くそ悪いと感じてしまうので、本作の客観的な出来より点数は辛めである。しかし、全編に緊張感が張り詰め、非常にいいテンポでストーリーが進行していく本作が、かなり上質のスラッシャームービーであることは間違いない。主人公サイドの、なんでもっと頭を使わないんだ!というベタな行動(例えば、ドライバーをなぜか致命傷にならない太ももに刺すリン。)とか、食人鬼サイドの、そんな余裕見せてるから結局やられるんやん!というベタな行動(例えば、階段でこけたダグをちゃんと引っ張りおろしてから斧で切ろうとする食人鬼。)なども教科書通りに描かれるので、往年のホラーファンも突っ込みながら楽しめるはずだ。とりあえず、観終わったらどっと疲れる映画である。

<おまけ>
 これが本作のオリジナル『サランドラ』の予告編。このゆる~い感じがたまらなくいいね。さぁみんな一緒に…「ザ・ヒルズ・ハヴァ~イズ!」



(鑑賞日[初]:2012.1.27)










ヒルズ・ハブ・アイズ [DVD]

新品価格
¥1,333から
(2013/3/24 00:12時点)


Hills Have Eyes [Blu-ray] [Import]

新品価格
¥1,331から
(2013/3/24 00:13時点)


ナショナル ジオグラフィック 世界のどこでも生き残る 完全サバイバル術 自分を守る・家族を守る (ナショナルジオグラフィック)

新品価格
¥2,520から
(2013/6/24 04:17時点)


磯野家の謎

新品価格
¥550から
(2013/3/24 00:14時点)



関連記事
スポンサーサイト

Tag:悪趣味映画 グロ注意 予告編最強説 砂漠 リメイク映画

0 Comments

Leave a comment

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。