[No.203] ダイ・ハード / ラスト・デイ(A GOOD DAY TO DIE HARD) <70点>

Die Hard5



キャッチコピー:『運の悪さは、遺伝する。』

 A GOOD DAY TO ENJOY YOUR VACATION.

三文あらすじ:音信不通だった息子のジャック(ジェイ・コートニー)がロシア警察に拘束されたことを知ったNY市警の刑事ジョン・マクレーン(ブルース・ウィリス)は、娘のルーシー(メアリー・エリザベス・ウィンステッド)に見送られながら単身ロシアに渡る。出廷するジャックを追って裁判所を訪れたマクレーンは、そこで武装集団の襲撃に巻き込まれ、ジャック及びロシアの大物政治家チャガーリン(セルゲイ・コルスニコフ)から命を狙われている元政治家ユーリ・コマロフ(セバスチャン・コッホ)と共に追っ手から逃げることに。世界一不運な“不死身の(Die Hard)”父親は、異国の地ロシアで、息子と共に陰謀渦巻く戦いに挑んでいく・・・

 
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 非常に遅ればせながら、やっと観てきた本作『ダイ・ハード/ラスト・デイ』。“ラスト・デイ”なるタイトルは実は邦題で、原題は“A GOOD DAY TO DIE HARD”。前作ではニューハンプシャーの標語をもじっていたが、本作ではインディアンの言葉“It's a good day to die.”をもじっているらしい。

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 さて、末席ながら『ダイ・ハード』ファンを自負する筆者が本作を観た感想は、一言で言って“物足りない”、である。後で知ったのだが、本作の上映時間は、シリーズ最短の98分。物足りなさの原因として、尺の短さという点がまずあるだろう。

 しかし、物足りなさの決定的な原因は、息子との共闘という展開を選択してしまった点にこそあると思われる。

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 前作におけるマクレーンの娘ルーシーは、一応主役級のキャラクターであった。しかし、彼女は、マクレーンに守られる側であったから、彼の活躍を邪魔することはなかった。また、マクレーンとコンビを組むファレルにしても、テロリストとの戦いは未経験のずぶの素人。全編マクレーン主導で物語が進行する。この関係は、一介の電気屋とコンビを組んだシリーズ3作目も同様だ。

 しかし、本作においてマクレーンとコンビを組むのは、CIAエージェントである息子ジャック。NY市警の一刑事であるマクレーンより、当然ジャックの方がテロ対策には長けている。もちろん、そこはまだまだ未熟なジャックをマクレーンがサポートする、という展開を用意してはいるのだが、どうしてもジャックとマクレーン、半々の描写になっている感は否めない。

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 我々は、少なくとも筆者は、ジョン・マクレーンの活躍をじっくり観たいのだ。ただの刑事がテロに巻き込まれ、他にする奴がいないから愚痴りながらも仕方なくワルと死闘を繰り広げる。そんな展開こそが『ダイ・ハード』の醍醐味であった。彼は決してステレオタイプな“ヒーロー”ではない。そんなつもりは微塵もないのに毎回トラブルに巻き込まれ、いやいやながら結果的に世界を救ってしまう。言うなれば“巻き込まれ型ヒーロー”である。

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 しかし、本作はちょっと違う。マクレーンは、息子の危機を見るや自らやっかいごとに飛び込んでいく。ジャックの任務が失敗し、これにてこの件は終了、となってもジャックをけしかける。もちろん、息子のピンチを助けるのは親として当然の心理だろうし、ふて腐れるジャックを奮い立たせワルに挑んでいく姿は、非常に格好いい。しかし、そこには、我々が愛した、愚痴ばかりこぼすあのマクレーンの姿はもう無い。一応作中しばしば「なんて休暇だ…!」とぼやいてはいるものの、その姿は既にかつての“世界一運の悪い男”からは程遠いものになっている。

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 物足りなさを感じる原因は他にもある。シリーズお決まりの名言「Yippee-ki-yay, Motherfucker!」の出し方がいまいちなのである。

 シリーズ1作目では、グルーバーがマクレーンを“カウボーイ”と呼び、それに応える形で登場した。この段階では、まだお決まりの名言ではないので、仰々しく演出する必要はない。そして、2作目。もはや『ダイ・ハード』を象徴する台詞となったカウボーイの叫びは、敵の旅客機を大爆発させるという最高のクライマックスで用いられた。これは抜群である。3作目も悪くない。これまた敵のヘリを爆破させるクライマックスでの使用。4作目では一段と地味になったものの、やはり敵のボスを倒す際の決め台詞として悪くなかった。

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 ところが、本作では、極めてショボい使われ方をする。場面は一応クライマックス。敵の戦闘ヘリに忍び込んだマクレーンは(ここだけ唯一往年の『ダイ・ハード』感がある閉鎖空間でのスニーキングシーン。)、ジャックへの狙撃を阻止するため、ヘリに積まれた大型のジープに乗り込み、鎖に繋いだジープでそのままヘリの後部ハッチから飛び出していく。つまり、ヘリはジープを吊り下げた格好になり、制御を失って墜落するというわけである。そして、肝心の名台詞は、マクレーンがジープでヘリから飛び出す直前で登場。敵のボスは建物の屋上でジャックと対峙しているから、今までのように最後の最後の決め台詞という訳ではない。銃を撃ったり何かを爆発させたりというアクション的に格好いい展開でもない。単にジープを運転しただけである。マクレーンの活躍を楽しみにしていた筆者としては、非常に物足りなかった。

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 しかし、これは、おそらくジャックへの代替わりを物語の軸に据えていたからだろう。「Yippee-ki-yay, Motherfucker!」を言う直前、マクレーンはこのように発言する。「子供に尽くすのが親だ。」

 そして、この軸は、敵のボスが倒されるクライマックスにも顕著。屋上でコマロフを捉えたジャックは、コマロフの話にも耳を貸さず、そのまま地上へと投げ飛ばす。そう、まるでナカトミ・プラザからグルーバーを落下させた父親のように。落ちていくコマロフがスローモーションで描かれるのもグルーバーの最期に酷似。1作目へのオマージュがファンにはうれしく、そしてまたジャックが父マクレーンの志を継いでいくであろうことが感じられるシーンである。

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 そういえば、本作では、敵の中ボス(野菜スティックばかり食べていた男)が、中盤でマクレーンとジャックに向かって「俺はアメリカ人が大嫌いだ。特にお前らみたいなタフガイはな。」というシーンがある。日本語字幕では“タフガイ”となっていたが、英語では“COWBOY”と言っていた。“Yippee-ki-yay, Motherfucker!”との対応をしっかり意識した素晴らしい脚本に賛辞を贈りたい半面、字幕担当の戸田奈津子をやや呪いたくなるシーンである。

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 ちなみに、シリーズへのオマージュという意味では、犯人の動機が素晴らしかった。本シリーズでは、思想犯あるいは政治犯と見せかけて実は現金目当てという動機が伝統。本作では、政治犯の証拠であるファイルの争奪戦と思わせておいて、実は高額で取引される濃縮ウランが犯人の目的だった、というナイスなどんでん返しが用意されている。ただ、コマロフが二重スパイ的な真犯人だった、という展開は正直不要だった気がしなくもない。その辺の展開を複雑にしたせいで尺が取られ、筆者の期待したマクレーンの活躍が削がれているとも思えるからである。

 その他、筆者が気にくわなかった点で特筆すべきは、ジャックをCIAエージェントにした陳腐さだろうか。

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 舞台はロシア。キーパーソンは政治犯。そこに介入するのがスパイときては、まんま007である。実際、マクレーンもジャックに対して「ニュージャージー生まれの007か。」と茶化しているし。つまりは、舞台設定が古くさいのである。『ミッション・イン・ポッシブル/ゴースト・プロトコル』のときも思ったのだが、今時ロシアVS西欧という構図を描くのは、古くないのだろうか。しかも、同作も本作も問題になるのは核爆弾的なもの。昔ながらのスパイがやってきたテーマを今改めて描く、というのが逆に新しい感じになっているのかもしれない。

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 ジョン・マクレーンと言えば、いるべきでない時にいるべきでない場所にいる、でお馴染み。確かに本作でも、彼はロシアという場違いなところに、CIAの作戦展開中に現れる。とはいえ、プロットが昔ながらなので、なんだか軸がブレいるように思えてならないのである。この点では、デジタル社会に取り残されたアナログ男という前作の設定の方が、数倍優れていたと思える。

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 もっとも、スパイが極秘ファイルを巡り冒険を繰り広げる、という古典的なパターンに観客を乗せ、実は現金目当てだったという点をぼかしていたのだと考えると、この古くさい設定にも一応の合理性を見いだすことは出来そうだ。

 これとは反対に、本作で非常に新しいのは、アクションシーンである。本シリーズを1から順におさらいし、その上で本作を観ると、アクションにおける映像技術はここまで進歩したのか!と目を丸くすること請け合いだ。特に、序盤で大々的に繰り広げられるカーチェイスシーンは圧巻。いったいどうやって撮っているのか分からないリアルな破壊シーンのオンパレードである。また、ラストで戦闘ヘリが墜落するシーン。ここの描き方も斬新で素晴らしい。

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 建物の床を突き抜けて落下するマクレーンとジャックをスーパースローで描くのだが、彼らを画面の中心に常に据えるという描写。背景では落下し大爆発する戦闘ヘリ。筆舌には中々尽くしがたいので、是非映画館に足を運んでいただきたい。

点数:70/100点
 『ダイ・ハード』ファンを自負しておきながら、鑑賞が公開日より1週間以上も遅れてしまったことをまず恥じたいと思う。さらに、事前情報を一切入れないように気を配っていたので、筆者が前4作の感想で書いた“最新作では世界中が舞台になる”というのが誤りだと観て初めて分かった。本作のマクレーンは、終始ロシアでのみアクションを繰り広げる。徐々に活動範囲を広げてきたシリーズの伝統からは少しだけズレているようにも思えるが、しかし、そこに続編の希望を見いだすことも出来るのではないだろうか。ビル→空港→NY市→アメリカ→ロシアと来たのだから、次作こそ全世界中を股に掛けることも考え得る。もちろん、筆者は、軸がブレブレになってしまったシリーズの存続を基本的には望まない。しかし、本シリーズに関しては、まだ描き切れていない部分がある。そう、最愛の妻ホリーとの和解である。やっぱりマクレーンは、ホリーと何らかの形でしっかり和解して、シリーズを終了してもらいたい。したがって、次作『ダイ・ハード6』がもし制作されるなら、マクレーン一家VSテロリストの世界を股に掛けた死闘を期待する次第である。

(鑑賞日[初]:2012.2.27)
(劇場:ユナイテッドシネマ岸和田)

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