[No.208] ナイト・オン・ザ・プラネット(Night On Earth) <68点>

Nitht On The Earth



キャッチコピー:unknown

 今夜、すべてのキャブで。

三文あらすじ:太陽系第三惑星“地球”のある夜。ロサンゼルスでは、若い女性タクシー運転手コーキー(ウィノナ・ライダー)が映画のキャスティング担当者ヴィクトリア(ジーナ・ローランズ)を乗せ、ニューヨークでは、老ドイツ人ヘルムート(アーミン・ミューラー=スタール)が陽気な黒人ヨーヨー(ジャンカルロ・エスポジート)を乗せ、バリでは、コートジボワール出身の運転手(イザック・ド・バンコレ)が盲目の女性(ベアトリス・ダル)を乗せ、ローマでは、おしゃべりな運転手ジーノ(ロベルト・ベニーニ)が神父(パオロ・ボナチェリ)を乗せ、ヘルシンキでは、不幸な運転手ミカ(マッティ・ペロンパー)が酔った3人の客(サカリ・クオスマネン、カリ・ヴァーナネン、トミ・サルミラ)を乗せる。同じ時間、同じ惑星の異なるタクシーで繰り広げられる、ひとときの物語・・・


~*~*~*~

 
 桜は散り、去る者は去る。出会いと別れでは、別れの方が多いと気付くこの季節。ご縁は無いもの、笑顔は作るもの、靴はすり減らすもの。様々なドラマの裏側で、時を同じくして繰り広げられる、無数のドラマたち。

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 まず、『ナイト・オン・ザ・プラネット』という邦題を付けた日本配給会社に賞賛の拍手を送りたい。原題は『Night On Earth』だが、確かに、惑星は“プラネット”と呼び習わした方が、段違いにオシャレな印象を与えることが出来る。なんの起伏もないダラダラした会話を少しとぼけた演出で見せるジム・ジャームッシュの世界を、あたかも前衛的でファッショナブルなもののように売り出すことに成功している。

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 しかしながら、このダラダラした会話がいい。ジム・ジャームッシュ作品の中で、当ブログが以前紹介したのは『コーヒー&シガレッツ』。これもまたダラダラした会話が取り留めなく続き、多量のカフェインと膨大なニコチンだけが無駄に摂取されていく、という映画だった。このような作品は、「全く以てつまらない!」と激怒する人と「この空虚な倦怠がたまらない!」と絶賛する人を区別するリトマス試験紙であろう。

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 そして、筆者は、当然後者である。本作では、取り立てて事件が起こる訳ではない。巧妙な密室トリックも無ければ、手に汗握るカーチェイスも無い。あるのは、タクシー内で30分間のみ繰り広げられる、ダラダラした刹那的な会話だけである。つまり、ジム・ジャームッシュ作品というのは、“スパイスを抜いたタランティーノ作品”のようなものであって、そういった意味で筆者と琴線を同じくする人には、強くオススメ出来るものである。

 さて、本作は、そういったタクシー内での短いお話が5つ詰まったオムニバス形式の物語である。その中でも、筆者が最も気に入ったのは、やはり最初のロサンゼルスでのお話

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 若いが男勝りのタクシードライバーを演じるウィノナ・ライダーの当時と現在を思い、まず、散った桜の満開を切なく思い出すような気持ちになる。

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 これが本作のウィノナ。初々しさが留まることを知らない。

 そして、これが最近のウィノナ。ジョニー・デップにフラれ、高級ブティック店での万引きなども経験した大人の女である。少し切ない…。

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 彼女と偶然の邂逅を果たし、互いの人生をひととき交わらせるのは、ハリウッドのキャスティングディレクター。彼女は、ウィノナと対照的な派手な世界に生きるおばさんであり、けったいな白黒のジャケットにもその様がありありと見て取れる。

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 “タクシードライバー”という一見“しょーもない仕事”をしているにも関わらず、しっかりと自分の将来を見据え、人生設計を立てているブレない女性。一方で、“ハリウッドのキャスティングディレクター”という一見“華やかな仕事”をしながら、男には振り回され、自分の人生に一抹の迷いを感じているおばさん。2人の人生は、わずか30分だけ交わり、そして、おばさんは、漠然とした、しかし、決して揺るがない“何か”を得て、あるいは思い出して、タクシーを降りる。

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 ラストで、相変わらずうるさく彼女をせき立てる携帯電話に「おだまり!」と言い放つ彼女は、空港に降り立ったときの彼女ではもはやない。

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 人生とは何か、仕事とは何か、若さとは、老いとは、男とは、女とは。そういった悲喜交々を少しだけ考えさせられる、素晴らしいエピソードであった。

点数:68/100点
 ダラダラした会話をオシャレっぽく描く本作は、筆者にとっては非常に満足出来る良作であった。が、やはりコーヒーと煙草という個人的なキーアイテムに焦点を当てた『コーヒー&シガレッツ』の方が若干好みである。今回は冒頭のエピソードだけ感想を述べたが、他にも、まるで落語のようなオチが付くコートジボワール人と盲目の女性の話もおもしろいし、都会の冷たさと暖かさを教えてくれるニューヨークでの話も見るべき所が多い。年度初めということで、何かと色々忙しい季節ではあるが、ちょっと一息つきたいそんな夜には、ウィスキーと煙草などを飲みながら、軽い気持ちで鑑賞してもらいたいオススメのオムニバスである。

(鑑賞日[初]:2012.4.7)

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