29
2012

[No.21] プライマー(Primer) <65点>

CATEGORYサスペンス




キャッチコピー:『過去に戻ることは可能だ。ただ、“タブー”にさえ触れなければ…。』

 昨日に向かって眠れ!

三文あらすじ:エンジニアのアーロン(シェーン・カルース)とエイブ(デヴィッド・サリバン)は、会社からの独立を目指しオフタイムで研究に励んでいたところ、ある日偶然にも箱形のタイムマシンを作り出してしまう。タイムトラベルを繰り返し株で儲けようとする2人だったが、はじめは順調だった時間旅行に徐々に歪みが生じ始める。同じ時間軸に存在する複数の”自分”のうち、どれがオリジナル(Primer)なのか、目の前の相棒はいったい何度時を遡った彼なのか、全てが信じられなくなったとき、彼らは自分たちが研究者として未熟者(Primer)であったことを知る・・・


~*~*~*~
 

 サンダンス映画祭で絶賛された本作。サンダンス映画祭といえば、あの名優ロバート・レッドフォードが主催し(”サンダンス”は彼が主演した『明日に向かって撃て!』での役名”サンダンス・キッド”から。)、低予算だが前衛的なインディペンデント映画を発掘し世に送り出していくという、いわば貧乏映画の登竜門的映画祭である。まぁこの門をくぐった監督が必ずしも竜にはなっていないという現状もあるのだが、これまでこの映画祭で脚光を浴びた映画としては『ブレアウィッチ・プロジェクト』『SAW』などがあるから、いやがおうにも本作への期待は高まるわけだ。しかも、「偶然発明したタイムマシンで時間旅行するうちに矛盾が生じていく」というSFとしてはベタなプロットで同映画祭のグランプリを獲得したのだから、それはもう極めて画期的な仕掛けの映画なのではないか、とSFファンである筆者は胸を躍らせて鑑賞したのである。

 確かに、斬新だった。SUPER16で撮影した荒い映像、ピアノを基調としたシンプルな音楽、大部分が2人のサラリーマンの会話で綴られていくストーリー。”ザ・インディペンデント”といった趣だ。
 監督のシェーン・カルースは、一念発起してソフトフェア会社を辞め、大学時代から暖めていたストーリーを3年掛けて映画化したらしい。予算はなんと7000ドル。格安で仕上げるため、シェーン・カルースが監督・脚本・制作・主演・編集のみならず、撮影や音楽まで手がけている。まぁ低予算と映画の客観的評価はできるだけ分けるべきだが、それでも彼のこの頑張りには好感を持たずにいられない。
 映画自体の出来に目を向けてみても、役者の演技、音楽、緊迫した脚本が見事にマッチしており、SF的ガジェットの派手さは全くないにもかかわらず大変いい雰囲気を醸し出している。”SF”というよりは”上質のサスペンス”と言ったほうがいいだろう。

 そして、本作が賛否を含めて注目されている最大のポイントは、その難解なストーリーにある。
 古来より難解なストーリー(ストーリー自体の難解さだけでなくその見せ方の難解さを含む。)というものは一定の評価とカルトなファンを獲得するもので、『2001年宇宙の旅』などはその代表格だし、最近では『マルホランド・ドライブ』や『メメント』など、一度観ただけでは絶対理解できない作品は、コアなファンの心を掴んで離さない。

 しかし、実は本作のおおまかなプロットは極めて単純である。2人のサラリーマンが偶然タイムマシンを開発。過去に戻って金儲けを企むが、だんだん計画が狂っていく、というベタなものだ。
 本作を真に難解たらしめているのは、”過去に戻るとタイムトラベルした自分と過去の自分が併存する”というタイプの時間観を採用した点と、そして何より不親切な語り口にあるといえるだろう。

 まず、時間観について。
 本作と同じ旅行者併存系の代表格としては『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズが挙げられる。パート2の「魅惑の深海パーティー」においては、パート1のマーティに見つからないようにパート2のマーティがコソコソ逃げ回る、というのが見せ場を盛り上げる仕掛けになっていた。
 一方これとは異なる設定を採用したのが『バタフライ・エフェクト』で、アシュトン・カッチャーは過去に戻るとその時代の自分になるため、時間の流れの中に彼は1人しかいないということになる。

 本作のタイムマシンは、「スイッチを入れていた時間分、スイッチを入れた時点まで時間を逆行できる」という性質のものである。すなわち、①まずタイムマシンのスイッチを入れる、②そのまま例えば6時間放置する、③そしてタイムマシンに入りその中で6時間過ごす、④すると6時間前のスイッチを入れた時点にタイムトラベルできるのである。分かるだろうか。筆者は文系丸出しなので、こういう仕組みの説明が苦手だ。図にするとこうなる。↓

Primer Timemachine Method


 この結果、本作においては、6時間の間に3人の自分が存在することになる。まず過去の自分、そして時間を逆行してきた自分、さらにタイムマシンの中で時間逆行中の自分である。これがややこしい。しかも、主役2人は後半から何回もタイムトラベルし過去を書き換えようと奮闘するので、一度鑑賞しただけではまず間違いなく全貌を把握できないだろう。

 しかし、この設定だけならまだ何とか解明は可能であると思う。この程度の複雑さの映画は過去にいくらでもあった。というか、プロット自体は古典的なのだから、鑑賞中は無理でも観終わった後にじっくり考えれば理解できるはずである。ところが、本作はいくら考えても分からない。筆者は鑑賞後ネットで解説を読みあさったのだが、何度も鑑賞し自分の見解をきちんと整理してネットで発表している人たちの間でさえ、物語の解釈が何通りか存在するのだ。

 これは全て”語り口の不親切さ”に起因すると思われる。
 まず、本作のように複数の自分が併存するパターンのタイムトラベルものの場合、カメラは時間旅行者に張り付いてストーリーを追っていくというのが常識である。『BTTF2』でも再度過去にタイムトラベルしたマーティの視点で物語が進行した。しかし、本作のカメラは自由気ままに動く。今映しているのがいったい何回時間を逆行したアーロンやエイブなのかが分からないのだ。いわば、アーロンとエイブだけでなく、カメラ自身も勝手気ままにタイムトラベルをしている状態。これは不親切きわまりない。
 しかも、アーロンとエイブは常にカッターシャツ・ネクタイ・スラックスという服装なので、外見的特徴による逆行回数の特定がほぼ不可能になっている。一応後半はイヤホンをしているか否かという区別が提示されるが、旅行者併存系の設定を採った以上もっと大胆な目印を配置するのが観客に対する親切心というものではなかろうか。

 さらに付け加えるなら、ストーリーを読み解く上で重要な描写があえて省かれているという点も、観る者を混乱させる大きな要因だ。なぜアーロンは何度も逆行してレイチェルを救うのか、グレンジャー氏にタイムマシンの存在をバラしたのは誰なのか等が全く分からない。不親切だ。

 このように、本作はまるで観客など存在しないがごとく、自分勝手にどんどん話を進めていく。どうやら監督は、時間を超越するという神の御業を描くことに夢中で、お客様は神様だということを忘れてしまったようだ。

点数:65/100点
 話の全貌が完璧に解明できれば、もっと高得点になりそうな気がするのだが、いかんせん筆者の頭では到底追いつけない。さきほど、筆者の友人の中でも文系・理系それぞれ生え抜きの精鋭2人に謎の解明を依頼したので、彼らの出す答えを待ちたいと思う。

(鑑賞日[初]:2012.1.29)






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