15
2013

[No.210] 激突!(Duel) <80点>

CATEGORYアクション




キャッチコピー:『40トンの殺人トラックに戦慄が走る!凄まじい迫力で追いまくられる車!500マイルのデッドヒート!かつてなき恐怖と衝撃の連続!

 RUN LIKE HELL!! RUN LIKE HELL!!!

三文あらすじ:サラリーマンのデイヴィッド・マン(デニス・ウィーバー)は、車でカリフォルニアに向かう途中、ハイウェイを走る大型トラックを追い抜く。ところが、トラックは、デイヴィッドの車を抜き返し、その後もデイヴィッドに執拗に付きまとう。姿の見えぬトラック運転手とデイヴィッドとの、生死を賭けた“決闘(Duel)”が始まる・・・


~*~*~*~

 
 『E.T.』、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』、そして『インディ・ジョーンズ』など、ワクワクドキドキ、少年心をくすぐるアドベンチャー監督というイメージが強い巨匠スティーブン・スピルバーグ。しかし、そのキャリアの中でも最も重要な作品の1つには、海洋モンスターパニック界の押しも押されぬ大傑作『ジョーズ』がある。つまり、スピルバーグという監督は、胸躍るアドベンチャーだけでなく身も心も凍り付くホラーをしっかり撮ることが出来る人物であり、彼の初期作品である本作にもその才能はちゃんと見受けられるのである。

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 ストーリーはいたってシンプル。サラリーマンがトラック運転手に目を付けられ、ひたすら追い回される。ただ、これだけ。しかし、本作は、おもしろい。シンプルなストーリーなだけに、スピルバーグの演出の巧さが光っている。ほっと一息ついたデイヴィッドの向こうにトラックを映り込ませるカメラアングル、長尺のカーチェイスを飽きさせない展開の数々、絶妙のタイミングで挿入されるヒッチコックさながらの不気味なBGM。

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 中でも最も素晴らしいのは、やはりトラック運転手の正体を最後まで明かさない、という脚色であろう。

 原作では、トラック運転手の名前も“ケラー”とちゃんと設定されているし、デイヴィッドは、その顔をしっかりと目撃する。これだと、普通のカーアクションスリラーである。しかし、本作においては、哀れなデイヴィッドがトラック運転手の正体を知ることは、終ぞ無い。これは、恐い。デイヴィッドは、誰に命を狙われているのか、正確には分からない。また、命を狙われる理由も全く以て不明瞭。彼はただ、トラックを追い抜いただけであり、それはアメリカのハイウェイでは極々日常的な作為であるはずだ。それにも関わらず、正体不明のトラック運転手は、他のドライバーには目もくれず、ひたすら執拗にデイヴィッドのみを追い続ける。

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 あらゆる“恐怖”の根源は、おそらく“理解不能”という点にあるのだろう。墓地を浮遊する火の玉は恐ろしくとも、それが“プラズマ現象”として科学的・合理的な理由を持った瞬間に、恐怖の感情は霧散する。外見も不明、動機も不明な本作の犯人は、そういった意味で本当におそろしいし、原作から大幅に変更を加え、犯人像を大胆にぼかしたスピルバーグの手腕には、ただただ脱帽である。

 それから、本作の“恐怖”には、“砂漠”という“閉鎖空間”がもたらすものも大きい。

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 突き抜けるような青空、どこまでも続く地平線。そんなアメリカの“砂漠”は、数々の作品で“自由”の象徴として描かれてきた。例えば、当ブログでも以前紹介した『テルマ&ルイーズ』では、主人公の女性2人が“男”から逃げ、自由になる場として砂漠が舞台になる。

 しかし、本作における“砂漠”は、完全なる“閉鎖空間”。移動手段は車しか存在せず、たまに通りすがるドライバーは助けにならない。最寄りのガソリンスタンドも無力なら、警察を説得する術すら、哀れなサラリーマンは持ち合わせていないのである。もちろん、このように1つ1つのルートを丁寧に潰していき、デイヴィッドを取り巻く圧倒的孤独を作り上げたのは、スピルバーグの手腕である。パニック映画において、特に閉鎖空間でのそれにおいて、外部へのルートを細心の注意を以て処理する作品は、すべからく傑作である。

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 ちなみに、本作の犯人には一応裏設定がある。彼は、アメリカ中の様々な州を渡り歩き、本作と同じようにして色々なドライバーを死に至らしめているシリアルキラーなのである。だから、彼のトラックには、各州のナンバープレートが装着されていたという訳。それにしても、このキャラクター…そう!『デス・プルーフ』スタントマン・マイクだ!タランティーノも本格的にカーアクション作品を撮るということで、やはりカーアクション界の金字塔である本作にもある程度の敬意を表したということなのかもしれない。

点数:80/100点
 シンプルであるが故にスピルバーグの若き才能をこれでもかと堪能できる普及の名作。結局、デイヴィッドは、見事トラック運転手に打ち勝ったのであるが、当然カリフォルニアでの商談はパーだろうし、時間通りに帰れなくなった自宅ではカンカンの妻が離婚状を準備して待っているだろう。エンドロール、夕陽に向かって崖から小石を投げるデイヴィッドの姿は、試合に勝って勝負に負けた、哀愁漂う“漢”の末路である。

(鑑賞日[初]:2013.4.15)






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Tag:カーアクション ロードムービー 砂漠

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