[No.222] イージー・ライダー(Easy Rider) <89点>

easy rider reissue



キャッチコピー:『彼らは“アメリカ”を見つけに旅に出た。しかし、そんなものはどこにもなかった。』

 Born To Be Wild.
 Live To Be Free.
 Die To Be A Easy Rider.

三文あらすじ:コカインの密輸で大金を得たワイアット(ピーター・フォンダ)とビリー(デニス・ホッパー)は、ハーレー・ダビッドソンで旅に出る。それは、カリフォルニアから“マルディグラ(謝肉祭)”が行われるニューオーリンズまでの自由な旅。道中、弁護士のジョージ・ハンセン(ジャック・ニコルソン)を仲間にして一路ニューオーリンズを目指す一行だったが、行き着く先で、彼らはアメリカの“現実”に直面する・・・


~*~*~*~


 一般的に、いわゆる“過去の名作”は取っつきにくいものだ。古くさい映像に古くさい演技。加えて、ほとんどの“名作”は、“名作”であるが故にその後無限に模倣され、後世の我々が鑑賞する際には“模倣の模倣”という極めて本末転倒な感想を抱くことになりがちである。そして、そういった中で、必ず“過去の名作信者”というものがいる訳で、自分なりの理屈も持たず、“過去の名作だから”という曖昧な理由だけで闇雲に絶賛する不届き者が現れる。リアルタイムで鑑賞していない我々は、そのような“無粋な映画ファン”によって、ますます“過去の名作”への無関心を強めていくのである。

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 また、本作に限っては、“過去の名作”であるということに加え、“アメリカン・ニューシネマ”であるという点も、取っつきにくさの原因であろう。第二次大戦後のヨーロッパで徐々に広がりを見せた“ニューシネマ”という作品群。言ってみれば“くら~い映画たち”である。その流れの中、ベトナム戦争を経て“強いアメリカ”に失望し、自国の闇、自分たちの弱さに打ちひしがれたアメリカで爆発したのが、“大勢(たいせい)に対する個人の無力”をテーマとし、最終的には必ずと言っていいほど主人公が死んでしまう、という“アメリカン・ニューシネマ”であった。もちろん、その中でも数々の“名作”が生まれ、『明日に向かって撃て!』や『俺たちに明日はない』などは筆者も大好きなのであるが、やはり退廃的で暗い雰囲気をどこかしらに持つ作品群は、現代の“気晴らし映画鑑賞者”たちには不向きなところが少なからずある。

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 そういったことをモゴモゴと考えながら、筆者は長らく本作の鑑賞に二の足を踏んでいた。筆者にはバイカーの友人が一人おり、彼の絶賛をしばしば耳にしていたものの、やはり取っつきにくさが上回り、ついつい大爆発や宇宙人やゾンビの大群ばかり追いかけていたのである。

 しかしながら、本作は、ハッキリ言ってめちゃくちゃおもしろい!

 もちろん、本作の大まかな流れやテーマは、他のアメリカン・ニューシネマ作品とそう違わない。当時、“自由”を体現する人たちであったいわゆる“ヒッピー”のバイク乗り、すなわち“イージー・ライダー”が自由に生きようとするのだが、最終的には自由を恐れる“大衆の無意識”に殺されてしまう。彼らは、麻薬取引に手を染め大金を得た歴とした“犯罪者”であるにも関わらず、その死の原因は、黒人差別にも似た“自由の排除”。理屈も主義もモラルも無い、あるいは非常に曖昧模糊として見えずらい、少なくとも一人一人の個人は明確に意識していないにも関わらず、潜在意識が結集し、大勢としての大きな流れとなった。そんな、よく分からない“力”に殺されるのである。

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 本作は、ベトナム戦争以降のこういった“アメリカの闇”をきっちり暴き出す。まず、前半から中盤は、ひたすら主人公たちの旅の様子をお送り。最高に気持ちいい風景と最高に気持ちいい音楽。観た者の誰もが抱く感想は、“自由っていいなぁ。”に違いない。

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 中盤、弁護士が仲間入りし、彼らに“アメリカの闇”、すなわち“自由を恐れる大衆の無意識”を説く。直後、理不尽に襲われる主人公ら。ここで弁護士は死んでしまう。彼は、キャプテン・アメリカやビリーのような“ヒッピー”ではないと言うのに。大勢への非難が高まる。

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 そして、後半。娼婦を買った主人公らは、あてもなく謝肉祭を満喫し、なんと墓場で覚せい剤漬けの破廉恥パーティーを催してしまう。ここの描写は、執拗で、かつ、恐い。先人への敬意や人間としての社会的モラルからも“自由”になり、欲望のまま乱れる彼ら。“自由って、こういうことなの?”という疑問。

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 そして、ラスト。これまでのようにただハーレーで道を行く彼らは、通りすがりの名も無き一市民に撃たれ、死んでしまう。麻薬売買や墓場での破廉恥パーティーなど、ある種“論理的な理由”は存在するにも関わらず、実際に彼らを死に至らしめたのは、大衆が持つ“自由への恐怖”。そんな、極めて不安定な動機である。主人公が“善”ではない。しかし、姿や動機の見えぬ大勢は恐ろしい。様々な感想の中、本作は幕を閉じる。

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 筆者の理解不足はもちろん多分にあるだろうし、あくまでも筆者個人の独断的なとらえ方ではあるが、伝えたいテーマをきちんと描いていると言う点で、まず本作は素晴らしい。大勢に抗い破れる個人を描いた決定版。大げさに言うのならば、きっとそういう事なんだろう。

 しかし、それだけでは、筆者は所詮、そこらの“過去の名作信者”と相違無い。本作を“エンターテイメントの傑作”として評価する個人的な理由が、ちゃんとある。

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 まず、筆者が思う“エンターテイメント”には、大きく2種類ある。

 一つは、大がかりなカーチェイスや手に汗握る肉弾戦、あるいは思わず仰け反ってしまうような銃撃戦などを描き、いわば“ビジュアル的な熱量”で観客を魅了するもの。緻密な脚本や繊細なテーマなど二の次、要は勢いがあればいいのよ、という作品群であり、代表的なクリエーターとして筆者が真っ先に思い浮かぶのは、“NO EXPLOSION, NO MOVIE.”でお馴染みのマイケル・ベイである。

 もう一つは、クールなミュージック、ポップなカルチャー、あるいは、過去作へのオマージュなどに満ちた“タランティーノ系”の作品群。筆者の定義では、ジム・ジャームッシュや本気を出したロバート・ロドリゲスなどもこのカテゴリーに属する監督である。万人受けしやすい“ビジュアル的熱量”をあまり多用しないため、“分かるヤツだけ付いてこい!”スタイルになりがち、というところに特徴がある。

 この筆者の主観的な区分によれば、本作は後者に当たる。そして、そのカテゴリーの作品として、本当に素晴らしい。もちろん、そういった意味での本作の見所は、冒頭から中盤にかけての旅のくだりである。

 まず、オープニングが本当に格好いい。麻薬売買を済ませるキャプテン・アメリカとビリー。2台のハーレー・ダビッドソンにまたがり出発。突き抜ける青空、果てしない大地、バイクが2台、男が2人。曲はステッペンウルフの「Born To Be Wild(ワイルドで行こう)」。そしてタイトル『EASY RIDER』

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 これ以上何がいると言うのだろう。ピーター・フォンダ万歳!デニス・ホッパー万歳!ジャック・ニコルソン万歳!そして、自由万歳!最高だね。最高のオープニングだ。

 本作は、その後も一貫して最高の景色最高の音楽、そして、最高の男たちそのバイクを描き続ける。しかも、極めてダラダラと

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 そして、このダラダラ感は、タランティーノのそれをはるかに凌ぐ。山なし、谷なし、オチなし。バイク乗車シーンでは会話すら一切無い。しかし、それがいい。展開であったりビジュアルであったり、そういった面でのエンターテイメント性を一切排した究極の“雰囲気映画”。だからこそ、本作はタランティーノ作品以上に“分かるヤツだけ付いてこい!”なのであり、筆者の絶賛もたまたま筆者の琴線に合致した、ということでしかない。しかし、だからこそ素晴らしい。だからこそ傑作である。誇らしげに言うならば、きっとそういう感じだろう。

点数:89/100点
 嗚呼、旅に出たい、ワイルドに生きたい、自由になりたい。そんな薄っぺらな感想だけ持てばいい。深く暗いテーマなんかほっといて、とりあえずバイクの免許を取りに行こう。Take it Easy Rider. 文法すら無視して、気楽に行こう。

(鑑賞日[初]:2013.5.14)

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