[No.227] マルホランド・ドライブ(Mulholland Drive) <65点>





キャッチコピー:『わたしのあたまはどうかしている』

 希望と絶望。
 過去と未来。
 目覚めと静寂。
 あなたとわたし。
 
 - 全ては、ここ“マルホランド・ドライブ”で交錯する。

三文あらすじ:アメリカ、カリフォルニア州ロサンゼルス、夜の“マルホランド・ドライブ(Mulholland Drive)”で2台の自動車が正面衝突する。大事故から1人生還したブルネットの女性(ローラ・ハリング)は、そのままハリウッドの豪華なアパートメントに忍び込み、翌日、叔母の留守中その部屋を借りるために引っ越してきた女優志望の女性ベティ(ナオミ・ワッツ)と邂逅。記憶喪失に陥り、持っていた鞄には大金と青い鍵という謎の女性のために、ベティは手助けすることを決意するのだが・・・


~*~*~*~

 
 なんじゃこりゃ。高校時代に『ブルーベルベット』を観たときはまだ何の事やらよく分からなかったのだが、前回『ロスト・ハイウェイ』を鑑賞し、今回本作を鑑賞したことで、筆者は「僕はデヴィッド・リンチが嫌いなのかもしれない…。」という曖昧な確信を抱くに至った。しかし、例えばこの“嫌悪”という感情すら、彼の前では確かなベクトルを持った“賞賛”へと変換されてしまいそうで、うすら恐ろしい。それくらいずば抜けた才能と、飛び抜けた完成度、そして、突き抜けたカリスマ性を、彼の作品は持っている。

 当然、筆者に彼の作品の完璧な解読は不可能なので、以下に現段階での理解を備忘録的に書き留めておきたいと思う。まずは、流れの整理から。

<ダイアンの現実パート(映画的には後半、“ブルーボックス”封印解除後)>
 カナダ、オンタリオ州の田舎町でジルバ大会に優勝したダイアン・セルウィン(ナオミ・ワッツ)は、実力派スター女優になるという夢を胸一杯にたたえ、夢の都“ハリウッド”に移り住む。しかし、現実はそんなに甘くはなかった。

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 有名映画監督アダム・ケシャー(ジャスティン・セロー)が監督する『シルヴィア・ノース物語』のオーディションを受けたダイアンは、カミーラ・ローズ(ローラ・ハリング)という女優に主役の座を奪われ、自身は脇役に甘んじる。その後もカミーラ主演作品の脇役を演じ続ける彼女は、大女優への道を経たれ、プライベートではカミーラとレズビアンの関係に墜ちていく。

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 その後、あるパーティに出席したダイアンは、愛するカミーラに自分以外にも“彼女”がいたことを知り、さらに、カミーラとアダムの婚約を聞かされる。恋人としての嫉妬、女優としての嫉妬に狂ったダイアンは、叔母の遺産を使い、殺し屋であるウィルキンス(スコット・コフィ)にカミーラの殺害を依頼。承諾したウィルキンスは、殺害成功の際には“青い鍵”を送ると言い残す。

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 それから3週間の間、ダイアンは失踪する。目覚めたとき、彼女の家には“青い鍵”が。自責の念からいよいよ精神に異常を来すダイアン。ドアを叩く警察に怯え、追い詰められた彼女は、ベッドサイドの棚から拳銃を取り出し、自殺する・・・。

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 ダイアンの魂は、死の刹那“夢”を見る。それは、遠のく意識の中で見た“夢”、そして、希望と未来に溢れた“あるべき世界”としての“夢”。ダイアンは、意識の中で世界を再構築する。既存の事実をねじ曲げて。既知の人物を散りばめて・・・。

<ダイアンの夢パート(映画的には冒頭~“ブルーボックス”封印解除まで)>
 夢の始まりは、“マルホランド・ドライブ”。ダイアンが、カミーラ殺害依頼を決意する夜にカミーラと出会ったあの場所。しかし、車に乗るのはダイアンではなく、カミーラ。いや、この世界では、彼女は“カミーラ”ではない。

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 名も無き女性は大事故から何故か軽傷で生還し、ハリウッドにある大女優ルースのアパートメントに潜り込む。このルースも改変の産物。ダイアンの叔母は実際には既に死んでおり、そもそも大女優ではない。ここにダイアンが引っ越してくる。しかし、この世界では、彼女もまた“ダイアン”ではない。彼女の名は“ベティ・エルムス”。現実世界でダイアンの行きつけであったレストラン、彼女がウィルキンスにカミーラ殺害を依頼したあの運命のレストランで働いていたウェイトレスの名を、ダイアンは、改変後の夢の世界での自身の名前にしている。

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 ベティは、ダイアンの“夢”の結晶。ジルバ大会で優勝しハリウッドに渡った彼女は、大女優の叔母のコネクションで、ある作品のオーディションに参加、彼女の演技は大絶賛を受ける。現実世界では、ダイアンのオーディションは失敗続きだったのだろう。何の後ろ盾も持たぬ彼女は、自身の無才を棚に上げ、コネクションの無さに責任を転嫁した。夢の世界での“カミーラ・ローズ”が、謎の組織の圧力によって主演女優に決定するのは、そのような彼女の意志の結実である。

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 一方、事故のショックで記憶喪失になった名も無き女性は、リタ・ヘイワースのポスターから咄嗟に“リタ”と名乗る。親身に彼女の手助けをするベティ。現実世界でダイアンが殺害依頼のため持っていた大金、そして、殺し屋から送られてきた“青い鍵”は、この世界では、どちらもリタのバッグの中にある。妄想世界のリタもまた、ダイアンの理想の結晶。リタは、ベティしか頼る者がおらず、ベティは彼女を独占する。リタが髪を切り、ブロンドのウィッグを付けることでどんどんベティに染まっていくのも、恋人を独占したい、愛しい人とひとつになりたいというベティの理想のたまものだ。そして、両者は、現実世界でもそうであったようにレズビアンの関係になる。この際、ベティが「前にもこういう経験があるの?」と聞くのは、現実世界の投影。カミーラは、現実世界でもレズ(またはバイ)であった。ちなみに、現実世界のパーティでカミーラにキスする女性を演じる女優が、そのまま夢世界のカミーラ・ローズを演じている。

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 また、この夢世界では、映画監督アダム・ケシャーが非常に悲惨な顛末を辿っている。これは、現実世界で恋人を奪った男に対するダイアンの復讐。謎の組織から“カミーラ・ローズ”という名も無き女優の主役抜擢を強制され、妻を清掃業者のマッチョなガイに寝取られ、仕舞いには家を追い出された上に破産してしまうアダム。彼のパートでは、現実世界でパーティに参加していた老人が、アダムに圧力をかける謎の組織の一員として登場し、同じくパーティにいたカウボーイハットのポン引きが、アダムに接触し指示を与える謎の男“カウボーイ”として登場する。また、アダムの母親は、ベティのアパートメントの管理人になっている。

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 ちなみに、この“カウボーイ”は“死神”である。夢世界のアダムの前に突如現れ突然消えるという人間離れした技を披露し、「目を覚ませ」と呟くことでダイアンの魂を妄想の世界から現実の“死”へと誘(いざな)う。また、一説によれば、現実世界において女優の道を断たれたダイアンは、彼の元で売春婦にまで墜ちていたらしい。

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 それから、ベティとリタは、17号室で腐乱死体を発見する。このブルネットの死体は、一見してリタの死体である。しかし、ここは現実世界でのダイアンの家であり、現実世界で自殺したダイアンと同じ構図で横たわるものである。したがって、これもまた、ダイアンがカミーラを独占したい、すなわちカミーラと一体になりたいという願望の結晶。

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 さらに、ラスト(映画的には中盤)の“クラブ・シレンシオ”でのくだり。まず、登場する髭面のセニョールは、繰り返し「楽団はいません。」と述べ、「音源は全て録音されている。」と語る。そして、実際その通りに、彼の一挙手一投足に合わせて任意の音が紡がれていく舞台。これは、おそらくこの夢世界のカラクリを解説しているのだろう。あらかじめ体験した出来事や見知った人物を自身の都合の良いように改変し、配置して作られたダイアンの夢世界は、まさにセニョールの説明通りの世界だ。

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 それから、次に登場する“泣き女”。これは歌詞を聞けば一目瞭然。完全にダイアンのことを歌っている。“泣き女”は最後に何故か卒倒してしまい、支配人らしき人物に運ばれていくが、これは、“泣き女”=ダイアンが、現実には死んでしまっているからであろう。ちなみに、この“クラブ・シレンシオ”の支配人的な老人は、夢世界におけるアダムと旧知の宿屋の老人として登場する。

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 では、“クラブ・シレンシオ”は夢か現実か。ここは若干あやふやだが、おそらく現実と死後の世界との境界であろう。順調に願望を結実させてきたダイアンの夢世界は、現実世界での彼女の精神崩壊にとってもっとも核となるカミーラとの関係に迫り、徐々に破綻を来す。したがって、リタは突如ベティを誘って“クラブ・シレンシオ”に赴き、全てのカラクリが明かされるのである。舞台向かって右手の2階から見下ろす青髪の人物は、おそらく閻魔様的な存在だろう。本作において“青”は“死”の象徴であるし、本作ラスト(映画的にもラスト)でこの青髪の人物が「お静かに・・・。(Silencio...)」と言うのは、ダイアンの魂に対する“静かに眠れ”とのメッセージに思える。

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 夢世界のカラクリが暴かれ、ベティの鞄に“ブルーボックス”が出現。急いで帰宅した2人は、リタが持っていた“青い鍵”を差し込もうとするのだが、ベティは姿を消す。これは、カラクリが暴かれたことに起因するのか。あるいは、リタの鍵をベティの箱に差し込む、という作為は、リタとベティ、すなわち、カミーラとダイアンの一体化の象徴であり、カミーラを独占したいというダイアンの願望が叶えられたことによるダイアンの成仏を表しているのかもしれない。

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 ブルーボックスの封印が解かれ、夢世界は終焉を迎える。直後その部屋に顔を出すおばさんは、夢世界ではベティの叔母にして大女優のルースだが、現実にはダイアンとは全く関係の無いただのおばさん。夢世界が展開されてきたベティ宅は、実際には本作と何の関係も有しないまま通常の日常を送っていたのである。

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 “死神”=“カウボーイ”が「目覚めよ」とつぶやき、ダイアンの夢は終了、彼女は現実世界の死せる魂として、死後の世界の入り口“クラブ・シレンシオ”からあの世へと旅立っていくのであった・・・。

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 あー、疲れた。とりあえず、鑑賞後、解説サイトを読みあさった筆者の理解は、概ねこんなところである。それから、本作の解釈については、監督のデヴィッド・リンチ自身がヒントを提示しているらしく、Wikipediaにも載っている。

①映画の冒頭に、特に注意を払うように。少なくとも2つの手がかりが、クレジットの前に現れている。
②赤いランプに注目せよ。
③アダム・ケシャーがオーディションを行っている映画のタイトルは? そのタイトルは再度誰かが言及するか?
④事故はひどいものだった。その事故が起きた場所に注目せよ。
⑤誰が鍵をくれたのか? なぜ?
⑥バスローブ、灰皿、コーヒーカップに注目せよ。
⑦クラブ・シレンシオで、彼女たちが感じたこと、気づいたこと、下した結論は?
⑧カミーラは才能のみで成功を勝ち取ったのか?
⑨Winkiesの裏にいる男の周囲で起きていることに注目せよ。
⑩ルース叔母さんはどこにいる?

 これに全て適確な答えを提示できれば、本作を解読出来たということになるのだろうか。筆者の拙い理解では少々難しいので、これまた現時点で把握できた(あるいは、そのように思い込んでいる)事柄のみ書き留めておく。

①映画の冒頭に、特に注意を払うように。少なくとも2つの手がかりが、クレジットの前に現れている。
 ⇒クレジット前のシーンと言えば、一つは、何人もの人々が陽気な音楽に乗せ踊っているシーン。ここでは、うれしそうなダイアンとその両側に老夫妻、というビジュアルがオーバーラップする。これはおそらくダイアンが優勝したジルバ大会であろう。老夫妻は、その後、ダイアンの夢世界冒頭で登場する親切な老夫妻、そして、ダイアン現実世界で小人として登場し、最終的には彼女を自殺に追い詰めた老夫妻と同一人物である。彼らは、終始顔面に張り付いたような“笑顔”をたたえているところが非常に不気味。

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 筆者が調べた範囲ではその解釈が2通りある。

【1】老夫妻は、現実世界でのダイアンの両親。冒頭のオーバーラップは、ジルバ大会で優勝したダイアンを祝福していた過去である。現実世界のラストでダイアンを追い詰めたのは、華々しく故郷を後にしたものの、その後の堕落を両親に言えずにいたダイアンの自責の念の表れ。

【2】老夫妻は、現実世界の“観客”の象徴。彼らは夢世界冒頭で「スクリーンで観る日を楽しみにしているわ。」とダイアンに無責任なエールを送り、現実世界ラストでは失墜した女優を追い詰める。

 ちなみに、現実世界終盤で登場する小人老夫婦は、レストラン“ウィンキーズ”の裏に潜むホームレスが出現させている。このホームレスについては、“オズの魔法使い”からインスピレーションを受けた“悪い魔女”との見方が有力であるようだ。

 クレジット前のもう一つのシーンは、ベッドで布団にくるまり眠る人物の描写。これはおそらくダイアンだろう。眠っている(あるいは死んでいる)ダイアンを映すことで、これから始まる前半パートが、実はダイアンの夢世界であることを示唆しているのではないだろうか。

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②赤いランプに注目せよ。
 ⇒赤いランプというのは、おそらく夢世界において、リタを探す殺し屋が誰かに電話を掛け、その誰かがまた誰かに電話を掛け、巡り巡って最終的に行き着いた電話の側に置かれている卓上ライトのことだろう。現実パートにおいて、この電話が実はダイアン宅のものであることが明らかになる。つまり、リタを探している人物=カミーラを殺そうとしている人物が巡り巡って実はダイアン自身である、という現実世界の事実を示唆しているのではないか。

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③アダム・ケシャーがオーディションを行っている映画のタイトルは? そのタイトルは再度誰かが言及するか?
 ⇒アダムがオーディションをしている映画は、先述の通り『シルヴィア・ノース物語』である。確かに、これは現実世界でもう一度登場するが、誰が言及したかは忘れてしまった(現実世界のパーティがこの作品の完成パーティだったかもしれない。)。とりあえず、現実世界のダイアンは、この映画のオーディションで主役をカミーラに取られ、以降女優人生は下降線、カミーラに入れ込んでしまい、最終的には本作ラストのように自殺してしまうことになる。そういった意味で、この映画はダイアンにとって全ての元凶として強い意味を持ったものだ。

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④事故はひどいものだった。その事故が起きた場所に注目せよ。
 ⇒本作冒頭の事故については、既に言及した。事故がおきた場所は“マルホランド・ドライブ”であり、それは現実世界でダイアンがカミーラ殺害依頼を決意した夜、ダイアンがカミーラと出会った場所である。また、夢世界において、“リタ”は“マルホランド・ドライブ”でのひどい事故から信じられないくらいの軽傷で生還するが、これは、“現実にはあり得ない事象が起こっている”=“既にダイアンの夢世界である”ということを理解するヒントなのであろう。

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⑤誰が鍵をくれたのか? なぜ?
 ⇒夢世界で何故カミーラが“青い鍵”を持っていたのかは不明であるが、現実世界でダイアンに“青い鍵”を渡したのは、ダイアンがカミーラ殺害を依頼した殺し屋ウィルキンスである。この鍵は、ウィルキンスからダイアンに、カミーラ殺害成功の印として送付された。

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 ちなみに、夢世界に登場するウィルキンスは、非常にドジな殺し屋である。この部分だけ突然コメディ映画になったかのようなドタバタのシークエンス。これは、“本当は愛しているカミーラを殺したくない。鍵は届いたが、もしかしたらウィルキンスはドジな殺し屋で、カミーラ殺害に失敗しているかも知れない。いや、きっとそうだ!”というダイアンの願望が結実した結果であるらしい。

⑥バスローブ、灰皿、コーヒーカップに注目せよ。
 ⇒これは忘れたなぁ。とりあえず、灰皿というのは、現実世界でダイアンと部屋を取り替えた現12号室の住人がダイアン宅に取りに来たピアノ型の灰皿だろうか。この灰皿は、現実世界において、12号室の住人が取っていった後でもまた出てきたりして、現実世界と言えども錯乱したダイアン視点で描かれているため語り口が一貫していない、ということを示すメルクマールになっている。

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 それから、コーヒーカップというのは、現実世界でダイアンが使用しているカップだろうか。あるいは、現実世界でダイアンが殺害依頼した際、レストランで使用されていたものだったか。これは、夢世界でも同じものが使われていたりして、ダイアンにとってのキーアイテムである。また、現実と夢を繋ぐアイテムと言ってもいいかもしれない。

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⑦クラブ・シレンシオで、彼女たちが感じたこと、気づいたこと、下した結論は?
 ⇒ベティ、リタ両名が“クラブ・シレンシオ”で感じた、気付いたことについては“夢世界のカラクリ”でいいのではないだろうか。それは先述の通りである。また、下した結論は、箱の封印を解き、夢世界を終わらせるということだろうか。

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⑧カミーラは才能のみで成功を勝ち取ったのか?
 ⇒現実世界のカミーラが、彼女の才能のみで成功を勝ち取ったのかは、本作の描写だけでは断言できない。しかし、少なくともダイアンは、彼女の成功を妬ましく思う部分があり、自身の無才とツキの無さを棚に上げ、カミーラが何らかのコネクションによって主役を射止めたと考えるに至った。

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⑨Winkiesの裏にいる男の周囲で起きていることに注目せよ。
 ⇒ウィンキーズとはダイアン行きつけのレストランである。その裏に潜むホームレスの男は、先述の通り『オズの魔法使い』の“悪い魔女”と似通った役割を与えられているらしい。また、夢世界で自身の夢に怯え、ホームレスとの邂逅によって気絶(あるいは絶命)してしまった太眉毛の男が「夢以外では会いたくない」と語っていることから、ホームレス出現時の描写は、夢、あるいは、妄想世界の出来事であるらしい。

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 ちなみに、太眉毛の男は、自身の夢の内容について、彼と話している男がカウンター近くに立ち怯えていて・・・と語るが、それは実は太眉毛自身に起こる出来事であった、ということが明らかになる。これは、ダイアン自身もまた夢の中では自身を異なる人格に投影している、ということの示唆であるとの見解がある。

⑩ルース叔母さんはどこにいる?
 ⇒これも先述の通りである。ダイアンの叔母さんは、既に死んでおり、そもそも大女優ではない。全ては、ダイアンが作り出した夢世界の話である。また、夢世界でのルース叔母さん宅に実際に住んでいた人物は、ダイアンとは何の関係もないただのおばさんであろう。

 筆者の理解は、概ねこんなところである。

 まぁ、相変わらず難しすぎる。正直に申し上げて、こんな映画は“エンターテイメント”ではないし、筆者はあんまり好きではない。しかし、如何せんあまりにも完成度が高すぎて、駄作であると断じることは、決して出来ないのである。

 とにかく、本作、そして、その他のリンチ作品が難解である一番の原因は、監督が映画内で全然説明しないから。また、リンチ作品は、人の“夢”、特に人が就寝した後に見る“夢”を描くところに特徴があるのだが、ここにも難解さの原因がある。本作に限って言うなら、前半の夢世界は、夢の都ハリウッドに裏切られたダイアンの願望によって再構築された世界である。にも関わらず、全てがダイアンの望み通りには運ばない。事実の歪曲であったり、適材を適所に配置するという行為はある程度ダイアンの望み通りに進むのだが、結果的には深層心理が表出し、ほころびが生じてくる。夢世界であるなら、その世界の創造主目線で一本筋の通った展開になっているはずだ、と気負って鑑賞する観客は、ますます泥沼にはまっていくのである。これは以前紹介した『ロスト・ハイウェイ』も同じだ。

 あ、それから、本作をメタフィクション的に俯瞰で見た解釈として、本作はハリウッド映画産業自体を皮肉りながら描いている、というものがあるらしい。まず、夢世界のリタは、有名女優リタ・ヘイワースから名前を拝借している。これは筆者でも知っているくらい有名だし、『ショーシャンクの空に』の原作短編のタイトルが『刑務所のリタ・ヘイワース』だったということも知る人が多い事実だろう。また、ベティなにがしという名の有名女優もいるらしい。

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 それから、作中印象的に登場する“Sunset Blvd.”の標識。日本語で言うなら“サンセット大通り”であり、1950年制作、巨匠ビリー・ワイルダーの同名映画は非常に有名だ。リンチ自身も「本作は『サンセット大通り』のリメイクである。」と語るように、同作と本作の共通点は多い。死体の回想で始まる導入、売れない映画人、大金、豪邸、牧場、妄想に取り付かれる女優などなど。まぁ、筆者も同作を鑑賞してはいないので詳しくはなんとも言えないが、本作を通して、夢の都ハリウッドの暗部を描き出そうというリンチの意図は少なからずあるようだ。付け加えるなら、本作中、ハリウッドの街を俯瞰でとるショットが10回以上もあるそうで、そのようなカメラワークからも以上の意図は垣間見える気がする。

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 とにかく、なんだか疲れました・・・。

点数:65/100点
 鑑賞、解釈、調査、咀嚼、執筆。この一連の過程がこんなにも疲れる作品は、リンチ作品以外に無い。“漢の魂完全燃焼”を旨とする当ブログとしてはこのような作品を決して応援しないのだが、曖昧模糊として洗練された世界観に溺れ、既に次のリンチ作品を探している自分に、ふと気付いたりもする。本当は、筆者のような人間が一番のリンチファンなのかもしれない。

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