[No.23] プラン9・フロム・アウタースペース(Plan9 From Outer Space) <愛を込めて0点>

Plan9 From Outer Space



キャッチコピー:『史上最低の監督による史上最低のムービー』

 遂に発動される“プラン・ナイン”。
 それは、奇跡の“ノー・プラン”!

三文あらすじ:人類に戦争を止めさせるため、外宇宙から(From Outer Space)宇宙人が地球にやってくる。しかし、政府は、彼らからのメッセージを受け取ったにも関わらず、聞く耳を持たない。それどころか宇宙人の存在すら信じようとしない人類に業を煮やした彼らは、遂に恐怖の”第9計画(Plan9)”を実行に移す・・・


~*~*~*~


 前回は”史上初のSF映画”を紹介したので、今回は”史上最低のSF映画”の感想を書こうと思う。その名も『プラン9・フロム・アウタースペース』。1959年の制作時には、そのあまりのつまらなさから、上映権を買う者が誰もいなかったと言う。その後、TV局に買い叩かれた結果、深夜放送でのヘビーローテーションを通して当時のアメリカ人にはある意味でおなじみとなった本作。1976年に「ゴールデン・ターキー・アワード」という書籍で”史上最低の映画”と紹介され、世界的にも一躍脚光を浴びることになる。監督のエドワード・D・ウッド・Jr.”史上最低の映画監督”として期せずして有名になってしまったのだが、本作は、そんな彼が自身の最高傑作と謳う怪作である。

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 正直、想像していたよりはまだ”まとも”だった。とはいえ、エド・ウッドのことを知らずに鑑賞すれば、どこかのアメリカン・ハイスクールの生徒が撮った学芸会の映像だと思うことだろう。それぐらいこの映画の出来は酷い。まぁ本当に、本作のぶっ飛んでいる点を挙げ出すとキリがない。以下、Wikipediaから要約して引用する。 
 

①俳優が台詞を棒詠み。
②同じシーンなのに、ショットごとに昼と夜が入れかわる。
③ショットの使い回し。下記ベラ・ルゴシ(⑩)のほか、パトカーでの追跡シーンなど。
④ホイールキャップか灰皿にしか見えないのに"葉巻型"と呼ばれる模型の円盤。しかも、吊るしている糸が見えてしまっている。
⑤コントのようなセット。椅子とカーテンしかない飛行機操縦席、机と無線機しかないUFO司令室。
⑥UFOと遭遇するシーンで、急上昇するマイクの影が操縦席の壁に映ってしまっている。
⑦墓石がダンボール製丸出し。
⑧トー・ジョンソン(ゾンビ役)の巨体が明らかに墓穴に詰まっている。
⑨立っていられないほどの風が室内に吹きこんでも、なぜか窓やドアは無事。
⑩ベラ・ルゴシ演ずる老人がなぜかドラキュラの格好をしている。実は、ベラ・ルゴシの出演シーンは、彼の生前に撮ったドラキュラ映画から同じものを何度も流用している。そのため、彼が出現するときには、毎回同じ白い車が後ろを通る。ベラ・ルゴシの代役が演じているシーンでは、顔をマントで隠すか、すぐに後ろを向く。
⑪地上戦用の装備で円盤を攻撃する軍隊。
⑫人類の核兵器開発競争を批判するというテーマにも関わらず、作中語られる核兵器(水素爆弾の原理を誤解した"太陽爆弾"なる代物)の説明がすさまじく出鱈目。



 こんな映画がこの世には存在するのである。そもそもプロットが謎すぎる。宇宙人が発動する”第9計画”とは、蘇らせた死人に人々を襲わせるというものなのだが、人類に戦争を止めるよう忠告するために、何故ゾンビを使う必要があるのか。しかも作中蘇ったゾンビは、たったの3人である。なんと小規模なことだろう。

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 本作で一番の"名セリフ"は、宇宙人がそのボスである"皇帝"の元にゾンビの一人(トー・ジョンソン)を連れてくるシーンで登場する。ゾンビは、死んだ人間の頭に電極を埋め込み、機械で電気を流すという仕組みで操ることができる。そうしないと周りにいる者を手当たり次第に襲いだすのである。この設定自体は、まぁまだそれなりの説得力があると言っていいだろう。そこで女宇宙人が電気銃を突きつけながら別室にいるゾンビを連れてくるのだが、部屋に入るや否やゾンビは男宇宙人を襲う(襲うといっても非常にノロノロな動き。)。男宇宙人は女宇宙人に叫ぶ。「電気銃を使え!」女宇宙人、電気銃をホルスターから抜き、引き金を引く。が、何も起こらない。

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「ダメよ!故障しているわ!」


 マジか!けっこうハイテクっぽい銃やのに…。しかも、女宇宙人はなんやかんやのゴタゴタで電気銃を落としてしまう。セリフは棒読みだし、役者は棒立ちだが、これでも本作においてはなかなか緊迫したシーンだ。問題はこの後。なんとかゾンビをおとなしくさせて皇帝にお見せしたが、今度はまた連れて帰らなくてはならない。でも電気銃は故障中のはず。大丈夫かと心配する男宇宙人に、女宇宙人が一言。

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「落としたら直ったわ。」


 えーーー!!そんな昔のテレビみたいな!?これをネタじゃなくてマジにやってるのがスゴイ。
 
 さらに圧巻なのは、なんと言ってもラスト、UFO内で宇宙人と人類が激論を交わすシーンである。脳天気な人類に宇宙人が説教するのだが、ここで出てくるのが”太陽爆弾”。宇宙人が例え混じりに説明する原理はこうだ。

 太陽をガソリン缶だとする。そして、そこから地球までガソリンを浸した導線が繋がっているとする。導線を地球に巻き付け、ガソリンで濡れた地球に点火する。すると、火は導線を伝い、ガソリン缶、すなわち太陽に至る。太陽は大爆発を起こし、連鎖して太陽光が爆発、宇宙は太陽光が届く限りどこまでも破滅していくのだ…



 ……???いったいどーゆー理屈なんだ。しかも、戦争はダメだと熱くのたまっていたのに、結局最後は素手での殴り合い。このシーンもエド・ウッドは大まじめに撮っている。

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 もう一点特筆すべきは、本作唯一の有名俳優ベラ・ルゴシの死亡シーン。妻に先立たれたルゴシは家を出て、花を一輪ちぎり、悲しそうにそれをうち捨て、歩き去ってフレームアウトする。画面はそのまま。この直後、車のブレーキ音と「ギャー!」というコントのような悲鳴が聞こえ、暗転。これでルゴシは死んだということになっているのである。斬新というかチープというか。おそらく後者だろうが。ちなみに、このシーンは”史上最低の死亡シーン”として今なお映画史に燦然と輝いている。

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 これらのトンデモシーンはほんのごく一部で、実際は、全編全シーンにミスや手抜きや突っ込みどころが満載。こんな映画を自身の最高傑作と確信していたのだから、エド・ウッドという監督は本当に才能が無かったのだろう。

 そんなわけで、今や筆者を含めた世界中の映画ファンからバカにされているエド・ウッドであるが、実はカルトなファンが多い。映画監督の中でもティム・バートン、デヴィッド・リンチ、クエンティン・タランティーノなどそうそうたるメンバーからこよなく愛されている。素人から見ても明らかに無能な監督の彼がコアな人気を獲得しているのは、おそらく彼が本当に真剣に映画を作っているということが画面から伝わってくるから。実際にエド・ウッドは真摯に映画を愛していた人らしい。真剣にやっているのに突っ込みどころ満載。そんなバカバカしさが皆の好感を集めている。天然を装う女の子は嫌われるが本当に天然の女の子は可愛い、というのと同じ原理だろう。

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 それと、”史上最低の映画”という不名誉な称号を与えられてはいるが、実は本作は映画の体裁を保てないほどは酷くない。もっと全然むちゃくちゃな映画は、いわゆるC級D級映画の中には沢山ある。本作には一応のストーリーラインと一応の演技は存在しているし、音楽などはむしろなかなか良い。このようにギリギリの体裁を保っているため、酷いシーンも”突っ込みどころ”になり、笑いと愛着を生むのではないだろうか。あまりにも破綻しすぎていてもはや”映画”とは呼べないような真の駄作とは違い、あくまで”映画”として一番酷い作品。そんな意味で、本作は”史上最低の映画”なのである。

点数:愛を込めて0/100点
 以上で散々書いたように、本作はかろうじて映画と呼べるかどうか、という出来である。したがって、本作を鑑賞する際にはできるだけ友人を集めて、ワイワイ突っ込みながら観るべきだ。一人で鑑賞するとあまりの退屈さに癇癪を起こすだろう。もし、どうしても一人で観なければならない人には、奇才ティム・バートンがエド・ウッドの半生をすこぶる美化して描いたその名も『エド・ウッド』という作品を併せて鑑賞することを強くオススメする。エド・ウッドの人物像を少しでも知れば、この世紀の駄作も愛おしく思えてくるから不思議だ。筆者は、本作に惜しみない愛を込めて0点という評価を与えたい。

(鑑賞日[初]:2012.1.31)

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