[No.231] ユージュアル・サスペクツ(The Usual Suspects) <92点>





キャッチコピー:『見破りますか?だまされますか?』

 想像し得る全てを疑え。
 事実を、常識を、観念を、己の耳や目でさえも。

 - あなたは、既に“真実”を見逃している。

三文あらすじ:カリフォルニアの港に停泊した大型船で大規模な殺人事件が起こる。デヴィット・クイヤン捜査官(チャズ・パルミンテリ)は、事件の生き残りであるヴァーバル・キント(ケヴィン・スペイシー)という障害者に、保釈までの2時間を利用して事情聴取を行う。ヴァーバルは、事件に至るまでの事の顛末、そして、その存在すら伝説的な噂でしか語られないギャング“カイザー・ソゼ”について話し始める・・・

※以下、ネタバレ有り。


~*~*~*~

 
 これはもう知らない人はいないでしょう。「どんでん返しを語るならこれを観てからにしろ!」とまで言われる不朽の名作サスペンス『ユージュアル・サスペクツ』

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 まずは、決定的なところから述べていきたい。そもそもこれって、そんなにスゴイ“どんでん返し”だろうか。もちろん、ラストはまさに“衝撃”。思わず「あっ!」と声を上げ、それまでのシーンを一から観直したい衝動に駆られる。でも、なんだか本作の“どんでん返し”は、『シックス・センス』であったり、筆者が最近鑑賞した『真実の行方』あるいは『情婦』のような“やられたっ!”という感覚にならない。どちらかと言うと“えっ!そうだったの!?”という感じ。

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 これは全て、ラストで明かされるカラクリが観客にとって初耳であるためだと筆者は考えている。

 確かに、ヴァーバルが語った“作り話”は間違いなくスゴイ。事情聴取開始時にクイヤンが「お前には俺の聞きたいことだけを喋らせる!」とすごんでいたことも、ラストを観てから再見するなら初見時とは全く違った、感慨に溢れたシーンになる。

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 謎めいた弁護士“コバヤシ”の名は、ヴァーバルとクイヤンが飲んでいたコーヒーのカップ裏に記載されていた“コバヤシ陶器”から。ヴァーバルが上目遣いでしっかりとカップ裏を凝視しているシーンもある。

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 “イリノイ州のカルテット”“バリトンのデブ”“グァテマラのコーヒー園”。これらも全て室内に手がかりがある。

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 ロサンゼルスでの取引相手“レッドフット”は、ヴァーバル正面の掲示板に貼られた張り紙から。

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 カイザー・ソゼという名を誰かから聞いたぞ、と呟くフェンスターにマクマナスが「ブリックス・マーリンか?」と尋ねるシーンがあるが、ファーストネームの“ブリックス”は、同じく掲示板の張り紙から、ファミリーネームの“マーリン”は、室内に貼られたカジキ(英語でマーリン)の写真からきている。

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 でも、室内に点在するそれらのヒントたちは、ラストの種明かしまでほとんど描写されない。したがって、我々は、作中で謎を解いていくチャンスを与えられていないということになる。『真実の行方』で言うところの“Sooner or later, a man wears two faces forgets which one is real.”のような大胆かつ親切なヒントが、本作には無いのである。

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 まぁ、はばかりなく言ってしまえば、本作は、オチを念頭に置いて頭からもう一度見直しても、答え合わせができないということだ。確かに、先述の通り、ヴァーバルがマグカップの底を凝視しているようなシーンはある。しかし、底に“コバヤシ”の名が印字されているなんてことは、この時点の観客には想像すらできない。つまり、本作を“ミステリー”として観るのなら、ノックスの十戒の8条、あるいは、ヴァン・ダインの二十則の1条及び15条に真っ向から反する“駄目ミステリー”だということにならざるを得ないのである。

 しかしながら、筆者は本作を映画史に残る傑作であると考えている。それは、本作が“クライムサスペンス”として極めて完成度の高い一級品だからに他ならない。

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 本作は、何もラストの“どんでん返し”だけに頼った辛気くさい“ミステリー”ではない。非常にご機嫌で、スタイリッシュかつハードボイルドで、さらには、極めていぶし銀な極上のエンターテイメントだ。ディーン・キートン(ガブリエル・バーン)を実質のリーダーとした本作の犯罪チームの手腕は極めて鮮やかで、それはまるで『ヒート』におけるニール・マッコリー一味、あるいは、『オーシャンズ11』におけるオーシャンと11人の仲間のよう。まぁ、強奪シークエンスだけに特化した作品では決してないから、マッコリーらほどの“プロ意識”は無く、オーシャンらのような“ポップさ”も無く、両者の中間といった感じではあるのだが、それでもとにかく、本作は、オチの“どんでん返し”を抜きにしても何度でも鑑賞したい、すばらしい“クライムサスペンス”なのである。

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 最後に“カイザー・ソゼ”について一言。ヴァーバルは、クイヤンの事情聴取中、ソゼの伝説について語るが、その際「ソゼ自身はトルコ人、父親はドイツ人」と発言する。

 “カイザー・ソゼ”。ファーストネームの“カイザー”は、ドイツ語で“皇帝”。ファミリーネームの“ソゼ”は、トルコ語で“お喋り”。そんな“お喋り皇帝”というネーミングは、ソゼがヴァーバルの単なる“お喋り”から生み出された架空の人物であることを物語っている。

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 一方で、“ヴァーバル”は、英語でやはり“お喋り”を意味する。そういえば、冒頭の留置場で彼は「俺はおしゃべりなんだ。」と言っていた。このときはまだ寡黙な彼のジョークとしての様相を呈するのみであったが、全てが明らかになったとき、我々は気付く。“ヤツは、本当に「口だけで」クイヤンを巻きやがった。”

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 また、両者の意味合いを合わせて考えると、“カイザー・ソゼ”=“ヴァーバル”という結論に至るのは難しくない。ヴァーバルは結局障害者ではなかったし、ソゼの側近“コバヤシ”は、実際にもヴァーバルの側近であった。

 改めて素晴らしい脚本である。もっとも、ソゼの伝説をヴァーバルが実際に行ったかは、もはや分からない。彼は既に、

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“ふっ・・・消えた。”


のだから。

点数:92/100点
 やっぱりおもしろいもんはおもしろいし、何度観てもあせることなくおもしろい。それから、本作の細かな点については、以下のサイトが非常に詳しいので、本作を鑑賞した人には是非参照してもらいたい。

 そして、フッ、消えた.... 『ユージュアル・サスペクツ』 - カイザー・ソゼの謎 -

(鑑賞日:2013.6.13)

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Comment

  • かずみ
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ラスト完全に騙さました。思わず「マジか!?」と叫んでしまいました。全体的にテンポも良いと思いました。
最近観た映画で一番面白かったので、このサイトでの評価が気になって拝見したところ、管理人さんの評価も高くて嬉しいです。

  • Mr. Alan Smithee
  • URL
Re: タイトルなし

本作は、筆者の中では、ブライアン・シンガーの唯一にして絶対的な傑作です。
『スーパーマン・リターンズ』も個人的にすごく好きでしたが。
総じて、やはり名監督だと思います。
ちなみに、彼はゲイです。

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