[No.232] ソウ(Saw) <90点>





キャッチコピー:『「CUBE」 meets 「セブン」』

 “絶望”とは、闘うべき理由を知らずに、しかも、まさに闘わねばならないということだ。

三文あらすじ:ある青年アダム・フォークナー(リー・ワネル)とある外科医ローレンス・ゴードン(ケイリー・エルウィス)は、目を覚ますと老朽化したバスルームに鎖で繋がれていた。部屋の中央には射殺死体、隠し置かれた一発の銃弾、着信専用の携帯電話、2本の煙草、数枚の写真、そして、2本のノコギリ(Saw)。状況を飲み込めないアダムとゴードンに、テープレコーダーから“ジグソウ”と呼ばれる犯人の声が不気味に語りかける・・・

※以下、ネタバレ有り。


~*~*~*~

 
 前回感想を書いた“どんでん系”の金字塔『ユージュアル・サスペクツ』に引き続き、名作“どんでん”をもう一本。

 2004年公開。監督、無名。脚本家、無名。主人公、無名という低予算の小品ながら、卓越した世界観と残虐性、そして、観る者を驚愕のどん底に叩き込む“どんでん返し”で世間を圧倒した、まさに21世紀の映画史に残る名作サイコスリラーである。

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 ちなみに、タイトルの『SAW』は、一義的にはもちろん本作の要(かなめ)となる“のこぎり(SAW)”を指すが、常に特等席での鑑賞をモットーとするジグソウがバスルーム中央でずっと“見ていた(SAW)”という意味も併せ持つ。さらに、犯人の名前である“ジグソウ(Jig「SAW」)”やゴードン先生の職業である“外科医(「SAW」bones)”、果ては“立場逆転(See「SAW」)”という意味まで有する、幾重もの掛詞なのである。まぁ、これはWikipediaの受け売りであるが。

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 さて、本作の“どんでん返し”については、今更説明するまでもないだろう。汚いバスルームの床に何時間も寝転がり続ける気長な犯人としてジグソウはあまりにも有名だし、さび付いたノコギリで自らの足を切断してしまう超人としてゴードン先生を知らぬ者はいない。

 それくらい本作は広く世間の知るところとなり、そして、それはそれくらい本作がおもしろかったということに他ならない。実際、今回再鑑賞した筆者も、オチを知りながらやはり非常にハラハラドキドキとのめり込んだ訳であるが、そこは無名なる者たちによるデビュー作ということで、若干の“荒さ”も垣間見える。

 例えば、いくらパニック状態だからと言って、外科医であるゴードン先生がわずか数メートル先に横たわる人物の生死を何時間も判別出来なかったのはおかしいのではないか、だとか、足首切断の直接の原因となった“電話に手が届かない”という展開にしたって、アダムに何かある程度の質量を持った物体(トイレの貯水タンクの蓋とか)を滑らせて携帯を押してもらえばよかったのではないか、と思わず突っ込みたくなる。

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 しかし、携帯電話の部分については、巧さも光っている。ゴードン先生が足首切断という大英断に踏み切るためには、通常人では考えの及ばぬくらい追い詰められる必要がある。そうでなければ本作は一気に説得力を欠いた駄作に成り下がっていただろう。本作は、その直接の原因を、愛する妻子の悲鳴を電話口で聞いた、などという月並みなものにしなかった。悲鳴を直接聞くのでなく、電話に出られない、という展開。これは非常に巧い。出られないからこそ、自分の中でネガティブな妄想が止めどなく膨らみ、不安に苛(さいな)まれ、パニックに陥り、結果、右足首を切断する。極めて説得的で、新人ながら本作のクリエーターには、やはり才能を感じずにはいられない。

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 逆に、演出面で筆者が少し気にくわなかったのは、回想の過度の挿入である。ゴードン先生やアダムが昨日のことを思い出すくだりは別にいいのだが、そこで既に描写された映像が、例えばゴードン先生が駐車場で写真を撮られるシーンなどが、その後もことあるごとに挿入され、しかも、全て一回目の描写時と同じ映像である、というのがいただけない。日本のドラマなんかでもよくあるが、ついさっき描写した事実をまたすぐに全く同じ映像を用いて描写されると、個人的には説明過多だと感じ、うんざりしてしまうのである。せめてモノクロにするとか、欲を言えば、異なるアングルからの別ショットで挿入して欲しいというのが筆者の希望であり、むしろ、ついさっき描写した事実なら、改めての挿入など不要であるというのが、筆者の個人的な見解である。

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 もっとも、そのような不満をバスルームの隅に追いやって鑑賞を続ければ、回想の過度の挿入を演出上の前フリとも解釈可能なことに気付く。ラスト、ゼップ・ヒンドル(マイケル・エマーソン)すらもゲームの参加者だった、という事実が発覚し、眠れる殺人鬼ジグソウが、やおら起き上がる。ここから今や定番映画曲となった「SAWのテーマ」が流れる演出が素晴らしい。あれだけキャッチーで上質な楽曲でありながら、本作で使用されるのはラストの一回だけで、その出し惜しみ感というかメリハリの効いた演出には、素直に賞賛を送りたい。そして、同時に、畳みかけるようなこれまでの回想。今までの台詞を嵐のように流す演出は、正直『ユージュアル・サスペクツ』のラストと被るが、とにかく、それまで何度も挿入していた過去の回想が、ジグソウの起き上がった今、全く違った意味を持って改めて挿入されていくのである。

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 個人的に特筆しておきたいのは、狂気の刑事デイビッド・タップを演じるダニー・グローヴァーだ。

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 ジグソウの捜査に取り憑かれ、狂気の中に囚われた、そんな役柄。彼もまたジグソウの“ゲーム”に知らず知らずと参加させられた一人と言えるかもしれない。名脇役ダニー・グローヴァーがそんなダークな役柄を演じているというのが、少なくとも『リーサル・ウェポン』シリーズや『プレデター2』のファンからすれば新鮮で、物語の主軸とはまた違ったところで“あっ!”と驚くポイントである。

 もちろん、それら彼の代表作とは全く異なる演技が素晴らしく、タップもグローヴァーのハマリ役の一つにカウントして良いだろうが、しかしまぁ、やっぱりアクションシーン、特に銃を構えるところは、相変わらずのドタバタ演技で、そこだけ少し微笑ましく思ってしまった。

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点数:90/100点
 圧倒的完成度。ジグソウ人形や豚の仮面など、カルト的アイテムを配置したところも末永く映画史に残っていく上での必須の要素である。あまりにも人気が出すぎてしまったということや、そのため“スリラー界の寅さん”かというくらいにあまりにも多くの続編が制作されてしまい、必然質の低下を招いてしまったことなどが災いし、本作にもやや批判の目を向ける者もいる。しかし、筆者としては、“ソリッド・シチュエーション・スリラー”というものを確固たるジャンルとして世間に提示した記念碑的作品として、本作はしっかりと映画史にその名を刻んだ名作だと考えている。

(鑑賞日:2013.6.13)

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