[No.235] ハイテンション(Haute Tension) <73点>





キャッチコピー:『Hearts will bleed.』

 トウキビ畑でウロボロス。

三文あらすじ:親友同士のマリー(セシル・ドゥ・フランス)とアレックス(マイウェン‎)は、勉強に集中するため、とうもろこし畑に囲まれたアレックスの田舎の実家に宿泊する。アレックスの両親への挨拶も終わり、あてがわれた部屋で一人一息つくマリー。しかし、夜も更けた頃、謎の男(フィリップ・ナオン)が来訪し、アレックスの家族を次々に殺し始める・・・

※以下、ネタバレ有り。


~*~*~*~

 
 2003年フランス制作のスプラッター・ホラー。そのまさに“ハイテンション”なグロ描写と衝撃的なDDG(どんでん返し)が好評を博し、かなり話題になった良作である。

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 監督は、アレクサンドル・アジャ。当ブログでも以前紹介した悪趣味砂漠大虐殺『ヒルズ・ハブ・アイズ』の監督。その他にも、衝撃的グロ怪談『ミラーズ』や、恐怖!殺人魚大暴走!『ピラニア 3D』など、スプラッター系を得意とする監督であり、かつ、リメイク作の多い監督でもある。今後は、日本が誇る宇宙海賊『コブラ』のリメイクを担当するそうなのだが、いったいどんなハードなスペース・アクションに仕上がるのか、今から非常に楽しみだ。

 さて、本作を鑑賞し、前評判通りの豪快なスプラッター描写と衝撃的なオチに筆者は大変満足したのだが、本作のDDGは実は中々に矛盾をはらんでいるようである。これは世間でも言われていることなのだが、一応、筆者は、ここで好意的な解釈を試みたいと思う。

 まず、謎の殺人鬼が実はマリーの別人格だった、というオチがある。作中、マリーが目の当たりにした殺人鬼の残虐極まる行いの数々は、実は全てマリー自身が行ったこと。おっさんの人格に支配されたマリー自身はアレックスの母の喉を掻き切っているのだが、女の人格はその光景をクローゼット内から見ている、という構図である。当然、女の人格がとる行動は大抵がマリーの妄想ということになるのだが、本作ではこの女の人格を主役として物語が綴られ、そして、ラストで真実が明かされる。冒頭の精神病院、自分自身に追われる夢、アレックスの裸を見てからのオナニーなど、たくさんの伏線が散りばめられた秀逸なオチである反面、なかなかにややこしい。

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 ポイントになるのは、各場面でマリーの体がどこにあるか、である。マリーの人格は作中2つが常に併存しているし、カメラがその2つの人格をコロコロ移動するので、マリーの人格を追っていると訳が分からなくなる。

 まず、殺人鬼がアレックスの実家に来訪し、出会い頭のアレックス父を殺したシーン。このとき、マリーの体は玄関にある。2階からその光景を見ているマリーは、彼女の“妄想”としての“脳内マリー”である。

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 次に、殺人鬼がマリーの部屋に来るシーン。ここは、マリーと殺人鬼しか登場しないシーンだから、マリーの体を支配している人格はおっさんでも女でも成り立つ。あるいは、両者のかくれんぼが完全にマリーの脳内で繰り広げられていた可能性もある。その場合、実際のマリーは、じっと立ち尽くしていたということになる。

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 その後のクローゼットのシーンは、先述の通り、実際にはマリーが母を殺し、脳内マリーがクローゼットから見ている、という構図。この前に、女マリーはクローゼットの部屋まで逃げてきているが、実際のマリーは、アレックスを縛り上げている。

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 少し引っかかるのは、アレックスの子供が撃ち殺されるシーンだ。ここでは、殺人鬼が納屋のショットガンを持って、とうもろこし畑に逃げたアレックスの子供を追っていくが、それを女マリーは2階でアレックスと共に見ている。実際に子供は銃殺されているから、マリーの体はとうもろこし畑にあり、アレックスの拘束を解こうと奮闘する女マリーは、脳内マリーということになりそうだが、ここでの脳内マリーは、アレックスという第三者に話しかけ、触れるのである。おっさんマリーがとうもろこし畑で子供を殺しているとき、同時に脳内マリーが第三者に干渉している、というのは矛盾だが、アレックスは猿ぐつわをされていてマリーの呼びかけに応えられない状況だったし、実際には、2階にアレックスが一人でいた、としてもそこまで不自然ではない演出だったようにも思える。

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 同じように考えて、アレックスと女マリーが車で運ばれるシーンも、実際には、荷台にアレックスが一人で積まれていた、ということになるのだろう。

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 それから、ガソリンスタンドのシーンであるが、ここも少し疑問が生じる。ここでは、ガソリンを入れ始めたときにはマリーの体はおっさんマリーの人格とシンクロしている。しかし、スタンドの店内に入ってきたマリーに店員が話しかけていることから、女マリーが店に入るまでの間に、女マリーが実際のマリー、おっさんマリーが脳内マリーに入れ替わったと思われる。客観的に見ている人がいたとしたら、ふてぶてしくガソリンを入れていた女性が、突如車の方を異常に気にしながらコソコソと店まで走り出したように見えただろう。

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 この後がよく分からない。店員の反応からして、店に入ってきたマリーがいったんは商品棚の影に隠れたことは間違いないと思う。しかし、店員は、直後入店した殺人鬼の方を見て、彼と会話を始める。戸棚に隠れたマリーが一旦店から出て行き、また入ってきたのだろうか。まぁ、これでも一応筋は通るか。店員の挙動は、コソコソ隠れたかと思いきや突然店を飛び出し、そして今度はふてぶてしく入店してきた異常なマドモアゼルに引きまくっているようにも見えるし、棚から酒を取る際、隠れているマリーと目が合ったように描写されたのも、実際には誰もいないその棚の方をちらっと見た動作をそれっぽく描いているにすぎないと解釈出来る。“ジミー”という彼の名をおっさんマリーが知っていたことが引っかかるが、名札でも見たのだろう。

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 その後、おっさんマリーの人格が実際のマリーとなり、脳内マリーを店に置き去りにして車を発進させる。その後、女マリーが警察に電話をかけ、そして、実際に警察が出動していることから、この電話は妄想ではないと考えられる。とすると、実際のマリーを支配する人格の切り替え時期に矛盾が生じるのだが、一応、おっさんマリーが斧で店員殺す→女マリーに切り替わり発車を目撃(この発車は空想)→警察に電話→おっさんマリーに切り替わり本当に発車。と解釈出来なくもない。

 ここからは、おっさんマリー(実際のマリー)と女マリー(脳内マリー)とのカーチェイスになるのだが、このカーチェイスは完全なる妄想。『デス・プルーフ』に登場したのと全く同じカラーリングの車は、そもそも存在しないか、少なくともガソリンスタンドから出てはいない。

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 森の中のビニールハウスで繰り広げられる殺人鬼とマリーの死闘も全部妄想。実際には、殺人鬼になりきったマリーが一人で暴れているか、女状態のマリーが一人で逃げ惑っているか、あるいは、その2役を器用に切り替えて一人のマリーが演じているか、はたまた、実際のマリーはじっと佇んでいて、彼女の脳内で2人の死闘が繰り広げられているか、のいずれかであろう。

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 だいたい以上のような感じになるのではないか。秀逸なプロットの本作であるが、おっさんマリーと女マリーの人格の切り替えが観客には分からない、という点と、脳内マリーが第三者に干渉するシーンを描いてしまったことが、本作を分かりづらく、かつ、やや矛盾をはらんだものにしてしまった原因だと思われる。

 なお、唯一決定的に弁護しかねる点は、殺人鬼の車がどこから来たのか、という部分である。冒頭時点のマリーは、殺人鬼が来訪する数時間前までアレックスやその家族と顔を合わせているのだから、人格の入れ替わった彼女がわざわざ自宅まで取りに行く時間はない。まぁ一応、アレックスの実家へのお泊まりが決定してから一度付近を訪れ、殺人鬼の車を隠しておいた、という解釈は出来なくもないか。そう考えると、前半で描写された殺人鬼の“生首オナニー”のシーンは、その事前の来訪の際に行われたものを時間軸をバラして挿入されたのだ、と説明出来そうである。

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点数:73/100点
 非常に意欲的で秀逸な良作スプラッター。まぁ、スプラッターシーンは、この手の映画にしてみれば中の下といったところで、グロ映画を観たいんだ!という熱意と勢いを持った観客には少し物足りないかもしれない。

(鑑賞日[初]:2013.6.15)

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