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2013

[No.238] パーフェクト・トラップ(The Collection) <82点>

CATEGORYホラー




キャッチコピー:『ソリッド・シチュエーションは進化する。』

 “お前<コレクター>” に勝てる。

三文あらすじ:女子大生のエレナ(エマ・フィッツパトリック)は、友達に誘われて地下の怪しげなクラブに足を運ぶが、そこは、あの連続殺人鬼“コレクター”(ランドール・アーチャー)の罠が張り巡らされた死の空間だった。次々に客が死んでいく阿鼻叫喚のクラブ内でエレナが発見した箱の中には、殺人鬼の“コレクション(The Collection)”になっていた男アーキン・オブライアン(ジョシュ・スチュアート)が監禁されていた。エレナがコレクターの手中に落ちたことを知った彼女の父(クリストファー・マクドナルド)は、武装集団を組織し、唯一の生還者アーキンを水先案内人として、コレクターの隠れ家に乗り込んでいく・・・


~*~*~*~

 
 隠れた良作『ワナオトコ』の続編。実は、筆者は、続編となるこの『パーフェクト・トラップ』を先に鑑賞し、その後、『ワナオトコ』がその前編に当たるという事実を知ったクチである。そういった鑑賞者は結構多いのではないだろうか。

 というのも、まず、タイトルを見てもらえば分かる通り、本シリーズには題名の連続性が全くない。『ワナオトコ1・2』とか『パーフェクト・トラップ1・2』のようにすればいいのに、日本の配給会社はそれをしなかったのである。言語道断だ!せっかくの良作が、しかも、1、2と連続して観ることで初めて一つの作品として完結する本シリーズなのだから、その辺はしっかり配慮するべきである。

 さらに、許し難いのは、レンタルビデオ店も本作が『ワナオトコ』の続編であるということをどこにも明記していない、という点。配給会社ももちろんそうなのだが、レンタルビデオ店で働く人々には、それ相応の“映画魂”を期待したい。そりゃあ、大抵はアルバイトの店員なのだろうが、その仕事を選んだのは、他ならぬアンタらだ。自分の仕事には、少なからず興味と誇りを持て!どの映画がどの棚にあるかも分からない、ましてやどの映画がどんな内容かも分からない、挙げ句の果てには、韓流ドラマで膨大なスペースを無駄に消費する。そんな昨今のレンタルビデオ店には、ほとほとがっかりである。まぁ、とにかく、そのような事情があったので、筆者は、まず、本作を鑑賞し、その後本作のいわばエピソード0といった感覚で前作を鑑賞したのであった。

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 そこで、改めて、本シリーズの基本情報について少しばかり言及する。監督は、マーカス・ダンスタン。前作『ワナオトコ』で監督デビューした彼であるが、脚本家としての功績は既に中々華々しい。

 まず、砂漠に集った馬鹿者たちが珍獣相手に七転八倒する傑作モンスター・パニック『ザ・フィースト』シリーズの脚本を全作に渡って担当。1は中々の佳作であったし、目も当てられないくらいにぶっ飛んでいた2と3もエログロ悪趣味スプラッタークリエーターとしての未来を感じさせる才気溢れる出来であった。

 そして、殺人魚大暴れの傑作古典『ピラニア』を次世代悪趣味の権化アレクサンドル・アジャがリメイクした『ピラニア 3D』の続編『ピラニア リターンズ』の脚本も彼の手による物。ここでは再び『ザ・フィースト』シリーズの監督ジョン・ギャラガーとタッグを組んでいる。

 さらに、世間的に最も目を引くのは、やはり『SAW』シリーズであろう。“サイコスリラー界の寅さん”と化し、ハロウィンの定番ホラーとなった同シリーズであるが、その4~ファイナルまでの脚本を担当したのが、他ならぬマーカス・ダンスタンなのである。したがって、前作や本作を観た観客が『SAW』のパクリやん。”と思うのも無理からぬこと、というか、まぁ、セルフ・オマージュとまではいかなくても、自身で培った技術を他の作品で活かした、と好意的に受け止めることは、充分に可能なのである。

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 さて、そんな本作は、前作の時系列をそのまま引き継いだ紛う事なき続編。前作を鑑賞した観客を飽きさせまいと続編に対して苦心惨憺、様々な趣向を凝らすのは映画界の常であるが、本作が採用したプロットは、ある種のセオリーを踏襲しており中々好ましい。

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 すなわち、一言で言ってしまえば、今回の展開は“今度は戦争だ!”である。貨物輸送宇宙船に一匹のエイリアンが侵入し、武装もままならぬ貨物船員たちとハラハラドキドキの攻防を繰り広げたSFモンスター・パニックの傑作『エイリアン』。そして、その続編として、今度は完全武装した海兵一個小隊をエイリアンの母星に送り込み、熱い漢の大アクション大作として仕上げた『エイリアン2』。もちろん、本作がそんな大傑作シリーズに匹敵するとは思わないが、とある富豪宅で殺人鬼コレクターと一金庫破りが攻防を繰り広げた前作に対して、コレクターの本拠地に武装集団を送り込む、という展開を採用した本作は、『エイリアン』シリーズと似通った構成であると言っても過言では無いだろう。

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 事実、この展開は、熱い。完全武装した侵入者に対して、コレクターも今回は万全の体勢。その罠の数々は、前回のようにただただ階段に棘を付けただけ、とか、ただただ床にトラバサミを置いただけ、といったちゃちなものではない。

 冒頭のクラブから、前作とは比べ物にならないくらいパワーアップした罠のオンパレード。コレクターは、能力にかまけたルーキーではなく、ちゃんと自身が口にした“ワナワナの実”の力を磨いてきたようである。超大型芝刈り機のような回転する刃物にフロアの客が一掃されていく様はまさに地獄絵図だし、エレナの友人が他の十数名の客と共に金網の檻に閉じ込められ、上からゆっくりと降りてくる檻の天井に押しつぶされていくシーンは、近年希に見る悪趣味なシーンだ。

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 また、コレクターの隠れ家においては、床のスイッチを踏めば天井から極太の鉄のトゲが侵入者を貫くし、舌を切られ、理性を崩壊させる薬剤を投与されたさながらゾンビのような“コレクション”たちの急襲もある。おまけに、拷問界のアイドル“鋼鉄の処女”こと“アイアン・メイデン”まで登場するという大サービスに、スプラッターファンは前作以上の恍惚を得ることが出来るだろう。

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 さらに、本作は、前作で囚われた“こそ泥ヒーロー”アーキン・オブライアンの復讐劇という様相も併せ持つ。今回は、彼のピッキングテクニックが披露されることこそないものの、自分をこけにした敵に漢の復讐を仕掛ける、という展開は、中々に胸を熱くする素晴らしいプロット。

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 あたかも“神”がごとき圧倒的な恐怖と絶望で以て“ゲーム”の参加者を手玉にとっていたのがジグソウであり、哀れな参加者が如何に手を変え品を変えグロく殺されるかを楽しむのが『SAW』シリーズだったのだが、本作は、それとはひと味違い、あくまでもコレクターはただの殺人鬼、必然、これに向かっていく武装集団やアーキンが一矢報い、ラストではついに巨悪を打倒するというカタルシスが用意されている。つまり、本シリーズは、マーカス・ダンスタンが『SAW』シリーズで培ったギミックを上手く取り込み、アクション映画と融合させた素晴らしい作品なのである。

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 ラストの展開も実に良い。というか、前作のやや後味悪いラストは、全て本作のラストへの前フリであり、本シリーズは2作を併せて観てこそ、初めてその真価が分かるというものである。ここに改めて、適当なタイトルを付けた日本配給会社、そして、そのフォローを全くしないレンタルビデオ店に対して、遺憾の意を露わにしておきたい。

 全ての元凶である殺人鬼コレクターをダストシュートから突き落とし、忌まわしい過去と共に火を点けるアーキン。コレクターが証拠隠滅を図ったため隠れ家にも火の手が回っており、あと少しで助かるのに前へ進めないこそ泥ヒーローを、奮起したエレナが助ける熱いシーンも必見。

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 しかし、本作は、これで終わらない。警察、消防、そして、医療班が右往左往する隠れ家の前で、アーキンは、隠れ家から運び出された“コレクション用の箱”が整然と並べられている様を見る。自身も監禁されていた忌まわしい箱。ふと、アーキンはその一つを凝視する。その中には、コレクターのあの覆面が・・・!ヤツは、まだ生きている。そう確信したアーキンは、同時に何かを決意する・・・。

 場面変わって、とある一軒家。住人のおっさんが帰宅し、ラジオを点け、階段を上り始める。と、突然選局が変わるラジオ。不思議に思って降りてくるおっさんの後ろから突きつけられる銃を握りしめるのは、我らが“こそ泥ヒーロー”アーキンだ。なんと、彼は、コレクターの正体を突き止め、復讐に訪れたのである。「俺を殺すのか?」とふてぶてしく尋ねるコレクターにアーキンが答える。「そんな生ぬるいもんじゃすまさねぇ。てめぇは同じ目にあわせてやる!!」 コレクターを無理矢理あの箱に詰め込んだアーキンは、自分がされたのと同じようにはみ出した彼の手を箱の蓋で何度も叩き付ける。終幕!

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 エンドロールも実に格好良く、気持ちいい。軽快なロックに乗せ、登場人物が死ぬ際の映像が流れる。そして、その者が絶命した最もグロいシーンでクレジット。“ノリ”が分かってる、というか、“遊び心”がある、というか、本作のクリエーター、そして、彼らが生み出した本シリーズは、実に最高のサイコスリラーであった。

 一つ気になるのは、前作の設定を消化仕切れていない、という点だろうか。妻の借金取立はどうなったのか、アーキンが盗み出した原石の塊はどこに行ったのか、そういったところが有耶無耶のままほったらかされているように思った。まぁ、ひょっとしたら筆者の見落としかも知れないが。

点数:82/100点
 久々に思わぬ良作と出会い、大変大満足である。まぁ、ホラーが苦手な人やスプラッターが苦手な人には決してお勧め出来るものではないが、それらに耐性のある人ならば、観て損はないと胸を張って言えるシリーズ。梅雨のジメジメを吹き飛ばす痛快なサイコスリラーである。

(鑑賞日[初]:2013.6.16)






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Tag:グロ注意 拷問系 ヘンテコ邦題

2 Comments

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映画魂(笑)

2015/01/26 (Mon) 21:37 | EDIT | REPLY |   

Mr. Alan Smithee  

Re: タイトルなし

そう、「映画魂」です。

2015/02/08 (Sun) 01:21 | EDIT | REPLY |   

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