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19
2013

[No.237] ワナオトコ(The Collector) <80点>

CATEGORYホラー




キャッチコピー:『その罠 ― 匠の技』

 “てめぇ<コレクション>” に一体何ができる!?

三文あらすじ:金庫破りの前科を持つアーキン・オブライアン(ジョシュ・スチュワート)は、妻の借金を返済するため、一軒の富豪宅に忍び込む。金庫の解錠に着手したそのとき、何者かの足音を聞き、計画を中止しようとするアーキン。しかし、既にその家は、捕らえた人間を拷問の末に殺し、気に入った者だけを収集する殺人鬼“コレクター(The Collector)”(ランドール・アーチャー)の罠が至る所に仕掛けられた死の館と化していた・・・


~*~*~*~

 
 例えば、あなたがレンタルビデオ店に行ったとする。梅雨も本格化してきたようだし、休日はすることがなく暇だ。そこで、あなたは、何かおもしろい掘り出し物は無いかと店内を物色する。しかし、奇跡的に本作を手に取り、そのジャケットを見たとしても、『ワナオトコ』なんていうタイトルの作品を借りようと思うだろうか。きっと、あなたは「ちっ、『SAW』のパクリか」と考え、すぐさま本作を商品棚に戻してしまうことだろう。本作が、そのタイトルからは想像も出来ない真の良作であると知らずに。

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 まぁ、このようなタイトルを付けた日本の配給会社にも功罪がある。罪悪は、多くの映画ファンに“パチもんのB級C級映画”との印象を与えてしまうこと。功績は、一部のB級C級スプラッターファンの目にとまりやすくなり、油断して鑑賞した彼らの度肝を抜くことが出来るということである。筆者は、もちろん後者であった。個人的に本作は、タイトルのチープさとは裏腹、素晴らしいサイコスリラーの良作である。

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 ストーリーは、単純と言えば単純。宝石仲介業を営む富豪宅に何ヶ月も前からセキュリティー業者として内偵していた金庫破りのアーキンが、妻と幼い娘を借金地獄から解放せんと、返済期限であるその日の深夜0時をタイムリミットとして、折しも家族旅行に出かけている富豪宅へと潜入し、窃盗を試みる。知り尽くした富豪宅、難なく侵入し、解錠に取りかかると、何者かの足音。他の侵入者の目から間一髪逃れ、計画の中止と富豪宅からの脱出を試みるアーキンは、あることに気付く。そこは、自分が見知った富豪宅ではもはやなく、いつの間にか無数の罠が張り巡らされた殺人鬼のテリトリーだった・・・。

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 本作のギミックに着眼して一言で申し上げれば、これは“大人のホームアローン”である。ピアノ線を切ると頭上から振ってくる包丁であったり、階段に敷き詰められたトゲトゲであったり、リビングに張り巡らされたトラバサミの数々であったり。ドラッグと非行に染まった今のマコーレ・カルキンが留守番したらこんな感じだろうなぁ、というダークな罠のオンパレード。中盤、一家の長女が彼氏と共に帰宅し、玄関からイチャイチャを始めるシークエンスでは、罠に掛かりそうになるのに間一髪でそれを避けていき、コレクターは暗闇に隠れて生唾を飲みながらハラハラ見守る、というコメディータッチのシーンもある。しかし、結局彼女らも実に無残な最期を遂げ、捕まった者は、地下室で激しい拷問を受け、やがて絶命する。そして、殺人鬼“コレクター”は、気に入った一人だけを大きな木製の箱に詰め、住み処へと連れ帰るのである。

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 確かに『SAW』のパクリ的側面もある。しかし、本作は、あくまでもアーキンvsコレクターの死闘を2部作に渡って描く“バトル・アクション”として捉えるのが、大枠としては正しい。その大枠の中に『SAW』で確立された“ソリッド・シチュエーション・スリラー”の要素を上手く取り込み、融合させているのである。

 その上で、本作が主人公の属性を“金庫破り”に設定したところは、評価に値する。善vs悪というステレオタイプな構図ではなく、大げさに言えば『ONE PIECE』における海賊vs海賊的な悪vs悪という構図。コレクターに囚われる後半の展開においても、彼は“金庫破り”というステータスを遺憾なく発揮し、針金一本で脱出に成功する。

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 さらに、彼はただの金庫破りではなく“家族思いの金庫破り”である。凶悪な犯人を前にした主人公が第三者を救うために自己犠牲の精神を発揮するという展開はありがちだが、映画クリエーターは、その都度、主人公の行動原理に苦慮する。逃げられるのに向かっていくのは非合理的でバカ野郎だし、“汝、汝の隣人を愛せよ”では説得力の欠片もない。本作のアーキンは、まず、前半で自分の家族を愛する“良い人”であるということが描写される。したがって、地下室で富豪一家を発見したときも、彼らを助けようとする展開が自然に受け入れられる。金庫破りの内偵のためとはいえ、彼らとアーキンとの間には数ヶ月の関係があるし、アーキンも富豪一家が良い人であると認識している。事実、2階のクローゼットで箱に詰められていた富豪一家以外の男に対しては、一家に対するほどの情熱を示さず、けっこう冷たい。また、彼らを救おうとするアーキンの行動には“やり過ぎ感”がない。既に死の館の外に脱出出来たのに助けに舞い戻る、というような動機と行動の釣り合いが取れない振る舞いをすることは“原則として”ない。理性的で合理的な主人公は、必然応援の対象になろう。

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 彼が唯一大胆な行動をとるのは、一家の娘を奪還するシークエンスである。アーキンは、このとき既に屋外に脱出しており、そのまま逃げれば自分の命は助かる。しかし、そのとき、これまでどこかに隠れていた一家の幼い娘が2階の窓から姿を見せるのである。一階にはコレクターの影が。彼は娘の存在に気付いた様子。どうするアーキン!彼は、ここで娘救出のため、再び死の館に舞い戻る。しかし、本作は、ここでも説得力を欠かない。アーキンには、一家の娘とちょうど同じ年頃の娘がいるのである。そもそも彼が一家の家に押し入ったのも、自身の家族、特に娘を助けたいからであった。とはいえ、予想外のコレクターの出現によって、物理的にも時間的にももはや金庫破りは不可能。借金地獄から自身の娘を救うことは叶わない。ならせめて、せめてあの娘だけは、綾波だけは、絶対助ける!という強靱な動機である。それはまさに、自らのときと同じように“父を知らぬ娘”を作ってはならないという思いからザ・ロックに留まったジョン・パトリック・メイソンの精神。我らがこそ泥ヒーローは、“戦う金庫破り”であると同時に“戦うお父さん”でもある。

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 もちろん、突っ込み所もたくさんある。例えば、アーキンは、富豪宅に侵入する当日の日中までその家でセキュリティーチェックをしており、また、侵入時に宅内を軽く見た際も日中のままであった。それなのに、何者かの足音に気付き、脱出しようと玄関に行ったところ、いつのまにやらドアにはいくつもの鍵が掛けられていて、さらには家中が罠の巣窟と化しているのである。いつ罠仕掛けたねん。きっとコレクターは“ワナワナの実”を口にしたパラミシアなのだろう。

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 それから、地下室で拘束されている一家の父母を発見したシークエンスもちょっとおかしい。アーキンは、母の懇願を受けて家のどこかに隠れているはずの娘を捜し出すことを約束する。そして、母に力いっぱい叫ぶことを要求する。彼女の絶叫に気付いたコレクターが様子を見に来た隙に階上へと脱出する、という算段だ。しかし、母に気を取られているコレクターの背後からこっそり逃げていくことが出来るのならば、その段階で後ろから急襲し、コレクターの息の根を止めればよかったのではないか。ここはちょっと逆にご都合主義的である。

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 最後にビジュアル的なことを述べる。まず、アーキンが最初にコレクターとニアミスするシーン。ここの映像は中々秀逸。部屋間の壁をまたいでカメラは頭上から2人を捉え、コレクターが扉を開けると同時にアーキンが別の部屋に逃げ込むという、さながら『メタル・ギア・ソリッド』的攻防を描く。

 また、肝心の罠によるスプラッターシーンであるが、これはまぁスプラッターとして見るならさほどグロくはない。もっとも、本作は単純にグロい画だけが売りという作品ではなく、様々な趣向を凝らした罠で色んな死に方を見る、という『ファイナル・デスティネーション』的な部分に醍醐味がある作品である。そのように観るなら、本作最大の見せ場であろう先述の長女イチャイチャシーンからの虐殺という流れは素晴らしい。あろうことか実家のリビングでふしだらな行為に及ぶ破廉恥娘に我々は遺憾の意を覚え、何故か上手に罠をかいくぐる2人の恋人にフラストレーションを覚える。このシーンでは、観客はコレクター側に立っているのである。そして、いよいよ発動した罠は、そのようなイライラを払拭するに足る大がかりな物。長女は、無数の釘に突き刺され、昼間には微笑ましいホームビデオが映写されていたスクリーンに貼り付けられる。チャラチャラしたいけ好かない彼氏は、トラバサミに足をはさまれ、そのまま無数のトラバサミの上に背中から転倒、全身をバキバキバキッ!と挟まれ、絶命する。不思議なことに、このシークエンスだけは、彼女らが死んでカタルシスを感じるという、上手く出来た趣向であった。

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 さて、以上では、本作を“こそ泥ヒーローvsワナワナの実のヴィラン”という図式で述べてきた訳であるが、本作のラストは、ヒーローものにありがちなハッピーエンドではない。なんとか一家の幼い娘を連れ逃げ出すことに成功したアーキンは、とりあえず娘をパトカーに乗せ、自身は救急車で搬送される。しかし、その道中、救急車はコレクターに奪われ、哀れアーキンは“あの箱”に詰められてしまうのである。箱からはみ出したアーキンの手を残虐かつ冷酷に蓋で打ち付け、お気に入りの獲物の“収集”を完了したコレクターの姿で終幕。それはさながら「ゲーム・オーバー」と言うジグソウのようでもある。

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 しかし、心配はいらない。本作は前編・後編の2部作だ。原題も本作が“The Collector”で殺人鬼コレクターの悪魔の所業を中心に描くのに対して、次作は“The Collection”。囚われた“コレクション”の逆襲が、始まる!

点数:80/100
 こんな良作がすました顔で埋もれているとは、映画界末恐ろしや。しかし、幸運にも本作を手に取り、奇跡的にレンタルし、筆者同様深く感銘を受けた映画ファンでも、本作が2部作だと気付かない可能性がある。それはひとえに的外れなタイトルを付け、何ら説明を付加しない日本配給会社とレンタルビデオ店のせいなのだが、その点の怒りは次回に取っておく。

 あ、それから、エンドロールの最後までちゃんと観た方がいい。箱に詰められたアーキンがコレクターに向かって「絶対に殺してやるからな!」と悪態をつくシーンが挿入されるのだが、これは、次作への伏線、あるいは、展開の示唆である。

(鑑賞日[初]:2013.6.16)






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Tag:グロ注意 拷問系 ヘンテコ邦題

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