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2013

[No.244] 1408号室(1408) <62点>

CATEGORYホラー




キャッチコピー:『心が壊れるまで出られない。』

 人の感情は円環を描く。
 “愛”と“恐怖”は、常に隣り合わせだ。

三文あらすじ:しがない心霊ルポライター、マイク・エンズリン(ジョン・キューザック)の元へ“1408号室には入るな。”とだけ書かれた差出人不明のニューヨーク、ドルフィン・ホテルのポストカードが届く。興味をそそられ、さっそくドルフィン・ホテルに赴くマイクだったが、支配人ジェラルド・オリン(サミュエル・L・ジャクソン)は、創業以来1408号室では56名もの宿泊客が自殺しているという事実を告げ、思い直すよう説得する。この説得にも屈せず1408号室に足を踏み入れたマイクが、そこで見たものとは・・・

※以下、ネタバレ有り。


~*~*~*~

 
 まぁ、仰々しく“ネタバレ有り”って書く程のDDG(どんでん返し)がある訳ではないのだが、一応“DDG作品”としてカテゴライズされることの多い本作。個人的には、公開時に予告編を見て若干注目していたものの、その後あまり良い噂を聞かなかったので今まで鑑賞する機会を逃してきた、という作品である。まぁ、公開後絶賛されないDDGというのは、概ね駄作と考えて良い。

 では、本作が設定負けした駄作かと言うと、6割YES、4割NOといったところで、正直良作とは言い難いし、口が裂けても傑作とは言えない。しかしながら、駄作と断じがたいのもまた事実。あらゆる映画はそうだが、要は何を期待して観るか、というのが一番大事なのである。愉快でバカバカしいノリを期待して『シンドラーのリスト』を観てはいけないし、上質なサスペンスを期待して『トランスフォーマー』を鑑賞するのは愚の骨頂だ。

 本作を好意的に鑑賞したい人が期待すべきこと、それは、それなりにドキドキするホラー映画、である。

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 本作の原作は、あの名ホラー作家スティーブン・キングの短編『一四〇八号室』。噂ではほんの数ページしかないというその超短編を一本の映画に仕立て上げる訳だから、本作は、言ってしまえば“無駄な”描写だらけの非常にダラけきった作品とも評することが出来る。

 しかしまぁ、主人公マイクが見舞われる1408号室での数々の怪奇現象は、皆ある程度恐く、ある程度スリリング。目新しさなど皆無に等しいものの、暇で暇でしょうがない梅雨の休日に鑑賞するなら、それなりにドキドキできる上質な佳作ではないか、と個人的には思う。

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 筆者が一言付言しておきたいのは、オチの解釈についてである。1408号室で自身のトラウマ、すなわち、幼い娘を(おそらく)病で死なせてしまった、という心の傷をえぐられるマイク。しかし、彼は、彼以前の数々の犠牲者とは違い、強靱な精神力で活路を見いだし、無事に生還する。

 エピローグにあたるラストは、よりを戻した妻と共に新居で今回の体験を執筆するマイクの様子。これはもう捨てましょうね、と言って、マイクが終始自身の声を録音していたテープレコーダーを持ち去ろうとする妻を、マイクは、「嫌な過去も俺自身だ。背負って生きていくよ。」となんとも格好いいことを言って制止する。

 ふと、そのレコーダーを再生してみるマイク。部屋に入ったばかりでまだ余裕綽々(しゃくしゃく)だった自身の声を懐かしく聞いていると、なんとレコーダーから死んだはずの娘とマイクのやり取りが流れ始めたではないか。これは、終盤で1408号室がマイクに仕掛けた罠であり、彼に見せた幻覚だったはずだ。しかし、それが録音されている。驚愕する妻と、じっと妻を見据えるマイクのアップで本作は終了。

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 まぁ、このオチについて、トトロ的ハートウォーミングな解釈を施し、結局「夢だけど!夢じゃなかったぁ!」と叫ぶことも充分可能だ。しかし、筆者の考えはこうである。マイクと妻が越してきた新居での風景は、妻に対する1408号室の罠だ。

 よくよく考えれば、そもそもマイクが1408号室から脱出出来たのがおかしい。彼は、最終的にウィスキーで火炎瓶を作り、それを部屋に投げつけることで炎上させ、駆けつけた消防隊員に救出される。しかし、これ以前にもマイクは1408号室に対して、散々物理的なアプローチを行っているのである。窓伝いに逃げようとしたり、通風口から脱出しようとしたり、壁に椅子を投げつけてみたり。そのどれもが当然功を奏さず、マイクは囚われのまま。それが何故かラストの火炎瓶だけ、明確に外界へと干渉する。

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 もちろん、マイクは、その心、あるいは、精神を1408号室に閉じ込められていたのであって、悟りを開いた(精神力で打ち勝った)彼の最後の行為だけが外界に干渉する物理力を持った、という解釈は可能だし、それが正しいのかもしれない。しかし、どうにも説得的でない。不条理の上に成立する論理としては、いささか脆弱である。

 そこで思い出してみると、作中、明確に外界への干渉力を持ったアイテムとして描かれていたのが、ノートパソコンによるテレビ電話であった。スカイプ的なサムシングである。マイクはこれを用いて妻と交信し、警察を呼ぶように言うのだが、状況が飲み込めない妻は、とりあえず私が向かうわ!、と答える。それは危ない!妻まで囚われてしまう!ということで、マイクはこれを止めるのだが、ここで1408号室の罠が発動し、画面に映った“偽マイク”が、是非来てくれ!と言ってしまうのである。テレビ電話での会話自体が1408号室の罠だったのなら、最後に妻自身が豹変してマイクに罵声を浴びせる、といった事態になるだろうから、そうではなく“偽マイク”によって妻を誘導した以上、テレビ電話は本当に外界と交信できる室中唯一のアイテムと断定してよかろう。直後、スプリンクラーが発動し、1408号室がパソコン破壊に走っていることからも、これは明らかだ。

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 つまり、本作中、マイクの居場所へと足を運んだことが確定しているキャラクターは、マイクの妻だけなのである。駆けつけた消防隊員は、そもそもの原因たる火災に疑念がある以上、不確定なキャラクター。いや、筆者は、マイクが起こした火災も幻覚で、消防隊員は駆けつけていないと考えている。

※再鑑賞時追記:もう1回ちゃんと見返してみたら、どうも火災はマジで起きているっぽい。消防隊員も、少なくともホテルの前までは駆けつけている。まぁ、マイクの妻は消防隊の制止を振り切って部屋に入ったが、実は燃えても成仏していなかった部屋の魔力に囚われてしまった、と考える余地は、まだあるかもしれない。以下に続く。

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 そこで妻に仕掛けられた“1408号室の罠”が、ラストのレコーダー再生シークエンスである。妻のトラウマは、マイク同様、幼い娘の死。またここで、ラストシーンでのマイクと妻、2人の表情にも注目して欲しい。まず、驚愕の色を浮かべる妻。死んだはずの娘とマイクとのやり取りが聞こえてきたのだから、この表情は、まぁ納得ではある。対するマイクの表情。彼は驚いていない。悲しんでもいない。ましてや喜んでさえいない。何やら思惑を秘めたような怪しげで真剣で真っ直ぐな彼の眼差しは、じっと妻を見据えているのである。

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 現実的に1408号室から生還し、過去のトラウマの克服にも成功、これから妻と心機一転やり直そうとする健全な心霊ルポライターとしてはあまりにも不自然な描写だが、1408号室の罠として再び登場した“偽マイク”の意地悪な表情だと考えると、極めて合理的で筋の通ったオチだと思える。

 まぁ、もしかしたら、筆者が何らかの決定的な描写を見逃しているがためのてんで的外れな解釈かもしれないが、マイクがテープレコーダーを使ってそうしていたように、筆者はブログという媒体を使い、初見時の率直な感想をここに書き留めておく。

点数:62/100点
 ホラーとしてもサスペンスとしても“ふつー”の作品。ラストに若干の解釈の余地を感じたので、点数は少し高めにしておいた。ポルターガイスト的ホラーをこよなく愛している人か、そのようなジャンルにこれから挑戦してみようという人にとってのみ、一見の価値がないこともない。

 なお、サミュエル・L・ジャクソン出演作品では、普段なら目の色を変える筆者だが、今回は特に述べなかった。ポスターなどでは、彼とジョン・キューザックのダブル主演のような感じになっているが、実際にはサミュエルの出番などほとんどない。じゃあ、なんでそんなちょい役にわざわざサミュエルを起用したんだ、という疑問が発生し、今度は、“実は支配人が仕掛けた罠だった説”が浮上するのである。本作を鑑賞した人は、是非この説についても突き詰めて一考してみて欲しい。

(鑑賞日[初]:2013.6.20)










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Tag:衝撃のラスト! 紫煙をくゆらせて アイ・ラブ・ニューヨーク サミュエル・L・ジャクソン

3 Comments

名無しの壺さん  

妻が1408号室に特攻するシーンはなかったから
妻が餌食になったってのは無理がある解釈だと思います
あくまで、1408号室は宿泊客しか殺してないのですから
そもそも宿泊客でない妻を殺す道理がありません

最後の無表情は観客の想像に任せるという映画監督の
メッセージではないかと睨んでおります

2014/06/16 (Mon) 21:29 | EDIT | REPLY |   

Mr. Alan Smithee  

Re: タイトルなし

確かに、おっしゃる通りです。
少し希望的鑑賞が過ぎたかもしれません。
作品の解釈に奥行きが出るラストシーンはやはり素晴らしいですね。

2014/08/15 (Fri) 12:37 | EDIT | REPLY |   

オレンジ  

No title

初めまして
冒頭の個人に関係のない脅かしとか火災が下界に反映されるところなど、いくつか疑問符がつく映画だったので、このレビューに大変納得させられました。
途中サミュエルが幽霊を信じる心は死後の世界に期待しているみたいなこと言ってたので管理人さんの考察は的を得ていると思いました。
個人的に終始イラついた映画だったのですが、思いの外評価が高く、評価されていた方達の見解も腑に落ちなかったのでスッキリしました。

2015/09/29 (Tue) 14:44 | EDIT | REPLY |   

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