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2013

[No.246] スティング(The Sting) <92点>

CATEGORYサスペンス




キャッチコピー:『相棒、いっちょカモろうぜ。』

 “騙される”って、こんなに気持ち良いことだったんだな。

三文あらすじ:1936年のシカゴ、詐欺で日銭を稼ぐ青年ジョニー・フッカー(ロバート・レッドフォード)は、その日も兄貴分である詐欺師ルーサー・コールマン(ロバート・アール・ジョーンズ)と共に一仕事を終えた。思わぬ大金に舞い上げるフッカーだったが、彼らが金を奪ったカモが街を牛耳るギャングのボス、ドイル・ロネガン(ロバート・ショウ)の部下だったため、組織の報復を受けたルーサーは命を落とす。ロネガンへの復讐を誓ったフッカーは、生前のルーサーから紹介されていた伝説の詐欺師ヘンリー・ゴンドーフ(ポール・ニューマン)と組んで一世一代の詐欺を仕掛けるのだが、そんな彼らに街の警部補スナイダー(チャールズ・ダーニング)やFBIの捜査の手が伸びる・・・

※以下、ネタバレ有り。


~*~*~*~

 
 世に名作映画数々あれど、これほどまでに多くの人から“名作”と呼ばれる作品もめずらしい。1973年制作、主演2人の類い希なるカリスマ性と綿密に構成された驚愕かつ小気味の良いストーリーが絶賛され、第46回アカデミー賞作品賞に輝いた傑作クライム・ムービー『スティング』

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 今回再鑑賞してみて、個人的には、やっぱりどうしようもなくおもしろいな!という感想を持ったのだが、意外にも映画雑誌『CUT』の“アカデミー賞は本当に偉いのか?”という特集では、本作の受賞に若干の疑念を差し挟んでいる。“勝つべきだったのか?”という項目における同誌の回答は、

 「長所を全部集めたとしても、答えはノーだ。」

 そうかなぁ…。再鑑賞を終えたばかりの筆者の興奮具合からすれば、この答えには到底納得出来ず、同誌には“アカデミー賞は本当に偉いのか?は本当に偉いのか?”特集を早急に組んでもらいたい気持ちである。

 ちなみに、同年の他の候補者は、以下の通り。『エクソシスト』、『ウィークエンド・ラブ』、『アメリカン・グラフィティ』、『叫びとささやき』。この他に同誌が挙げているこの年の名作としては、『ウィッカーマン』、『スリーパー』、『ビリー・ザ・キッド/21才の生涯』、『ミツバチのささやき』、『ロング・グッドバイ』、『ラストタンゴ・イン・パリ』、『燃えよドラゴン』、『赤い影』、『セルピコ』、『ミーン・ストリート』、『地獄の逃避行』がある。要は、73年という年が希に見る豊作の年だった訳で、同誌の見解に疑義を唱えるためには、ここに挙げられた作品を全て観る必要がある、ということだ。それは中々骨がおれるぜ。

 …ん~、どうしよう、じゃあこうしよう!“アカデミー賞は本当に偉いのか?は本当に偉いのか?”特集はしなくていい!

 という訳で、いつにも増して個人的趣味指向に特化した感想を以下に述べる。強大な権力に立ち向かうのはフッカーとゴンドーフに任せておけばいいのである。

 まずは、キャストの中から、監督について。ジョージ・ロイ・ヒルと聞いてピンとくる人もいるだろう。そう、アメリカン・ニューシネマの代表作にして“レィンドロップフォーリローマヘッ♪”が印象的な“漢”の逃亡劇『明日に向かって撃て!』の監督である。紛れもない傑作であることはもはや言うまでもないが、なんと、あろうことか同作は第42回アカデミー賞において受賞を逃しているのである。同年についても疑義を差し挟みたいところではあるが、『CUT』も言及しているように、この年に無視したことへのお詫びとして『スティング』が作品賞を受賞した、と考えるなら、同作は、まさに明日に向かって一撃をお見舞いした作品と言えそうだ。ちなみに、同作『明日に向かって撃て!』では、本作の主演2人が同じく主演を演じている。

 ということは、当然その2人のスターも本作の見所ということになろう。もはや知らぬ者はいない。地球が銀河に誇るムービースター、ポール・ニューマン&ロバート・レッドフォードのコンビである。

 まずはポール・ニューマンから。

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 渋い!渋いね!これはもう“Mr. 渋い”に違いなかろう。『ハスラー』、『暴力脱獄』、『タワーリング・インフェルノ』。代表作を挙げると本当にキリがない。

 本作における彼の役どころは、キャリア30年を数える伝説のベテラン詐欺師。前回踏んだデカイ山のせいでFBIから追われているため、今は目立った仕事をせず、匿ってくれる女の元でメリーゴーランドの係員をしている。つまり、彼は言ってみれば『紅の豚』におけるポルコ・ロッソのような、外見からはその能力を感じさせないいぶし銀なおっさんなのである。

 初登場時がもう既にカッコイイ。筆者が一番好きなのがまさにこのシーンだ。

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 フッカーが訪ねていったところ、二日酔いでダウンし、ベッドと壁の間で寝ているゴンドーフ。叩き起こされた彼が酔いを覚ますため、着の身着のままでバスタブに突入、そのままシャワーを浴びるのがこのシーンだ。これは格好いい!筆者も良く重度の二日酔いに陥る人種なのだが、鉛のような頭を抱えて朝を迎える度に是非彼の真似をしてみたいと常々思っている。とはいえ、これは中々出来るものではない。“ヒーロー”だったり“スター”というのは、きっとそんな存在なんだろうな。つまり、我々のような庶民がしたくても出来ないことを平然とやってのける格好良さ。そこにシビれる!あこがれるゥ!のである。

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 そして、もう一人。ゴンドーフとタッグを組みロネガンに一世一代の復讐をぶちかます向こう見ずなナイスガイ、ジョニー・フッカーを演じるロバート・レッドフォードである。

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 彼もニューマン同様、代表作を挙げ出すと日がまた暮れてしまう。最近話題なところで言うと、レオナルド・ディカプリオ主演で華麗にリメイクされた往年の名作『華麗なるギャツビー』のオリジナル版において、主人公ジェイ・ギャツビーを演じたのが、他でもないレッドフォードである。

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 本作においても、彼の演技、いや、演技などしなくてもただそこに居るだけで放たれる彼のセクシーなカリスマ性は、遺憾なく発揮されている。どちらかと言うとドンと構えている重鎮ゴンドーフに対して、機動的な役割を与えられているフッカー。非常に月並みな意見で恐縮だが、今から考えれば、ゴンドーフはニューマンでなければ成り立たなかったであろうし、フッカーはレッドフォードでなければ成立しなかったであろう。

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 それから、今回本作を再鑑賞して、筆者が強く思ったのは、本作のストーリーはあまりにも完璧である、ということだ。往年のDDG、例えば、以前当ブログでも紹介した『情婦』などを見たときも、非常に上手くオチまで繋いでいくその手腕に筆者は舌を巻いたのだが、本作の完成度はそれどころの騒ぎではない。完璧。一部の隙もなく完璧なストーリーラインなのである。

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 ゴンドーフがFBIに追われているというフリ、執念の刑事スナイダーの脅威、まさに“ジ・エンターテイナー”な詐欺師チームの“プレイヤー”、小気味良い“段取り”、引き込まれる“釣り針”、ドキドキの“作り話”、ハラハラの“締め出し”、そして、驚愕の“本番”。一体誰が、FBIすら彼らの仲間だったと気付くだろう。ロネガンだけでなくスナイダーをも完全に騙しきるプロットは、本作のその後に思いを馳せてみても完璧。馬の着番は事実通りだし、肝心のゴンドーフとフッカーが死んでしまったと信じ切っている以上、街を離れた彼らをロネガンが詮索する可能性はほぼ皆無である。唯一、単勝と複勝を明確に述べなかったあのメガネのおじいさんの身に脅威が及ぶ可能性が想起されるところだが、それも単純に“使えないヤツ”と思われるのが関の山だろう。

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 そんなキャスト面、ストーリー面共に史上最高に完璧な本作だが、現在の我々が鑑賞したとき、一点だけ分かりづらい点があるように思う。これは、まぁ単なる筆者の理解力不足なのかもしれないが、今回一緒に鑑賞した筆者の実弟も筆者同様理解出来ていなかった点なので、最後に若干付言しておく。

 それは、ロネガンの殺し屋について、である。冒頭でフッカーらに組織の金をだまし取られたロネガンは、彼らを始末するために殺し屋を雇う。まず、ここでロネガンは、2組の殺し屋を雇っているという点を押さえよう。1組はコンビの殺し屋。詐欺の舞台となる場外馬券場にロネガンが連れてきていたあの2人組である。そして、もう1組は、女殺し屋ロレッタ・サリーノ(ディミトラ・アーリス)。フッカー行きつけの小さな定食屋の女主人であり、フッカーと一夜を共にするロマンス担当でありながら、しかしてその実体はフッカーの命を狙う殺し屋であった、という大オチ前の驚愕パートを演出する重要キャラクターである。

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 分かりづらいのは、この内の前者、すなわち、名も無き殺し屋たちとロネガンの関係性である。フッカーは、高級場外馬券場の主人を演じているゴンドーフの子分という役を演じており、本来の身分を隠してロネガンと接触する。ロネガンには、まだフッカーの顔が割れていないのである。しかし、これと平行して、フッカーは度々殺し屋たちに狙われる。情報化社会に生きる我々からすれば、これは極めておかしな事態だ。ロネガンが雇った殺し屋は、組織の金を騙し取った詐欺師がフッカーだと認識しているのに、殺し屋を雇ったボスであるロネガンがその事実を知らない、ということはあり得ないだろう。ということは、ロネガンは、フッカーの正体を知りながら、わざと罠に掛かったフリをしているということか!と合理的かつ浅薄な結論を導くのは、はなはだ早計である。

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 ロネガンは、やはりフッカーの正体を知らないのである。そして、何故知らないのかというと、殺し屋はあくまでもロネガンが“外注”したのであって、殺し屋からロネガンへの連絡が密ではない、からなのである。

 えー!いくら外注したからって、雇い主に報告しないことはないんじゃないの!?なんて立腹する人は、コンクリートジャングルに囚われた哀れで小さな現代人。ネットもねぇ、光ファイバーもねぇ、電話も『トトロ』っぽいやつだ。そんな1936年に、あなたも一度ゆっくり身を置いてみるといい。巨大組織のボスが、例え外注の部下だとしても、彼らからの情報を得ることがない。そんな素晴らしき、古き良き、愛おしき“時代性”もまた、本作の大きな魅力の一つである。

点数:92/100点
 もちろん、今時の作品と比較すれば、テンポは遅いし、映像は古いし、展開はのんびりだ。しかし、その時代性を胸一杯に吸い込んで満喫し、そして、今時の最新作と比較しても全く遜色ない完全無欠のストーリーラインに驚愕すれば、ゆとり世代の私やあなたも、きっと本作の虜になること間違いなしの傑作である。

(鑑賞日:2013.6.21)














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Tag:紫煙をくゆらせて アカデミー賞 バディ・ムービー

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