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24
2013

[No.247] マッチスティック・メン(Matchstick Men) <89点>

CATEGORYサスペンス




キャッチコピー:『その男、潔癖症の詐欺師。』

 さよなら、愛しの“ダディ”。

三文あらすじ:詐欺師のロイ・ウォラー(ニコラス・ケイジ)は、抜群の腕を持っている反面、極度の潔癖症を患っている風変わりな男。そんな彼を心配した相棒のフランク(サム・ロックウェル)は、ある日、分析医のドクター・クレイン(ブルース・アルトマン)を紹介する。治療の一環として14年前に別れた元妻の娘アンジェラ(アリソン・ローマン)と会い、徐々に心の平静を取り戻していくロイだったが、ここ一番の大仕事にひょんなことからアンジェラが参加したことで、彼らの計画は破綻の兆しを見せ始める・・・

※以下、ネタバレ有り。


~*~*~*~

 
 前回は、詐欺師に焦点を当てた、今では“古典的”と形容することもままなる往年の傑作『スティング』の感想を述べた。そこで、今回は、華麗なる詐欺師の、そして、その実極めてハートウォーミングな家族ドラマの近代的傑作『マッチスティック・メン』を再鑑賞してみた。

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 監督は、言わずと知れた名匠リドリー・スコット。あの傑作SFホラー『エイリアン』の監督であるというだけでも筆者にとっては胸一杯なのに、素晴らしき“女”のドラマ『テルマ&ルイーズ』やSF好き魂のバイブル『ブレードランナー』、それから、アカデミー作品賞受賞の歴史スペクタクル『グラディエーター』など、実に様々なスタイルの作品を完璧に撮りきる監督である。筆者にとっては、タランティーノ、マイケル・マン、マイケル・ベイなどと並ぶ、マイ・フェイバリット・ディレクターだ。

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 主演は、ニコラス・ケイジ。個人的には、もちろん、プレッシャーを朝飯に食す“漢”の科学屋スタンリー・グッドスピードとして認識したい。しかして、本作における彼の演技も実に素晴らしい。重度の潔癖症を患った凄腕の詐欺師というトリッキーな役どころを実にきちんと演じきった。つまり、華麗なる手際を見せる格好いい一面も演じれば、安定剤が切れたときの病的な演技も使い分けなければならない。おまけに、一人娘との心温まる交流まで見事に演じ分けたのだから、ニコラス・ケイジにしては良く頑張ったと言ってもバチは当たるまい。

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 そんなケイジ演じるロイの相棒を演じるのは、『アイアンマン2』で姑息な技術屋ジャスティン・ハマーを好演したサム・ロックウェル。お調子者だがスタイリッシュな立ち居振る舞いで、凄腕詐欺師のロイにとってのベスト・パートナーとの印象を自然に演出した前半と、一転、裏切り者だったことが判明した後の、そう言われれば悪者っぽくもあったな、という終盤。これもまた彼こそが適任だったと感じさせる素晴らしいパフォーマンスである。

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 もう一人重要なのは、ロイの娘を演じるアリソン・ローマンちゃん。これがもう本当に表情豊かな“少女”の演技を披露しており、誠に素晴らしい。

 泣いたり、

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 笑ったり。

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 本当に可愛いのである。実際には凄腕詐欺師のロイを騙し通す程の才能を持った性悪女なのだが、そんなDDG(どんでん返し)を観客が最後まで気付かない原因の一端は、やはり彼女の純粋無垢でキラキラした演技にあるのだろう。まだあんまり売れているとは言い難い彼女だが、サム・ライミ監督渾身のホラー映画『スペル』でどうやら主役を張っているようなので、近々鑑賞してみようと思う。

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 さて、内容である。つまるところ、本作は、相棒もカモも分析医も警察も、あまつさえ娘もが結託してロイを騙していた、というオチの作品。その大胆なDDGに気付く観客は多くはないだろうし、そういう意味では、本作は素晴らしい名作と言えそうだ。しかしながら、本作は、前回の『スティング』とは違い、お世辞にも“気持ちよく騙された”とは思えない作品である。主な理由は、以下の2点。

 まず、オチのカラクリが観客には初耳な要素で構成されている、ということ。これは、以前紹介したDDGの傑作『ユージュアル・サスペクツ』と似た理由だ。相棒も分析医も娘も、確かに全編出ずっぱりではあるものの、最後まで鑑賞しオチを知った後でも、「あ!あの台詞はそういう意味だったのか!」と言った驚きはない。したがって、本作もまた『ユージュアル~』と同様、再見して答え合わせをしていくという楽しみ方ができない作りになっている。

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 そして、オチに“気持ちよく騙されない”、その理由の2つ目。どちらかと言えば、こちらの理由が大きいのだが、それは“父と娘のパートがあまりにも魅力的に描かれている”ということ。

 この点に関しては、リドリー・スコットの類い希なる映画監督としての手腕を呪いたい。すなわち、自分の殻に閉じこもっていた詐欺師とある日突然現れた一人娘との交流が、凄く魅力的。泣くときは思いっきり泣き、笑うときは弾けんばかりの笑顔を見せるアンジェラがすさまじく可愛いし、そんな娘に最初は極度の戸惑いを見せていた詐欺師が、徐々に心を開き始め、かつ、自分でも不断の努力を繰り返した結果、素晴らしく良好な関係が両者の間に築かれていく、という終盤までの展開が、凄まじく良くできている。

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 愛するが故にたまに不安になり、愛するが故に時に辛く当たり、そして、仲直りへの苦慮を経て、またお互いが最高の笑顔で向き合う。本作で描かれるそんな2人の関係性を見ると、結婚すら未だしておらず、ましてや娘など未だ素粒子レベルでも存在しない筆者でも、“あぁ、父親にとっての娘っていうのは、性欲を抜いた恋人なんだな。”と理解できる。

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 そんなステキな展開に舌鼓を打っていたところへ、件のオチが後頭部への強い一撃をくれる。あまりにもショックだ。リドリー・スコットの見事な語り口に翻弄され、もはや物語に肩までどっぷりと浸かった我々は、既にロイの衝撃と絶望を人ごとだと鼻で笑うことは出来ない。娘のおらぬ筆者のような鑑賞者でも、恋人にフラれたときの悲しさ、しかも、恋人が実は浮気していただとか、あるいは、それ以上のもはや想像だに出来ないような残酷なフラれ方をした場合を仮想し、酷く落ち込み、深く頭(こうべ)を垂れる。本作の結末は、“あっ!”と驚く感情よりもブルーな感情が勝ってしまう、という類の物なのである。

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 一応、DDG後に、かたぎの仕事をするロイが、偶然にもアンジェラ(本当はこの名前ではない。)と出会うシークエンスがある。思い出したくもないロイ、結局フランクにも裏切られ、後悔しているアンジェラ。束の間会話し、去り際に「名前、聞かないの?」と尋ねるアンジェラに、「もう知ってるよ。」と答えるロイが最高にいぶし銀。昔のような笑顔を見せ「じゃあね、パパ。」と去っていく名も無き少女、いや、“俺たちのアンジェラ”は、やっぱり愛おしい存在だ。

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 このロイとアンジェラの和解シークエンスに加えて、帰宅したロイを待つ新恋人、あるいは、新妻の描写もある。彼女は、ロイの行きつけのスーパーマーケットでレジ打ちをしていた美女であり、作中、ロイとくっつくための前フリがいくつかされていた。大きく膨らんだ彼女のお腹は、ロイが今度こそ“パパ”になることの証。彼は、きっと良いパパになるだろう。我々は、それを知っている。十分すぎるほどに。

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 とまぁ、本作を全体で観るなら、決してバッド・エンドな作品ではない。結局、悪の根源であったフランクへの制裁は無かったのだが、ロイやアンジェラが幸せなら、もはや文句は言うまい。

 とはいえ、である。やっぱり、中盤で綿密に描写される父と娘のパートがあまりにも魅力的過ぎたため、ラストで少しばかりハッピーに持ち上げられても、まだなんか釈然としないのである。依然としてなにやらもの悲しいし、楽しかったあのときを思い返し、なんでこんなことになったんだ!どんでん返しなんて大嫌いだ!と叫びたい衝動に駆られる。ロイは新しく生まれてくる子の“本当の父”になるわけだが、我々からすれば、それはやはり“パパ”ではない。我々の知る“父親としてのロイ”は、誰が何と言おうとも“アンジェラの父であるロイ”なのだから。

点数:89/100点
 散々感情移入した文章を書き殴ってきたのだけれど、まぁ、たまたま筆者が本作を鑑賞したとき、筆者のバイオリズムが感受性豊かな周期に達していた、というだけの話なのかもしれない。伏線を散りばめた大どんでん返しという訳ではない作品だが、巨匠リドリー・スコットが撮っただけあって、その完成度は当然ピカイチ。クライム・ムービー好きのみならず、広く沢山の人に鑑賞してもらいたい名作である。

 さて、今週末29日は、いよいよあの大人気ドラマシリーズ映画化第二弾『真夏の方程式』の公開日。筆者は『踊る大捜査線』だとか『HERO』だとか、格好いい“ヒーロー”が活躍するドラマは結構好きなので、この『ガリレオ』に関してもファーストシーズンをリアルタイムで鑑賞し、映画化第一弾公開の際には劇場に足を運んだクチである。したがって、今週末の公開日も随分前から楽しみにしているのだが、如何せん、今回に関してはドラマセカンドシーズンを未鑑賞。これから週末に向けてせっせと録り貯めた分を消化し、さらに劇場版第一弾もおさらいしておこうと思っている。という訳で、次回『容疑者Xの献身』まで、さよなら。

(鑑賞日:2013.6.23)










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