[No.252] クリープショー(Creepshow) <75点>





キャッチコピー:『怖いくらいに面白い。元気が出る映画。』

 身の毛はよだち、腹はねじれる。
 最高のショーへようこそ。

三文あらすじ:物語は、厳格な父にお気に入りの怪奇コミック“クリープショー(Creepshow)”を捨てられた少年ビリー(ジョー・ヒル)の憎悪から幕を開ける。綴られるのは、横暴だった家長が冥府から蘇り、集まった親戚一同を血祭りに上げていく『父の日』、家先に落下した小隕石に触れてしまった男ジョディ・ベリル(スティーブン・キング)が世にも数奇な最期を迎える『ジョディ・ベリルの孤独な死』、妻の不倫を知った富豪の老人リチャード(レスリー・ニールセン)による残酷な復讐劇『押し寄せる波』、大学の用務員が偶然構内で発見した謎の木箱を巡る『箱』、そして、異常な潔癖症を患った老社長を襲う悲劇『奴らは群がり寄ってくる』の5つの逸話。気付けば、ほら、あなたも彼らの一員に・・・

~*~*~*~

 
 監督ジョージ・A・ロメロ、脚本スティーブン・キングという豪華スタッフによる身の毛もよだつ小話のオムニバス映画。賢明なホラーファンなら知らぬ者のない良作であり、昔はテレビの洋画劇場等でよく放送されていたらしい。最近はホラー映画をゴールデンタイムで流すことも無くなってしまい悲しい限りだ。本当に子供に悪影響が出るのなら(往々にしてそれは大人の思い込みだと思うのだが)、親がしっかりと仕付ければいいだけの話なのに。親の怠慢をテレビ局のせいにしているだけのように思えてならない。

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 さて、本作冒頭で登場する少年ビリーの父は、そんな現代の甘えた親とは一線を画する古き良き厳格な父。「悪影響である!」と断じた彼は、息子の懇願に耳を貸さず、雑誌“クリープショー”を捨ててしまう。その後、憎しみに燃えるビリーの寝室になんか死神のような骸骨のようなゾンビのような、とにかくボロボロの気持ち悪いヤツが来訪する、というのが、本作のオープニングである。

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 ここからは、捨てられた“クリープショー”に記載された小話を映像で綴っていく、という演出スタイルで物語が進行していく。つまり、ビリーのくだりが“現実”、その他が“漫画の話”という構図だ。

 しかし、この“ビリーの一件”は、全ての小話が終了したラストでもう一度描かれる。再び現実世界に戻り、ゴミの収集員が捨てられた“クリープショー”を発見するシーン。この収集員の1人は、あのトム・サヴィーニである。

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 怪奇漫画集をパラパラ見ていた彼は、“ブードゥー人形”の読者プレゼント応募券が切り取られていることに気付く。誰かが既に応募していたのである。そして、もちろんそれは少年ビリー。父への憎悪が閾値を超えた彼は、日本で言うところの“藁人形”にあたる“ブードゥー人形”に応募し、見事それを手に入れた。憎しみに任せるまま人形に針を突き立てるビリーと突然の謎の激痛に苦しむ父の姿で本作は終了。恐ろしい表情を浮かべる少年ビリーのシーンが、本作の他の小話のラスト同様、実写から漫画タッチに変化するラストは、唯一現実の出来事と思われていたビリーのくだりも実は“クリープショー”の一逸話であった、あるいは、唯一現実の出来事だったビリーのくだりが“クリープショー”に新規追加された(作り話ばかり記載されていると思われていた“クリープショー”は、実は全て実話を元に作られていた)という、いずれかを示唆する最高の締め方である。個人的には、後者の方が不気味で好みだ。まぁ、要は、“ビジュアル的にインパクトの強い『世にも奇妙な物語』”とでも言うべき作品が本作なのである。

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 では、そんな“ビリーの一件”にサンドされた本作の逸話たちについて触れていく。

 まず、最初の小話は『父の日』。ロメロの真骨頂“ゾンビ”であったり、大胆に間を外し、いわば“映画のお決まり”を無視した驚愕の恐怖演出(実際、墓からゾンビの手が出てくるシーンは、筆者の中で相当上位にランクインする“映画びっくりシーン”である。)、あるいは、オムニバスならではの物語の余韻ある切り際など、本エピソードには見るべき所が多い。しかし、個人的に最も注目なのは、やはり若き日のエド・ハリスだ。

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 この表情(笑)。どういったシーンで彼がこんなにもオドケテ見せているのかは、是非本作を鑑賞して確認してもらいたいところだが、特に目を引くのは、そのフサフサの頭髪であろう。・・・フサフサ?と一抹の疑問を感じた人は、彼の最近の出演作を鑑賞し、やはり自身の目で確認してもらいたい。

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 次のエピソードは、『ジョディ・ベリルの孤独な死』。このタイトルは、なんだか『ポーラ・シュルツの寂しき墓』を彷彿とさせて、個人的に惹かれる。このエピソードで注目なのは、なんといっても本作の脚本家にしてホラー小説界のスーパースター、スティーブン・キング自身が主役を務めている、という点。

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 しかも、これがまたただの小説家とは思えないほど良い感じの演技を披露するのである。確かに、コミカルで仰々しい立ち居振る舞いのキャラクターなので、本域の俳優に求められるような繊細な演技は不要だったのかもしれないが、それにしてもキングの意外なマルチ・タレントぶりが垣間見える秀逸なエピソードと言っていいだろう。オチも程なく切なくてグッド。筆者は『ザ・フライ』を少し思い出した。

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 続いては、『押し寄せる波』。このエピソードのポイントは、前半の“恐怖”と後半の“恐怖”の質がガラッと変わる、というところだ。

 つまり、である。まず、本エピソード前半は、富豪老人リチャードの復讐劇なのだが、この復讐が極めて恐い。自分の妻とデキてしまった間男を顔だけ出るように砂浜に埋め、徐々に満ちてくる海水で溺死させる。しかも、その苦しむ姿をビデオカメラで撮影すると共に、遠方に埋めた妻(間男からすれば恋人)の姿を間男の目の前に置いたモニターで見せつける、という方法は、最近の例で例えるなら『SAW』のような“人間の狂気”による恐怖を感じるのである。

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 ところが、物語はこれで終わらない。後半は一転、間男と妻の復讐劇へとシフトするのだが、当然両者は既に死亡してしまっている。そこで、ロメロの真骨頂。そう、ゾンビだ!ボロボロの体中に海草が絡みつき、喋る度に“ポコポコ”と音がする水死体のゾンビと化した間男&妻が怯えるリチャードをジリジリ追い詰めていく展開は、前半とは打って変わってオカルト的な恐怖を感じさせるシークエンス。この大胆な構成を、一粒で二度おいしいと捉えるか、なんというバカ映画だ!と捉えるかは、もちろん個人の自由である。

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 キャスト面で注目なのは、リチャードを演じるレスリー・ニールセン。やはり『裸の銃』シリーズのコミカルな役者というイメージが強い俳優だが、海洋アドベンチャーの古典的傑作『ポセイドン・アドベンチャー』では、ポセイドン号の船長ハリソンを演じるなど、しっかりした名優でもある。そんな彼が代表作『裸の銃(ガン)を持つ男』に出演する前に演じたのが、本エピソードのリチャードだ。

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 その次は、これまた前エピソードに引き続き長尺のエピソード『箱』。大学用務員が発見した100年以上も前の木製の箱。北極調査隊の名がプリンティングされたその中には、見るも恐ろしい“何か”が封印されていた・・・。という何とも魅力的なエピソード。北極、あるいは、南極という極地は基本的にエイリアンの避暑地のようなもので、過去多くのエイリアン侵略SFが作品の舞台に選んできた場所であるから、箱の中から『遊星からの物体X』的なエイリアンが飛び出してきても良し、もしくは、結局箱の中身をはっきりとは明示せず“マクガフィン”として描く、という展開も良し。如何様にも料理できる素晴らしい設定だ。さぁ、果たして箱の中に入っていた“何か”とは・・・!

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 どーん! なんと!箱の中に入っていたのは、ゴリゴリのゴリラだったのである!え?なんで北極にゴリラがいたの? どうやって100年間も箱の中で生きていられたの?そんな理性的で退屈な疑問なんて置いておけ。箱があり、ゴリラがいて、人を喰う。そのバカバカしさ、俺は嫌いじゃないぜ。

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 最後のエピソードは、『奴らは群がり寄ってくる』。DVD版の邦題は『這い寄る奴ら』だったかな。とりあえず『奴らは~』はテレビ放映時のものであるらしい。トリを飾るこのエピソードの“奴ら”とは、人類普遍の天敵である害虫の王“ゴキブリ”である。

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 ふーむ。やっぱりゴキブリは気持ち悪い。とはいえ、この小話はまるで落語のように座りがいい。潔癖症であると同時にゴキブリ嫌いでもあるため部屋中真っ白な、まるで『2001年宇宙の旅』のような空間に住む老人がいる。しかも、その老人は、企業規模拡大のためには他人を自殺に追い込むことも厭わず、弱者を“虫けら”扱いする社長でもあるのだが、そんな彼が、大量発生したゴキブリの大群に飲まれ死亡するのである。極めてシニカルな展開だ。ゴキブリ大量発生の刹那に停電するという演出もベタだが恐怖感倍増。しかし、自殺に追い込まれた男の妻による“呪い”というオカルト的マターの介入を匂わせるラストは、やはりなんだかキングっぽい。

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点数:75/100点
 恐怖と笑いは、実に紙一重の感情である。仮に、恋愛映画におけるキス・シーンで俳優がカメラに向かってピースサインを送っても、それはそれで成り立つ訳であるが、例えば、ホラー映画におけるモンスター急襲シーンで俳優が同じ事をすれば、立ち所にそれはギャグ映画になってしまう。そんな中、本作は、恐怖と笑いのバランスが絶妙な良作。非常に完成された“堅苦しく”、“真面目な”昨今のホラー映画に飽きてしまった人は、是非この“古き良きホラー”に舌鼓を打ってもらいたい。

(鑑賞日[初]:2013.7.8)

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