[No.256] 深海からの物体X(Creatures From The Abyss) <15点>

Creatures From The Abyss



キャッチコピー:『「遊星からの物体X」を超えた戦慄!』

 “バカ映画道”は、深海が如く奥深し。

三文あらすじ:マイク(クレイ・ロジャース)を始めとした男2人女3人の総勢5名の若者たちが、小さなボートで海原に繰り出す。ところが、ボートはガス欠で立ち往生、日は沈み、おまけに嵐までが彼らを襲う中、偶然通りかかった船舶に乗り込んだマイクたち。魚を研究する特殊設備があるにも関わらず、船内には一人の船員もいないという異常な状況に疑問を感じ始めた彼らに、深海の怪物(Creatures From The Abyss)が牙をむく・・・

~*~*~*~

 
 “B級映画”の持つ意味合いは、非常に曖昧である。元来は、そして、一義的には、低予算で作成された作品のことを指していたのかもしれないが、低予算に伴う必然的な作品の低質さから、今では“内容的にバカバカしい作品”の意味で用いられることの多い言葉である。実際の例を見てみても、誰もが知る傑作モンスターパニック『ジョーズ』は、低予算にも関わらず、その内容は大変素晴らしいものだったし、反対に、タランティーノ作品、例えば『キル・ビル』シリーズなどは、予算の潤沢さとは裏腹に突き抜けたバカ映画と呼ぶことが出来る。

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 ところが、映画界は、本当に広い。ムービーは広大だわ、なのである。以上のような子供じみた議論など、映画界が抱く“バカ映画の深淵”に比べれば、表層を撫でたくらいのものでしかない。つまり、もっとずっとものすごい“バカ映画”が数多存在しているのである。小学生が書いたような脚本、学芸会のような演技、一周回ってファンタジーの領域に踏み込んだ科学考証。そんな作品群を我々は何と呼べばいい? C級映画?D級映画?いやいや、本作はそんなもんじゃない。

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 広い“バカ映画”界においてそれなりのネームバリューを誇る本作を敢えてカテゴライズするなら“Z級映画”であろう。映画かどうかすらギリギリのライン。“映画”という概念の最淵部を行き来する作品群である。当ブログで以前紹介したこのジャンルの映画は、『プラン9・フロム・アウタースペース』。愛すべき“バカ映画監督”エド・ウッド御大の手による世にも奇妙な“学芸会SF”なのだが、これなんかは、まぁ、“Z級映画界の「名作」”と呼んで差し支えなかろう。

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 さて、前置きが長くなったが、いよいよ本作である。もう本当に酷い。突っ込み所が多すぎる、とかそんな話ではなく、突っ込み所の合間にたまに普通のシーンが挿入される、といった構成。ひとまず、本作の“バカなポイント”を覚えている限り、思いつくまま以下に記述していく。

 まず、主人公チームのパーティー構成が極めて謎。冒頭、彼らは、男女のグループで夕焼けの海岸を散策しており、その様子はどうやらダブル・デートのようである。盛んにセックスを口にする主人公の相棒の立ち居振る舞いは、彼らがただの友人グループではないことを示している。しかし、なんだかんだと件の船内で落ち着いた彼らをよく見てみると、その内訳は“男2・女3”という不可思議なもの。まぁまぁ、そんな破廉恥グループがあってもいいのだが、本作の彼らは、どうにもそんな風に見えないのである。

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 そんなささやかな疑問を抱いたまま、ぶっとんだ物語になんとか食らいついていた我々は、終盤も終盤で驚愕の事実を知らされる。なんと、主人公マイクとヒロインは既に婚約していて、女性の内2人は姉妹だったのである!この事実が、本当に終盤で、しかも極めてさらっと、まるで“いや、言ってましたやん。”ぐらいの感じで明かされるので、理性的な観客はパニック必至である。

※なんて偉そうな悪口を書いておいてから後で気付いたのだが、筆者のバイブル『死霊のはらわた』シリーズの第一作におけるパーティ構成は、本作と同様の“男2・女3”であった。しかも、主人公アッシュとリンダは既に恋人同士、シェリルはアッシュの姉と、本作同様の関係性。これはまいった。そういえば、船の地下室的な場所に行ったまま返事をしない主人公に業を煮やしたマイクが一人でその後を追うシーンなんかは、完全に『死霊のはらわた』をパクった、もとい、オマージュしたシーンだった気がする。まぁ、筆者のバイブルはあくまでも『死霊のはらわたⅡ』である、ということと、それらを考えてもやっぱり終盤で唐突になされる説明は不自然極まりない、ということで一つご容赦頂きたい。

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 また、本作メインの舞台である船内が非常に不思議。外観は、良く見る普通の大型船。タンカーとまではいかないが、個人所有のクルーザーほど小さくはない、そう、ちょうど『ユージュアル・サスペクツ』のあの船舶ぐらいの感じである。一歩足を踏み入れると、そこにはなにやら怪しげで専門的な研究設備が。この設備のビジュアルは悪くない。普通の外観とのギャップによって不気味な雰囲気も醸し出されている。

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 問題は、客室部分である。これがどーしても、どー見ても、ラブホテルにしか見えない。ケバケバしい赤い照明、ドクドクしい青い照明。人が通る度に艶めかしく時報をお送りする人魚のマスコット・オブジェ。ビリケンさんのような金色の大きな置物の股間には、その等身と釣り合わぬ巨大なイチモツ状の突起物があり、なぜか先端には電球が。しかも、その棒部分をさすると電球が点灯するという遊び心。

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 これが破廉恥なビリケンさん。これを擦(こす)ると・・・

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ペカ~~~!


 また、シャワールームに入れば、「熱いのがいいのぉ?それとも冷たいのぉ?」と無駄にセクシーな女性の声が逐一語りかけてくる。一体どうゆうことなのか。この手の作品ではお決まりのセックス描写はもちろんあるとはいえ、本作メインの舞台をこのような妖艶な仕様にする必然性が全く感じられない。

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 細かいところで言うなら、注目なのは、研究室のパソコン。キーボードは極めて古くさく、それはまさに昔のまだ四角い箱だった頃のパソコンのそれである。ところがどっこい、起動してみるとそのディスプレイが突如空(くう)に出現する。立体投影ディスプレイと言うのかなんと言うのか。船内の他の場所においてこれと同レベルの技術描写はなく、時代設定が未来との説明もない。しかし、突然のサイバーデバイス。すさまじいシュールさに頭が痛くなってくる。

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 本作は、そんな奇抜なバカ映画っぷりにのみ甘えた作品ではない。“ベタな馬鹿ポイント”もしっかり押さえている。事の真相を究明しようと件のパソコンを操作する熱心なマイク。表示されるあまりにも専門的な海洋学的情報の羅列(とてもそうは見えないのだが。)に音を上げる彼だったが、ヒロインが他のデバイスについて質問した途端、たちどころにペラペラと説明してみせる。「これは遠隔探査船の操作装置だ。そして、これはその船内で死亡しているこの船員の映像だ。」まぁ、この辺は、まだ可愛いものであろう。バカ映画においては、このようなご都合主義的展開がよくある。

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 もう一つ、その類の突っ込み所は“伏線の大胆な丸投げ”。本作では、船員唯一の生き残りである博士が序盤で登場する。著しく体調を崩している彼は、その後ずっとリビング的空間の隅に鎮座しているのだが、震える手で何やら奇妙な液体の入った注射器を準備するのである。「奴らを倒してやる・・・」という趣旨の彼の発言から、その注射器は、殺人魚を殲滅する一発逆転、必勝のレアアイテム、あるいは、マイクらに投与することでさらなる阿鼻叫喚を招くツール、と想像することが出来る。

 しかし!ところが!クライマックスもクライマックス、船外への脱出を試みるマイクと博士の前にボス的殺人魚が立ちはだかり、今でしょ!とばかりに注射器を取り出した博士は、その刹那に注射器を叩き落とされ、そのまま食べられてしまうのである。一体あの中身は何だったのだ!?あれは“マクガフィン”だったのだろうか?いやいや、確かに注射器の中身が永久に分からなくなってしまった今、中身が何でも良かったと言えるかもしれないが、本作は、注射器の存在によって何らのストーリーも展開されていないから、マクガフィンと呼ぶのはおこがましいのでは・・・?

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 以上のように、本当に滅多やたらとおバカポイントが散在する本作であるが、中でも最も謎なのは、殺人魚が生まれた原因たる“プランクトンの特性”を説明するシーンだ。件のパソコンから情報をプリントアウトし、マイクは自室で音読する。

 「そうか…あの魚は、肉食性でプランクトンを食べる性質を持っていたんだ…。」

 ・・・??

 「プランクトンは…キャデラックを好み…ジャクジーが好き、という性質を持つ…。」

 ?・・・?????

 これは全く意味が分からない。本当に意味が分からない。どーゆーことなんだろう。たぶん・・・考えるだけ無駄なんだろうけど。とにかく、実に摩訶不思議なシーンである。正直、このシーンによって、本作の“バカ映画度”は『プラン9』のそれを遙かに凌駕したと個人的に思う。

点数:15/100点
 あくまでも“誰かにオススメするとしたら”という意味での15点。“バカ映画”として観るのなら、正直90点ぐらいあげてもいいような、超がつく“バカ映画”である。しかも、筆者が以上で述べたことは、本作のまだ一部にしか過ぎず、本当はもっともっと気が遠くなるほどに突っ込み所のオンパレード(例えば、深海魚のモンスターに寄生されたはずなのに、なぜか“クワガタ”を吐き出す女性キャラクターなど。)。演出・演技・音楽などの技術面での稚拙さなど語る気も失せるほどに、ぶっ飛びまくった希代の怪作である。

(鑑賞日[初]:2013.7.9)

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