[No.258] P2 <65点>





キャッチコピー:『この恐怖、もはやフィクションとはいえない。』

 Yippee-ki-yay, mother“PARKING”!

三文あらすじ:クリスマス・イブの夜、キャリア・ウーマンのアンジェラ(レイチェル・ニコルズ)は、遅くまで残業をしていた。やっとのことで仕事を終え、家族が待つクリスマスパーティーに向かおうと車を停めている地下2階の駐車場(P2)に降りるアンジェラだったが、車のエンジンは掛からず、おまけに全ての出口が閉鎖され、閉じ込められてしまった状況を知る。背後から襲われ気を失ったアンジェラが目を覚ましたとき、彼女は、駐車場の警備員トム(ウェス・ベントレー)の手によって鎖に繋がれていた・・・

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 本作のあらすじや予告編を見てまず抱く感想は、やはり“また『SAW』っぽいヤツか・・・。”ではないだろうか。本作鑑賞前の筆者もそう思っていたし、実際に鑑賞してみても、概ね事前の予想通りだったと感じる。しかし、本作は、『SAW』以降無数に制作された他のソリッド・シチュエーション・スリラーとはやや違い、本作ならではのオリジナリティーに対する苦心が覗えて、中々楽しい作品だ。

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 つまり、結論から言ってしまえば、一見単なるソリッド・シチュエーション・スリラーと思われがちな本作の実体は、『ダイ・ハード』的アクション映画なのである。

 一流企業のビルに閉じ込められた主人公が、犯人に見つからないようコソコソ逃げ回る展開や、中盤で巡回に訪れた警察官へ如何にして自身の存在を伝えるかといった展開は、まさに『ダイ・ハード』のそれ。おまけにクライマックスでは、互いに車に乗ったアンジェラとトムが正面から対峙し、極めて雄々しきチキン・レースを繰り広げるという一般的なアクションシーンもある。さらにおまけに、肉弾戦でトムに勝利したアンジェラは、彼を車のハンドルに手錠で繋ぎ、漏れ出たガソリンの流れた一筋にスタンガンで着火、あたかも『ダイ・ハード2』のラストが如くトムを爆殺するのである。

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 まぁ、アクション的な要素は正直そのくらいなのだが、では、果たして本作がしっかりしたホラー映画かと言うと、それもまた若干疑問。理由は2つあるのだが、まず一点目。筆者は個人的に、大した展開ではないのに無駄に大きな音を鳴らし観客をビビらせる、という“こけおどし演出”を多用するホラーは“駄目ホラー”だと考えている。これを前提に言うならば、本作は、少なくとも個人的には、れっきとした“駄目ホラー”だ。

 筆者がカウントした限りでは、本作において“こけおどし演出”が5回も登場する。トムの飼い犬ロッキーの泣き声関連が3回、冒頭でアンジェラと黒人上司が曲がり角ではち合うシーンで1回、消灯され真っ暗な地下駐車場を歩くアンジェラがつまずくシーンの効果音で1回である。オープニングでアンジェラがトランクをぶち破るシーンを入れるなら6回だ。これはいくらなんでも多すぎる。確かに、この“こけおどし演出”というのは、古き良きオールディーズではよく用いられていた演出であるから、現代ホラーにおいても使用するなとは言わない。いわば一種の“オマージュ”としての意味合いは未だ失われていないだろう。とはいえ、許されるのは、作中1回、多くても2回、しかも出来るだけ序盤で、というのが、筆者の“オリジナル「こけおどし演出」ルール”である。

 だから本作は駄目ホラーなのである。節操なく大音響を鳴らし散らし、安直で安易に恐怖を演出するのは、製作者の怠慢だ。確かにその瞬間はドキドキするが、そんな“吊り橋効果”で作品の評価が上がる程、今の観客は甘くない。

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 それから、ヒロインがブロンドで巨乳というところも、本作が真っ当なホラーではない証拠。“ブロンド巨乳”というのは、一般的に“バカ”の代名詞であり、ホラー映画では真っ先に殺されるべきキャラクターである。しかも、本作のヒロインであるアンジェラは、そんじょそこらの巨乳ではない。エグいぐらい巨乳なのである。

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 こんなんダメだよ、ダメダメ。こんなんじゃ、おっぱいにばかり目が行ってしまって、殺人鬼や変質者の恐怖が微塵も頭に入ってこない。むしろ、ここまで巨乳で可愛かったらそら監禁ぐらいしたくなるわなぁ…と思わず犯人に肩入れしてしまうではないか。どうしてくれるんだ、まったく。

 では、本作を“スプラッター・ムービー”と考えてみてはどうだろう。本作で制作を務めるのは、あのアレクサンドル・アジャ。砂漠で立ち往生系スプラッター『ヒルズ・ハブ・アイズ』や、トウキビ畑でつかまえて系スプラッター『ハイテンション』などを監督した新進気鋭の変態グロ監督である。そんな彼が制作し、しかも、美女が変態ストーカーの手によって地下駐車場に監禁される、という設定なのだから、美女の拷問であったり、モブ的登場人物の惨殺であったりといったスプラッター描写を期待する観客がいても誰も彼を責めることは出来ない。

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 しかし、本作はこの点においても全く期待ハズレ。そもそも、本作ではいわゆる“グロシーン”が一箇所しか登場しない。確かに、その一箇所、すなわち、アンジェラにセクハラをした白人上司がトムによってボコスカに殴られ、さらに車と壁におもいっきり潰されるシークエンスは、それなりにグロいと言ってもいいかもしれない。とはいえ、悪趣味さにおいては『ヒルズ・ハブ・アイズ』に遠く及ばず、血しぶきの飛び散り方、人体損壊の程度においては、その道の中の下と言われる『ハイテンション』よりも控えめな始末。こんなもんでは、血に飢えたスプラッターファンを唸らせることなど、到底叶わない。そんな訳で、本作は、スプラッター・ムービーでもないのである。

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 以上より、筆者は本作が、おっさんを美女に、紳士をストーカーに、銃撃戦をホラーテイストの演出に入れ替えた、アジャなりの『ダイ・ハード』なのだと結論付けた。そう言えば、時期もクリスマスだし。

点数:65/100点
 ホラーとしては普通、スプラッターとしては物足りない、最後に突如アクションになる、という中々不思議な作品。もっとも、それぞれの演出は非常に丁寧だし、主人公アンジェラもこの手の映画の女性主人公にしては比較的理性的で好感が持てる。また、犯人トムを演じるウェス・ベントリーも、『アメリカン・ビューティー』でヤング・ハリウッド・アウォードを受賞しただけあって、若造なりに味のある不気味さ。その後全く受賞歴の無い彼には、是非今後とも頑張ってもらいたい。

(鑑賞日[初]:2013.7.12)

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