05
2012

[No.26] エレベイテッド(Elevated) <75点>

CATEGORYホラー
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予告編:無し
キャッチコピー:無し

 日常に潜む小さな“CUBE”の戦慄。

三文あらすじ:エレン(ヴィッキー・パパフス)とベン(ブルース・マクフィー)が乗るエレベーターに4階でハンク(デヴィッド・ヒューレット)という男が駆け込んでくる。スーツを血で真っ赤に汚した彼は「外に恐ろしい怪物がいて、死人が出ている」と主張し、絶対にエレベーター外へ出ないよう2人に忠告する。果たして外ではいったい何が起こっているのか・・・

※以下、ネタバレあり。


~*~*~*~

 
 1997年制作、カナダの新星ヴィンチェンゾ・ナタリが監督した『CUBE』。後のいわゆる”ソリッドシチュエーションスリラー”ブームの先駆け的傑作である。本作は、そのDVDにおまけとして収録されている短編映画。公開時には本編の前に流されたらしい。

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 舞台はエレベーターのみ。登場人物は2人の男と1人の女のみ。シンプルな密室劇だ。3人の俳優も特に有名ではないから、純粋に脚本勝負の作品である。ストーリーは、“エレベーターの外には本当に怪物がいるのか?”、言い換えれば“エレベーターから出るべきかそうでないのか?”という一本軸に沿って進行する。

 怪物がいるという根拠は、実際に遭遇したというハンクの証言と、彼のスーツに付いた血やときおり急にエレベーターを襲う衝撃といった状況証拠のみなのだが、この”いるかいないか分からない”という微妙なラインが上手く保てているので、最後まで緊張感が弛緩しない。まぁ、20分の短編が途中でだれることも珍しいだろうが。

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 そのようなサスペンスの枠組みの中で、登場人物、特にエレンの心理的変化に焦点が当てられる。謎の男ハンクは「絶対に降りるな」と言い、閉所恐怖症のベンは「そんな男は信じずにすぐ降りるべきだ」と主張する。両者の間で板挟みになる気弱な中年女性エレン。中盤、ベンがエレベーターを止め、エレンは降りるか降りまいかギリギリまで迷うのだが、扉が閉まる瞬間、やはりエレベーターに乗り込む。彼女はベンではなく一応ハンクを信じたということだ。

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 その後、ジョン・マクレーンが良く出入りしていたイメージのある、エレベーターの上の出入り口が外から何者かに開けられそうになる。やっぱり怪物はいたのか!?パニックになるエレンとハンク。ハンクは出入り口を押さえながら、エレンにエレベーターを最上階まで上昇させるよう指示。昇りきったエレベーターによって、何者かはグシャッと潰される。ついに怪物を倒したのか!?とそこはかとない安堵が立ち込めるエレベーター内。しかし、落ちてきたのは何とベンの死体。人は、AとBの二者択一という場面でAが信じられなくなると、Bを信じるための積極的な証拠が何ら無くても、その反動でBを信じてしまうものだ。外にいるのが怪物だったと思っていたら実はベンだったという状況を見せられると、反動でやっぱりハンクは嘘つきでベンを信じるべきだったのだと思ってしまうのは、観客もエレンも一緒。ずっと極限状態にいる気弱なエレンならなおさら冷静な判断はできない。

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 しかも、ベンを殺した責任の半分は最上階のボタンを押したエレンにもあるようなものだから、彼女はパニクり、ハンクを非難し、ナイフでエレベーターの配線をいじって地上に降りようとする(唯一エレベーターを操作できるハンクのカードは、ゴタゴタの中で扉の隙間から落下してしまった。)。外は危険だからとエレンを止めるハンク。2人はもみ合い、ハンクを振りほどこうとしたエレンは、弾みでハンクの胸にナイフを突き立ててしまう。信じられないという表情の2人。ここで気弱な中年女性エレンの理性は、今までの極限の緊張と自責の念に耐えきれず崩壊する。たがが外れたエレンはハンクをめった刺しにして殺害。

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 ふと我に返ると、エレベーターは地下に到着しており、開いた扉の向こうには地下駐車場が広がっている。自分のしたことに驚きナイフを取り落としたとき、「そのエレベーター、待ってくれ~!」という声が。外に目をやると、地下駐車場の向こうから、何かから逃げるように男が走ってくる。ハンクが乗ってきたときと同じだ。しかも、さらにその後ろから何人もの人が逃げてくる。次々とエレベーター内に逃げ込む人たちの中で、なにやら邪悪な顔のエレンがアップになり終幕。

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 結局どういうことなのだろうか。まぁ、”どういうことかは観たあなたが考えてください”系の映画ではあると思うのだが“怪物は本当にいた説”が妥当ではないかと筆者は考えている。

 確かに、”実はハンクは別件で殺人を犯しており、エレンたちを人質にしてエレベータに立てこもろうとしていた”ということも考えられる。しかし、これだとラストで人々が逃げてきた理由が説明できない。”ハンクはエレンたちに適当なウソをついただけだったが、実は偶然にも本当に外には怪物がいた”ということなら理屈は通るが、どちらにしても、怪物は実在したということは確定だと思う。

 となると、怪物のタイプは基本的に陸上歩行型だろう。ハンクはとにかく最上階に行きたがっていたし、逃げてきた人々が地下からエレベーターに乗る理由は、上階に行くこと以外には無い。また、ハンクは39階で降りるベンを強く止めていたから、地上にうじゃうじゃいる怪物がすでにこのビル内部にも侵入していると考えられる。ジョン・マクレーンよろしくこのビルだけに潜んでいる怪物ではないだろう。それならビルの外から人々が逃げてきた理由が説明できない。

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 つまり、この話は、突如出現した歩行型モンスターに街は大パニック、ビルの警備員ハンクはビル内でモンスターに人が殺されるところを目撃し、エレベーターで最上階へ逃げようとするが、乗り合わせた2人とのゴタゴタの結果刺し殺されるという流れになる。このビルは44階まである高層ビルだから、軍のヘリに救出してもらうというのが、ハンクが最上階を目指した理由かもしれない。なんだか『クローバーフィールド』の番外編みたいな話だ。

 残る謎は”ベンはなぜエレベーターの上から再び中に入ろうとしたのか”ということであるが、おそらく、階段で地上を目指したベンはモンスターに遭遇、追われるままに一つ上の階に行き、とりあえずもう一回エレベーターに避難だ!と考えたということで一応説明がつく。

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 そして、本作ラストにおいて、モンスターから逃げてきた人々をエレベーター内で待つのは、ダークサイドに落ちたエレン。つまり、”モンスターから逃げた先にもモンスターがいた”というブラックなオチである。

点数:76/100点
 本作は、外の状況が全く分からない密室内での出来事であり、かつ、その中で極限状態に追い込まれた人間の心理を暴くという点で、同じ監督が撮った『CUBE』と共通した作品だ。同作が気に入った人には間違いなくオススメできる良質の佳作である。

(鑑賞日[初]:2012.2.4)





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Tag:これが女の生きる道 ソリッド・シチュエーション・スリラー

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