[No.260] ラビッド(Rabid) <62点>

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キャッチコピー:『Pray it doesn't happen to YOU!』

 今日は“腋フェチ”のみなさんに悲しいお知らせがあります。

三文あらすじ:カナダの田舎道をツーリングしていたローズ(マリリン・チェンバース)とその恋人のハート(フランク・ムーア)は、不慮の事故を起こしてしまう。比較的軽傷だったハートに対して、かなりの重傷を負ってしまったローズは、近くのケロイド整形外科病院に搬送され、そこでケロイド医師(ハワード・リシュパン)の手によって“中性化処理”による皮膚移植を受ける。一月後、目を覚ましたローズは、腋の下に出来た穴から突起を伸ばし人間の生き血をすする異形の怪物へと変貌していた・・・

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 まず、タイトルを間違えないように注意したい。ラビット(Rabbit)ではなくラビッド(Rabid)。意味は“狂気じみた”とかそんな感じで、“狂犬病の”という意味でも使用される。一義的には、本作のパニックの原因たる“突然変異した新種の狂犬病”のことを指しているのであろう。

 本作も前回紹介した『ビデオドローム』同様、カナダが生んだ変態監督デヴィッド・クローネンバーグの手による作品。ただ、『ビデオドローム』よりもさらに初期の作品であるため、未だ彼の持ち味は薄めであり、めくるめく幻想的なグロ世界を期待して観ると少しがっかりしてしまうかもしれない。

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 唯一かつ決定的なグロシーンは、悲劇の主人公ローズの腋下に発生した肛門が如き“穴”。パックリ開いたそれはヒクヒクと動き、さらにその中には何やら筋肉質の物体がモゾモゾしている、という鳥肌必至のグロギミックなのである。豪快に血しぶきが飛び散ったり、大胆に肉片が舞い踊る、そんな“テンションの高い”グロ描写ならまだしも、このようなある種“陰湿で静的な”グロ描写は、確かにクローネンバーグらしくあり、また、個人的にはそんじょそこらのスプラッターシーンよりもよっぽど吐き気を覚えた。

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 本作のおおまかな筋は、言ってしまえば“パンデミックもの”。ローズに吸血された者たちが次々と他の人々を襲い始め、襲われた者たちがまた他の被害者を作っていく、というシステムである。こう聞くとまるで“ゾンビもの”のようでもあるのだが、よく考えてみればそれはいささか疑問である。

 確かに、噛まれた者が理性を失い、非感染者を襲う、という仕組みは、一般的な“ゾンビ”と共通なのであるが、本作の感染者たちには最も核となる要素、“死体が生き返る”という部分が欠けている。“死者蘇生”という反キリスト的要素は、ゾンビもののテーマを奥深くする重要なマターであるから、これを欠く本作の感染者を素直に“ゾンビ”と呼ぶことは正しくないのかも知れないが、まぁ、昨今では走るゾンビや自我を保つゾンビなど、極めてバリエーションに富んだ色々なゾンビが出現しているのだから、筆者は、一応本作を“ゾンビもの”とカテゴライズしておく。

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 本作を“ゾンビもの”と定義し、本作の感染者を“ゾンビ”だと考えたとき、彼らの中々に斬新な部分が見えてくる。そして、その斬新さが本作の切なく悲しいラストにも大きく貢献しているのである。それは“保菌者であるローズをも襲う”という点。ゾンビものに限らず、およそ感染してモンスター化してしまう作品においては、すべての元凶、すなわち“ホスト”であり“キャリアー”は、決して襲われない。むしろ、逆にホストを倒せば他のモンスターも一掃できる、という陳腐なお約束を採用する作品すらある。

 しかし、本作では、そのラスト、恋人ハートから自分が保菌者である可能性を告げられたローズが“実験”と称して一般男性を吸血し、ゾンビ化した彼の逆襲を受けて殺されてしまう、という展開が登場する。そして、彼女は、他の数多の死亡者同様、戒厳令が敷かれた街の片隅で死体処理隊員に回収され、ゴミ収集車に無造作に積み込まれてしまうのである。ローズ自身のドラマに目を向けても非常に無情であり、人類全体の未来を考えてみてもそこはかとない絶望感が襲う。なぜなら、作中説明される通り、彼女は『アイ・アム・レジェンド』のウィル・スミス同様、人類で唯一抗体を持った救世主だったからだ。全ての元凶でありながら同時に人類最後の希望だったローズが、それに気付かれぬまま雑に処理されてしまう、というラストの無常観は、どこか“ゾンビもの”と共通する部分でもある。

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 映像的な見所としては、この手の“B級ホラー”にはありがちな“おっぱいサービス”であろうか。本作でその美しい肢体を余すところ無く披露してくれるのは、主役であるローズ。すなわち、彼女を演じるマリリン・チェンバースである。というのも、彼女は、ポルノ映画界のスター女優。黒人とのセックス、剃毛プレイ、恥部へのピアスなどなど、当時はタブー視されていた数々の斬新な所業を成し遂げた、先駆者的ミューズである。特に、黒人男性(アフリカ人のジョニー・キーズ)とのプレイでは、そのあまりの巨根と45分にも及ぶ長丁場から、撮影後失神したという武勇伝まで持っている。まぁ、そんな過激な経歴の割には露出が少ないとも思えるが、腋の“アナル”でげんなりしてしまった腋フェチの諸君は、せめて彼女の大胆なおっぱいサービスで、僅かながらでも溜飲を降ろしてもらいたい。

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点数:62/100点
 未だ個性の控えめなクローネンバーグ最初期の隠れた名作。とはいえ、つぶさに見ていくと作中の端々に“変態的な”要素が垣間見えてくる。やはり“カナダが生んだ変態監督”は伊達じゃない。

(鑑賞日[初]:2013.7.12)

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