[No.263] 死霊のはらわた(The Evil Dead) <89点>





キャッチコピー:『全米を異常震撼させた残忍ホラーNO・1!これが問題のスプラッタ・ムービーだ!』

 全ての“グルーヴィー!”には、語るべき始まりがある。

三文あらすじ:深い森の中の別荘で休暇を過ごそうとやってきた“アッシュ”ことアシュリー・J・ウィリアムズ(ブルース・キャンベル)ら5人の若者は、地下室で謎めいた一冊の書物とテープレコーダーを発見する。書物は死者の書“ネクロノミコン”、テープレコーダーから流れる言葉は死霊復活の呪文であると気付いた頃には時既に遅し、死霊に憑依され、次々とおぞましい怪物に変貌する仲間たち。アッシュと死霊との壮絶な戦いが幕を開ける・・・

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 1981年、残酷極まるスプラッター描写、軽快な語り口、文字通り飛ぶようなカメラワークをひっさげて、彗星のごとく映画界を席巻し、その後の一大ホラーブームを決定づけた記念碑的名作。本シリーズ、特に本作の続編である第二作は、筆者にとって魂のバイブルである。

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 監督は、今や旧『スパイダーマン』シリーズの監督として知らぬ者のない名匠サム・ライミ。彼のデビュー作である本作には、その後も彼の持ち味となる非常にスピーディーで軽快な演出が随所に見受けられる。ちなみに、次作である『死霊のはらわたⅡ』は、正確には続編ではなく“セルフ・リメイク”。本作の主な構成を、登場人物や展開の大幅な変化で以て作り直した作品である。

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 さて、一般的な“ホラー映画”の印象というのは、基本的にどこか“息苦しい”ものがある。もちろん“恐怖”とは、ドキドキハラハラ、緊迫し緊張した雰囲気の中でこそ感じることの出来る感情であるから、それはある意味で当然だし、ホラー映画においての息苦しさはむしろ必須の要素であると言える。しかし、本作、そして、本シリーズは、れっきとしたホラー映画でありながらも、そのような息苦しさがあまり感じられない。まぁ、三作目に関してはほとんどコメディと化しているから当然としても、第一作に当たる本作において、身につまされるような息苦しさを感じない原因は何だろうか。

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 思うに、それは、本作が“バトル・アクション”としての側面を有しているからである。一般的なホラー映画における“敵”、すなわち、“幽霊”であったり“怨霊”であったり、あるいは、研ぎ澄まされた狂気を持つ“殺人鬼”であったりといった存在は、皆か弱き登場人物を完膚無きまでに圧倒する。彼らは、普通の人間からすれば“神”にも等しい上位の存在であり、逃げ惑う主人公は作中終盤に至るまでただただ怯え、ただただ翻弄され、ただただ追い詰められていく。彼らには“感情”がない。主人公らの思いも寄らぬ場所に突然現れ、淡々と害を加えてくる。“相手の感情が読めない”、つまり“相手を理解出来ない”というのはこの上ない恐怖なのであり、そのような圧倒的恐怖の対象に何らの対抗策も持たない登場人物が追い詰められていく様こそが、息苦しさの原因である。

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 しかし、本作の“敵”、すなわち、死霊に憑依された仲間たちは、以上のような“無表情な怪物”ではない。彼らは、主人公をおちょくってくる。これこそが、本作の死霊が持つ個性であり、本作の雰囲気を決定づける最大の要素だ。死霊たちは、一様にアッシュを口汚く罵り、生娘が耳を塞ぎたくなるような“Fワード”を連発し、こけおどしの演出で以てアッシュをおちょくり続ける。そうする内に、アッシュだけでなく彼を見守る我々観客の胸中をも支配していく感情は、恐怖よりも怒り。てめー、いい加減にしろよ!そこまで言うならこっちだってやってやる!!という憤怒の感情は、終盤で反旗を翻すアッシュへの応援に変換され、クライマックスではアッシュと死霊の“喧嘩”を手に汗握りながら見守る野次馬感覚へと昇華される。そんな訳で、本作を突き詰めて考えると、その本質は“バトル・アクション”に他ならないのである。そして、そのような傾向をさらに推し進め、“漢のバトル・アクション”にまで進化させたのが、筆者にとっての魂のバイブル『死霊のはらわたⅡ』というわけだ。

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 そのような、単純に怖がらせるだけでないストーリーテリングもさることながら、本作で輝いているのはやはり映像テクニック。特に有名なのは、あの空を飛ぶような自由なカメラワークを実現したシェイキー・カムという手法。“革新的映像技術!”みたいな感じで紹介されることも多いこのテクニックだが、その実体は、16mmカメラを角材の中央に取り付けただけ、というシンプルなもの。角材の両端を2人のスタッフが持って森の中を駆け回り、あのスピーディーな映像が作られたのである。とはいえ、しょぼい撮影方法だなぁ、などと断じるのは早計で滑稽なことであって、本作以降当然のように用いられる同様のカメラワークを世界に広めたライミは、やはり偉大なしゃかりきコロンブスに違いない。

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 もう一つ、今観ても圧倒されるのは、死霊のビジュアル。憑依された人間のボッロボロな気持ち悪い見た目、クライマックスで正体を現す死霊本体のオドロオドロしくグロテスクなビジュアルや一見アンバランスな警戒色の臓物のビジュアルなどなど、低予算で制作された本作の説得力を映像面から完璧に補完している。クライマックスのコマ撮り映像は今観ると若干チープに思えなくもないが、それも本作の言いしれぬ味わいの一部であろう。

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 あんまりグロくないところで言うなら、これなんか有名だろう。本作のいわばマスコット的死霊にして最初の犠牲者でもある、アッシュの姉シェリル。彼女がずっとこの地下室から見ている、という設定を採用したことは、最後までダラけることなく緊張を保ち続ける上で非常に上手いやり方だと思う。

 それから、アッシュの恋人リンダ。

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 これはまぁ、白塗りにして白目にしただけのような気もしないではない。どうやら、技術という意味に限定すれば、本作で特殊メイクを担当したトム・サリヴァンはそこまで飛び抜けて優秀という訳ではないようなのだが、それでも本作公開時は、トム・サヴィーニやロブ・ボッティンなどそうそうたる特殊メイクアーティストたちに並ぶ評価を映画ファンから与えられていたというから、本作の秀逸な出来に後押しされたビジュアル的パワーの強さを推して量ることが出来る。ちなみに、このリンダというキャラクターは、普通のときより憑依後の方が可愛らしいという不思議な女性。やっぱり常にケラケラ笑っている子は可愛いものだ。

点数:89/100点
 あまり詳しい点について述べなかったが、それはこの後に鑑賞した本作のリメイク版のレビューにおいて書ければと考えている。とにもかくにも、ホラー界きっての“やり過ぎヒーロー”アッシュのめくるめく大冒険が始まる記念すべき傑作スプラッターこそが本作。血しぶき飛び散り肉片弾け舞う様は、確かに恐いしグロいのだが、その反面どこかで血湧き肉躍る、男子必見の“ロックンロール・ホラー”である。

(鑑賞日:2013.7.14)

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