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キャッチコピー
・英語版:Fear Paranoia Suspicion Desperation
・日本語版:世界を犯す、騒がしい絶望。

 死に至る病、そして…。

三文あらすじ:目覚めると立方体(Cube)の部屋に閉じ込められていた6人の男女。キューブの各6面に設置された扉の先にはやはり同様の部屋が続いており、いくつかの部屋には侵入者を殺傷するトラップが仕掛けられている。キューブの正体、互いの素性、集められた理由などの一切が不明な中、彼らはキューブからの脱出を試みるのだが・・・

※ほとんどの謎は謎のまま残されるのだが、誰が生き残るかは一応楽しみなところ。そこで、一応警告。以下、ネタバレあり。


~*~*~*~


 ”ソリッドシチュエーションスリラー”というジャンルを確立した、エポックメイキングな傑作。その後、無数のパチモンと2作の続編を生み出し、『SAW』シリーズの原典ともなった。圧倒的なアイデア、極限状態での秀逸な心理描写、キューブの卓越したビジュアル、緊迫した脚本のどれをとっても天晴れと言わざるを得ない。

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 本作が、極めて上手くまとめられた佳作であるということに異論を差し挟む人はいないだろう。賛否の分水嶺は、やはり本作のオチ、すなわち”キューブの正体が明かされない”という点にあると思われる。結末が明かされないと憤慨する人というのは、結構多い。だからこそ、華麗なオチを披露した『シックス・センス』は大ヒットし、本作のように謎を謎のまま残す作品は一定の非難に晒される。ところが、案外そんな人に限って、全てが単純明快かつ気分爽快ないわゆるハリウッド大作を”バカバカしい”とこき下ろしたりするのだから、観客とはわがままなものだ。

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 本作は”サスペンス”や”ミステリー”ではない。筆者の解釈では、本作は”ディザスター・ムービー”である。6人が放り込まれるキューブは単なる”厄災”であり、それに直面した人々がどのように行動するかが本作の肝だ。キューブが無機質な意思無き凶器として描かれるのと同様に、キューブを制作し彼らをその中に入れた者の意思も本作においては意味をなさない。つまり、『ツイスター』における大竜巻、『パーフェクトストーム』における未曾有の台風、『デイ・アフター・トゥモロー』における氷河期、『ディープ・インパクト』における大津波、そして『アルマゲドン』における巨大隕石のように、キューブは”災害”なのである。そして、あらゆる災害が神の所業と例えられるように、キューブの製作者も本作では”神”としての役割を与えられている。神が災害を起こす意図など存在しないし、少なくとも誰にも推し量ることはできない。突然襲ってくる災害の中で、ある者はただただ悲観し、ある者は自暴自棄になり、またある者はもがき苦しみながら生きようとする。そしてその過程を通して、”人”とは何か、”生きる”とはどういうことかというテーマが浮き彫りにされるのである。

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 本作でも”人の本性””生きる”というテーマに焦点が当てられる。6人は突如幽閉された殺人立方体の中で極限状態に追い込まれ徐々にその本性を露わにしていく。最初は頼りになる強い男だった黒人警察官クエンティン(モーリス・ディーン・ウィント)は、終盤ではすぐキレて暴力をふるったり、ここぞとばかりに気にくわない奴を殺したりする弱い一面を露わにする。逆に、最初はなよなよして役立たずだった皮肉屋の技術屋ワース(デヴィッド・ヒューレット)は、終盤ではキューブとクエンティンという2つの脅威にも果敢に立ち向かう強い一面を覗かせる。また、”生への執着”については作中たびたび言及され、クエンティンには喧嘩別れした3人の息子という生きることへの強い動機がある。これに対して、ワースは非常に厭世的で外の世界には生きる望みなどないとうそぶき、真面目な女子大生レブン( ニコール・デボアー)も外では退屈な日常を過ごしていると言う。しかし、生への執着が薄い2人もキューブに立ち向かう内に、レブンは生きたいと願うようになり、ワースはそんな彼女を生かすため奮闘するようになっていく。

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 そして、結局キューブから唯一脱出に成功するのが、暴かれるべき本性も理性的な意味での生への執着もない、知的障害者カザン(アンドリュー・ミラー)であるというのは、災害や人間のリアルな本質を突いた非常にアイロニックなオチである。キューブを脱出できた彼が、外の世界では一人で生きていけないというのも、極めて無情だ。

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 その他の登場人物も割と典型的で分かりやすいキャラに設定されており、極限状態での人間の心理的変化を克明に描写することに成功している。これは、ある意味で本作が通常のディザスター・ムービーより優れている点と言えるのではないだろうか。台風や津波は日常生活を突然襲うものなので、リアルに考えれば性格が対照的な者や危機を乗り越えるために都合の良い能力を兼ね備えた者ばかりがたまたま集うということはない。まぁ、映画だからそんなことがあっても全く問題ないし、事実往々にして映画では個性的なメンバーばかりが集まったりするのだが。しかし、本作では人工物であるキューブに意図的に集められた6人という設定なので、6人の能力や性格が都合良く配置されていても、それはそれで依然合理的である。

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 以上は筆者の解釈であるが、キューブは現実社会のメタファーであるという解釈を展開する人もいるようだ。作中で「陰謀論」や「自分が何か大きな物の一部として機能していても、その全体像を知る者はいない」というテーマが登場人物によって語られており、この解釈も極めて合理的で説得的である。

点数:92/100点
 さんざん書いておいてアレではあるが、筆者は別に”謎は謎のままの方が美しい”だとか”カフカ的な無常感を楽しむべきだ”などと気取ったことを言うつもりは毛頭無い。そりゃあ、すっきりした謎解きでカタルシスが得られればベストである。しかし、本作はキューブの正体を謎にしておくことにもストーリー上の必要性と合理性があるし、何よりアイデア・脚本・映像センスが極めて優れた傑作である。それに、下手な謎解きをされるくらいなら、謎のまま残してくれた方が色々と自分で解釈できて楽しい。そこで次回は、中途半端でダメダメな謎解きを披露して本作に泥を塗った『CUBE2』に対して、筆者の怒りが爆発する。乞うご期待である。

(鑑賞日:2012.2.5)

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Mr.Alan Smithee
Posted byMr.Alan Smithee

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