[No.279] バッド・テイスト(Bad Taste) <55点>





キャッチコピー:『グロッとさわやか』

 “さわやかな『バッド・テイスト』”なんて“清純派AV女優”みたいなもんだよ。

三文あらすじ:ニュージーランドの田舎町カイホロー。ある日、突然町人全てが消息を絶ったその町に臨場した数名の調査員は、人間に擬態したエイリアンの急襲を受ける。エイリアンvs人類、血で血を洗う戦いが、今、始まる・・・


~*~*~*~

 
 もうちょっと続きます、“Mr.Alan Smitheeのしばらくバカ映画の話を”

 さて、今回鑑賞したのは、今やファンタジー映画の金字塔となった『ロード・オブ・ザ・リング』の監督として知らぬ者のない名匠ピーター・ジャクソンが25歳という若手時代に作製した超悪趣味変態B級スプラッター映画の金字塔『バッド・テイスト』

bt8.jpg


 まぁ気持ち悪い!!ものすごく低予算ながら、筆者がこれまでの映画人生で鑑賞した作品の中では、現時点でおそらくトップクラスの気持ち悪さを誇っている。何がそんなに気持ち悪いのかというと、まずは、登場人物が全員不気味。これは人間もエイリアンも全て含めてである。まぁ、エイリアンに関しては、どちらかといえば不気味な方が良い。侵略系SFにおける恐くないエイリアンなんて、清純派AV女優みたいな概念矛盾であり自家撞着である。

bt1.jpg


 これが本作のエイリアン。うん、むしろ中々秀逸なデザインだ。したがって、問題は人間サイドの登場人物。例えば、彼。

bt2.jpg


 彼は、最終的にエイリアンよりも狂気じみた振る舞いで以て“人類の革新”になると共に、勢いそのままエイリアンの母星に突入し、そこで今度は、逆にエイリアンたちを虐殺しまくるのだろうという最高にクールで最高にニヒルで最高にファンタスティックな本作のオチを演出するキーパーソン。とはいえ、未だ歯車が狂わぬ登場時から既に観る者をどこか不安にさせるあの気持ち悪さは、一体どこから来るのだろう。ある意味では、極めて良い俳優だとも言えそうだが。

 それから、単純に人体損壊描写が超ストレートという点も本作の気持ち悪さの一端を担っている原因。顔面がはじけ飛ぶなんて日常茶飯事午後の紅茶。頭蓋骨にめり込むナタ、エイリアンの頭から突き刺さって体内を通り股間から出てくる人間。スプラッターとはかくあるべし!と言わんばかりの残虐描写が軒を連ねている。とはいえ、そんなもんは筆者の大好きなゾンビ映画においても多々用いられているのだし(それどころか、ゾンビ映画の醍醐味は、派手な人体損壊描写にこそあると言っても決して過言では無い。)、『死霊のはらわた』なんかを観てお分かりの通り、ぶっ飛んだ人体損壊描写は、もはや“ロックンロール”と呼ぶに相応しい、極めてハイテンションでクールな演出に違いない。

bt5.jpg


 本作における“気持ち悪さ”の根源は、グロを食事に絡めてくるところである。ここからは、文章にするだけでも気持ち悪いし、事実、筆者などは、そのシーンを思い出すだけでも今現在吐き気を催している。したがって、想像力が豊かだという人は読まない方が良い。


・・・・・・・



 例えば、序盤で登場するデレクというエイリアン。こいつはピーター・ジャクソン自身が演じている。この節操のない外宇宙からの訪問者が、顔の上半分が吹き飛んだ人間をしっかりと抱きかかえ、スプーンで以て顔の中身を食べる、というシーンが登場する。

bt3.jpg


 オェ・・・。キモすぎてむかついてきたから塗りつぶしてやった。おいおい、ふざけんな!血を見せろ!もっと血を!という人は、是非レンタルし、ご自身の目で確かめていただきたい。

 さらに、個人的に本作中最もグロいと感じ、それどころかこの歳にしてトラウマとなってしまったのが、ゲロを食べるシーンだ。エイリアンの儀式というか集会というか、そんな感じの集まりに潜入した調査隊の一人が、突如ボールの中にエイリアンが吐いたゲロをその他のエイリアンたちが回し飲みする場面に巻き込まれる、という絶望的に悪趣味なシークエンス。思い出しただけで食欲が無くなる・・・。

bt4.jpg


 そもそも、欧米人というのは、何故だか嘔吐ネタが大好き。青春映画の押しも押されぬ金字塔『スタンド・バイ・ミー』の名前は、いくら映画を普段観ないという人だって知っているだろうが、彼らは、同作にものすごく盛大なゲロ吐きパーティーのシークエンスがある、という事実は、きっと知らないだろう。

 本作の質が悪いところは、そういった目を背けたくなるような悪趣味グロシーンを全てギャグとしてやっている点。食人シーンにしてもそう、ゲロ食シーンにしてもそう、頭蓋が割れてこぼれた脳みそを素手で拾いまた頭蓋に戻すシーンだってそうだ。

 もちろん、そのような趣向や演出が映画としてダメと言っているのではない。やり過ぎたグロの先にあるのは、元来“笑い”という感情であると思うし、一本のスプラッターとして本作を観るなら、数々の描写は全てとびきりの一級品と言えるだろう。ただ、グロ耐性が不十分な者からすれば、たまったもんじゃない。極めてアンモラルなグロシーンであったとしても、それをギャグ・テイストで描いた瞬間、立腹したこちらが負けみたいな気にはならないだろうか。これは、ユーモアを解さないことこそを最大の“悪”と認識する関西人ならではの感覚か。とにもかくにも、なんでこんな気持ち悪いことすんねん!と憤りかけた筆者は、いきり立った目くじらをなだめすかし、胸のむかつきと吐き気を押し殺しながらじっと鑑賞し続けるしかなかったのである。

bt6.jpg


 ただ、改めて言っておくが、本作は、映画としては極めておもしろい。低予算極まる作品だから、確かにスケール感はほとんど無いと言っていいし、ちゃっちかったりショボかったりするシーンも多々見受けられる。しかし、そこはやはり後の巨匠の作ということで、細かなカット割りやカメラワークには既に匠の才能を感じ取ることが出来るし、それと同時に若さ故の勢いも抜群だ。加えて、本作がスプラッター映画である、ということを今一度思い起こせば、筆者が一人でプンスカ怒っていた先述の最強悪趣味描写たちも全部“正統な”演出に他ならないということが納得されるだろう。

bt7.jpg


 つまり、これほどまでに“観る者を選ぶ映画”もめずらしく、そして、グロシーン修行中の筆者は、残念ながら今はまだこの希代の傑作スプラッターに選んでもらえなかった、ということなのである。

点数:55/100点
 少し前からゾンビ映画のファンになり、近頃はかなりグロめのスプラッターなども鑑賞出来るようになったことで筆者はいつの間にか天狗になっていたようだ。宇宙は広く、映画は深い。慢心など捨て、いつか本作が“グッド・テイスト”に感じられる日まで、日々厳しい映画修行は続いていくのである。

(鑑賞日[初]:2013.7.28)

バッド・テイスト [DVD]

新品価格
¥9,980から
(2013/8/23 02:06時点)


修業論 (光文社新書)

新品価格
¥798から
(2013/8/23 02:06時点)


関連記事
スポンサーサイト

Comment

Leave a Reply





管理者にだけ表示を許可する

Trackback