23
2013

[No.280] ミート・ザ・フィーブルズ/怒りのヒポポタマス(Meet The Feebles) <75点>

CATEGORYドラマ




キャッチコピー:『スタローン、シュワルツェネッガーもぶったまげ。空前のパペット対戦勃発!』

 カバ最強説、概論。

三文あらすじ:華やかな歌やあっと驚く一芸で観る者を魅了する新進気鋭の一座“ミート・ザ・フィーブルズ(Meet The Feebles)”。遂に決まったテレビでの生放送を12時間後に控え、一座のスタッフである動物たちは皆てんやわんやだった。しかし、楽しげな表の一面とは裏腹にセックス・ドラッグ・犯罪が渦巻く一座の内情は、思いも寄らぬ幕引きへと暴走していく・・・


~*~*~*~

 
 前回紹介したのは、ニュージーランドが生んだ鬼才ピーター・ジャクソンの初期作品『バッド・テイスト』。嘘みたいな低予算な映像の中で想像を絶するグロを満喫することが出来る玄人好みの一本であった。

 今回は、そんなピーター・ジャクソンが同作の次に監督したエログロスプラッター人形劇『ミート・ザ・フィーブルズ / 怒りのヒポポタマス』の感想を書く。『バッド・テイスト』に引けを取らず、本作ももう本当に悪趣味の極み。

mf8.jpg


 まず惹かれるのは、その日本版サブタイトル。“怒りのヒポポタマス”ってなんか凄いフレーズだ。ランボーに引っかけているのだろうが、まず、そもそも“ヒポポタマス”という単語の語感が中々素晴らしい。“カバ”と聞いて想起されるのは、やはり“カバ最強説”。最大地上移動速度時速40km、基本的に草食動物とされていながらも、縄張りを侵犯したワニを真っ二つに噛み殺した事例やインパラを捕らえて補食する事例などが報告されているという鯨偶蹄目カバ科のほ乳類は、ゴリラと共に“動物最強”の覇権を奪い合う、まさに“自然が生んだ凶器”に他ならない。

mf1.jpg


 カバ恐ぇぇぇ!!こんな状況になったら一体全体どうやって生き延びればいいのやら。とりあえず、奴らには持久力が無いらしいので、まずは一か八かジグザグに走りながら……あれ?そうそう、映画の話をしなければ。

 本作の主人公は、カバ。しかし、本作に登場するカバは、基本的に温厚でロマンチストなカバの女性シンガーである。

mf2.jpg


 どーん! すさまじいシュール感。もはやシュールレアリスムである。さらに凄いのは、彼女にはちゃんとセクシーシーンが用意されている、というところ。

mf3.jpg


 どどーん! ハンパない発想力に脱帽しきり。もはや無限の無限乗ほども組み合わせがあろうかという昨今のAV業界でも、さすがにこのジャンルは……あるか。“着ぐるみもの”ってあるもんな。とはいえ、やはりそれを87年に既にやっていたピーター・ジャクソンという人物は、先見の明と慧眼に溢れた希代の“変態”に違いない。

 しかしながら、である。本作の主人公たるこのカバ嬢の破廉恥な姿などは、本作が有するその他のエログロスプラッターシーンの数々からすれば、ほんの序の口以外の何ものでもない。性病にかかってグチョグチョになるウサギ(ここでもお馴染みの“ゲロ吐きシーン”がある。)、ベトナム戦争の後遺症からドラッグ漬けになったトカゲ(『ディア・ハンター』のオマージュっぽい。)、洗濯場に忍び込んでパンツの臭いを嗅ぎまくる鼻長の小さなほ乳類、地下室でハード・ポルノを撮影しているホルスタインのAV嬢、排泄物を食べまくるハエの新聞記者などなど…。

mf4.jpg


 文章に起こすだけでも吐き気がする超ド級の変態描写のラインナップ。ところが!本作は、めちゃくちゃおもしろい! 前回紹介した『バッド・テイスト』も映画として非常に良く出来た傑作だった訳だが、同作は、あくまでも“超絶スプラッターとしておもしろい”という作品であった。しかし、本作は、いくつかの超過激エログロ描写にさえ目を瞑れば、それこそ普通のドラマとしても非常に見所の多い作品なのである。

 ストーリーラインが画期的な訳ではない。華やかさの裏側に隠されたショービズ界の闇。その中で翻弄される女性シンガーの大人の恋物語。一座に新規加入した若者の淡い恋物語。このようなテーマというのは、過去の作品でも散々描かれてきた。

 本作の画期的な部分は、見たままズバリ、人形劇というスタイルを採用し、そして、見事に成功させたという点である。筆者は、そもそも“人形劇”というものにあまり明るくないのだが、それでも、遙かな昔、『ひょっこりひょうたん島』や『サンダーバード』を観た記憶はある。したがって、本作が人形劇である、という前情報を持って鑑賞した筆者は、当然、ドン・ガバチョの雄姿や国際救助隊の活躍を思い出しながら画面に向かったのである。

mf5.jpg


 しかし、本作は、それらの純粋な人形劇とは一線を画している。本作に登場するのは、人形と着ぐるみなのである。つまり、ハリネズミであったりウサギであったりイモムシであったりといった比較的小さな動物たちは人形なのだが、主人公のヒポポタマスやその愛人であるセイウチ、あるいは、セイウチのライバルであるイボイノシシなどは、等身大の役者が中に入った1/1スケールの着ぐるみ。その結果、本作ではロケシーンが大部分を占めることになる。ヒポポタマスが泣きながら本物の港を走ったり、セイウチたちが本物の町の歩道を闊歩したり、本物のゴルフ場でゴルフに興じたり。その結果生まれる人形劇の枠を超えたスケール感と世界観の広がりが極めて素晴らしいため、観客は、ぐいぐい引き込まれていく。

mf7.jpg


 まぁ、筆者の拙い表現力で書いた文章では何の説得力も無いことは分かっている。しかし、今は懐疑的な目を向けているあなただって、物語も中盤を越えれば、きっとミート・ザ・フィーブルズのヘンテコな登場人物たちを普通のものとして受け入れ、それだけでなく、彼らのファンシーだがそれでいてダークな魅力の虜になっているはずだ。もちろん、それなりにグロ、エロ、お下劣な描写に耐性のある人限定ではあるが。

点数:75/100点
 極めて不思議な、しかし、比類無く魅力的な希代の怪作。ホラーでもないし、サスペンスでもないし、アクションでもないし、かといって“人形劇”なるジャンルを新設したところで、今後本作以外に人形劇の映画を観るとも思えないしで、一体どのジャンルに分類すればいいか分からない、映画ブログ運営者泣かせな作品でもある。まぁ、本作の主軸は、一応ヒポポタマス嬢の愛憎にあるので、とりあえずは“ドラマ”ということにしておいた。グロやエロだけでなく、是非、女の愛の深さとカバの最強さにも深く感動して欲しい傑作である。

(鑑賞日[初]:2013.7.29)






ミート・ザ・フィーブルズ/怒りのヒポポタマス [DVD]

新品価格
¥9,800から
(2013/8/23 14:58時点)


ナショナル ジオグラフィック〔DVD〕 最強!アニマル決定戦 究極のファイター編

新品価格
¥2,980から
(2013/8/23 14:59時点)



関連記事
スポンサーサイト

Tag:グロ注意 悪趣味映画 バカ映画 これが女の生きる道

0 Comments

Leave a comment