06
2013

[No.270] オーシャンズ(Océans) <59点>





キャッチコピー:『さぁ、スクリーンに泳ぎ出そう。』

 ダイビングの醍醐味は、苦痛からの解放である。
 面倒な準備や片付け、難儀な呼吸や海中移動。
 その先にある一杯のビールこそが、詰まるところの喜びであろう。
 だとすれば、ダイバーとは、母なる大洋に魅せられた素晴らしき馬鹿者たちに違いない。

三文あらすじ:我々人類の身近に存在するもう一つの宇宙 - “海(Oceans)”。「海って一体何なの?」、そんな一人の少年の疑問に答えるため、ドキュメンタリー史上最大規模のプロジェクトが始動する。製作費70億円、構想10年、撮影期間4年、世界50か所、100種にも及ぶ生命の饗宴に、人類は何を思い、何を感じるのか・・・


~*~*~*~

 
 時にはプライベートの話を。

 北半球はいよいよ夏本番!といういうことで、筆者は、この前の土日を利用し、和歌山県にダイビングをしに行ってきた。幸いの晴天の中、いつも通り汗だくになりながら、案の定四苦八苦しながら、海洋生物と戯れ、海中の浮遊感を楽しんできた訳である。今回、少し斬新だったのは、筆者の友人数名がダイバーズライセンスを取得した、ということ。経験年数7年、経験本数120本を数えるアドバンストダイバーでありながら、未だダイビングに対して快楽よりも苦痛を多く感じている筆者に偉そうなことは言えないのだが、この度晴れて“潜水野郎”の仲間入りを果たした彼らには、色んな海で色んな魚と出会い、そして、母なる大洋の魅力にどっぷりと魅せられていって欲しいなぁ、なんて勝手に思っている。

o3.jpg


 そんな訳で、7月中に既に鑑賞済みの6~7本もの作品を差し置いて、今回は、海洋ドキュメンタリーの大作『オーシャンズ』の感想を述べる。

 2009年制作のフランス映画。あらすじにも書いた通り、膨大な期間と予算を費やして制作された超大作である。しかしながら、70億という投資に対するリターンが25億しか無かったのだから、やはりロマンは金にならぬ。

 監督は、ジャック・ペラン。渡り鳥をテーマにしたドキュメンタリー『WATARIDORI(原題:Le Peuple Migrateur)』の監督であり、名作『ニューシネマ・パラダイス』においてサルヴァトーレ・ディ・ヴィータの中年期を演じた俳優でもある。

o2.jpg


 さて、本作の内容はと言うと、それは完全なるドキュメンタリー。明確なストーリーラインや起承転結といったものは無く、世界中の大海原に生きる多種多様な生物の生態をじっくりと根気強く綴っていく。例えば、魚たちの捕食シーンを立て続けに見せ、次にその生殖シーンに移ったかと思えば、また捕食のシーンが挿入されたりする、といった具合だ。そこには、かつての『生きもの地球紀行』のような“四季を通してチーターの親子を追いました…。”といった縦軸は存在しない。

o4.jpg


 しかし、映像は、ただただ“圧巻”の一言に尽きる。シロナガス、マッコウ、ザトウなどのクジラたち、マンタ、タイワンイトマキなどの巨大エイ、サメやシャチなどのハンターたち、海のアイドル、イルカにジンベイ、ニモでお馴染みカクレクマノミも登場すれば、ペンギンから白くまからカメからカニからイッカクから、もう何から何まで総登場。しかも、その全てが、まるでカメラなど無いかのような奇跡のショットで描かれていく。ナショジオなんかを観ているといつも思うのだが、海面を目指して泳ぐイグアナを撮って、そのまま海中に出てきた同一イグアナの陸上からのショットに切り替える映像は、一体全体どうやって撮っているのだろう。

o7.jpg


 そんな圧巻の映像美の中でも、筆者が最も感銘を受けたのが、アジの大群を中心とした捕食者の宴である。大群を形成したアジは、海の捕食者にとって格好の狩り場。まずは、サメなどの中型プレデターが集まってくる。しかし、アジたちの脅威は、海中だけではない。海中から突き上げられ、海面付近に集まった彼らを狙うのは、遙か上空から飛来する海鳥たち。一直線にアジの群へと突入し、魚雷のように突き刺さる海鳥のビジュアルは、本当に唖然。バンバンバンバン、ひっきりなしに突入していく彼らを上空のカメラで捉えれば、それはさながら戦闘機からの爆撃のようである。そんな感じで大パニックに沸き立つ海面をドッバー!!と割って、最後に登場するのが、海の王クジラ。ここまでの一連の流れは、本当に驚愕の素晴らしさで、思わず息をのむ生命の神秘である。

o1.jpg


 ところが、である。本作は、中盤辺りから一転、極めて強いメッセージを発信し始める。つまり、自然を破壊し続ける人類に向けた警鐘、愚かな人類に対するエコ的な説教、自然の保護者としての優しき自戒。そんな感じの極めて辛気くさいメッセージである。

 まぁ、言っていることは分かる。筆者だって、別に自然破壊しろ!と言うつもりは毛頭無い。しかし、筆者に言わせれば、自然は大切!とか人間は愚か!とか声高に叫ぶ輩は、すべからく思い上がったエゴイストなのであって、本作のように何ら客観的なデータも示すことなく、ただただ自然の神秘とそれを捕獲する人間の描写だけを以てごり押ししてくるような展開には、非常にげんなりしてしまう。

o6.jpg


 自然は素晴らしい?自然を守ろう?いやいや、人間だって“自然”なんじゃないのか?自然を守らなければいけない!と闇雲に突き進む義務感は、他の生き物よりも人間の方が優秀だと思い上がったエゴなんじゃないのか?イルカは優しい動物だから守るのは当然?バカを言うな。あいつらはときにダイバーを深海まで引きずり込んで瞬時に殺してしまう海の特A級危険生物だぞ!何千キロも海を旅するクジラは偉大だ?そんなもん当たり前だろう。生き物には進化の帰結としての得手不得手がある。あいつらは、九九を覚えられるのか?

o5.jpg


 もっと言わせてもらえば、その辺の生き物が多少絶滅したから何だと言うのだ?リョコウバトが死滅して、我々の生活に支障があっただろうか。そんな自己中心的な考えこそがエゴだと思うかもしれない。しかし、人間だって自然なんだから、規律されるべき根源的なルールは“弱肉強食”、あるいは、“適者生存”しか無いはずなのであって、ハトよりも人間の方が強いから勝った、それだけのことだ。クジラだってイルカだって、現在生き残っている全ての種は、進化の過程で劣等種を根絶やしにしてきているはずではないか。

o9.jpg


 まぁ、そうは言っても、もちろん筆者だってある程度の自然を残したいと思っている。少なくとも自分が死ぬまではキレイな海でダイビングがしたいし、出来れば孫の代ぐらいまでは本物の海を見せてやりたいと願っている。だから筆者は、ゴミを捨てない。クーラーも極力付けない。海でおしっこはしてもハコフグをいじめない。そのくらい、まぁ孫の代まで守れればいいや、くらいの気持ちで取り組むのが気楽だし、現実的だと思う。未来永劫、この尊い自然を守るため、人類は生活を切り詰めるべきである!というのは、いくら何でもしんどすぎるし、楽しくない。

o8.jpg


 大丈夫。母なる海は、我々の想像を遙かに超えて、強く、大きく、厳しく、優しい。我々はそれを目の当たりにしたばかりではないか。

点数:59/100点
 なんだか極端な方向に熱くなってしまって、ずいぶんと誤解を招きそうな馬鹿馬鹿しい文章を書いてしまった。言いたかったのは、なんとなくのイメージで環境保護を盲信するのではなくて、きちんと客観的データに基づいた自分の考えで動きましょう、ということなのである。感情先行の環境保護なんて“偽エコロジー”なのであって、そんなもんは“マイナスイオン”と同じように実体の無い空虚な概念に違いない。あれ?元はと言えば、もっと違うことを言いたかったような…。あ、そうそう。新たに誕生したダイバーの門出を祝福したかったのであった。ようこそ、馬鹿者たちの海へ。

(鑑賞日[初]:2013.8.6)










オーシャンズ コレクターズ・エディション(2枚組) [DVD]

新品価格
¥1,980から
(2013/8/6 13:02時点)


オーシャンズ コレクターズ・エディション [Blu-ray]

新品価格
¥2,240から
(2013/8/6 13:03時点)


スキルアップ寺子屋―読むだけでダイビングがうまくなる本

新品価格
¥2,100から
(2013/8/6 13:03時点)


偽善エコロジー―「環境生活」が地球を破壊する (幻冬舎新書)

新品価格
¥777から
(2013/8/6 13:04時点)




関連記事
スポンサーサイト

Tag:海洋冒険ロマン

0 Comments

Leave a comment