21
2013

[No.276] パシフィック・リム(Pacific Rim) <92点>





キャッチコピー:『人類最後の望みは、この巨兵』

  悔しいけど、僕は“漢”なんだな。

三文あらすじ:2013年、太平洋の深海に位置する海溝から突如出現した超巨大生物の脅威に、人々は震撼した。次々に現れては都市を破壊する“カイジュウ”に対し為す術を持たない人類は、一致団結して、超巨大ロボット“イェーガー”を建造。人類と“カイジュウ”の存亡を賭けた戦いが、今、始まる・・・

 
~*~*~*~


 2013年、モンスターパニック好き、そして、ロボット好き待望のSF超大作『パシフィック・リム』。ロボットの感じがなんだか『トランスフォーマー』っぽい、とか、監督が変態悪趣味の権化的監督ギレルモ・デル・トロだとか、そんな鑑賞前のしょーもない不安を思い切り吹き飛ばす、疾風怒濤!勇猛果敢!男性歓喜!な大傑作!!

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 さて、述べたいことが多すぎて中々未だまとまらぬ状態ではあるのだが、何はともあれ、まずは、“人類最後の希望”である巨大人型決戦兵器“イェーガー(Jaeger)”から見ていこう。始めに、我が国が誇る大和魂に満ちた“日の本の巨兵”を2機。

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 シャウッ!!その雄姿、まさに“イェーガー、大地に立つ”。この機体こそが、ロボット大国日本が生み出した最初期の巨兵“タシット・ローニン(Tacit Ronin)”である。

 お次は、その後継機。

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 ミハル、俺はもう悲しまないぜ。お前みたいな子を増やさない為にカイジュウを叩く、徹底的にな! そう!“コヨーテ・タンゴ(Coyote Tango)”なるコード・ネームで世に送り出されたこの如何にもガン・キャノンな機体こそ、我が国が誇る最高傑作機。かつて日本で起きた“オニババ事件”において、単機での3時間の戦闘を完遂させ、街を、そして、本作のヒロインである森マコ(菊地凛子、幼少期:芦田愛菜)を守った、という輝かしい経歴を持つ名機である。

 その他、初期配備されたイェーガーとして劇中登場するのは、まず、アメリカで建造された“ロミオ・ブルー(Romeo Blue)”

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 青い機体には、名機が多い。ランバ・ラルのグフしかり、ドナルド・カーチスのカーチスR3C-0非公然水上戦闘機しかり。そんな中でもこの“ロミオ・ブルー”は、鉄人28号にどこかしら似ている。

 そんな名機たちの活躍によって、人類はカイジュウを圧倒し始める。しかし、現実はそんなに甘くない。逆立ちしたって人間は神様にはなれない、のである。イェーガーへの耐性を強化させ、自己進化を続けるカイジュウたち。そして…。

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 悲しいけど、これ、戦争なのよね…。人類の敗北を象徴するこの機体は、中国製の第一世代機“ホライゾン・ブレイブ(Horizon Brave)”。中国産機は、ロボット好きのロマンである“モノアイ”を搭載しており、実に素晴らしい。

 以上が、本作の本編以前に活躍したイェーガーたち。つまり、作中ちらっとしか登場しない幻の機体たちである。そして、ここからは、作中思いっきり活躍する素晴らしき現役世代のイェーガーたちを見ていこう。まずは、何と言っても一番目を引くこの機体。

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 4000年の歴史を一身に背負う真紅の巨兵、“暴風赤紅”こと“クリムゾン・タイフーン(Crimson Typhoon)”である。やはりこの赤!青い機体以上に名機が多いのが、真紅の機体。シャア・アズナブルのシャア専用ザクを筆頭に、シャア・ズゴ、シャア・ゲル、サザビー、ゲッター・ロボ、ジョニ・ザク、ジョニ・ゲル、ガーベラテトラ、ガルバルディβ、マラサイ、リック・ディアス、クェス専用ヤクト・ドーガ、ビギナ・ギナⅡ、イージス、ジャスティス、サボイアS.21試作戦闘飛行艇などなどなどなど。枚挙するには9月にもう1回3連休が必要なくらい実に多くの赤い名機が、ロボット界の内外には存在している。そして、やはりここでもモノアイ!ガンダムにおける単眼は悪役の証明であるが、そうはいってもやっぱり格好いい。

 本機独自のアピールポイントとしては、腕が3本あるという点が挙げられるだろう。しかも、右に2本、左に1本という奇抜なデザイン。何故3本なのかというと、本機体の搭乗者が三つ子だからなのだが、このようにアシンメトリーな配置で複数の腕を持つ機体というのがちょっと筆者の記憶には無く、思わず唸る秀逸なデザインだと感じた。

 さて、お次は、ロシアを代表する機体。

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 この無骨な感じがたまらない!大国ロシアが誇る本機は、現存する機体の中でも最古参に分類される型であり、用いる必殺技もその見た目に違わぬ重量系の純粋なる“パンチ”。しかし、そこがいい。痺れ、憧れる。ちなみに、本機体の名称は“チェルノ・アルファ(Cherno Alpha)”といういささか物騒なものなのだが、作中の描写を参照する限りにおいて、おそらく本機には核融合炉は使われていない。それは、また後に紹介する機体での特徴だ。(【訂正】どうやら、チェルノ・アルファには、その名の通り原子炉が搭載されているようである。コメントにてご指摘いただいた。)

 では、続いて、オーストラリアが誇る最新鋭機。

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 彼の名は、“ストライカー・エウレカ(Striker Eureka)”。誰かが今ほら呼ぶ声がするとき、風見鶏が居場所を告げるとき、現存機中最速を誇る稼働速度を駆使した華麗な戦闘で以て人類の希望となる白銀の巨兵。我が国のロボットファンならピンと来るだろう。そう、近代ロボットアニメの一大叙事詩『交響詩編エウレカセブン』である。まぁ“エウレカ”という単語は、古典ギリシア語において“見つける”を意味する動詞であるから、本機体のネーミングが必ずしも同作へのオマージュであるとは断言できないのであるが、本作の監督であるデル・トロはかなりコアなジャパニーズ・ロボット・マニアであるそうなので、もしかしたら可能性はあるのかもしれない。

 そもそも、イェーガーというのは、その全てが複座式なのである。ロボットアニメにおける“複座式”は、熱い男のロマン。特に、『エウレカセブン』においては、ツイン・シートに進化したニルヴァーシュ登場シーンで、レントンとエウレカの“恋”というテーマをも取り込んだ熱いロボット魂を感じることができた。

 さぁ、とりを飾るのは、本作の主人公機。“鋼の魂”を持ち、“この星の明日のために”戦う、その堂々たる雄姿。

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 倒せ、敵を!守れ、友を!彼こそが、本作の主人公機、世界の命運を、そして、ロボットの歴史を一身に背負う旅人、“ジプシー・デンジャー(Gipsy Danger)”である。

 本機に搭乗するのが、本作の主人公ローリー・ベケット(チャーリー・ハナム)だ。

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 ロボットの“魂”は、その機体の美しさや性能の妙にのみあるのではない。ロボット好きの心を真に熱く滾(たぎ)らせるのは、その搭乗者にまつわる幾千ものドラマである。

 ローリーのドラマを語るには、始めにイェーガーの操作系統について若干付言しておかねばなるまい。人類史上最長最重量を誇る巨兵を“カイジュウ”にぶつけるためには、鉄人28号のような遠隔操作式に頼ることはできない。また、アムロ・レイのような人類の革新、すなわち“ニュータイプ”が未だ出現していない以上、マジンガーZのように搭乗者がただコクピットに居ればいい、という訳でもない。

 そこで採用されたのが、エヴァンゲリオン方式である。つまり、搭乗者がロボット自体と“神経同調<シンクロ>”し、ロボットが受けるダメージがそのまま搭乗者にもダイレクトに伝わってしまうというリスクと引き換えにして爆発的な反応速度を得る、という方法である。しかし、イェーガーは、エヴァのような“ウルトラマンサイズ(時と場合によるが、基本的に約40m)”(なお、新劇場版におけるエヴァの身長は、80mに修正)に収まる大きさではない。したがって、通常のパイロットが一人でシンクロすると、あまりの精神負荷から死亡してしまうのである。そこで、イェーガーには、2人のパイロットが搭乗することになった。まず、2人が互いの意識を共有し、その後、右脳と左脳を分担した上で巨兵とシンクロするのである。

 そんな訳で、本作には様々なパイロット・タッグが登場する。ストライカー・エウレカに乗るのは、親子。チェルノ・アルファに乗るのは、恋人(夫婦?)といった具合だ。そして、我等が主人公ローリーが物語冒頭でタッグを組んでいるのが、彼の実兄。つまり、“アニキ”に他ならない。本作アヴァン・タイトルは、そんなローリーとそのアニキによるカイジュウ殲滅戦を描く。ここで登場するカイジュウがこれ。

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 カテゴリー3、“ナイフ・ヘッド(Knifehead)”。サメをモチーフにした禍々しくもシャープなボディにギロンさながらの巨大ナイフが光るコワモテのナイスガイである。

 ここは、百戦錬磨の彼らが交わす出撃時の粋な会話が素晴らしく、初登場となるイェーガーの美しく壮麗な様に目を見張るシークエンスだ。死闘に次ぐ死闘。歴戦からくる油断。勝敗を決するのは、いつだって一瞬の差でしかない。ローリーの兄は、このシークエンスで死亡し、ボロボロになりながらも辛勝したローリーは単独で帰還、その後、イェーガーパイロットを止めて放浪することになる。

 この極めてベタで悲しい展開に、我々ロボットファンは、既に胸の高鳴りを感じている。常闇の後の朝日を、引き潮の後の高波を、敗北の先にある“復活”を、全ての細胞が、あらゆる神経が、予感している。5年の放浪の後、最後の作戦を前に再びローリーの前に現れる元司令官スタッカー・ペントコスト。「死ぬのは、ここか?!それともイェーガーの中か?!」という熱い男の問答。絶望したかつての英雄、その真っ直ぐな瞳が答えだ。心の“ドリル”を見つけた彼は、再び基地へと舞い戻る。

 しかし、これはまだ狭義の“復活”には当たらない。主人公、ヒーロー、あるいは、“漢”が完全な復活を遂げるためには、ヒロインの存在が不可欠なのである。ここで登場するのが、菊地凛子演じる森マコ

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 トリッキーな素のキャラからは想像だに出来ない上質な演技を披露する彼女は、本作のようなハリウッド超大作でもその存在感を遺憾なく発揮しており素晴らしい。まぁ、彼女が周囲から“美女”としての扱いを受けていることには、日の本の男児として疑義を唱えたい衝動にも駆られるが、そんなことは今は関係ないことだ。

 男にとってのヒロインは、まさに天使のような存在。雨が止み、日の光が射す。この“恋人同士のツイン・パイロット”という趣向が提示するテーマは、もちろん、“気合いと恋が宇宙を変える”というドリ肌必至の漢気だ。いったんはシンクロに失敗し、謹慎処分を食らってしまう展開は、お約束でありお決まり。同時に、その後の展開への最良の起爆剤でもある。

 香港を拠点とし、最後の作戦準備を着々と進めるイェーガーチーム。しかし、そんなとき、これまでの法則を破ってなんと2体のカイジュウが同時に現出する。それが、彼ら。

 カテゴリー4、“レザー・バック(Leatherback)”

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 同じくカテゴリー4、“オオタチ(Otachi)”

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 この緊急事態に、迎え撃つは3体のイェーガー。すなわち、クリムゾン・タイフーン、チェルノ・アルファ、そして、後方支援のストライカー・エウレカである。主人公、ヒロイン、及び、ジプシー・デンジャーは、謹慎処分中。

 今までに無く素早い動きのオオタチに翻弄されながらもなんとか善戦を繰り広げる3体のイェーガーは、もう一匹の悪魔が隠し持っていた驚愕の能力に愕然とする。それは、『マトリックス』シリーズにおいてネブカドネザル号が使用した超電磁波攻撃。俗に言う“EMP”である。一瞬にして周囲数キロ四方の電源を落とされ、デジタル制御で駆動していたイェーガーたちは、一転、敗北を予感する。クリムゾン・タイフーンが破壊され、チェルノ・アルファが沈められ、遂に最終作戦のキーロボットであるストライカー・エウレカにも悪魔の牙が迫る。「香港を守れるのは俺たちだけだ。ここで逃げるか、その照明弾でいっちょバカやってみるかだ。」と最高にいぶし銀なセリフをぶちかます歴戦の戦士ハーク・ハンセン(マックス・マルティーニ)とそれに付き合う最高のどら息子チャック(ロバート・カジンスキー)。しかし、通常の照明弾で80mを越えるモンスターがどうになるものでもなく、非情にも振り上げられたレザー・バックの巨大な腕が彼らの最期を告げようとしたそのとき!悪魔の背後を照らす目映い光の中に我等が希望の巨兵ジプシー・デンジャーが現れるのである!!

 説明しよう!デジタル制御で駆動している他のイェーガーとは違い、ジプシー・デンジャーは、核融合炉で動いているのである。すなわち、彼は、レザー・バックの超電磁波攻撃の効力を受けないという訳だ。

 核で起動する希望の巨兵を駆り、味方の窮地に帰ってくる男を、我々は一人知っている。そう、ニュートロンジャマーキャンセラー搭載型の核エンジンによって無限に飛翔する力を得た高火力の天使、ZGMF-X10A コードネーム“フリーダム”のパイロット、キラ・ヤマトである。昨今のロボットファンであれば、このシーンのジプシー・デンジャーと、アラスカの仲間を巨大な電子レンジから救ったフリーダムを重ね合わせた人もいたはずだ。

 確かに、ジプシー・デンジャーとフリーダムは、機体の仕様、登場のシチュエーション共に似通っている。だけど!筆者は言ったはずだ。ロボットにおける真の“魂”は、パイロットの熱いドラマにこそあると。だとすれば、このシーンで想起すべき“漢の口上”は、これ以外には無いだろう。

アニキは死んだ!もういない!
だけど!
俺の背中に!この胸に!
一つになって生き続ける!

穴を掘るなら天を衝く!
墓穴掘っても掘り抜けて!
突き抜けたなら!俺の勝ち!

俺を誰だと思っている…!
俺はローリーだ!
ヤンシーのアニキじゃない!

俺は俺だ!!
ローリー・ベケットだ!!!



 やっぱり、キラ・ヤマトよりこっちだな!

 とまぁ、たった一人で劇場に足を運び、しかも、レイトショーで客がほとんど居なかったのをいいことに、筆者は、この完膚無きまでに“漢の魂完全燃焼”な展開を心から堪能し、号泣していたのであるが、後になって冷静に考えてみると、このシークエンスにおける真の功労者は、実は、レザー・バックである。

 彼は、電源を落とされ完全に沈黙したストライカー・エウレカに鉄槌を下そうとするその刹那、背後から登場したジプシー・デンジャーによって中断されるのであるが、別に物理的攻撃によって干渉された訳ではない。満を持して登場したジプシー・デンジャーの様は確かに雄々しく勇敢ではあるが、彼は、ただ数機のヘリに吊されて輸送されてきただけだ。つまり、人類への怒りに狂ったレザー・バックの手を止めさせたものは、人の目には見えぬ、それどころか人智など到底及ぶはずもない紛う事なき“漢の魂”としか説明できないのである。だからこそ、カイジュウでありながらにしてそのような熱いギミックを感じ取り、殊勝にも手を止めたレザー・バックこそが、このベタベタで最高の展開における影の立役者であると、筆者は思うのだ。

 そんな“男気怪獣”レザー・バックとタッグを組むもう一匹のカイジュウ“オオタチ”も決して忘れてはならない。彼もまたロボットアニメ好きなら歓喜必至の男気展開を影から盛り上げる。

 レザー・バック同様、その当時の最強クラス、カテゴリー4に属するオオタチは、中々トリッキーなカイジュウ。しなやかな体を駆使したスピード感溢れる身のこなし、鞭のような尻尾を手の如く操る戦法、そして、口から吹き出す強酸性の毒液。彼の文字通りの“オオタチ回り”にさすがのジプシー・デンジャーも大苦戦を強いられるが、しかし、善戦を繰り広げる。ところが、いざトドメだ!という刹那、オオタチは、それまで隠していた“翼”を解放、ジプシー・デンジャーをむんずと掴み、そのまま成層圏まで上昇してしまうのである。

 仲間のピンチに立ち上がり、人類の希望となるべく死闘を繰り広げてきたジプシー・デンジャーも、これには為す術がない。アイアンマンMark.Ⅴと同じように、彼には、飛行するための機構が搭載されていないのである。それどころか、頼みの必殺武器“プラズマ砲(キャノン)”も既に弾切れ。「もう打つ手がない…。」と落胆するローリーを見て、きっとオオタチは、「へっ、怯えていやがるぜ、このイェーガー…!」とほくそ笑んだことだろう。

 しかし、ここで救いの手を差し延べるのが、我等がヒロイン、ニア、ではなくて、マコ。彼女は言い放つ。「まだ、手はあるわ!」 次の瞬間、操作パネルをいじり始める彼女。ディスプレイに映し出されるのは…

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“SWORD DEPLOYED.”
(剣、装備)


の文字!!手の甲から突出した“チェーン・ソード”がオオタチを裂く!

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 コクピットだけを狙えるか?!これもまた完全に打ち震えるべき展開。そう、ロボットアニメの金字塔にして最高峰『機動戦士ガンダム』の第一話において、頭部バルカンが弾切れを起こした後のアムロ・レイである。彼は、「ぶ、武器はないのか?武器は?」と慌てふためいた末、ビームサーベルを発見した。

 この後、成層圏付近から落下するジプシー・デンジャーのピンチ、という展開も、やはりガンダムを彷彿とさせる。真っ赤に燃えながら高速落下するジプシー・デンジャーを不安げに見つめるペントコストと同じように、我々も「ロ、ローリー。イェーガーには大気圏を突破する性能はない、気の毒だが。しかしローリー、無駄死にではないぞ…!」と気の早い黙祷を捧げる。もちろん、もはや様式美と化した数多のお約束通り、無事に地上へと帰還した巨兵が、それを見守る群衆だけでなく我々ロボットファンの魂をも熱く震わせてくれたことは、今更、説明の必要もないだろう。ジャパニーズロボットへの惜しみないオマージュとも取れるこれら一連のシークエンスは、劇場鑑賞中の筆者をして思わず声を上げさせるくらい、本当に“漢の魂完全燃焼”であった。

 筆者が本作において特に力を入れて述べたかったシーンは、おおよそこんなところなので、ここからは、本作を彩る巨大なアイドル“カイジュウ”たちの紹介を軸にして、いくつかのシーンをふり返っていきたい。まずは、2013年、突如グアム付近の海溝に出現した時空の亀裂から現れ、人類と初の邂逅を果たした記念すべきカイジュウ第一号、“アックス・ヘッド(Axehead)”

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 予告編でも印象的に登場する、ゴールデンゲートブリッジを破壊するシーン。これこそが“ザ・怪獣”である!と言わんばかりの堂々たる貫禄!この衝撃的な大迫力シーンは、本作開始実に数十秒で登場する。本題たるカイジュウ登場までをチンタラダラダラ描いたりせず、いきなりズバッ!と切り込むこの構成は、まぁ、ゆとり仕様と言ってしまえばそうなのかもしれないが、個人的には非常に気持ちのいい好判断だと感じた。

 また、このアックス・ヘッドを人類が6日間の戦闘の末“通常兵器で”倒した、という点も、個人的に好感が持てたポイント。通常兵器などクソの役にも立たず、満を持して開発された新兵器のみに有効性が認められる、というのが、確かに怪獣映画の伝統なのかも知れない。しかし、よくよく考えてみれば、そんなのはいくらなんでもSFが過ぎ、極端に言えば、もはや“ファンタジー”の領域で語られるべき趣向である。実弾兵器も効く。しかし、それだけでは人類の危機は去らない。だから、ロボットがいる。それくらいの方が、逆にロボットの存在価値が高まる気もする。平成における怪獣映画の最高傑作平成『ガメラ』シリーズも、自衛隊が通常兵器で最後まで怪獣と戦い抜いたからこそ、ガメラがより引き立ったのである。

 お次は、2016年に香港を襲ったカイジュウ“レッコナー(Reckoner)”

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 2016年に倒された彼は、本編開始時点で既に白骨化している。そこには、スラム街が形成されており、画像の頭骨は、カイジュウを崇める新興宗教の寺院になっているらしい。『ヘル・ボーイ』好きの筆者が個人的にここで述べておきたいのは、もちろん、カイジュウの臓器売買を取り仕切る闇商人のボス、ハンニバル・チャウを演じるロン・パールマンである。

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 これは非常に良いキャラ。そして、その良さの大部分は、やはりロン・パールマンの持つ“男の味わい”によるところが大きい。やっぱり彼は、本当に素晴らしい役者だ。確かに、彼のキャラクターは、少しコミカルが過ぎるところもあるにはあって、本作の雰囲気から少しだけ浮いているように思えなくもない。しかし、鼻にナイフを突っ込まれたくなければ、そんな野暮な突っ込みは喉の奥に引っ込めておいたほうがいいだろう。あれって、もしかして『チャイナタウン』のオマージュなのだろうか。なお、筆者と同じようにロン・パールマンの魅力に取り憑かれた人は、本編が終わったからといって絶対にすぐ席を立ってはいけない。彼の最後の雄姿と決め台詞をしかと目に焼き付けるべきだ。

 続いて紹介したいのは、その名も“オニババ(Onibaba)”というけったいなカイジュウ。

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 お前、モンハンに出てたやろ?と思わず突っ込みたくなる巨大なカニ。ネーミングが何故“鬼婆”なのかは、全く以て不明である(コメントにて諸説ご指摘いただいたので、気になる人は参照のこと。)。そんな彼は、2016年に我が国日本を襲い、幼気(いたいけ)な芦田愛菜ちゃんを苦しめた憎らしいヤツ。恥ずかしながら、本作に愛菜ちゃんが出演していることを筆者は全く知らずに鑑賞したので、この日本での回想シーンにはかなりビックリした。

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 ホンマこの子は、いつ見ても泣いてんな…。まぁ、本作における彼女は、終始泣いてばっかりでほとんど台詞らしい台詞もないのだが、意外とがっつり出演しているのでファンの方は是非チェックを。

 さて、続いては、怪獣ファンをゾクゾクさせるシークエンスで登場、カテゴリー4、“ブレード・ヘッド(Bladehead)”

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 何がゾクゾクさせるかと言うと、まず、人類の拠り所たる巨壁をぶち破るという展開。徐々に負け始めたイェーガーに失望した人々の批判を受けて、ひよった政府は、海沿いに巨大な壁を建造してカイジュウの侵入を防ぐ、という全くロマンの欠片も感じられない、しかも、まるで『進撃の巨人』のパクリかのようなプランを実行する。この“ヘタレ壁”を軽々と打ち崩し、政府高官の鼻と善良な市民の希望をボキボキに折ってしまうことで観客の溜飲を下げてくれるのが、このブレード・ヘッドなのである。

 また、この画像を見ても分かるように、彼の登場シーンのビジュアルが鳥肌必至!“モンスター・パニック”の真髄が“非日常による日常の浸食”であるとするならば、壁を破った彼がシドニーに出現するこのシーンは、“完璧なモンスター・パニックのワンシーン”と言っていいだろう。

 どんどん行くぞ!あと3体!残る3体は、レザー・バックとオオタチの香港急襲を生き残った2体のイェーガー、“ストライカー・エウレカ”と“ジプシー・デンジャー”による最終作戦で登場する。まずは、嫌悪の牡牛“スカナー(Scunner)”

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 こいつは、正直に申し上げてあまり印象に無い。3体同時出現というのもあるだろうし、暗い深海での戦闘だったというのもあるだろうし。特徴的な必殺技を備えていなかったというのもあるのだろう。

 そんなスカナーとタッグを組んで2体のイェーガーを妨害したのが、俊足の花弁鰐“ライジュウ(Raiju)”

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 こいつは、まだ覚えている。なぜなら、彼は、その頭部があたかも花弁のようにガバッ!と四方向に開く、という中々インパクトの強い口周りをしていたからである。

 そして、満を持して海底の裂け目から出現する未だ人類が未確認の最強クラス、カテゴリー5、“スラターン(Slattern)”

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 この設定は、ベタだがそれだけにゾクゾクしまくり!これまで散々カテゴリーカテゴリーと騒いできた前フリが見事に結実した最強クラスの登場シーンに、怪獣ファンのあなたは、思わず手を打って小躍りしてしまうことだろう。まぁ、ハリウッド大作のお約束として、最強クラスにも関わらずラストに登場してしまったがために大した見せ場も無く、なんだか弱っちい印象も若干抱いてしまうのだが、それもまた一興には違いない。

 そんな最終作戦を彩る3体のカイジュウから分かる通り、本作のクライマックスは、実は中々にショボいのである。深海だからイェーガーの動きは制限されるし、相手は3体も出てくるからどちらのイェーガーも早々にボロボロにされてしまうし、ラストでもう一度、巨大ロボットvs怪獣の大決戦を心ゆくまで大スクリーンで堪能したい、と思っていた観客の期待は、華麗に裏切られてしまう。まぁ、ハリウッドのアクション大作では、肝心のラストがそれまでよりショボいということがままあるので、本作についてもあまり目くじらを立ててはいけない。

 とはいえ、この海底での戦い以降の展開も、個人的にはピンと来なかった。大量の核弾頭を搭載したエウレカがやられ、ジプシー・デンジャーが単機でワーム・ホールに突入、核融合炉を臨界にすることで核爆発を起こす、という作戦チェンジはまだいいのだが、いざ、ワーム・ホールを通って辿り着いた敵の本拠地には、何やら小型のエイリアンがいるのである。

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 これはちょっと萎える…。結局、太平洋から出現していたカイジュウたちは、プリカーサーと呼ばれる異次元のエイリアンが地球を侵略するために生み出した生物兵器だったのである。それ、怪獣ちゃうやん!いや、まぁ、平成版のガメラだって確かに生物兵器ではあったんだけどさ…。

 そもそも、怪獣なのに異次元から来ている、という時点で少し怪しい感じはあったのだ。かつて恐竜時代にも地球に来ていた、という設定も、どこかクトゥルフ神話っぽくて個人的にはちょっとげんなり。臨界に達して爆発寸前のジプシー・デンジャーを見つめるプリカーサーのアップは、なんだか『インデペンデンス・デイ』のパクリっぽいし。ちなみに、これと関係あるかは分からないが、本作の視覚効果には、『ID4』も担当したクレイ・ピニーが参加している。それから、スタッフ関連で言うなら、本作には、あのアイアンマン・スーツを作り上げた匠、シェイン・マハンが参加している。だからという訳ではないのだろうが、本作のメイン・テーマは、なんだかアイアンマンのテーマにそっくりだ。

 さて、そんな感じで、熱く熱く少年心を燃やすことが出来る反面、ほんのちょびっとだけ不満点もあり、存分に楽しむことが出来た本作。しかし、一見ロボット好きの願いを全て取り込んだかに見える本作は、実は何点かその道のベタを拾い損ねている。

 それは、ズバリ、“変形機構”“合体”。Zガンダムから本格的に導入された可変システム、ファースト・ガンダムにおいて既にAパーツBパーツのドッキングが存在し、筆者魂のバイブル『天元突破グレンラガン』を象徴するギミックであるコンバイン。この2つを取りこぼしたことを本作の失点と見ることも出来るだろう。しかし、筆者は、敢えてそうは思わない。デル・トロは、わざと残したのだ。『パシフィック・リム2』では、ウェイブライダー形態への変形を経てI CAN FLY!状態になった気合い十分のイェーガーが、熱い熱い“漢の合体”を披露してくれると筆者は信じている。やはり、“漢の合体”、それは、気合いだ!宙を舞う美しさだ!なのである。

点数:92/100点
 随分と長く熱く書いてしまったが、それに値するくらい全ての“ベタ”が詰め込まれた、まさに“漢の宝箱”。これは、筆者もそろそろ人生初のIMAX3Dで再鑑賞せねばなるまいな。

(劇場鑑賞日[初]:2013.8.15)
(劇場:ユナイテッドシネマ岸和田)






























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6 Comments

名も無い者  

初めまして、名も無い物という者です。
オニババの名前の由来は、新藤兼人監督の『鬼婆』という映画にちなんでいるそうです。蟹怪獣なんだからギュウキとかバケガニという名前でもよかったと思いますが。
また、プリカーサーと怪獣の関係は『ウルトラマンA』の異次元人ヤプールと超獣のオマージュではないでしょうか?

2013/09/08 (Sun) 06:16 | EDIT | REPLY |   

Mr. Alan Smithee  

Re:

初めまして!ご指摘ありがとうございます!

すごく勉強になりました!

デル・トロが『鬼婆』好きなんですかね?
あらすじ読んでみましたが、同作にカニは関係なさそうだし、逆にオニババは追いはぎめいたことはしないし・・・。
マコから大切な両親を奪った、という点を“追い剥ぎ”と捉えているのかな。
同作を観てみれば何らかの共通点が理解されるのかもしれませんが、基本的にその辺はノリなんでしょうか。

ウルトラマンAはちゃんと観たことが無かったので、ヤプールという異次元人を今回初めて知りました。
確かに、ヤプールと超獣、プリカーサーとカイジュウの関係性は酷似していますね!
デル・トロの惜しみないジャパニーズ怪獣への愛とオマージュを、無知故の早計さで罵倒してしまったことを恥じます。

やはり、非常に馬鹿馬鹿しく、極めて愛に満ちた素晴らしい“カイジュウ映画”でした。

今後とも当ブログをよろしくお願いすると共に、また何かありましたらどんどんご指摘頂ければ幸いです!

2013/09/10 (Tue) 10:27 | EDIT | REPLY |   

   

熱く語る割には何を観てたんだか・・・
チェルノアルファのエンジンは原子力なんですけど・・・
知ったかもほどほどに

2013/10/04 (Fri) 23:00 | EDIT | REPLY |   

   

>今までに無く素早い動きのオオタチに翻弄されながらもなんとか善戦を繰り広げる3体のイェーガーは

は?オオタチ一匹に翻弄されてただろ。善戦とか韓国ばりの捏造記事だなw

2013/10/04 (Fri) 23:04 | EDIT | REPLY |   

Mr. Alan Smithee  

Re:

そうか!
原子炉に水か入る云々・・・っていう台詞あったかもな!
・・・あったか?・・・あったか!
サンキューです!

2013/10/26 (Sat) 17:58 | EDIT | REPLY |   

Mr. Alan Smithee  

Re:

イェーガーの仕様とかとは違って、これは主観入ることやからなぁ・・・。
確かに思いっきり翻弄されてたけど、羨望とか労いとか色々含めて敢えて“善戦”と言いたい!

2013/10/26 (Sat) 18:01 | EDIT | REPLY |   

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