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2013

[No.286] スーパーマン・リターンズ(Superman Returns) <75点>

CATEGORYアメコミ




キャッチコピー:『その時、あなたの盾になる。』

 たとえ、君の“ヒーロー”にはなれなくても。

三文あらすじ:地球育ちのクリプトン人“スーパーマン”ことクラーク・ケント(ブランドン・ラウス)が地球を去ってから5年の歳月が流れた。再び地球へと帰ってきた彼は、以前とは随分変わってしまった世界、そして、結婚こそしていないものの愛する者を見つけ愛する子をもうけたかつての恋人ロイス・レイン(ケイト・ボスワース)に戸惑いを隠せない。そんなとき、釈放されたスーパーマンの宿敵レックス・ルーサー(ケヴィン・スペイシー)がクリスタルを使って地球規模の大犯罪を実行、その恐怖に絶望した人々が天を仰いだ時、彼らは、最強のヒーロー“スーパーマン”の帰還(Superman Returns)を目撃する・・・


~*~*~*~

 
 昨今のハリウッドには節操が無い。大ヒットアメリカンコミック『超人ハルク』をアン・リーが映画化した『ハルク』が2003年に公開されたにも関わらず、僅か5年後の2008年に同作を全く無視した形で『インクレディブル・ハルク』が制作されたことは記憶に新しい。他にもマグワイア版の『スパイダーマン』を華麗にやり直した『アメイジング・スパイダーマン』なども、程度はマシとはいえ、やはり昨今のハリウッドの節操低下を象徴していると思える。これにはまぁ色々な要因がある。大きくは慢性的なコンテンツ不足と『ダークナイト』の功罪の内の“罪”の方なのであろうが、かく言う本作もそんな流行に則って蔑ろにされた作品の一つなのである。

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 ところが、本作はおもしろい!特にかつての4部作を知る者からすれば、節操なくリブートされた『マン・オブ・スティール』よりも断然本作を“21世紀のスーパーマン”と認めたい。

 つまり、逆に言えば、若干“一見さんお断り”的な感じがあるということ。クラーク・ケント、ロイス・レイン、レックス・ルーサーなどのオリジナルメンバーを知る者への粋なサービスが随所に散見されるのだが、そもそも本シリーズを知らない者からすれば“なんかよー分からん昔のキャラが勝手になんかやってらぁ。”と映るシーンも多々あるかもしれない。

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 もっとも、ある意味ではそれもそのはず。本作は、旧4部作の正統的な続編なのである。正確に言えば、旧4部作の内、『スーパーマンⅡ』の後日談。だから、ジョナサンおじさんは死んでいるけどマーサおばさんは生きているのである。じゃあ、ⅢとⅣ無視されてるやん!これも節操ないやん!となりそうだが、そもそも旧4部作の中でもⅢとⅣは本筋から逸れた一種の“番外編”的な存在であったから、それらを無視してもスーパーオッケーなのである。

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 そんな訳で本作は我々旧シリーズファンにはうれしい過去キャラたちの活躍を実に上手く描き出す。ロイス・レーンがピュリッツァー賞を獲っている、という事実に感慨ひとしお、それでも未だ一々スペルを確認する彼女の姿に少し微笑む。過去作でケントから禁煙を勧められていた彼女がこっそり屋上で煙草を吸うシーンも思うところが多い。宿敵レックス・ルーサーが土地に固執しているのも我々にとってはおなじみだ。

 しかも、それらの小ネタは、全て非常に上手に物語に織り込まれている。ロイスが受賞した際の記事は“スーパーマンは何故必要ないか”というものだったし、ルーサーの土地への執着が地殻変動によって新たな大陸を生み出すというクライマックスに繋がる。とても素晴らしい。

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 何よりオープニングが素晴らしい!構成は『スーパーマン』第一作と全く同じ!音楽は当然ジョン・ウィリアムス!しかして、技術面は大幅パワーアップ!壮大にして奇妙にして超リアルな宇宙空間が我々を魅了する!

 こちらがお馴染み初代『スーパーマン』のオープニング・クレジット。



 やっぱいいわぁ。演出も技術もすごく単純なのに、これほどまでも心震えるのは何故なのだろう。そして、こちらが本作『スーパーマン リターンズ』のオープニング。



 これはいいオマージュだ!全く同じフレームで往年のファンの心を鷲づかみにしながら、新たな技術を上手く取り込むことで掴んだ心を離さない。確かに、映像面はいささか『スターウォーズ』な感じがしなくもないが、それでも、かつてABCアシッド映画館の平野秀明先生が言っていた通り、本オープニング・クレジットは、我々、特に旧シリーズにリアルタイムで熱狂した人々からすれば、本当に素晴らしいものに違いないのである。ちなみに、初代『スーパーマン』では画面奥へと飛び去っていたクレジットが本作では画面手前に向かってくる、という演出変更は意外と意味深長。スーパーマンは、帰ってきたのである。

 それから、話はやや前後するが、本作の予告編もまた大変素晴らしい!



 冒頭にも貼っているが、ここに今一度貼り付けておく。当該予告編には“ワーナー・オン・デマンド”と記されているが、たしか普通のテレビ用予告編にもこれとほぼ同じバージョンが存在したはずだ。ヒーローの不在、世界と恋人の変化。男(ヒーロー)にとって、愛する女とは自らの“世界”を映す“鏡”である。したがって、ロイスが展開するヒーロー不必要論は、そのまま世界がスーパーマンのことを忘れてしまった、ということの暗喩。そんな世界に、今再び最強の敵が現れる。レックス・ルーサー。頭脳明晰、極悪非道。地が裂け、空が暗くなったとき、人々は、世界は、再び願う。“鋼鉄の英雄”の“帰還”を!『スーパーマン リターンズ』!絶賛配信中!!

 なんてよく出来た予告編なんだ。しかも、本予告編は嘘をつかない。大抵の予告編が本編とはかけ離れたある種の“独立作品”であることは、今や誰しもが知るところであろう。しかし、本作のテーマは、まさに本予告編が端的に描いて見せた“ヒーローは、世界に裏切られながらもヒーロー足ることが出来るのか”というものに他ならない。

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 スーパーマンは、結果的にロイス・レインの“ヒーロー”にはなれなかった。それでも彼は“ヒーロー”で在り続ける。客観的・物理的な意味での世界を救う、そんな本来的な存在としての“ヒーロー”。悲しくも猛々しい幕引きだ。そもそも初期から悲恋続きだった両者の最後として、本作は最高のものを提示してくれたのではないだろうか。

 とはいえ、かつて愛し合った2人が互いの思いを満足に伝えられないまますれ違い、久方ぶりに再会してみると女の方には婚約者と子供がいる、しかし、女はまだかつての男を愛し続けていて・・・という少女漫画的なドロドロのプロット。こんな誰も特をしない物語は、健全な男性鑑賞者の胸を締め付ける罠に違いない。

 子供まで設けた愛する男性に隠して過去の男と夜な夜なデートする最悪な性悪女と勝手にほったらかしていた女の元に5年も経ってから突然現れ都合良くまた愛を打ち明けるクソ男のラブ・ストーリー。おまけにその件の子供が実は昔の男とのそれだったと発覚してしまっては、しかも、それを最後まで今の男は知らないままとあっては、もう本作の主要人物を誰も応援できはしない。本当に、なんでみんな恋人に内緒で色々するのだろう?黙っていることは優しさではないぞ?そんな考え方は、バレなければ万引きしてもいい、というのと同じ。しかも、だいたい「恋人にも言えないことってあるよね♪」と訳知り顔で宣うような輩は、単に自分の責任から逃れているだけの弱虫でしかない。それは“逃げ”だ。断じて“優しさ”ではない。“優しさ”とは“強さ”だ。本当に今の彼氏を愛しているのなら、その叱責に耐える強さで以て全てを打ち明けることこそが真の“優しさ”ではなかろうか。

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 そんな風に考えると、結局本作は、彼のノリノリな活躍を堪能する作品と言えそうだ。

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 本作の監督でもあるブライアン・シンガーがかつて監督した名作『ユージュアル・サスペクツ』に続き、再び彼とタッグを組んだあの個性派俳優ケヴィン・スペイシー。彼が演じるということで個人的にはもう少しぶっ飛んだ立ち居振る舞いを期待していたところだが、それでも往年のジーン・ハックマンに勝るとも劣らないカリスマ性溢れるレックス・ルーサー。

 大義名分を掲げながらフラフラとふしだらなことばかりしているスーパーマンサイドの人間と比べれば、彼の方が随分と魅力的だ。やはり“正義”が基本的に“理性”の発展形であるのに対して、“悪”はすべからく“本能”を昇華させた概念であるとするのなら、後者の方が当然真っ直ぐで説得的ということになるのだろう。この辺の“正義・悪論”は、また別の機会に。

点数:75/100点
 一見昼ドラレベルの縦軸であるものの、スーパーマンとロイスが辿り着いた最後の決着からすればこれ以上はなかったと思える最高のシリーズ最終作。全く別物になってしまった新生スーパーマンにはもうかつてのような意味での“ヒーロー”は期待できないから、未だ本作を含めた真のスーパーマンシリーズを未見の人がもしいれば、是非その目に、その耳に、その魂に我らが“鋼鉄のヒーロー”の雄姿をしかと焼き付けてもらいたい。

 ちなみに、次回は、彼のように自由に空を飛ぶことこそ叶わずとも、空に憧れ、空をかけてゆく、そんな一人の男の物語。まぁ、随分と遅くなってしまったが。彼もまた“ヒーロー”に違いない。

(鑑賞日:2013.8.29)










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