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27
2013

[No.288] 風立ちぬ <65点>

CATEGORYアニメ




キャッチコピー:『生きねば。』

 真っ直ぐに、誰よりも強く。

三文あらすじ:群馬に生まれた飛行機に憧れる少年、堀越二郎(声:庵野秀明)は、ある日、イタリアの著名飛行機設計士カプローニ(声:野村萬斎)と夢の中で出会い、自らも飛行機設計士を志す。大学生となった二郎は、航空工学を学ぶために上京、折しも発生した関東大震災の最中、たまたま汽車に同乗していた可憐な少女、里見菜穂子(声:瀧本美織)とその女中を救う。数年後、名古屋の飛行機会社に就職し、新型戦闘機の開発に苦心する二郎は、休暇先の軽井沢で菜穂子と運命的に再会、惹かれ合う二人は交際を開始するが、菜穂子は重度の肺結核を患っていた・・・


~*~*~*~

 
 本作の公開が7月20日だから、もう2ヶ月も経ってしまったことになる。時が経つのは早く、風が立つのは一瞬。それでも書かねばならぬ。

 本作を観て筆者が感じた第一の感想は、これはエンターテイメントではないな、というものであった。エンターテイメントに特化していない、ともう少し優しく言うことも出来るかもしれない。本作は、堀越二郎という男の半生を極めて淡泊に描いていく。それはもう“ダブルチーズバーガー、チーズ抜き、シングルで”というくらい淡泊。堀越二郎は、悩まない。空への憧れだけを頼りに、真っ直ぐ、ブレることなく上京。大震災にも微塵も臆さず勇敢な救出劇を繰り広げる。就職後も極めて淡泊。一切の迷いなく戦闘機開発に没頭する毎日。自身の処女作が大失敗しても大して凹んだ素振りを見せない。

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 こういう主人公は、リアルでないだけに魅力的だ。特に女性鑑賞者からすれば素晴らしき理想の男性に映ることであろう。それは、往々にして少女漫画に登場する男性キャラクターが、現実の男から見ればあたかも感情を抜かれたかのような“超人”としてそこに在るのと似ている。もちろん、筆者もこのような主人公は好きだ。筆者が敬愛するルパン三世やポルコ・ロッソは、類い希無き元来の才覚もさることながら、それまでの深淵で広範な人生経験によって、今や悩むことのない“超人”として存在するキャラクター。つまり、ウジウジ悩まない主人公である。

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 ところが、本作の主人公、堀越二郎は、上記2キャラクターと比べて何かが違う。彼らのような圧倒的ヒロイズムが感じられない。確かにほぼ全く悩んだり落ち込んだりしないその姿は、ある意味で格好良く、筆者の憧れるべき立ち姿なのであるが、決定的に欠落してるのが、“過去から来る説得力”である。ポルコ・ロッソは、かつて大戦を経験し、その中で多くの仲間を失った。その悲しみがあるから、ある種全てを達観し、何事にも動じないいぶし銀な“男”へと成長したのである。過去は必ずしも“悲しみ”である必要はない。ルパン三世は、世界を飛び回り、様々なエキスパートと命のやり取りをする中で、酸いも甘いも噛み倒した成熟の極みに達した。

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 本作を通して、我々は、堀越二郎という男の幼少期からの生い立ちを目の当たりにするのであるが、彼には、上記2者のような人格形成上重要な過去がない。群馬のボンボンという出生もさることながら、ブレない“夢”を持っていることが既に恵まれた資産状況であり、その“夢”を実現するだけの忍耐力と発想力を元来有しているところなんかは、もはや生まれながらの“先天的ヒーロー”である。おまけに、彼はクリプトン人ではないから、そのような自身の特性で悩むこともない。詰まるところ、彼のひょうひょうとした超人たる立ち居振る舞いは、元々そーゆー奴やった、ということでしかないのである。ウジウジ悩む必要は決してないが、彼のキャラクターには説得力がない。それは言い換えれば“深み”が無いということであり、はばかりながらも敢えて言うのであれば、キャラクターの描き方が“浅い”ということになるだろう。もちろん、巨匠宮崎駿は、わざとそういう風に描いたのであろうが。

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 本作は、堀越二郎という男の半生は元より、彼が生きた“時代”をも描きたかったのではないだろうか。これは、かつてアカデミー賞を受賞した名作『フォレスト・ガンプ』と同じ趣向である。同作も、油断すれば“知的障害者”になりそうな生粋の純粋人フォレストが、文字通り駆け抜けた“時代”を明確に描き出し、その点が高い評価に繋がった作品。本作も、関東大震災、不況、戦争と混乱するかつての日本をはっきりと伝えている。しかも、戦場を一切描写しない、という観点は、いわゆる“戦争もの”とは違う中々おもしろい趣向である。

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 さて、本作に関して、筆者が一言言っておきたい、いや、言っておかなければならないことは、喫煙描写の是非についてである。本作に数多く登場する喫煙シーンに対して、NPO法人“日本禁煙学会”が非難を向けた。この映画には喫煙シーンが多く登場しすぎる、これを観た子供が真似をしたらどーするのか、だいたい結核の妻の前でも堂々と紫煙をくゆらせるとはどのような神経なのか、という訳である。

 ばーーーーーか。子供が真似しそうで恐いのなら、大人がしっかりしかってやればいいだけの話。お前らは、そんなこともガキに注意出来へんのか?自分の低脳を他人のせいにするな!それはもうモンスター・ペアレントと変わらない極めて低俗な主張でしかない!

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 それから、ちゃんと観たか?この映画を、堀越二郎の生き様を、彼が心から愛し、彼を心から愛した里見菜穂子の生き様をお前らはちゃんと観たんか!?“愛する”というのは、まぁ諸説あるだろうが、言ってみれば“その人の全てを好きになる”ということに他ならない。良いところも悪いところも全部含めてだ。仮に喫煙が、あなたたちの言うような“悪習”だったとしても、菜穂子はそれもひっくるめて二郎を愛した。だから彼女は、病床に伏していても、彼の喫煙を止めない。煙草を吸うために握った手を離すくらいなら、繋いだままこの場で吸って欲しい、そう願うのである。

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 また、彼女と二郎の関係性は、あなたたちが考えるような浅はかな“恋愛”ではなく、もっと清く逞しく美しく、そして、男らしいものである。彼らは、例え病魔に冒されようとも、自分たちの“愛”を貫こうと誓った。結核を枷にせず、自分たちの結婚生活を全うする。これは、病気に対する堀越夫妻の宣戦布告であり、彼らが生涯を賭けて挑むべき“もう一つの戦争”なのである。したがって、病気の妻のために夫が生き方を変えてしまう、つまり禁煙してしまうというのは、それはすなわち、彼らの敗北を意味している。

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 だいたい禁煙しないことが菜穂子への酷い仕打ちだと言うのなら、二郎が飛行機開発に没頭し、病床の菜穂子をほったらかしたまま深夜まで帰って来ないことも同様に冷酷な行いではないのか?あなたたちはきっとそれは否定しないだろう。なぜなら、一生懸命“夢”を追いかけることは無条件で素晴らしいこと、という陳腐でチープな一般論を盲信しているからである。反吐が出る!!

 同じなんだ。煙草を吸い続けることも。飛行機開発に全力を賭すことも。どちらも病気に対する戦いだ。生き様を曲げれば負ける。不況にも、地震にも、戦争にも、病気にも。全てに打ち勝つ程、深く熱く思い合った“最強の愛”こそが、二郎と菜穂子の生き様であり、すなわち、それが彼らの“ドリル”なのだ。

点数:65/100点
 本作は、いわゆる“ジブリ的な冒険活劇”ではない。堀越二郎という男の生き様を極めて淡々と綴っていく、むしろ“記録していく”と言ってもいいかもしれない。したがって、未だ『ラピュタ』や『もののけ』を引きずっている人にとってはつまらない作品であろう。かく言う筆者ももちろんエンターテイメント至上主義者であるから、当然本作を真っ向からおもしろいとは感じなかった。とはいえ、宮崎駿の描きたいことは充分伝わったし、エンターテイメントに固執しなければ十二分に楽しめる素晴らしい作品である。

 もう一つ、最後に言っておくが、そもそも“現代から見れば非常識な喫煙シーン”というのは既に過去のジブリ作品に登場している。その代表的な例が『紅の豚』だ。フランスの名銘柄ジタン・カポラルを愛飲するポルコ・ロッソは、所構わずプカプカ吹かし、川だろうがお構いなしにポイ捨てする。圧巻は、ピッコロおやじの工場での飛行艇制作シーン。なんとポルコは、赤ちゃんのゆりかごを片手間に揺らしながら、堂々と煙草を吸っているのである。しかも、地面に落ちた吸い殻から推測するに、何十分にも渡って何本も吸い続けている。筆者だって、さすがに彼のこの大胆な行いを手放しで賞賛はしないが、しかし、それを頭ごなしに非難するというのは、思考停止であり愚の骨頂だ。時代だよ。漢気であり、生き様なんだよ。こーゆーところを度外視して本作だけを非難している、というのも禁煙学会のばーかなところに違いない。これは、筆者のささやかな宣戦布告である。

(劇場鑑賞日[初]:2013.9.1)














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Tag:男には自分の世界がある これが女の生きる道 劇場鑑賞作品 紫煙をくゆらせて

2 Comments

かずみ  

いつも楽しく拝見しております。
私は非喫煙者なので,最近の禁煙ブームについては肯定的に捉えていますが,日本禁煙学会の主張については,私もばーーかだと思います。
私のまわりでは,本作を高く評価している人が多かったのですが,管理人さんの評価が65点とそれほど高くならなかったのは,キャラクターの描き方が浅かったこと以外に何か理由があるのでしょうか。

2013/10/10 (Thu) 19:59 | EDIT | REPLY |   

Mr. Alan Smithee  

Re:

筆者は、基本的にエンターテイメント指向の映画鑑賞者です。
本作は、一人の男の生き様を描く作品として極めて秀逸だと思いますが、
その描き方は非常に淡々としたもので決して王道を往く“エンターテイメント”ではないと思います。
映画として一級品であることは理解出来る、しかし、胸を打ち震わせるようなワクワクは感じられなかった。
つまり、頭のノートにはメモったが、心のノートにメモるほどの作品ではなかった、という訳です。

2013/10/26 (Sat) 18:17 | EDIT | REPLY |   

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