[No.30] ジャッキー・ブラウン(Jackie Brown) <96点>

Jackie Brown(1)



キャッチコピー:『すべてのカタは彼女がツケる。』

 タランティーノ風大人のラブストーリー。

三文あらすじ:メキシコの小さな航空会社に勤めるCA、ジャッキー・ブラウン(Jackie Brown)(パム・グリア)は、その仕事を活かし、銃の密輸屋オデール・ロビー(サミュエル・L・ジャクソン)のために金の運び屋をしていた。あるときオデールを追うFBI捜査官レイ・ニコレット(マイケル・キートン)に逮捕されたジャッキーは、オデール逮捕に協力するよう司法取引を持ちかけられる。保釈されたジャッキーは、親しくなった保釈屋マックス・チェリー(ロバート・フォスター)と組んで、オデールとFBIの双方を出し抜き大金を手に入れる計画を立てるのだが・・・


~*~*~*~

 
 筆者が本作を初めて鑑賞したのは、もうずいぶん昔のことになる。そのときは、実は正直そんなにおもしろい作品だとは思わなかった。何よりジャッキー・ブラウンを演じるパム・グリアが全然可愛く見えなかったのである。顔はキツいし、ガタイはゴツいし、口はひん曲がっている。あれから幾年月。今は胸を張って言える。本作は本当に素晴らしいし、パム・グリアは本当に”いい女”だ。

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 本作は、タランティーノが唯一描いた”恋愛映画”だと言って差し支えないだろう。ストーリー全体としては、オデール/ルイス(ロバート・デ・ニーロ)/メラニー(ブリジット・フォンダ)らのゴロツキチーム、レイ/マーク(マイケル・ボーエン)のFBIチーム、そしてジャッキー/マックスの主人公チームが55万ドルもの大金をめぐって騙し合いを演じるという犯罪群像劇。いわば『パルプ・フィション』でのアタッシュケースをめぐるストーリーを全編やっているようなものである。しかし、主軸としてあるのは、やはりあくまでもジャッキーとマックスの大人の恋。より正確には中年の恋である。

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 マックスはジャッキーに一目惚れする。保釈されたジャッキーを仕事として迎えに行ったマックスは、留置場で一晩を過ごし疲れ切った彼女を見て、恋に落ちるのである。このシーンが非常にいい。本作は全編ナイス・ミュージックに彩られているのだが、このシーンの音楽は一目惚れしたマックスのアップにマッチしていて特にナイスだ。また、一目惚れシーンであるのに、惚れられる女性が髪はボサボサ、メイクはハゲハゲで疲れ切っているというのが渋い。普段のジャッキーはその見た目通り自立した強い女性なのだが、そんな強そうな女が弱さを見せた瞬間に恋するというのが、まさに大人の恋。その後のバーでの2人の会話も極めてオシャレだ。

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 そんな本作のベースにあるのは”老い”というテーマである。ジャッキーはこの年になって職を失うことを恐れ、マックスは数年前から髪が抜け始め今ではカツラをつけていることを告白する。また、常に露出度の高い服を着用し、よく分からないプロテインを周囲に勧め、出かける準備にやたら時間が掛かる若い女性メラニーとドラッグの煙を吸うと咳が出たり、セックスすると息も絶え絶えになってしまう中年男ルイスの対比によっても、”老い”というテーマが強調されている。

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 この”老い”というテーマが、ジャッキーとマックスの結末に繋がる。全てが上手くいき大金を手にしたジャッキーは、スペインに高飛びする前にマックスの保釈屋事務所を訪れる。そこで、ジャッキーはマックスに"一緒に来ないか"と誘うのである。彼女と出会った夜に、実は保釈屋を辞めることを決意していたマックス。しかし、彼はジャッキーの申出を断る。人生の大半を同じ町の同じ事務所で過ごしてきたマックス(保釈件数は1万5千件に上る。)には、この年で海外での新たな人生を始める勇気が無い。対するジャッキーは、長年CAとして世界を飛び回ってきたし、何より心身ともに若々しい。マックスがジャッキーに対して”年齢のことで君に同情はしないよ”と冗談めかすシーンもあった。

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 町への残留を表明するマックス。デスクの電話が鳴る。「仕事よ、保釈屋さん。」と言って出て行くジャッキー。「息子が逮捕された」という電話の相手に、長年幾度となく繰り返してきたようにして必要事項を聞いていくマックス。しかし、彼の目は走り去るジャッキーの車に釘付けだ。そして、マックスは「30分後にかけ直してください。」と言って電話を切る。恋愛映画のお決まりなら、ここで彼は走って空港に向かうだろう。しかし、マックスは事務所の奥へとゆっくり歩いて行く。彼は走らない。すぐに走るのは子供の恋愛だ。もっとも、電話を切ったということは、彼が仕事、すなわちこの町での日常に戻らない、あるいは戻りたくないということを意味している。老いを感じていた彼にとって、ジャッキーと過ごしたこの何日間は、若かりし頃の自分を思い出せる時間だったのだろう。そして映画は、空港に向かう車の中でなんとも切なげな表情のジャッキーを映しながら幕を下ろしていく。なんという大人の世界だろうか。

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 本作で大変印象的に使用され、いわばジャッキーとマックスのテーマソングと言えるのが、デルフォニックスの『Didn't I Blow Your Mind This Time』という曲である。この曲は、想いを残しながらも恋人の元を去っていく者の心境を歌っている。このテーマは、一見マックスのジャッキーに対する想いを表しているように思えるのだが、ラストで実はジャッキーからマックスへの曲なのだと分かるという仕掛け。一から十まで粋でオシャレでいぶし銀な映画である。

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 最後にマックスの今後についてであるが、筆者としては、やはりマックスはジャッキーを追ってスペインに飛ぶと考えたい。先述の通り、仕事の電話を切ったことは彼が若い心を取り戻しつつある証拠だ。『Didn't I Blow Your Mind This Time』では、去る恋人は相手の気持ちを変えることができなかったが、我らがヒロイン、ジャッキー・ブラウンならマックスの老いた心も変えることができるだろう。まぁ、これはあくまでも今の筆者の見解であって、マックスの年齢になってから再度鑑賞すると、また違った解答を得ることができるかもしれない。映画は、その時々の自分を映す鏡でもある。

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点数:96/100点
 本当に素晴らしい大人の雰囲気の作品。でもやっぱりタランティーノ作品は、その良さを合理的に伝えることが難しい。どうしても”カッコイイ”というような極めて主観的な理由になってしまう。したがって、タランティーノの演出が肌に合わない人には、ダラダラ長い会話と冗長な展開を2時間半も観せられる非常に退屈な作品と感じられるかもしれない。しかし、もし本作を観て筆者と同じ感想を持った人がいたなら、ぜひスクリュードライバーで乾杯したいものだ。

(鑑賞日:2012.2.6)

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Comment

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スペインに飛んで欲しい。隠れ家探しに関してはプロのはずだ。

おしゃれすぎて終始ニヤニヤしてしまう。リズム感が非常に心地よい。
以前よりはタランティーノの良さが分かってきた気がする。

そしてルイスが3分でへばった後、手に力が入らず1回で冷蔵庫を開けられない感じがリアルすぎる。

  • Mr.Alan Smithee
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Re:

もう逃げ隠れせんでえぇようになったんちゃうかったっけ?
ジャッキー姐さんのプランは完璧。

タランティーノ、どんどん観てはまって下さい☆

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