[No.299] 次元大介の墓標 <96点>





キャッチコピー: 『あばよ、次元。』

 俺達の世界では、同じ腕のヤツは二人いらないんだ。

三文あらすじ:中世、東ドロアに落ちたと言われる彗星の欠片“リトル・コメット”を頂戴にあがったルパン三世(声:栗田貫一)と次元大介(声:小林清志)は、なぜか逃走経路を先読みしてくる警察に翻弄されながらもどうにか逃げるが、標的の墓を事前に作るという謎の殺し屋ヤエル・奥崎(声:広瀬彰勇)に狙撃された。腹の虫がおさまらないルパンたちは、ヤエルのアジトに忍び込み、次元お得意の早打ち対決に持ち込むが、ヤエルには適わなかった。一方、秘密クラブに囚われた峰不二子(声:沢城みゆき)は見世物にされ、ルパンたちは必死の思いで逃走を図るが、遂に次元は、ヤエル・奥崎の手によって・・・


~*~*~*~

 
 本作は、ルパン三世のTVシリーズとして実に27年ぶりに放送された『峰不二子という女』の続編、というか、シリーズ企画の第二弾にあたる。
 
『峰不二子~』は、渋いルパンや格好いい銭形を始め、テレビセカンドシーズン以降やや蔑ろにされていた“ルパン三世”の本質を突く素晴らしいアニメだった。しかも、宗教施設で孤児として生まれ育った不二子のトラウマを追う、と見せかけて実はきちんと“女、峰不二子”に帰着させた、というところが本当に秀逸だった。筆者なんかは途中までこの最高のプロットに全く気付かなくて、終盤に至り歓喜と安堵の涙を流したほどである。まぁ、大抵のルパンファンは途中で気付いていただろうから、単に筆者が、白痴の、あるいは神の意識を持っていたというだけの話ではある。

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 さて、本作の舞台は、東ドロアという架空の国家(おそらく東ドイツのイメージだろう。)。標的は、でかくてピカピカの秘宝“リトルコメット”(これは“マクガフィン”だろう。別に何だって構わない。)。男は、ルパン三世と次元大介。これだけで、良く分かっているな、と感じるに充分である。名作『カリオストロの城』冒頭でも描かれたように、やはり「ルパン三世」という物語は、2人の相棒からスタートして欲しい。

 ヤエル・奥崎という敵も申し分ない。高身長、細身、眼帯、細すぎる手首足首、そして、びびるほどの怒り肩。これぞ「ルパン三世」の敵キャラである。

ヤエル奥崎


 スナイパーとしての腕だけでなく、様々なメカニックに精通した“科学者”的キャラ付けも良い。いつまでも大振りのマグナムを振り回す昔気質の“ガンマン”次元大介との対比が効果的である。

 ヤエルと抜き合った次元が一度は敗北するのはお約束だが、決着の付け方が見事。眼帯に仕込んだ映像装置で街中の監視カメラとリンクしていたヤエルのトリックをルパンが暴き、死んだと見せかけていた次元がヤエルを狙撃する。

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 次元死亡偽装時やこのクライマックス時のトリックは、全てルパンによって仕掛けられたものであり、本作ではルパンが次元をサポートしているということが強調されている。ルパンが主役の通常作品であれば、大抵はおちゃらけたルパンを尻ぬぐい的にびしっとフォローするのが次元大介の役所。ゆえに、次元は“ルパンの相棒”と形容されることが多い。しかし、次元を主役に置いた本作では、最新技術に疎い次元をしっかりサポートするという役にルパンを据えることで、ルパンもまた“次元の相棒”であることを示している。

墓標ルパン


 軽量化した改造拳銃 vs S&W M19 コンバット・マグナム。ルパンの助けによって再び強敵と対峙した“主役・次元大介”の見せ場である。

 中盤辺り、ルパンから「じゃあ、お前も同じ重さの銃を使えば負けねぇってわけか?」と言われ、「ふん、ごめんだね。」と言い放った次元。ここは凄くいい。とてつもなく格好いい。しかし、理論派の敵を打ち倒すには、筋の通った理屈がいるのである。熱いハートだけではダメなんだ。

 この点、本作の決着は本当に素晴らしい。

 再び抜き合った2人。当然ヤエルが僅か早い。銃弾が次元の頬を掠り…

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 ヤエルの左手が大きくえぐられる!

 例え、銃を抜き銃弾を放つ速さにておいて0コンマ数秒遅れようとも、敵の放った銃弾を狙い撃てば、押し勝つのは高重量のコンバット・マグナムなのである…!

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 この決着は、本当にスゴイ!まぁ、探せば過去の作品で似たようなのがあるのかもしれないが(大抵あるのだが)、それでも!やっぱりものすごく上手い!

 “クラシック銃へのこだわり”とか、“凄腕のガンマン”という古くさいキャラとか、もういっさいがっさいを巻き込んで、それら全ての曖昧な“男の憧れ”に説得力を持たせる最高の理屈。熱いハートとクールな頭脳だ。それも究極の。

 この後の次元の決め台詞も最高にシビれる。

 「お前がどれだけ軽い銃を使おうが知ったこっちゃないが…」

ロマンに欠けるな

「俺に言わせりゃ、“ロマン”に欠けるな。」


 オチも極めて良い。

 次元は、今回のすったもんだにそこはかとなく固執している様子なのだが、それは、1週間前にクイーン・マルタという歌姫を目の前で殺されたことに起因している。もちろん、彼なりの仕事に対するプライドみたいなところもあるのだろうが、まぁ、ざっくり言ってしまえば、ちょっと惚れてた、ということでいいのではないだろうか。これは次元にはままある動機だ(五右衛門の場合、日常茶飯事である。)。

 そして、ラストシーン。後部座席で寝そべる次元にルパンは、なぜクイーン・マルタのカラミティ・ファイルをマスコミに送ったのか、と聞く。そうしたところ、次元はこう答えるのである。

旨いタバコ

「俺はただ、旨い煙草が吸いてぇだけだ。」


 煙草を吸い始めたこと、そして、吸い続けていることに感謝する瞬間である。このシーンだけは、誰にも文句は言わせない。そう思わせる。

 この次元の言葉に対し、「そりゃ、気が合うねぇ…。」との最高の台詞で以て賛同し、途中から本作のメインお宝になった“カラミティ・ファイル”(『カリ城』とは違い、最終的にルパンが持っている、というところもおもしろい。)に火を点け、その火で煙草を吹かすルパンがまたいぶし銀。

正義の味方じゃねぇ


 さて、他にも色々と細かいところまで本当に手の行き届いた『ルパン三世』を堪能できる本作であるが、最後に2点だけ注意しておく。まず、中盤、次元が死んだ後エンドロールが始まってもDVDを止めないこと。劇場で鑑賞した筆者は、危うく席を立ちかけた。物語は、まだまだ続く。そして、前述の煙草シークエンスの後エンドロールが始まってもDVDを止めないこと。ここからが、鳥肌である。

 ルパンと次元を映していた監視カメラの映像を見つめる一人の男。それが、何と何と何と“彼”なのである。

墓標マモー


 この大オチも本当にスゴイな!

 ただ単に往年の名敵役を無理矢理登場させた訳ではないだろう。ヤエル・奥崎は、後半で次元の他にルパンと不二子の墓も作っている。その墓を見た銭形の「忙しくなりそうだ…。」という台詞もある。

 周到な組み立てであると勘ぐらざるを得ない。確かに、ルパン以外の墓があることや銭形が驚いていないことなど、『ルパンvs複製人間』との整合性が疑問詞される部分はある。しかし、五右衛門、銭形を主役に置いた作品をリリースした後、満を持してルパン三世を主役に据え、映画第1作とはある意味パラレルワールド的に映画作品を制作する、という可能性は大いにある。あるいは、007シリーズ初期のようにマモーをメインの悪役に置いて新TVシリーズを開始する、という展開も想像できる。

 所詮はテレビアニメの延長を仰々しく劇場公開する企画なんだと侮っていたが、なんなんだ、この1時間は。

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 どうやら、映画も上映時間の多寡ではないようである。

点数:96/100点
 本当に素晴らしかった。上映時間が1時間しかないから、普通の映画のようなボリューム感や満足感は確かに無いかもしれない。しかし、ルパンファン、しかも、特に原作漫画版であったり、TVシリーズの1stシーズンであったり、劇場公開映画第1作『ルパンvs複製人間』のような“ハードボイルドなルパン三世”が見たいという人には、完全に手放しでお勧め出来る一本である。男で良かった、喫煙者で良かった、ルパンファンで良かった、心底、そう感じさせてくれる。

(劇場鑑賞日[初]:2014.7.20)
(劇場:梅田ブルク7)

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