07
2012

[No.31] デビル(Devil) <82点>

CATEGORYホラー




キャッチコピー:『密室(エレベーター)が、お前たちの地獄になる』

 まるで悪魔のような………”悪魔”のお話。

三文あらすじ:高層ビルのエレベーターが突然停止、たまたま乗り合わせた5人の男女が閉じ込められてしまう。通報により急行したフィラデルフィア市警殺人課の刑事ボーデン(クリス・メッシーナ)の調べによって乗客たちの過去が次第に明らかになる中、エレベーター内の照明が落ちる度に一人また一人と死んでいく乗客。犯人が分からず互いに疑心暗鬼を募らせていく乗客たちに、悪魔(Devil)の足音がしのびよる・・・

※あまりどんでん返しを期待して観ると痛い目を見ることになる映画だが、一応警告。以下、ネタバレあり。

~*~*~*~

 
 『シックス・センス』で全世界に一大センセーションを巻き起こした男、M・ナイト・シャマラン。その後『アンブレイカブル』『サイン』『ヴィレッジ』『レディ・イン・ザ・ウォーター』『ハプニング』と作を重ねるごとに着々と観客の期待を裏切っていき、アドベンチャー大作『エアベンダー』では、ついに第31回ゴールデンラズベリー賞8部門ノミネート、5部門受賞という不名誉な栄冠を手にしてしまった。筆者が思うに、彼は『シックス・センス』を撮るタイミングを間違えたのだ。童話的な世界観の構築とその中で繰り広げられるサスペンスフルな展開を描くことに関してはかなりの実力を持っている監督なのだが、どんでん返し映画『シックス・センス』で有名になってしまったがために、みんな彼にあっ!と驚くオチを期待してしまっている。しかし、当のシャマランはまるで周囲の期待など意に介していないがごとく、自らがリスペクトするヒッチコックのような”観客の心理に訴えかける丁寧なサスペンス描写”というスタイルを維持している。この頑固な姿勢に好感が持てるし、『アンブレイカブル』は個人的におもしろかったので、筆者はシャマランという監督が結構好きだ。

 そんなシャマランが、脚本も監督も担当せず、原案と制作に回ったのが本作。シャマラン原案のストーリーを若手が映画化していく「ザ・ナイト・クロニクルズ」プロジェクトの第1段作品だ。
 本作の監督は『REC/レック』のハリウッドリメイク版『REC:レック/ザ・クアランティン』を撮ったジョン・エリック・ドゥードルという人物。確かに全然聞いたことのない名前だ。しかし、彼の演出、撮り方、話のテンポなどは大変センスを感じさせてくれ、まさに将来有望な若手映画監督と言えるだろう。

 本作の内容について、まずは”引き”がスゴイ。たまたまエレベーターに乗り合わせた5人の男女が一人一人殺されていく。誰がやったか分からない。前に紹介した短編『エレベイテッド』では、エレベーターの外に怪物がいるかも!という恐怖だったが、本作は今まさに乗り合わせている乗客の中に殺人犯がいるのだから、その緊迫感たるや相当なものである。観客は、いったいこのエレベーター内では何が起こっているのか?と物語にぐいぐい引き込まれるだろう。

 もっとも、本作を『SAW』のようないわゆる”ソリッドシチュエーションスリラー”と考え、最後に観客をあっ!と驚かせる結末が用意されているのでは?などと予想してはいけない。新進気鋭の若手監督が撮っているとはいえ、これはあくまでもシャマラン映画である。作中に散りばめられている”悪魔”を想起させるような手がかりを、メタファーとして受け取ってはならない。
 そう、結論から言うと、本作の犯人は”悪魔”である。「このロクデナシ!鬼!悪魔!」というような比喩ではない。本物の”悪魔”だ。この結末は、観る人によっては思いも寄らぬ方向に度肝を抜かれることになるのではないだろうか。

 本作は、あくまで”罪”と”許し”のストーリーである。ボーデン刑事は、5年前に妻と息子をひき逃げによって失っており、未だにそのことを忘れられないでいる。そんな彼がエレベーター事件の担当になり、乗客たちを調査していくなかで、彼らがみななんらかの罪を犯していることが明らかになっていく。悪魔の目的は、罪人をエレベーターに集め、罰を与えることなのだろう。そして、一人だけ過去が明らかでなかった整備工の若者(ローガン・マーシャル=グリーン)が、実はボーデンの妻子をひき逃げした犯人だったということが、ラストで正体を現した悪魔の追及で明らかになるのである。自らの罪を告白した整備工を殺さず立ち去る悪魔。ボーデンは、整備工を連行する車の中で、彼に「お前を許す」と告げる。

 悪魔はなぜ整備工を殺さなかったのだろうか。整備工が罪を告白したとき、悪魔は悔しがって消えたから、懺悔した者に手出しできないという悪魔界のルールがあるのかもしれない。この辺は、キリスト教に明るくない筆者には分からないところだ。もしくは、「全ては必然であって、ボーデンが今日この場に呼ばれたことにも意味がある」と信心深い警備員のラミレスが言っていたから、悪魔は整備工以外の乗客は殺すつもりだったが、整備工に関してはその罪を告白させ、事実を知りたがっていたボーデンを救ったのかもしれない。そして、ボーデンが整備工を許したことで、結果的にボーデンも整備工も両方救われたことになる。

 筆者は一応「罪を告白し、それを許すという人間の行いが悪魔を撃退した」のだと解釈している。少し調べたところによると、ダンテが書いた『神曲』では”悪魔は世界を上下逆さまに見ている”という設定があるらしい。ということは、ニューヨークの街を空撮するオープニングが上下逆さまだったのは、悪魔が降りてきたという事実、そしてこの世界が悪魔が降りてくるような罪や憎しみに満ちていることを表しているのではないか。そして、ラストではオープニングと全く同じだが上下が正常に戻ったニューヨークの空撮が映される。これは、罪や憎しみが浄化され、悪魔が去ったことを表しているのだろう。まぁこれだと、ただ悪魔が去っただけで”撃退”したのかは分からないのだが、前述したように整備工が罪を告白したとき悪魔は悔しがっていたように見えたから、やはり”撃退”したのだと思う。キリスト教を勉強すればもっと理解できるようになるのだろうが。

点数:82/100点
 要は”人々の救済”というシャマラン映画ではおなじみのやや宗教色の強いテーマを扱っている本作であるが、普通にサスペンスやホラーとして観ても十二分に楽しめる。ストーリーはテンポがよく緊迫感を保っているし、音楽もドキドキする。また、ボーデン刑事がなかなかのキレものでカッコイイ。どんでん返しを期待して観なければ、間違いなく満足できるだろう。冒頭でネタバレの警告をしたものの、出来ればオチを知ってから観て欲しいぐらいだ。

(鑑賞日[初]:2012.2.6)










デビル [DVD]

中古価格
¥295から
(2013/3/24 01:52時点)


デビル [Blu-ray]

中古価格
¥980から
(2013/3/24 01:52時点)


悪魔の話 (講談社学術文庫)

新品価格
¥882から
(2013/6/24 05:17時点)


凄いぞ! エレベーター

新品価格
¥1,260から
(2013/6/24 05:19時点)



関連記事
スポンサーサイト

Tag:衝撃のラスト! ソリッド・シチュエーション・スリラー

0 Comments

Leave a comment